大判例

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浦和地方裁判所 昭和34年(ワ)225号 判決

被告は結局において、債権仮差押命令の被保全権利と確定判決によつて認容された請求権とが異なることを理由に、本件仮差押命令の執行は本件確定判決の執行保全としての効力を有しない、と争うので、この点について判断する。

すなわち被告は、本件債権仮差押命令は約束手形金債権を被保全権利として発布されたものであり、そして原告はその本案として約束手形金請求訴訟を提起したが、右訴訟の進行中それと同一の事実関係を基礎とする売掛代金の請求に訴を変更し、右変更した訴について勝訴の確定判決を得て、右確定判決によつて本件差押及び転付命令を得たのであるから、約束手形金債権を被保全権利とする債権仮差押の執行は売掛代金債権の確定判決に基く執行を保全する効力がないと主張する。

しかしながら、仮差押及び仮処分を含む保全処分の制度は、ある事実関係をめぐる紛争を解決するための暫定処分であるから、訴訟法上被保全権利の特定を要求されてはいるものの、保全の対象となるものは、寧ろ権利のよつて生ずる事実関係をめぐる紛争の解決にあると考えられる。であるとすれば、保全処分における被保全権利が本案である債務名義に表示された権利と相違することがあつても、それが同一の事実関係に基くものである以上、保全処分の執行は右債務名義による執行を保全するための効力を有するものと解するのが相当である。従つて、本件の場合、債権仮差押命令の被保全権利とされる約束手形金債権と確定判決に表示される売掛代金債権とが同一の事実関係から生ずるものであることは当事者間に争いがないから、本件債権仮差押命令の執行は本件確定判決による執行の保全としての効力を有するものである。なおこの点に関して被告は売掛代金請求訴訟の確定判決によつて債権仮差押命令の被保全権利である約束手形金債権は消滅に帰したから、債権仮差押命令の執行は形式上は存在するが既に効力を失つたものであると主張するが、売掛代金請求訴訟の判決が確定したからといつてこれと同一の事実関係を基礎とする約束手形金債権が消滅するとはいえないから、このことを前提とする被告の主張は採用することができない。

次に、債権仮差押命令の執行後の第三債務者の債務者に対する弁済の効力については、第三債務者が債権仮差押命令の送達を受けた後に仮差押債権を債務者に弁済しても、第三債務者は仮差押債権者に対して右弁済の効果を主張することができないものと解するのが相当である。本件についてこれを見るのに、第三債務者である被告が債務者である訴外会社に対する請負代金債務を弁済したこと、及び右の弁済が原告において本件債権仮差押の執行をした後であることは何れも当事者間に争いがないから、被告は右の弁済をしたことを債権者である原告に主張することができないものといわなければならない。

以上のとおりであるから、被告は原告に対して転付債権金四十六万七千三百六十円及びこれに対する完済までの遅延損害金を支払う義務があり、これが支払を求める原告の本訴請求は正当である。

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