大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

津地方裁判所伊勢支部 事件番号不詳 判決

主文

被告は原告に対し

一、別紙第一目録記載の土地を、その地上にある被告所有の別紙第二目録記載の建物を収去して明渡し

二、昭和参拾弐年拾月拾八日より右土地引渡済まで月額壱万円の割合による金員を支払うこと。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め請求の原因として、原告は昭和一八年三月二九日以降別紙第一目録記載の土地(以下本件土地という)の所有権を保持しているものなるところ、本件土地の上には当時訴外松本小さいが別紙第二目録記載の建物(以下本件建物という)を所有していたので、この建物保持のために同訴外人の娘訴外松本まさの夫訴外松本捷二を賃借人とする賃貸借契約が締結されていたが、昭和三一年中前記まさから原告に対し本件建物売却の申出がありその交渉中、本件建物を借り受けて理髪業を営んでいた被告は本件建物を買取り、本件土地の貸与方を申出でたが原告はこれを拒否したものである。原告においては本件土地の賃借人である前記松本捷二が被告に対し賃借権を譲渡又は転貸することを承認していないのであるから被告は不当に本件土地を使用していることとなる。よつて原告は不法占拠を理由に本件建物の収去及び本件土地の明渡を求め、なお本件土地の賃貸料は月一万円を相当とするから被告が本件建物の所有権移転登記を受けた昭和三二年一〇月一八日より完済まで右同額の割合による損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだ次第であると述べ、被告の抗弁に対し敷地の賃借権と建物所有権とが同時に譲渡せられても法律的には依然として特定承継であつてその行為の一半である賃借権の譲渡は賃借人の承諾がなければその効果を発生しないものであるから被告の抗弁は失当であると反駁した。

証拠(省略)

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として、原告が請求の原因として主張する事実中本件土地が原告の所有であること、本件地上の本件建物を被告が買受けこれに居住し理髪業を営み、本件土地を占有使用していることは認めるがその余の事実は争う。被告は原告の本件土地買受け前である昭和一五年中に前記松本小さいから本件建物を賃借し、右借地権関係は原告の本件土地買受により原告と前記小さいとの間に承継され、更に右小さいが昭和二五年一月に死亡したのでその相続人である前記まさに承継されるに至つたものである。而して前記まさは昭和三一年中被告に対し本件建物の買取方を求めたので被告は居住権確保のために本件建物を買受けたものであり借地権付きの建物賃借人がその建物を買受けた場合は借地法第一〇条の従前何等関係のない第三者の建物買受けによる所謂土地の権利の特定承継の関係と異なり権利の包括承継に該るものであるから原告の本訴請求は失当であると述べた。証拠(省略)

理由

被告が本件建物に居住し、理髪業を営み本件土地を占有使用していることは当事者間に争のないところである。

成立に争のない甲第一号証、同第二号証の一、二、原告本人の供述とこれにより成立を認める甲第三号証に証人松本まさ及び弁論の全趣旨を綜合すると本件土地は元訴外堀江徳兵衛の所有であつたところ、昭和一八年三月二九日付売買証書により同日原告において所有権移転登記を受けたこと、当時本件土地の上には本件建物が存在しており、(本件土地の上に本件建物が存在していることは当事者間に争がない)そのうち別紙第二目録(一)の記載の建物は訴外松本小さいの所有名義であり同(二)記載の建物は訴外松本まさの所有名義であつたが昭和二五年中原告は前記松本まさの夫である訴外松本捷二との間に本件土地上に本件建物の所有を目的とする賃貸借契約を締結したこと、昭和二五年一月五日前記小さい死亡により前記まさにおいて前記(一)の建物の所有権を取得したこと、前記松本まさは昭和三一年二月一日本件建物を被告に売却し(被告が本件建物を前記まさから買受けたことについては当事者間に争がない)昭和三二年一〇月一八日に該所有権移転登記がなされたこと右売却当時前記松本捷二が本件土地の賃借権を被告に無断譲渡したことが夫々認められ、他に右認定を左右するに足る資料がなく被告の包括承継の抗弁については土地を賃借して建物を所有する者より該建物を賃借していた者がその建物を買受けても土地の賃借権も包括承継されるものと解すべきではなく、矢張り土地の賃借権の譲渡又は転貸につき賃貸人の承諾を必要とするものと解するを相当とするから被告の抗弁は採用の限りではない。

そこで以上の事実によれば被告は本件建物買受後何等の権原なく本件土地を占有使用しているものといわねばならないから被告は本件建物を収去の上本件土地の明渡をなすべき義務があり、なお本件土地の一ケ月の賃料が一万円以上であることは証人中村斎吉の証言により明らかである本件においては、被告は本件建物買受以後であり、その所有権取得登記の日である昭和三二年一〇月一八日より本件土地引渡済まで月一万円の割合による損害金を支払う義務があるものといわねばならない。

よつて原告の本訴請求は正当としてこれを認容すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り判決する。

(別紙) 第一目録

伊勢市常磐町四八九番地の一

一、宅地四七坪二合八勺

第二目録

(一)伊勢市常磐町四八九番

家屋番号同所三一八番

一、木造瓦葺二階建店舗

建坪 二四坪九合五勺

二階坪 七坪五合

(二)同所四九〇番の一

家屋番号同所八一八番の一

一、木造瓦葺二階建居宅

建坪 一二坪

二階坪 一二坪

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!