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津地方裁判所伊勢支部 昭和40年(ワ)102号 判決 1967年6月20日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は被告等は連帯して原告に対し金一〇八万円及びこれに対する昭和四一年六月九日より完済まで日歩金八銭の割合による金員を支払うこと、訴訟費用は被告等の連帯負担とするとの判決並に仮執行の宣言を求め請求の原因として、原告は昭和四〇年三月一日被告清栄門に対し金一〇八万円を弁済期昭和四〇年三月二〇日、利息年一割五分、遅延損害金日歩八銭の約にて貸与し、被告たつへは右債務に連帯保証をなしたが、被告等は支払期日を経過しても右債務の弁済をしないので本訴請求に及んだ次第であると述べ、被告の代物弁済の抗弁を争い、被告清栄門から被告たつへ所有の志摩郡阿児町国府字夏川原三、六二八番の三三二原野一反八畝二八歩及び同所同番の三五三原野八反二畝二歩(以下本件物件という)は時価一二〇万円の価値があるから前叙債務の代物弁済に充当して貰い度い旨の申出があつたので、原告は右価額が相当であることを条件として被告清栄門の申出を承諾したところ、取調べの結果本件山林の価額が同被告申出の価額よりも低いことが判明したので原告は右被告宅に赴き前叙代物弁済契約解除の意思表示をしたものである。なお原告は被告清栄門から訴外中村喜代蔵振出の額面金七〇万円の約束手形を受取つたがこれは被告等の前叙債務の支払確保のために受取つたもので、該手形は不渡となつたから七〇万円の一部弁済は受けていない。処で訴外亀本好二の仲介により昭和四〇年七月末頃本件山林を訴外中村喜代蔵に金一三〇万円で売却するに際し、原告もこれに関係して被告清栄門は内一〇〇万円を取得し、訴外亀本が金三〇万円を仲介料として受取ることとして、手付金一〇万円は同被告が受取り、残金は同年八月三一日授受の上所有権移転登記をすることになつたが、原告は同被告に対する前叙貸付金の内金として右被告の受取るべき金一〇〇万円と前記亀本に対する融資金の内入金として同人の受取るべき前叙三〇万円を受領することを条件として前叙一〇八万円の債権の担保として本件物件中原野八反二畝二歩に設定されていた抵当権設定登記を抹消するという約であつたので、同被告の指示に従い昭和四〇年八月二四日志摩郡阿児町鵜方の喜楽亭に赴き同被告、前記中村、亀本等と話合つたところ代金のうち金七〇万円は前記中村振出の約束手形(支払期日昭和四〇年八月二六日支払場所幸福相互銀行伊勢支店)で支払うがその担保として前記中村所有の志摩郡阿児町立神九八八番の一山林一反八畝二一歩に抵当権を設定し(このため権利書、委任状、印鑑証明書を原告に渡し)この物件が該手形額面金額に相当することを被告清栄門が保証し前記被告たつへの物件に対する抵当権登記を抹消すると同時に前記亀本の受取るべき金三〇万円を現金にて原告の同人に対する融資金の内入として原告において受取ることとなりなお金一二万五千円を現金で原告に支払うということになつた。そこで同日原告は前叙原告の抵当権を抹消し、被告清栄門より現金一二万五千円と前叙約束手形一通を受取り同被告の要請により八二万五千円の領収書を同人に交付したが、前叙手形は支払方法として受取つたものであるから同被告の裏書を要求したところ言を左右にしてこれに応じなかつたものであつて右手形は不渡となつたものである。而して原告は前叙手形の担保たる山林を競売した結果二六万七千七百九十二円を取得したので結局原告は被告清栄門より右金額と前叙一二万五千円とを受取つたこととなり、右金額の和は本件貸金に対する昭和四〇年三月二一日から同四一年六月八日までの約定損害金に充当したから被告等に対し金一〇八万円及びこれに対する前記充当の最終日の翌日である昭和四一年六月九日から完済まで日歩八銭の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだ次第であると陳述した。

証拠(省略)

被告等訴訟代理人は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として、原告が請求の原因として主張する事実中被告清栄門は原告主張の日時その主張のような約で金一〇八万円を借受け、被告たつへにおいて右債務の連帯保証をなしたことは認めるが、昭和四〇年五月一一日本件物件を代物弁済したものであり、(本件物件は昭和四〇年八月二四日原告において訴外亀本好二の仲介により訴外中村喜代蔵に代金一三〇万円で売却せられ、内三〇万円は手数料として前記亀本に支払い、残金一〇〇万円のうち一二万五千円は現金で七〇万円は約束手形で支払い、被告清栄門は右現金及び手形を原告に交付した)訴外中村喜代蔵との間に原告主張のような売買が行われその主張の如く現金及び手形の授受がなされたが、これは原告と同訴外人間に行われた売買であり、前叙約束手形の受取人が原告になつている事実から推しても、本件物件は代物弁済により一時原告の所有に帰したものであることが明らかであるから、原告の本訴請求は失当であると陳述した。

証拠(省略)

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