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浦和地方裁判所 平成8年(わ)698号 判決

被告人

本店所在地

石川県松任市上柏野九三番地一

法人の名称

株式会社吉谷商事

代表者の住所

埼玉県大宮市プラザ一四番六号

代表者の氏名

吉谷教典

本籍 埼玉県大宮市プラザ一四番

住居

同市プラザ一四番六号

職業

会社役員

氏名

吉谷教典

生年月日

昭和一九年一〇月一三日生

罪名

法人税法違反

裁判所

浦和地方裁判所第三刑事部

裁判官

小池洋吉

出席検察官

木目田裕、武藤京子

宣告の日

平成八年一〇月二八日

一 判決主文

被告人会社株式会社吉谷商事を罰金二五〇〇万円に、被告人吉谷教典を懲役二年に処する。

被告人吉谷教典に対し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

一 罪となるべき事実の要旨

被告人株式会社吉谷商事は、石川県松任市上柏野九三番地一に本店を置き、熱絶縁工事用資材の加工・販売及び熱絶縁工事の施工等を営む資本金三、〇〇〇万円の株式会社、被告人吉谷教典は、同社の代表取締役として同社の東京営業所の業務全般を統括していたものであるが、被告人吉谷教典は、同社の業務に関し、法人税を免れようと企て、仕入を架空・水増計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一 平成三年四月一日から同四年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四、五八五万一、三八六円であったのにかかわらず、同年六月一日、石川県松任市博労町一一七番地所在の所轄松任税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億六九一万六、七八二円でこれに対する法人税額が三、八七五万四、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五、三三五万五、〇〇〇円と右申告税額との差額一、四六〇万六〇〇円を免れ

第二 平成四年四月一日から同五年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億二、六〇二万九、九〇七円であったのにかかわらず、同年五月三一日、前記松任税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億四、二〇五万二一五円でこれに対する法人税額が五、一九〇万三、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額八、三三九万五、七〇〇円と右申告税額との差額三、一四九万二、一〇〇円を免れ

第三 平成五年四月一日から同六年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億五、〇五〇万九、三二五円であったのにかかわらず、同年五月三一日、前記松任税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二億二、二八五万八、五六五円でこれに対する法人税額が八、二〇二万五、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二、九八九万五、〇〇〇円と右申告税額との差額四、七八六万九、一〇〇円を免れ

たものである。

一 適用した罰条

一 被告人会社株式会社吉谷商事

法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項、平成七年法律第九一号附則二条一項本文による改正前の刑法四五条前段、四八条二項

二 被告人吉谷教典

法人税法一五九条一項、平成七年法律第九一号附則二条一項本文による改正前の刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、二五条一項

一 量刑の事情

本件は、被告人吉谷教典(以下被告人吉谷という)が、その経営する株式会社吉谷商事(以下被告会社という)の法人税の確定申告に際し、平成四年三月期から同六年三月期までの三事業年度にわたり内容虚偽の申告書を提出してその法人税を免れたという法人税法違反の事案であるところ、本件のほ脱税額は合計九三九六万円余りという巨額であり、そのほ脱率も三五・二三パーセントという高い割合であるから、それ自体まことに悪質というほかはない。

被告会社は、平成元年ころに、それまでの断熱資材の仕入販売から、断熱工事の施工にまで業務を拡大し、折からのいわゆるバブル景気最盛期の好況に浴して、売上げが急伸したことから、被告人吉谷において、業績の良いときに来るべき不況に備え、裏金を蓄えておきたいと考えて、本件多額の脱税を行ったというものであるが、つまるところ納税の義務を免れて利を図ろうとしたと言えるその自己中心的な動機に同情の余地はない。

本件の犯行態様を見ても、自ら架空会社を用意して架空仕入れを計上する、あるいは、複数の下請業者に脱税手数料を支払ってまで依頼して架空工事を発注するなどし、架空工事代金支払いのための支払手形につき、架空名義あるいは借用した名義で取立口座を分散して設け、仮名借名の定期預金を設定し、割引債券を購入するなど、その手口は積極的かつ計画的にして周到であり、巧妙でもあるからまことに悪質と言える。

また、被告会社が、古いことではあるが、昭和四七年に脱税のため一度は青色申告の承認を取り消され、その後再び同承認を得た経歴をもつにも拘わらず、今回再び本件に及んでいること、平成六年に架空工事発注先の一つであった衣川ダクトが税務調査の対象となり、その反面調査で被告会社の脱税の一端が明らかとなったのに、衣川ダクト関係の架空仕入れを是正したのみで、その後も脱税状態を継続したこと、本件発覚後も修正額を少なくするべく当初裏金分を経費と主張して虚偽を述べていたものであること等に照らせば、被告人吉谷、被告会社には健全かつ適正な納税意識の欠如と規範意識の鈍麻とが窺えると言えるから、本件の犯情はまことに悪質と言う他はない。

かかる犯行が横行するときは、国家財政を危殆に瀕せしめるおそれがあると共に、国民の納税意欲を減退せしめ、ひいてその規範意識を揺るがして国家の存立をも脅かしかねない恐れがあるから、被告人吉谷及び被告会社の刑事責任には重いものがあると言うべきである。

しかしながら、他方、被告人吉谷は、本件事実を認めて一応の反省の情を示していること、被告人吉谷が脱税によって得た金を遊興や奢侈品購入等に費消した形跡は窺われず、かえって本件動機には、経営の苦しい下請業者を援助したいという利他的動機も含まれていたことが窺われること、被告会社は、本件が新聞等で報道され、そのため大口取引先を失う等の痛手も蒙ったほか、その後、本件につき修正申告を行って、本税分はもとより延滞税・重加算税等も合わせ、合計二億四二〇〇万円余りの納付を余儀なくされて、いわゆるバブル崩壊後の不況下で、既に相応の社会的制裁を受けたとも言えること、被告人吉谷の服役はその従業員及びその家族らの生活に甚大な影響を及ぼすであろうこと、被告人吉谷には前科前歴は全くないことなど、被告人吉谷及び被告会社それぞれに有利ないし酌むべき事情も認められるので、以上一切の情状を総合考慮のうえ、被告人吉谷及び被告会社に対し主文掲記の刑を量定したうえ、被告人吉谷に対しては、社会内における更生の最後の機会を与えるを相当と思料し、今回に限り、その刑の執行を猶予することとした次第である。

(裁判官 小池洋吉)

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