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津家庭裁判所 昭和47年(少)937号 決定 1972年10月23日

少年 J・O(昭三〇・七・二五生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

1、非行事実

少年は、

(1)  昭和四七年三月二七日児童福祉法二七条一項三号の措置により精神薄弱児施設である○○○○園に入園し、同園の指導教育を受けているものであるが、知的能力が低いうえに家出放浪癖、現金窃盗癖があつて、保護者はもちろん、同園の職員の正当な監護に服することなく、入園以来同年九月ころまでの間に数回の無断外出、逃走を繰り返し、このまま放置すればその性格、環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞れがある。

(2)  同年八月一二日午後一〇時ころ奈良県桜井市○○○○○町煙草小売店経営○井○三○方において、同人所有の現金約六、〇〇〇円を窃取したものである。

2、適条

(1)の事実につき 少年法三条一項三号

(2)の事実につき 刑法二三五条

3、処遇

少年は、本籍地の小学校から中学校に進学したが、小学校五年生当時から近隣の家や店などで現金、菓子などを盗み始め、中学校に進学してからは近隣での万引や忍び込み盗に加え、学校の更衣室などで同級生の所持金等を頻繁に盗むようになつた。

そして、少年は、昭和四六年三月中学校を卒業したのち上京して工員として働らくようになつたけれども、就職の日に勤め先から現金を盗んで飛び出し、東京都内を放浪中警察に保護されて本籍地に連れ戻され、その後、奈良県や三重県内で左官見習や鉄工所工員として転々としたがいずれも永続きせず、その間野宿、放浪生活を続けながら、各地で店舗荒らしや侵入盗を繰り返した揚句、昭和四七年三月二七日児童相談所を経て○○○○園(精神薄弱児施設)に収容されるに至つた。

しかしながら、少年は上記○○園に収容された後にも前記の放浪癖、盗癖が矯正されることなく、同園の職員室などから現金等を盗み出しては無断で外出し、名張市内やその近辺を徘徊しては警察に保護されるという生活を繰り返し、その間上記非行事実を犯したものである。

少年の知的能力は一般水準に比してかなり低く(知能検査の結果は、新制田中B1式でIQ・・六〇以下、WISCでIQ・・七〇以下であつて、いずれも精神薄弱域にある。)、五十音の書字や簡単な加減算は可能であるが、知識の幅が狭くて貧弱であり、また、判断力が乏しいために社会生活での適応力は極めて低い。加えてその性格は自己中心的であつて固執性が強く、感情は不安定で外界刺激による起伏が激しく、注意の集中が困難で持続性が乏しい。

かかる資質面での特性に加えて、保護者の保護能力は必らずしも充分ではなく、両親とも健在ではあるけれども、父は少年に対してただいたずらに少年が恐怖感を抱くほど厳しい折かんを加える一方、母は放任的で少年のいうがままになつている。

上記のような少年の年齢、性格、資質、生育歴、生活環境、家庭環境及び本件非行の態様等からすれば、少年を中等少年院で専門的指導の下に矯正教育を施しその更生をはかるのが、少年の健全な育成のため最も妥当であると考えられる。

4、ぐ犯事実と窃盗との関係

なお、ぐ犯事実と窃盗との関係について考えるに、ぐ犯は、一般に、犯罪に対して補充的地位にあり、前者は後者に至る前段階として捕えられることから、一定のぐ犯事実の後にそのぐ犯事実から予測される犯罪行為がなされた場合には、ぐ犯性が現実化して犯罪行為となつたものとして、ぐ犯事実は犯罪行為に吸収され、ぐ犯事実は犯罪行為の情状として考慮されるに過ぎないものと考えられるけれども、本件のように、ぐ犯事実が相当長期間にわたつて継続し、そのぐ犯事実から予測される一個の犯罪行為がなされたのちにも、依然としてぐ犯事実が継続する場合には、そのぐ犯事実は右の犯罪行為に吸収されることなく、これとは別個独立のものとして審判の対象となるものと解すべきものと考える。

従つて、本件においては、上記(1)のぐ犯事実は上記(2)の窃盗とは別個独立の非行事実と考えられるので、これを各別の非行事実として掲記した。

5、結論

よつて、少年法二四条一項三号、少年院法二条三項、少年審判規則三七条一項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 泉山禎治)

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