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津地方裁判所 昭和52年(わ)58号 判決 1977年6月17日

本籍

三重県鳥羽市相差町一、一〇五番地

住居

三重県鳥羽市相差町一、二六七番地の一

旅館業

井村仁親

大正一一年四月二五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官鶴田六郎出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、三重県鳥羽市相差町一、二六七番地の一において、民宿「松浪」の屋号で料理旅館業を営んでいたものであるが、不正に自己の所得税を免れようと企て、公表経理上売上収入の一部を除外して簿外預金を蓄積するなどの不正行為により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額は一、七九四万五二〇〇円であり、これに対する所得税額は六九五万一、〇〇〇円であるのにかかわらず、昭和四九年三月一五日、伊勢市岩淵一丁目二番二四号所在の伊勢税務署において、同税務署長に対し、右年度における被告人の所得金額が四一三万三、九〇〇円であり、これに対する所得税額が四九万七、二〇〇円である旨虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、その差額である六四五万三、八〇〇円の所得税をほ脱し、

第二  昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額は二、七六一万五、一五八円であり、これに対する所得税額は一、一〇二万四、七〇〇円であるのにかかわらず、昭和五〇年三月一四日、前記伊勢税務署において、同税務署長に対し、右年度における被告人の所得金額が四二三万三、二八七円であり、これに対する所得税額が三七万七、四〇〇円である旨虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、その差額である一、〇六四万七、三〇〇円の所得税をほ脱し、

第三  昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額は三、三七六万六、二三八円であり、これに対する所得税額は一、四〇九万、八〇〇円であるのにかかわらず、昭和五一年三月一五日、前記伊勢税務署において、同税務署長に対し、右年度における被告人の所得金額が一〇万九、六八三円であり、これに対する

所得税額が〇円である旨虚偽の記載をした所得税確定申告書を提出し、その差額である一、四〇九万九、八〇〇円の所得税をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料、臨検てん末書並びに昭和五一年九月二七日付、同月二八日付、同年一〇月一四日付各調査報告書

一  浜千代芳次、井村義一、井村ひな子に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一  向井満美、松本秀夫作成の各上申書

一  高田勝弘(四通)、向井満美、松本秀夫(昭和五一年九月二日付を除く四通)作成の各証明書

一  岡野新哉、中村真一、三榊省吾、岡野酒店、田口恵美子、牛谷和代、石原茂一、中村修、松本修一、岡本穆、西口信夫作成の各回答書

一  向井満美の検察官に対する供述調書

一  押収してある金銭出納帳(大学ノートのもの)一冊(昭和五二年押三二号の一)、元帳二冊(同号の二、三)名刺一八七枚(同号の五)、印鑑一〇〇個(同号の七)および無記名定期記録帳一冊(同号の八)

一  被告人作成の各上申書(五通)

一  被告人に対する大蔵事務官の各質問てん末書(一〇通)

一  被告人の検察官に対する供述調書

判示第一、第二の事実につき

一  松本秀夫作成の昭和五一年九月二日付証明書

一  藤本元治、小山克哉作成の各回答書

判示第一、第三の事実につき

一  湯田二朗作成の回答書

判示第二、第三の事実につき

一  堀江光行(二丁目のもの)、徳田良平、松村哲男作成の各上申書

一  西田美郎作成の証明書

一  山川義春、亀川明子作成の各回答書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四八年分)

一  税務署長作成の昭和五一年一〇月二〇日付証明書(昭和四八年分)

一  堀江光行(四丁のもの)、中山忠作成の各上申書

一  藤岡正子、野村弘子、杉本貢作成の各回答書

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和四九年分)

一  税務署長作成の昭和五一年一〇月二〇日付証明書(昭和四九年分)

一  大蔵事務官作成の昭和五一年九月一八日付調査報告書

一  桑山政憲、松本昌義に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一  新井篤の上申書

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五〇年分)

一  税務署長作成の昭和五一年一〇月二〇日付証明書(昭和五〇年分)

一  亀川洋に対する大蔵事務官の質問てん末書

一  中山一己、江崎貞子、加藤力雄(二通)、亀川洋作成の各上申書

一  松井音昭、井島信一、森下栄三、坂本陽介、山口浅次郎、山下君夫、川原佐保、石橋博美、浜口町子作成の各回答書

一  押収してある金銭出納帳(製本してあるもの)一冊(昭和五二年押三二号の四)および売買契約書一通(同号の六)(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するので、いずれも所定刑の懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役一年および罰金八〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 桜林三郎)

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