浦和地方裁判所 平成9年(わ)999号 1998年2月06日
被告人
本籍
東京都江東区大島一丁目三五三番地
住居
埼玉県八潮市八潮六丁目一八番地六
職業
会社役員
氏名
矢崎良二
年齢
昭和一一年八月六日生
検察官
齋藤諭
弁護人
小林英明(主任)
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金二二〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人は、埼玉県八潮市八潮六丁目一八番地六において土木事業をしていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、架空外注費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 平成四年分の実際所得金額が一億一三八九万七四三二円であったにもかかわらず、平成五年三月一五日、埼玉県越谷市赤山町五丁目七番四七号所在の所轄越谷税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が九八九万三一九〇円でこれに対する所得税額が一五二万一三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額五二三一万二五〇〇円と右申告税額との差額五〇七九万一二〇〇円を免れ、
第二 平成五年分の実際総所得金額が六〇五七万〇四四二円であったにもかかわらず、平成六年三月一五日、前記越谷税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が九六二万二一八一円でこれに対する所得税額が一二一万八三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二五二八万円と右申告税額との差額二四〇六万一七〇〇円を免れ、
第三 平成六年分の実際総所得金額が八八七八万八五八〇円であったにもかかわらず、平成七年三月一五日、前記越谷税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が一五七五万一七四七円でこれに対する所得税額が二七九万五二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額三七三六万一〇〇〇円と右申告税額との差額三四五六万五八〇〇円を免れたものである。
(証拠)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通
一 収税官吏(大蔵事務官)作成の売上金額調査書、租税公課調査書、接待交際費調査書、損害保険料調査書、消耗品費調査書、減価償却費調査書、福利厚生費調査書、利子割引料調査書、地代家賃調査書、賃借料調査書、固定資産売却損調査書、外注費調査書、燃料費調査書、支払手数料調査書、雑費調査書、近隣対策費調査書、青色申告特別控除調査書、総合短期譲渡収入調査書、総合短期譲渡経費調査書及び分離長期譲渡所得調査書
一 本木静江の検察官に対する供述調書
一 大国洋子の検察官に対する供述調書
一 検察事務官作成の電話録取書
(適条)
罰条 各所得税法二三八条一項、二項(罰金の寡額は、平成七年法律第九一号による改正前の刑法一五条本文による。)
刑種の選択 懲役刑と罰金刑の併科
併合罪の処理 前記刑法四五条前段
懲役刑につき
前記刑法四七条本文、一〇条
(犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき
前記刑法四八条二項
労役場留置 前記刑法一八条
懲役刑の執行猶予 前記刑法二五条一項
(情状)
被告人は、三年分の所得税合計一億〇九四一万八七〇〇円を免れ、それぞれの年のほ脱税率は、九七・〇パーセント、九六・三パーセント、九二・五パーセントである。被告人の行為は、源泉徴収を受けているサラリーマンに不公平感を強く抱かせ、その他誠実に税の申告をしている人々の納税意欲を失わせかねない悪質な犯行である。被告人の責任は重いといわざるを得ない。
他方、被告人は、起訴された三年度分について、修正申告を行い、同年度分の所得税本税一億〇九六五万三二〇〇円、消費税本税八七〇万二六〇〇円を支払い、重加算税や延滞税についても一部支払いをしており、残りの税金については、なるべく短期間で支払うべく鋭意努力中であること、被告人は、本件脱税について、深く反省していることなど、被告人のために酌むべき事情もある。
そこで、以上の諸情状を考慮し、主文のとおり、刑を定めた。
(求刑 懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円)
(裁判官 肥留間健一)