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津地方裁判所 昭和31年(ワ)110号 判決 1957年10月30日

原告 東興業株式会社

被告 林秀雄 外七七名

主文

津地方裁判所上野支部昭和三〇年(リ)第一号配当事件につき、各被告会社を除く他の被告等の配当額を削除して新たなる配当表を調製し、配当手続をなすべきことを命ずる。

原告の各被告会社に対する請求を棄却する。

訴訟費用中、原告と右各被告会社間の分は原告の負担とし、その余の分は、その余の被告等の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、津地方裁判所上野支部昭和三〇年(リ)第一号有体動産差押事件について、昭和三〇年八月一〇日付裁判官押阪知義作成の配当表中原告に対する配当額皆無とあるを、金三七万九千三一九円に、配当順位二位として記載されている被告林秀雄他七五名に対する配当額を各削除することと更正する。訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求め、請求原因事実として、つぎの通り述べた。

一、原告は、津地方裁判所上野支部昭和二九年(ワ)第二三号約束手形金請求事件の執行力ある判決正本に基いて、訴外債務者上野紙業株式会社(以下訴外会社と略称する)所有の京花紙二号菰包六六個に対して差押をなしたところ、右訴外会社の債権者である被告等はこの競売売得金に対し配当要求の申立をした。しかるところ、原被告等債権者間に配当に関する協議が整わないため、執行吏は、右売得金三八万五千円から執行費用等金四千三七六円を控除した残金三八万六二四円を供託しこれが事情届を執行裁判所である右津地方裁判所上野支部になし、該事件は、同支部昭和三〇年(リ)第一号有体動産差押事件として繋属中である。そして、被告等中、安宅産業株式会社と池田紙業株式会社を除いた被告林秀雄他七五名(以下被告等と仮称し、右被告両会社を被告会社等と称する)は、商法第二九五条に基いて右売得金に対し優先権を主張し、配当裁判所もこれを認めて、競売売得金から執行費用を控除した金三七万九千三一九円を全部被告等に按分配当すべき旨の配当表を作成している。

二、しかしながら、右配当表には、つぎに述べる様な法律違背がある。すなわち

(イ)  被告松岡武是を除く被告等は、昭和三〇年五月二三日から同年六月一八日までの給料債権について優先権を主張して配当要求を申立てているが、本件差押の日である昭和三〇年六月六日において現実に訴外会社に対する同被告等主張の様な額の給料債権はまだ発生しておらない。したがつて、右給料債権が存在するものとして申立てた被告等の配当要求は失当である。

(ロ)  仮りに給料債権が存在するとしても、配当要求債権者が配当要求をなすについては、差押債務者に対する差押の時を基準として、それまでにその債権の履行期が到来していなければならないものと解せられるのに、同被告等の給料債権は、本件差押時の昭和三〇年六月六日までには履行期が到来しておらないから同被告等の配当要求の申立は失当である。

(ハ)  仮りに、競売期日の終了までに履行期が到来すれば、配当要求ができるとしても、訴外上野紙業株式会社の同被告等に対する給料支払日は通常毎月二八日頃であつたのに拘らず、同会社は昭和三〇年六月分に限り突如一方的に、同月一九日付の通知と題する書面でその支払期日を本件競売期日の終了した同年六月二〇日の前日に当る同月一九日に繰上げ支払する旨同被告等に伝え、同日をもつて同被告等の訴外会社に対する給料債権の弁済期を到来せしめたものとし、被告等は本件配当要求に及んだものであるが、同被告等の給料債権は、以下の理由で未だ弁済期の到来しないものと解すべく、したがつてその配当要求は許されないものといわねばならない。すなわち

(1)  右訴外会社は、被告等に対し真に給料を支払う意思でその支払日を繰り上げたものでなく、たゞ被告等をして配当要求をなさしめる方便としてこれをなしたものであり、被告等もまたこの間の事情を知つていてその配当要求に及んだのであるから、右の支給日を繰り上げて、その期限の利益を放棄した意思表示は、通謀虚偽の意思表示として民法第九四条により無効のものと解すべきであり

(2)  仮りにしからずとするも、被告等は右訴外会社が前述の通り支払期日を繰り上げて給料を支払う意思のないのにかかわらず、その支払期日を繰り上げたことについて、その真意によるものでないことを知り又は知り得べかりし事情にあつたものであるから、同法第九三条但書により無効のものと解すべきであり

(3)  仮りにしからずとするも、右意思表示は、同法第四二四条第一項の詐害行為に該当するものであるから、それは取り消されるべきものである。

(ニ)  以上の主張が理由ないとするも、訴外会社は、被告等に対する同年六月分の給料を同年六月末か七月初め頃に支払ずみであるから、被告等主張の配当要求債権はすでに消滅している。

(ホ)  つぎに、民事訴訟法第五九一条第一項は執行吏が配当要求のあつたことを配当に与かる各債権者及び債務者に通知すべき旨を規定しているが、本件において、執行吏が被告等に対し被告等以外の各債権者から配当要求のあつたことを通知した事を認めることができず、また、執行吏は、訴外会社が同法第五九一条第二項所定の期間内に被告等の債権についての認否の申出をしておらないのにかかわらず、右債権について訴外会社の認諾があつたものとして手続をすゝめ、配当裁判所もまた執行吏の右手続を基礎にして配当表を作成しているが、このことは、執行に際し執行吏の遵守すべき手続及び配当表の作成について明かな形式的な瑕疵があつたものと云うべきである。

三、被告松岡武是は、訴外上野紙業株式会社の役員であるから、同被告の報酬債権が商法第二九五条民法第三〇六条第二号の給料債権に該当しないので、その優先配当要求の申立は失当である。そして、同被告が役員としての報酬債権を有するとしても、その配当要求について、前述の二で主張したところを援用する。

四、さらに、被告安宅産業株式会社は、売掛金及びこれに対する損害金債権として、金五二一万二千七四六円について、被告池田紙業株式会社は、売掛金及びこれに対する損害金債権として、金七六万五千六一五円について、それぞれ配当要求を申立てたが、被告会社等は、いずれも訴外会社の根抵当権者であり、訴外会社に対する右債権について、弁済の猶予を与えているものであるから、右債権について配当要求を申し立てることは失当である。仮りにしからずとするも、右債権は、それぞれ、右根抵当権設定契約の極度額の範囲内であるから、根抵当契約の存続期間中に右債権についての配当要求をすることは失当である。

しかし、仮りに配当要求の申立が許されるものとするも、前述の配当表においては、その配当額は零となつている。そして、被告会社等は、配当実施期日の同年八月一九日には出頭しなかつたので、民事訴訟法第六三二条第一項によれば、同日その配当表の実施に同意したものとみなされるべきである。したがつて、仮りに、原告の異議が排斥されたとしても結局、被告会社等の配当額は皆無であることには変りなく、また、原告の被告等に対する異議が理由ありとするも、それは、原告と被告等間のことで、被告会社等との関係に及ぶものではなく、本来、原告の異議には関係ないのであるが、かりにこれありとし、その配当額があるとするも、原告は、被告会社等に対し、民法第三九四条第二項但書に基ずいて配当すべき金員の供託を求める。

五、右三ないし四において主張したところが、すべて理由なしとするもなお原告は、配当要求をなした被告等及び被告会社等の配当要求債権額を争う。

六、それで、原告は、昭和三〇年八月一九日午後一時の配当実施期日において、配当異議の申立に及んだが、被告等中被告芦尾勇、松岡武是、丹羽善四郎、東登は、それぞれ右申立を正当ならずと主張し、不出頭の右四被告以外の被告等並びに被告会社等は民事訴訟法第六三二条第二項により原告の異議を正当なりと認めないものとみなし得るから本訴に及ぶと。

なお、原告が昭和三〇年六月二七日午前一〇時の配当協議期日に弁護士の資格を有しない訴外山路晃彦を代理人として異議の申立をなさしめたことを認めると。

立証として、原告代理人は、甲第一号証第二号証の一、二第三号証、第四、五号証の各一ないし四、第六号証を提出し証人矢谷久治郎(第一、二回)藤川利雄、浅野泰英(第二回)松本厳の各証言と被告山本照雄、中森きく、中西たつ子の各尋問結果並びに乙第五号証、九、一〇号証並びに乙第一三ないし七九号証の検証結果を援用し、乙第一号証、第六ないし第八号証、第一一、一二号証、第八一ないし八五号証の成立を認め第九、一〇号証第一三ないし七九号証の成立を否認し、その余の乙号各証の成立は不知と述べ、乙第七、八号証、第八四号証の一、二を利益に援用した。

被告林秀雄他七五名(以下被告等と仮称する)並びに被告各株式会社(以下被告会社等と略称する)の訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め請求原因に対する答弁として、つぎの通り述べた。

請求原因一の主張は認める。もつとも原告代理人は、被告等に対し差押物件である京花紙二号菰包六六個の所有権が債務者上野紙業株式会社(以下訴外会社と略称する)に属せず、訴外浅野紙業株式会社の所有に属することを公正証書により立証したときは直ちに本件差押を解除することを約し、被告等はこれが証明を公正証書によつてなしたが、原告は強制執行手続を追行した。

請求原因二の主張は否認する。

請求原因三の事実について、被告松岡武是が訴外会社の役員であることは認めるが、役員といえども訴外会社の一般職員をかねることができるわけで、同被告は右訴外会社の会計係職員として、その給料債権に基く請求をなしたものである。

請求原因四の事実について、被告会社等が原告主張通りの各債権について配当要求の申立をなし、その配当額は、いずれも零であつたこと、被告会社等がそれぞれ右債権について根抵当権者であることは認めるが、それらの弁済の猶予を与えていることは否認する。なお、被告安宅産業株式会社の有する債権の履行期は、昭和二八年八月二八日にして、その根抵当権の極度額は、金七〇〇万円であり被告池田紙業株式会社の有する債権の履行期は、昭和二九年九月三〇日にして、その根抵当権の極度額は、金一五〇万円である。

また、原告主張の昭和三〇年八月一九日午後一時の配当実施期日において、被告会社等が各不出頭であつたこと、並びに、原告が同日配当異議申立に及んだことは認める。しかも、原告はすでに、同年六月二七日午前一〇時の執行吏の配当協議期日に、弁護士の資格を有しない訴外山路晃彦を代理人として右異議の申立をなさしめているが、同期日における同訴外人のかゝる申立行為は民事訴訟法第七九条に違反し無効というべきである。そうすると、同期日には異議の申立がなかつたことに帰し配当金額が同日確定したことになる。したがつて原告の本訴請求は、その原因なきに帰するにより棄却せらるべきものである。被告会社等が原告の異議に関係を有しないとする点を争う。

請求原因五の主張に対し、被告等及び被告会社等の訴外会社に対する各配当要求申立債権のうち、被告池田紙業株式会社の債権は、故紙売却代金の残額債権であつて、元金四七万四千六二〇円とこれに対する昭和二九年一〇月一日から昭和三〇年六月一九日までの商法所定の年六分の割合による遅延損害金を加算した合計四九万五千六一円である、と。

立証として、被告の代理人は、乙第一ないし第七九号証第八〇号証の一、二、第八一ないし第八三号証、第八四号証の一、二、第八五ないし第九五号証を提出し、証人浅野泰英(第一回)松本厳、松岡武是、鵜川音松、西村徳蔵の各証言を援用し、甲号各証の成立を認めた。

理由

原告が津地方裁判所上野支部昭和二九年(ワ)第二三号約束手形金請求事件の執行力ある判決正本に基いて、訴外債務者上野紙業株式会社(以下訴外会社と略称する)所有の京花紙二号菰包六六個に対し差押をなしたところ、右訴外会社の債権者である被告等はこの競売売得金に対し配当要求の申立をしたが原被告等債権者間に配当に関する協議が整わず、執行吏は右売得金三八万五千円から執行費用等金四千三七六円を控除した残金三八万六二四円を供託し、これが事情届を執行裁判所である右津地方裁判所上野支部になし、該事件が同支部昭和三〇年(リ)第一号配当事件として繋属中であること、そして被告等中安宅産業株式会社と池田紙業株式会社を除いた被告林秀雄他七五名(以下被告等と仮称し、右被告両会社を被告会社等と称する)は、商法第二九五条に基いて右売得金に対し優先権を主張し、配当裁判所もこれを認めて、競売売得金から執行費用を控除した金三七万九千三一九円を全部被告等に按分配当すべき旨の配当表を作成したこと並びに原告が昭和三〇年八月一九日配当期日において、右配当表に対し異議を述べたことは当事者間に争いがない。

しかるところ、被告等及び被告会社等は、原告がはじめ、昭和三〇年六月二七日午前一〇時の執行吏の配当協議期日に、弁護士の資格を有しない訴外山路晃彦を代理人として、異議申立に及んだがその申立は民事訴訟法第七九条に違反し無効でありしたがつて、本件競売売得金の配当額は、執行吏の配当協議期日において確定しているから、原告の本訴請求は、その原因なきに帰し失当であると主張するので按ずるに、右主張事実は原告の自白するところであるが執行吏が競売売得金を配当する手続は、地方裁判所のなす強制執行手続ではないから、民事訴訟法第七九条の適用はない。したがつて執行吏の定めた配当協議期日に弁護士にあらざる原告代理人が出頭して配当に異議を述べたとしても、その異議は有効であり、したがつて又執行吏が右配当に関し債権者間に協議調わざるものとして、競売売得金を供託し、執行裁判所にその事情を届出でたことも適法である。そうすれば、執行吏の配当協議期日においては、配当額は確定しなかつたものであるから、原告が津地方裁判所上野支部における配当手続において、配当表に対する異議を述べたことも適法であり、したがつて原告の本訴請求がその原因なき旨の主張は到底これを採用し難い。

よつて原告の異議について判断をすゝめるに、まず、民法に従つて配当を要求し得べき債権者は、競売期日の終りに至るまでその申立をなすことができることは、民事訴訟法第五九二条に明記するところであるが、これは競売期日までに履行期の到来している債権について配当要求ができる趣旨と解すべきであるから、差押の時すでに申立債権が発生していることやその時までにその債権の履行期が到来していることを要件とするものとは解することはできない。したがつて、原告主張の請求原因二の(イ)(ロ)の主張はこれを採用することができない。

つぎに、その成立について争いのない甲第二号証の二や証人矢谷久治郎(第一回)松本厳の各証言、被告山本照雄、中森きく、中西たつ子、松岡武是の尋問結果によると訴外上野紙業株式会社の被告等に対する給料支払日は、通常毎月二八日頃であつたのに拘らず、同会社は、昭和三〇年六月分に限り、突如一方的に、同月一九日付の通知と題する書面でその支払期日を本件競売期日の終了した同年六月二〇日の前日に当る同月一九日に繰上げ支払する旨被告等に伝え、同日をもつて、被告等の訴外会社に対する給料債権の弁済期を到来せしめたものとし、被告等は本件配当要求に及んだものであることが認定できる。

そして原告は、訴外会社の右給料繰上支給の意思表示は無効のものであり、したがつて、被告松岡武是を除く被告等の給料債権は、右昭和三〇年六月二〇日当時弁済期が到来しておらずその配当要求は許されないものと主張するので按ずるに、給料支払については、労働基準法第二四条第二項により給料は一定の期日を定めて毎月現金をもつてこれを支払わねばならないことになつているから、右認定の給料支払日の繰り上げの意思表示については、訴外会社がその繰り上げ日にこれを現実に支払う意図を有した場合に初めて効果意思を伴つた繰り上げの意思表示と解すべきである。しかるに右認定の給料支払日の繰り上げについて、訴外会社が右六月一九日に、現実にこれが支払をなす意思を有したことを認めるに足る証拠がなく、却つて前記松本厳の証言によると当時、訴外会社は、右給料支払の意思はなく、もとよりその能力もなく、ただ被告等をして前示執行手続について、配当加入をなさしめる目的のもとに右支払日の繰り上げをなしたことが認められ、その期限の利益の放棄の意思表示は被告等をして配当要求をなさしめるための方便であつたことが認められる。ところで、この意思表示について被告等が訴外会社と通謀した事実を認めるに足る証拠はないが、前示証言や各本人尋問の結果によると被告等は右意思表示が真実給料を繰り上げ支給されるためにとられる処置ではないことを当然察知していたものと推認できるので、民法第九三条但書により無効のものといわなければならない。

そうすると、被告等が、その給料債権について、前示昭和三〇年六月二〇日の競売期日終了前に、その履行期の到来したことを前提としてなした前示配当要求の申立は、さらに判断をすゝめるまでもなく失当に帰し、本件配当表の配当順位二位に記載されている被告林秀雄他七五名に対する配当額は削除せられるべきである。

なお、被告松岡武是の債権が右被告等と同種の給料債権か訴外会社の役員としての報酬債権かについて按ずるに、証人松本厳の証言と被告松岡武是の尋問結果から、同被告は訴外会社の取締役兼計理事務担当職員であつて、同人が配当要求を申立てた債権は、右計理事務担当職員としての給料債権であることが認められるので、同債権を給料債権に非ずとする原告の主張はこれを採用しがたい、もつとも、原告は、予備的に同被告の債権を給料債権とも主張するので、その場合については、前段説示の他の被告等に対する主張の判断と同一に帰するものである。

つぎに、原告の被告会社等に対する異議について按ずるに、被告安宅産業株式会社が売掛金及びこれに対する損害金債権として金五二一万二千七四六円について、被告池田紙業株式会社が売掛金及びこれに対する損害金債権として金七六万五千六一五円について、それぞれ配当要求を申立てたこと、並びにその配当額が零であつたことは当事者間において争いはないところ、原告がその配当期日において被告会社等に対し異議を述べたことについては何等の主張がない。また、前示の通り配当表における被告会社等の配当額はいずれも零であるところ、配当裁判所の前示昭和三〇年八月一九日午後一時の配当実施期日に被告会社等が各不出頭であつたことは争いなく、被告会社等は原告の異議を争うことによつて配当額が零以下に減殺せられることのあり得ないことに思い及ぶと、被告会社等は、原告の申立てた被告等に対する異議に関係を有しないものと解するを相当とする。そうすると、被告会社等は、本件配当異議の訴において被告たる適格を欠くものと云うべく、従つて、さらに判断をすゝめるまでもなく、原告から被告会社等に対する本訴請求はこれを棄却すべきものとする。

しかし、証人鵜川音松、同西村徳蔵の各証言によれば、被告会社等は現在も右訴外会社に対して債権を有していることが認められるから(但し被告池田紙業株式会社の債権は、本件配当要求申立後の弁済により、本件配当表記載の金額よりも減少している)、被告会社等を除く他の被告等に対する配当を全部削除することになると、本件競売売得金をさらに原告及び被告会社等に配当することになるが(この点については学説上争いがあるが、一応大審院昭和三、一二、二四、同昭和一一、二、二六の判例の見解に従う)被告会社等は本件配当異議訴訟の正当な当事者ではないから、被告会社等の配当額を本件判決において確定することは適当でない。よつて当裁判所は民事訴訟法第六三六条後段により執行裁判所に新なる配当表を調整し配当手続をなすべきことを命ずることとする。なお、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 松本重美 西岡悌次 豊島利夫)

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