大判例

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浦和地方裁判所 平成4年(行ウ)20号 判決

原告

村上勇

南卓志

矢島義夫

原告ら訴訟代理人弁護士

松尾一郎

難波幸一

山本政道

福地輝久

梶山敏雄

被告

(上尾市長) 荒井松司

右訴訟代理人弁護士

山崎正

右訴訟復代理人弁護士

関口幸男

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点一について

1  地方自治法二四二条の二の定める住民訴訟は、地方財務行政の適正な運営を確保することを目的として、住民に参政権の一種として訴権を付与したものであるから、その対象は財務会計行為に限られるところである。したがって、地方公共団体が株式会社の資本金を出資している場合、右出資による権利も、これを売却、運用する等の財産的な側面においては、その管理が財務会計行為に当り、住民訴訟の対象となり得るということができる。しかし、地方公共団体が特定の行政目的を達成するために株式会社の資本金に出資をし、右行政目的を遂行するために右出資による権利を行使するような場合においては、右権利の行使は非財務的見地からなされるものであるから、それによってたとえ当該株式会社の財産状態に変動を生じ、引いて右権利の財産的価値に影響を及ぼす場合であっても、当該地方公共団体の財務会計行為に当たらないものである。

2  そこで、本件について検討すると、本件会社は、本件建物等及び上尾駅東口再開発事業区域内の公共施設の管理を主たる目的としていわゆる第三セクターとして設立された会社である。即ち、市は右のような管理に関する行政目的を実行するために本件会社に出資したのであるから、市がその所有する株式に基づき議決権を行使することは、一般に右行政目的を遂行するためであるということができる。そして、本件会社は、前記のようにボンベルタが本件建物の賃貸借契約につき解約申入をしたことに伴い、丸広との間で本件仮契約を締結し、本件臨時株主総会において右仮契約の承認の件につき決議を受けることとしたところ、〔証拠略〕によれば、本件会社は、ボンベルタとの間の右賃貸借契約が終了することにより保証金残金約五〇億円を返還しなければならなくなったが、右金額は本件会社にとって容易ならざる額であったため、右解決方法、即ち右返還資金を入手する方法として本件売却物件を売却することとしたことが認められる。そうすると、本件臨時株主総会における本件仮契約の承認の議題の実質的な主旨は、第三セクターである本件会社が経営上存続し得る方策の如何であるということができ、そして、本件会社が経営的に存続し得るかどうかは、市が本件会社に出資した行政目的を遂行できるかどうかに関わることは明らかである。したがって、市が本件臨時株主総会において本件仮契約を承認する旨議決権を行使した行為は、右のような行政目的の遂行に関するものであり、非財務的行為であるから、住民訴訟の対象となり得ないものである。

3  なお、地方公共団体が株券を有する場合、これを有価証券として処分、運用等するときは、右行為は財務会計行為に当たるけれども、議決権の行使は、有価証券としての株券の管理に当たらないことは明白である。

二  争点二について

本件会社は、市が資本金の五〇パーセントを出資して設立されたいわゆる第三セクターの株式会社であるが、あくまで市とは別個の法人である。したがって、たとえ市長が本件会社の代表取締役を兼ねていても、法律上、市の代表者としての地位と本件会社の代表取締役としての地位は全く別個のものであって、両者を同一視することはできないから、被告が本件会社の代表取締役として本件売却物件につき本件売買本契約を締結した行為を市長の行為と認めることはできない。それ故右売買本契約の締結行為は、住民訴訟の対象となし得ないものである。

三  よって、本件訴えはいずれも不適法であるから、これを却下することとする。

(裁判長裁判官 大喜多啓光 裁判官 髙橋祥子 中川正充)

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