大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。
官報全文検索 KANPO.ORG
月額980円・今日から使える・メール通知機能・弁護士に必須
AD

浦和地方裁判所 平成11年(ワ)1734号 判決 2000年4月28日

原告

鈴木成和

被告

益子貴博

主文

一  被告は、原告に対し、金三九万円及びこれに対する平成一一年一月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを八分し、その七を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金三〇八万六〇六九円及びこれに対する平成一一年一月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  前提となる事実(証拠を掲記した以外の事実は争いがない。)

1  交通事故の発生

被告は、平成一一年一月五日午後四時ころ、埼玉県川口市芝中田二丁目四八番六号先路上において、自己の運転する車両(以下「被告車両」という。)を赤信号で停車中の原告の運転する車両(以下「原告車両」という。)の後部に後方から追突させた(以下「本件事故」という。)。

2  責任原因

被告は、被告車両の運転者として、前方を注視すべき注意義務があるのにこれを怠った過失により、被告車両を原告車両に後方から追突させたのであるから、民法七〇九条により、原告に生じた損害を賠償すべき責任がある(甲一、弁論の全趣旨)。

二  原告の損害(原告の主張)

1  車両修理費用 一一八万六〇六九円

2  代車費用 九六万円(一月五日から二月五日まで三二日間、一日当たり三万円)

3  車両の評価損 四四万円

4  慰藉料 五〇万円

三  被告の主張

1  原告車両は、訴外田中康雄の所有であり、原告には、損害はない。

2  原告車両を修理した会社と被告が依頼している保険会社は、本件事故と相当因果関係にある修理費について協定し、右保険会社が既にその修理費用を右修理会社に支払済みである。

3  代車費用は、その使用期間については、修理に要する相当な期間を基準とすべきであり、かつ、その使用料については、国産車の使用料で足りる。そして、原告は、平成一一年一月二〇日に原告車両を修理会社に入れ、二月五日には修理を終えて納車している。したがって、代車費用は、二週間に限り、クラウン級の代車費用一日当たり一万五〇〇〇円が相当である。なお、原告は、本件事故と関係のない部分(フロントドア左右のパワーウインドウ、CD及びナビゲーション)の修理を要求し、そのため修理の開始が遅れたものである。

4  原告車両は、平成七年登録で、かつ、過去に事故に遭遇しており、新たな評価損は生じていない。

四  主たる争点

1  原告車両の所有者

2  損害の額

第三当裁判所の判断

一  原告車両の所有者

証拠(甲五、六)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成一〇年二月ころ、原告車両のもと所有者である訴外田中康雄から原告車両を買い受けたことが認められる。

二  損害の額

1  修理費用

証拠(甲二の1・2、乙一ないし四、六、八)によれば、本件事故と相当因果関係にたつ修理費用は、一〇五万二四六七円であり、右修理費用については、既に被告が依頼している保険会社から修理会社に全額支払済みであることが認められる。なお、原告が主張するその余の修理費用一三万三六〇二円は、原告車両のフロントドア左右のパワーウインドウ関係の修理費用であり、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるに足りる証拠はない。

2  代車使用料

代車使用料は、交通事故の被害者が、当該事故車両を営業上使用する必要性があり、レンタカー等により代車を使用したときに、修理が可能な場合については、相当なる修理期間に限り、相当な使用料の範囲内で認められるところ、証拠(甲四、乙一ないし三、五、六)によれば、原告は、仕事の関係で原告車両(ベンツ)を使用していたため、平成一一年一月五日から同年二月五日までの間、訴外イデ株式会社からベンツをレンタルし、代車使用料として九六万円(一日三万円)を支払っているものの、原告が右のような高級ベンツを使用する仕事上の必要性が明確ではないこと、及び、原告が本件事故と相当因果関係があるとは認めにくいフロントドアのパワーウインドウその他の修理まで要求したため、本件事故日(平成一一年一月五日)から修理開始日(同年一月二一日)まで期間が経過したことが認められ、右事実によれば、本件の場合、国産の高級車の使用料(一日当たり一万五〇〇〇円)を基準とするのが相当であり、また、修理には、合計一六日間を要しているから、相当なる修理期間を一六日間とみて、代車使用料を二四万円と認めるのが相当である。

3  評価損

事故歴により中古自動車の交換価値が下落するとのわが国の中古市場の実態があることを考慮すれば、原告車両について、本件事故による評価損を認めるべきと解するが、証拠(乙二、三)及び弁論の全趣旨によれば、原告車両は、平成七年四月二五日登録であり、本件事故当時には初年度登録から三年八ヶ月を経過していたこと、原告車両は前にも事故歴があること、本件事故が比較的軽微な追突事故であったことが認められ、そして、本件事故による修理費が前記のとおり一〇五万二四六七円であったことなども考慮すれば、原告車両の本件事故による評価損としては、一五万円と認めるのが相当である。

4  慰藉料

本件においては、原告車両の損害について、原告に精神的損害を認めるべき特別の事情があることを認めるに足りる証拠はないから、原告の慰藉料の請求は理由がない。

三  結語

以上によれば、原告の請求は、三九万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成一一年一月六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 設楽隆一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例