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津地方裁判所 昭和42年(モ)284号 決定 1968年1月22日

三重県四日市市南富田町一〇番二四号

申立人

山下敏男

大正一五年七月一六日生

右申立人からなされた昭和四年(モ)第二八四号裁判官忌避申立事件について、当裁判所は、つぎのとおり決定する。

主文

本忌避申立を棄却する。

理由

第一、本件忌避申立の理由の要旨は、つぎのとおりである。

一、原告を申立人、被告を四日市税務署長とする津地方裁判所昭和四二年(行ク)第二号執行停止申立事件について同裁判所裁判長裁判官後藤文雄、裁判官杉山忠雄、同青山高一は、却下の決定をした。この決定は行政事件訴訟法第二十九条の解釈を明白に誤ったものと申立人(原告)は考える。

二、申立人(原告)は昭和四十二年の始め(時期は一月頃)刑事訴訟法に基く付審判の請求をしてみたが、本月に至るも何らの決定をもしていない。又昭和四十二年八月二十二日頃右事件に関し証人として審尋されたこともある。右は裁判官として職務を怠っているものと考える。

よって、原告を申立人、被告を四日市税務署長とする昭和四二年(行ウ)第六号裁決取消請求事件について、公正を妨ぐべき事情があるものと考える。

第二、裁判所の判断はつぎのとおりである。

一、申立事由一について

この執行停止申立事件は、申立人が裁判官を忌避せんとしている裁決取消事件とは、別個の事件であるから、右執行停止申立事件についての事由をとらえて、これを忌避申立の理由とすることができないのみならず、

前記執行停止申立事件については、後藤文雄、杉山忠雄、青山高一の三裁判官によって構成された合議体の裁判所が当然の職務として審理、裁判をなしたものであって、これに対して、申立人が法律上の見解を異にしているからとて、これをもって、右の三裁判官に裁判の公正を妨ぐべき事情が存在するものということができないことは明らかである。

二、申立事由二について

この付審判請求事件は、前記忌避申立をしている事件とは、全然関聯のないことは明らかであるから、右付審判請求事件の処理についての裁判官の措置をとらえて、前記裁決取消請求事件の忌避の理由にすることは、それ自体失当である。

なお、申立人主張の付審判請求事件の審理の経過について関係記録にもとずいて付言すると、

1  申立人は昭和四十一年十二月二十四日津地方検察庁検察官に対して、同月二十二日付で付審判請求書を提出し、同月二十四日に津地方裁判所はこれを受理した。

2  同裁判所は、同月二十六日被疑者に対して、その通知をなし、昭和四十二年一月十九日にその付審判請求事件の原因となっている申立人にかかる道路交通法違反被告事件の記録の保管官庁である四日市区検察庁に対して、記録の取寄を嘱託するとともに、所要事項の照会をしたところ、同事件は控訴を経て上告中であったので、津地方裁判所では同年四月二十一日に一件記録を受理した。

3  前記三裁判官によって構成された同裁判所は、証人として、被疑者麻生通也の訊問を同年五月二十五日に、付審判請求者山下敏男の訊間を同年六月十五日と決定し、右麻生通也については、右期日に証人訊問を施行したが、右山下敏男については、右期日の延期の申請があったので、これを変更して同年八月二十二日に右山下の訊問を施行した。

4  同裁判所は、同年十二月二十六日同事件について決定をした。

右のような経過であるが、右の裁判までに、日時を要したことをとらえて、ただちに裁判官が職務を怠っていたということはできない。

なお、同事件に対して、右山下敏男から抗告の申立があった。

以上のとおり、本件忌避の申立は理由がなくて、また、訴訟記録を精査しても、前記三裁判官に、前記訴訟事件に関して裁判の公正を妨げるような事情があるとは認められない。

よって、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 高沢年七 裁判官 岡田利一 裁判官 辻下文雄)

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