大判例

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浦和地方裁判所 昭和25年(行)13号 判決

原告 合資会社太陽チエーン製作所

被告 浦和税務署長

一、主  文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告が訴外東京部品工業株式会社に対する昭和二十五年度法人税、取引高税、源泉徴收所得税等合計金壱千六百拾六万七千九百参拾四円の滯納処分として昭和二十五年八月十一日別紙目録記載の物件に対しなした差押はこれを取り消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として、原告会社は昭和二十五年六月五日主として自轉車用のチエーンの製造販賣を営んでいた前記訴外会社(本店埼玉縣北足立郡大和町大字白子千二百六番地、資本金四拾万円)より別紙目録記載の物件およびその外に工場建物等営業全部を代金弍百九拾五万八千六百四拾円で讓り受け、右代金の支拂は同年十月末日を第一回とし、爾後同二十六年、同二十七年の各四月、十月の各末日に金五拾万円宛、同二十八年四月未日に金四拾五万八千六百四拾円を分割して支拂うこと、讓受物件中不動産の所有権移轉登記手続は代金完済のときこれを爲すことと定め、動産はすべてその当時原告に引渡されたものである。從つて別紙目録記載の物件は原告会社の所有に属する物であるに拘らず被告は右訴外会社に対する昭和二十五年度法人税金九百四拾九万弍千六百弍円、取引高税金拾五万七千百円、源泉徴收所得税金六百五拾壱万四千弍百参拾弍円合計金千六百拾六万七千九百参拾四円の滯納処分として、昭和二十五年八月十一日同物件に対し差押を爲したのは違法であるから、差押の取消を求めるため本訴に及ぶと述べ、被告指定代理人の本案前の抗弁に対し、原告会社は納税義務者でないから国税徴收法にいわゆる審査請求及び行政事件訴訟特例法所定の訴願手続をしなかつたと陳述した。

被告指定代理人は本件訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、本案前の抗弁として、原告は、被告が訴外東京部品工業株式会社の滯納処分として爲した差押の取消を求めているが、国税徴收法第三十一條ノ二による再調査の請求も同法第三十一條の三による審査の請求も経ていないのであるから本訴は不適法として却下さるべきであると述べ、本案について、原告の請求を棄却するとの判決を求め、その答弁として、原告主張の事実中右訴外会社に対する合計金千六百拾六万参千九百参拾四円の国税滯納処分として昭和二十五年八月十一日別紙目録記載の物件を差押えたことは認めるが、同物件が原告において、これより先に右訴外会社よりその工場建物等の営業財産と共に讓受けたものであつて原告の所有に属するという点は爭うと述べた。

三、理  由

先ず本訴の訴訟要件の適否につき考えるに、原告の請求は要するに原告が他人の国税滯納のため自己の財産を不法に差押処分されたとして右差押処分の取消を求めるにあつて目的は納税義務の存否を爭うのではないにしても、国家課税権たる公権力の行使に対する不服の訴であるという点においては一般納税義務者から提訴するそれとの間に何等訴の本質上差異はないから、本訴は行政事件訴訟特例法第二條の行政廳の違法な処分の取消又は変更を求める訴と見なければならない。而して国税徴收法第三十一條ノ二、同條ノ三に徴すれば国税賦課徴收に関する処分又は滯納処分に関し異議のある者は再調査の請求をなし、再調査の決定に異議あるときは更に審査の請求をなす等不服申立の途が拓かれており、しかも差押という滯納処分には当然常に差押の対象となるべき滯納者の財産の認定という行爲がその前提として含まれているのであるから右法條にいわゆる「処分ニ関シ異議アル者」とは單に納税義務者であると否とを問わず廣く当該処分に関し異議のある者すべてを含むものと解するのが相当であつて納税義務者以外の第三者をことさら右の者から除外しなければならない理由は見出されない。從つて本件原告も亦右の「処分ニ関シ異議アル者」として同法第三十一條ノ四第一項の適用上前示手続を履践した後提訴すべきであるのに原告は自ら納税義務者ではないという理由からその必要なきものとして右手続を経なかつたものであり、その他記録に徴しても本件においては同法第三十一條ノ四第一項但書所定の如き前審手続を必要としない特別の事情は窺われないから本訴請求は本案の判断をなすまでもなく不適法な訴としてこれを却下しなければならない。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 大中俊夫 立岡安正 牧野進)

(別紙目録省略)

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