浦和地方裁判所 平成5年(行ウ)16号 判決
原告
彌永健一(X1)
同
岡野璃恵子(X2)
同
熊井昌男(X3)
同
渋谷登美子(X4)
同
小林廣子(X5)
同
内川久以子(X6)
同
関博行(X7)
同
緒方義憲(X8)
右原告ら訴訟代理人弁護士
大口昭彦
同
佐竹俊之
同
秀嶋ゆかり
被告
嵐山町長(Y1)
同
関根昭二(Y2)
右被告ら訴訟代理人弁護士
関口幸男
事実及び理由
第三 争点に対する判断
一 被告町長に対する訴えの適法性について地方自治法第二四二条の二に定める住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法第二四二条第一項所定の財務会計上の行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものである。そこで、このような住民訴訟制度の趣旨、目的に鑑みると、住民訴訟の対象となる事項は、同法第二四二条第一項所定の事項であり、財務的処理を直接の目的とする財務会計上の行為又は事実としての性質を有するものに限られ、これ以外の一般行政上の事項に係るものは、住民訴訟の対象とすることはできないと解するのが相当である。
そうすると、本件町道改良工事は、本件町道の拡幅、舗装等を行うことをその内容とするものであるから、道路行政上の管理を目的としたものであって、嵐山町の公金又は財産の財産的価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為には当たらないといわなければならない。
したがって、本訴のうち、被告町長に対し本件町道改良工事及び右工事に嵐山町職員を従事させることの差止を求める訴えは、住民訴訟の対象とすることができない事項を目的とするものであるから、いずれも不適法である。
二 本件公金支出の違法性について
1 本件各協定の違法性の有無について
(一) 〔証拠略〕によれば、左記の事実が認められる。
昭和六三年一二月二一日付の別紙協定目録記載一の基本協定において、嵐山町は本件町道を改良舗装するものとし、用地買収業務、設計業務、道路改良、舗装工事を行い、ただし、測量業務は嵐山町の指示監督に基づきコリンズカントリークラブが行い、コリンズカントリークラブは本件町道改良工事の経費全額、すなわち測量、用地買収、設計業務、道路改良、舗装工事の費用を負担するものとされ、その実施年度は、昭和六三年度から昭和六七年度とされているが、これら年度は完成に努めるべき予定時期にすぎないものであり、右基本協定において、嵐山町がコリンズカントリークラブに対して本件町道の改良工事等を施行すべき義務を負担する旨の約定はない。そして、同日付の同目録記載二の負担協定において、コリンズカントリークラブは、嵐山町に対し、昭和六四年(平成元年)四月二八日までに用地買収業務に係る費用として六三〇〇万円を、昭和六五年(平成二年)四月二七日までに道路改良、仮舗装工事に係る費用として二億二〇五〇万円を納入し、これら費用については精算するものとされた。ついで、平成二年二月五日付の同目録記載三の変更基本協定において、前記基本協定に定められた事務の実施年度を一年繰り下げ、同日付の同目録記載四の変更負担協定において、平成元年度の用地買収費が二〇二〇万七三八八円に、平成二年度の用地買収費が二二〇四万七九一三円に、道路改良、仮舗装工事に係る費用が一億九八四五万円に、平成三年度の道路改良、仮舗装工事に係る費用が二億二〇五〇万円に変更され、コリンズカントリークラブはこれら金額を嵐山町の指定する期日までに納入するが、これら費用は年度ごとに精算するものとされた。
さらに平成三年三月八日付の同目録記載五の変更基本協定において、前記基本協定に定められた事務の実施年度が繰り下げられ、同日付の同目録記載六の変更負担協定において、用地買収費は平成元年度が二〇二〇万七三八八円に、平成二年度が九七五万九四三〇円に、平成三年度が一二六七万四五五〇円に変更され、コリンズカントリークラブはこれら金額を年度ごとに嵐山町の指定する期日までに納入するが、各年度ごとに当該年度の末日までに精算するものとされ、道路改良、仮舗装工事に係る費用は平成三年度中に五億〇一九〇万円をコリンズカントリークラブが嵐山町の指定する期日までに納入し、当該工事の完成検査後精算するものとされた。なお、平成三年三月八日に、嵐山町とコリンズカントリークラブは、嵐山町が、コリンズカントリークラブから受領した平成二年度の道路改良、仮舗装工事に係る費用一億九八四五万円、及び平成二年度の用地買収業務費用二二〇四万七九三一円から右同日に締結された右変更負担協定による平成二年度分の九七五万九四三〇円を控除した残額をそれぞれ速やかに返還することに合意し、嵐山町はその頃コリンズカントリークラブに右各金額を返還したが、前者は、道路改良等の工事が繰り下げられ、平成二年度に施行されなくなったことに基づく精算であり、後者は、平成二年度の用地買収費が九七五万九四三〇円に変更されたことによる精算である。
(二) 右認定の事実によれば、本件各協定は、嵐山町が本件町道の改良舗装を行なうに際し、コリンズカントリークラブが右改良舗装業務のうち測量業務を行ない、かつ右改良舗装の費用全額を負担すること、及び右費用について余剰が出た場合においては、嵐山町はコリンズカントリークラブに対し、これを精算することを定めたものであり、それ以上に嵐山町がコリンズカントリークラブに対し右改良舗装業務を行なう債務を負担することまで定めたものでないことが明らかである。したがって、本件各協定は負担付贈与を定めたものではなく、町議会の議決を経る必要はないから、本件各協定が負担付贈与を定めたものでありこれにつき町議会の議決を経ていないことを理由として、同協定が無効であり、それ故本件町道改良工事が違法である旨の原告らの主張は、理由がない。
2 原告らは、本件町道改良工事が嵐山町住民の福祉に甚だしく反するから地方自治法第二条第一三項に違反し、それ故このような改良工事の実施を嵐山町に義務づけた本件各協定も同項に違反し、同法第二条第一五項及び第一六項によって無効であると主張するけれども、右1のとおり、およそ嵐山町は本件各協定によって本件町道改良工事を施行する義務を負担したものではなく、また本件町道が本件ゴルフ場の建設に従事する者らに使用されあるいはゴルフ場の完成後にその利用者等に使用されるというだけでは、嵐山町が本件町道自体についての管理責任以上に、同町とは別個の私的な会社であるコリンズカントリークラブが行う本件ゴルフ場建設工事あるいはその維持管理につき責任を負うべき理由とならないことは明らかである。したがって、本件ゴルフ場の建設及びその管理等に基づく影響を理由として本件各協定が地方自治法に違反し無効であるとする原告らの右主張は、その余の点を判断するまでもなく理由がない。
三 よって、原告らの被告嵐山町長に対する訴えは、いずれも不適法であるから、これらを却下することとし、原告らの被告関根に対する請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないから、いずれも失当として棄却することとする。
(裁判長裁判官 大喜多啓光 裁判官 高橋祥子 岡口基一)
別紙 協定目録
一 「町道一―一二号線道路解両事業に関する基本協定」(昭和六三年一二月二一日付)
二 「負担協定」(右同日付)
三 「町道一―一二号線道路改良事業に関する変更基本協定」(平成二年二月五日付)
四 「変更負担協定」(右同日付)
五 「町道一―一二号線道路解両事業に関する変更基本協定」(平成三年三月八日付)」
六 「変更負担協定」(右同日付)