洲本簡易裁判所 昭和26年(ハ)47号 判決
原告 庄司りか 外二名
被告 井川宏一
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告等三名の連帯負担とする。
二、事 実
原告兼原告等訴訟代理人は、被告は原告等に対し別紙目録<省略>記載の不動産に対する神戸地方法務局仮屋出張所昭和二十六年五月二十八日受附第七〇一号所有権移転登記を抹消せよ。訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、その請求原因として、
原告等先代訴外亡庄司銀太郎は昭和二十年頃その所有する別紙目録記載の土地建物(以下本件不動産と称する)を被告に売渡し、いまだ登記を経ないうちに同二十五年三月二日死亡し原告等三名はその共同相続人となつた。然るに被告は同二十六年五月二十八日に至り本件不動産につき神戸地方法務局仮屋出張所右同日受附第七〇一号所有権移転登記を受けたのであるが、右の登記は既に死亡した前記銀太郎の白紙委任状を利用し、右銀太郎を登記義務者としてなされたものであつて、その手続は明かに違法且つ無効であるから、銀太郎の共同相続人たる原告等三名は被告に対しその抹消登記を求め本訴に及んだ次第であると陳べた。<立証省略>
被告は原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。との判決を求め、答弁として、
原告主張事実はすべて之を認めるが、被告は原告等先代銀太郎から本件不動産を買受けその所有権を取得しているのであるから、登記の手続に違法な点があつたとしても直ちに右の登記が無効となるものではない。故に原告の本訴請求には応じ難いと陳べた。<立証省略>
三、理 由
原告主張事実については本件当事者間に争なく、該事実によれば被告は原告等先代亡庄司銀太郎から本件不動産を買受けたが、その移転登記(原告請求の趣旨記載)は、右銀太郎死亡後被告がその代理人としてなした申請に基き銀太郎を登記義務者としてなされたものであることが認められる。而して代理権が本人の死亡により消滅すること勿論であるから右の登記手続は明かに不適法のものと謂うべきである。しかしながら登記の目的は不動産に関する現在の真実なる権利状態を公示するにあるのであつて、被告が銀太郎から本件不動産の所有権を取得した点につき当事者間に争のない以上、被相続人たる銀太郎を登記名義人として登記を受けると相続人たる原告等を登記名義人として登記を受けると、右の登記の目的を達するにおいて差異はないのであるから、その手続に瑕疵があるからといつて之を以て直ちに本件登記を無効と断ずることは出来ない。故に被告に対し右登記の抹消を求める原告等三名の本訴請求は理由がないから之を棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条第一項但書を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 百村五郎左衛門)