水戸家庭裁判所 昭和43年(少ハ)2号 決定 1968年7月20日
本人 S・R(昭二二・五・八生)
主文
少年を昭和四五年五月七日まで医療少年院に戻して収容する。
理由
本件申請の要旨は、少年は昭和四二年二月一五日水戸家庭裁判所において、昭和四五年五月七日まで医療少年院に戻して収容する旨の決定を受けて昭和四二年二月一七日久里浜少年院に収容されたが、昭和四三年六月一〇日同少年院を仮退院して肩書住居地に帰住し、爾来昭和四五年五月七日を保護観察期間終了日として水戸保護観察所の保護観察下にあつたものであるが、
(1)、仮退院の翌々日たる昭和四三年六月○○日からはじまり同月○△日、○□日ないし△○日、△△日、△□日、□○日、□△日ないし□□日、□○日の八回にわたり、保護者に無断で外泊し、
(2)、同月○△日五千円、○○日五千円、○□日五千円、△△日一万円、△□日二万円、○□日二万円を前後六回(計六万五千円)にわたり父から強要し、食事代、パチンコ、映画、飲酒等に浪費し、
(3)、この間、父が金を出ししぶると一升壜の底を割つておどかしたり、庖丁をもつてくるそぶりを示して脅迫し、
(4)、勤労意欲なく、担当保護司のあつせんしたトラック助手の仕事を嫌つて就労せず、同年六月一五日以降本件によつて水戸保護観察所に引致されるまでの間は正業に従事しようとせず、内妻○木○江方に宿泊すること多く、担当保護司及び保護者の指示に従わず、無為徒食の生活を続けていた。
以上の事実は、少年が仮退院に際して誓約した犯罪者予防更生法第三四条第二項所定の遵守事項の
一、一定の住居に居住し、正業に従事すること。
二、善行を保持すること。
三、住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ保護観察を行う者の許可を求めること。
および、同法第三一条第三項により関東地方更生保護委員会第一部が定めた特別遵守事項中
3、親の言いつけを守つて、辛抱強くまじめに働き、乱暴な行為や人に迷惑をかける行いは、一切しないこと。
4、軽率に女関係を作らないこと。
5、保護観察官や保護司の指示に従うこと。
のそれぞれに違反し、このまま放置すれば再び非行に陥る虞れがあるから、この際少年をすみやかに少年院に戻して収容する必要があるというにある。
そこで当裁判所は、少年の保護事件記録および少年調査記録並びに当審判廷における少年、保護者の各供述を綜合すると、少年は昭和四三年六月一〇日久里浜少年院を仮退院後父母の許に帰宅し、爾来水戸保護観察所の保護観察下にあつたにもかかわらず、無為徒食の生活が多く、家族に金銭を強要してはパチンコ、映画、飲酒等に費消していたものであることが認められる。
このような少年の行動及びその知能、性格、環境等諸般の事情から少年を現状のまま放置するときは、再び非行に陥る虞れが顕著であり、また少年の家庭の保護能力に鑑みると、再び少年を少年院に戻して収容し、心身の改善と安定をはかり、勤労意欲を涵養すると共に、規則正しい生活態度を身につけさせ、その間家庭環境を調整して少年の社会復帰につき万全を期する必要がある。
よつて少年を昭和四五年五月七日まで医療少年院に戻して収容することを相当と思料し、犯罪者予防更生法第四三条第一項、少年審判規則第五五条により、主文のとおり決定する。
(裁判官 林正行)