浦和地方裁判所 昭和48年(わ)190号 判決 1974年12月19日
本店所在地
埼玉県大里郡岡部町大字西田八九番地二
商号
六弥太観光株式会社
代表者氏名
代表取締役 小内岩一
本籍
埼玉県大里郡岡部町大字西田八九番地二
住居
右同所
会社役員
小内岩一
昭和七年一月二七日生
右両名に対する法人税法違反、小内岩一に対する賭博開帳図利幇助、賭博、常習賭博、覚せい剤取締法違反各被告事件につき当裁判所は検察官高橋武三出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人六弥太観光株式会社を罰金一、〇〇〇万円に、被告人小内岩一を懲役二年六月および罰金一〇万円に処する。
被告人小内岩一において右罰金を完納することができないときは金一、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
被告人小内岩一から押収してある覚せい剤二袋(昭和四八年押第一六二号の一、二)を没収する。
訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
第一 被告人六弥太観光株式会社は、埼玉県大里郡岡部町西田八九番地二に本店を置き、スチームバス業(いわゆるトルコ風呂業)を営むもの、被告人小内岩一は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、同被告人は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
一、昭和四四年三月一日から同四五年二月二八日までの事業年度において、所得金額が二二、〇六二、六九九円で、これに対する法人税額が七、五一一、七〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上入浴料金収入等事業収入の一部を除外する等の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四五年四月三〇日、熊谷市仲町四一番地所在熊谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三九一、六八七円でこれに対する法人税額は一〇九、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税七、四〇二、三〇〇円を免れ
二、昭和四五年三月一日から同四六年二月二八日までの事業年度において、所得金額が三五、一八八、〇七八円で、これに対する法人税額が一二、四七八、三〇〇円であるのにかかわらず、前同様の方法で所得を秘匿したうえ、昭和四六年五月一〇日、前記熊谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五、三二八、九〇九円でこれに対する法人税額は一、五二七、七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税一〇、九五〇、六〇〇円を免れ
三、昭和四六年三月一日から同四七年二月二九日までの事業年度において、所得金額が五四、二八四、四四六円で、これに対する法人税額が一九、六八六、八〇〇円であるのにかかわらず、前同様の方法で所得を秘匿したうえ、昭和四七年五月一日、前記熊谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六、六七一、七二〇円でこれに対する法人税額は二、一八九、〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税一七、四九七、八〇〇円を免れ
第二被告人小内岩一は
一、秋葉勇が昭和四七年一二月六日ごろの午后一一時ごろから翌日午前七時ごろまでの間埼玉県大里郡岡部町大字岡一、五四一番地の同人方(当時)で、賭博場を開張し、吉野豊喜外数名に花札を使用し、俗に「バッタ撤き」と称する賭博をさせ右吉野等から寺銭名下に金員を徴して利を図った際、秋葉勇において賭客に貸す金員で、いわゆる回銭に使用することを知りながら、右同日同町大字西田八九番地の被告人方において、右秋葉に現金三〇万円を貸与し、もって同人の前記犯行を容易ならしめて幇助し
二、(一) 同年一〇月中旬ごろの午後一一時ごろから翌日午前五時ごろまでの間、行田市向町九番四一号木村光男方で吉野豊喜外数名と共に、花札を使用し、俗に「バッタ撤き」と称する賭博をし
(二) 前記一記載の日時、場所において、吉野豊喜外数名と共に花札を使用し、俗に「バッタ撤き」と称する賭博をし
三、法定の除外事由がないのに、昭和四八年四月一〇日埼玉県大里郡岡部町大字西田八九番地の二の被告人方において、覚せい剤であるビニール袋入りの塩酸フエニルメチルアミノブロパンを含有する粉末二袋(計約一一・〇四グラム)を所持し
四、鈴木冨士雄が昭和四八年四年九日ころの午後九時三〇分ころから翌日午前五時ころまでの間、埼玉県大里郡岡部町大字岡一、五四一番地飯島孝志方において、賭博場を開張し、鈴木実外数名に、花札を使用し、俗に「コイコイの後先」および「バッタ撤き」と称する賭博をさせ、勝者から寺銭名下に金員を徴して利を図った際、その情を知りながら被告人の所有で、当時飯島孝志を居住させていた前記飯島方家屋を同人から借り受けて賭博場として提供したうえ前記鈴木冨士雄の意をうけて自己の舎弟分の山田昭男に依頼して、いわゆる出方役をさせる等し、もって右鈴木冨士雄の犯行を容易ならしめて幇助し
五、賭博罪により(1)昭和四七年五月一二日本庄簡易裁判所において罰金五〇、〇〇〇円に、(2)同年七月一八日同裁判所において罰金二〇、〇〇〇円に、(3)同年一一月六日大宮簡易裁判所において罰金三〇、〇〇〇円に、(4)同年一二月一八日東京簡易裁判所において罰金八〇、〇〇〇円にそれぞれ処せられたものであるがさらに常習として
(一) 昭和四八年一月六日ころの午後九時ころから翌日午前六時ころまでの間深谷市大字西島六五二番地鈴木冨士雄方で、清水邦彦外一〇数名と共に花札を使用し俗に「コイコイの後先」と称する賭博をし
(二) 前記四記載の日時場所において、鈴木実ほか数名と共に花札を使用し、俗に「コイコイの後先」および「バッタ撤き」と称する賭博をした
ものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実につき
一、被告人の当公判廷における供述
判示第一の一ないし三の事実につき
一、被告人小内の検察官に対する昭和四八年二月九日付、同月一九日付各供述調書
一、被告人小内の大蔵事務官に対する質問てん末書九通
一、被告人小内作成の答申書八通
一、大沢三金吾、上原利雄、望月孝夫、猪越一治、村松立子、小内保子の検察官に対する各供述調書
一、白井博、萩原秀子、塚越一臣、大沢三金吾、立石三一、小内高治、小内ナヲ、望月孝夫、塚原冨貴、大沢礼子、牧野キク(二通)、梶山恵夫、猪越一治、望月キミ子、田部井功、寺島日出男、渡辺晴夫(四通)、村松立子(四通)、小内保子(五通)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、田中生二、阿部六男、横村好信、村岡征蔵、戸塚好昭、森下提治、中村英男(二通)、吉川小三郎、町田義正、大塚武、折原康生、韮塚英雄(二通)、鎌塚利夫(二通)、上原利雄、小谷野一郎、望月孝夫、加藤高春、安部伊勢六、岡崎良夫、木村光男、神島宏一、須賀信夫、鈴木冨士雄、清水邦彦、星青明、阪本市五郎、朝比和助、中野順二、田村茂、斎藤昭平、小杉博一、河野定一、岩楯静夫、堀井美興、小内保子作成の各答申書
一、上原利雄作成の上申書
一、大蔵事務官作成の
1 昭和四七年九月一三日付証明書四通(法人税申告書写等添付のもの三通、法人税更正決議書写添付のもの一通)
2 同月八日付証明書一通
3 脱税額計算書三通
4 修正貸借対照表三通
5 簿外預金受取利息明細表一通
6 預金確認書三通
7 査察更正決議書二通
8 個人収支調査書類一通
9 昭和四七年五月一一日付確認書二通
10 収支金額調表一通
一、大生相互銀行深谷支店長鈴木貞雄作成の昭和四七年五月一九日付証明書、同年一一月九日付取引証明書
一、大光相互銀行川口支店長遠藤和吉作成の証明書(四通)
一、常盤相互銀行東十条支店羽成暁作成の証明書
一、東京銀行協会手形信用部長中村治作成の証明書
一、熊谷県税事務所長山本博作成の証明書
一、埼玉銀行岡部支店長江原清作成の証明書
一、深谷市長木村一郎作成の証明書
一、大里郡岡部町長武政釜夫作成の昭和四七年九月一三日付証明書
一、被告人小内作成の提出書
一、押収してある金銭出納帳七綴(昭和四八年押第一三〇号の一の一、二、同号の四、五、一二、一六、二三)領収書三枚(同号の二、同号の六の二、三)売上伝票メモ一綴(同号の三)土地売買契約証書一枚(同号の六の一)、税金領収書等三一枚綴一袋(同号の七)、御祝受ノート一冊(同号の八)売上メモ二綴(同号の九、一四)、メモ一綴(同号の一〇)、塚原冨貴関係書類一綴(同号の一一)、実数延長グラフ一枚(同号の一三)、普通預金入金票控一枚(同号の一五)、小手帳三冊(同号の一七)、第一期元帳一綴(同号の一八)、第二期元帳一綴(同号の一九)、第三期元帳二綴(同号の二〇、二一)、第四期元帳一綴(同号の二二)、所得税源泉徴収簿一綴(同号の二四)、決算関係書類一綴(同号の二五)、税金関係書類一綴(同号の二六)、諸綴一綴(同号の二七)、顧客フアイル一綴(同号の二八)、預り定期預金管理カード二枚(同号の二九)、仮名定期管理カード一七枚(同号の三〇)、無記名定期管理カード四枚(同号の三一)、月別集計表八枚(同号の三二)、売掛金原票綴八綴(同号の三三、三四、三五、三六の各一、二)、領収書控綴二綴(同号の三七の一、二)、土地売買契約書一枚(同号の三八の一)、覚書一枚(同号の三八の二)
判示第二の各事実につき
一、第八九一号事件第一回公判調書中被告人小内の供述部分
判示第二の一、同第二の二の(二)の各事実につき
一、被告人小内の検察官に対する昭和四八年四月一九日付(六枚綴のもの)、同月二五日付(五枚綴のもの)および司法警察員に対する同月一三日付、同月二五日付各供述調書
一、吉野豊喜、阪本市五郎、秋葉勇の検察官に対する各供述調書謄本
一、阪本市五郎(昭和四八年四月一〇日付)、木村光男(同月二三日付)、秋葉勇の司法警察員に対する各供述調書謄本
一、司法警察員作成の賭博開張場所の確認についてと題する報告書
判示第二の二の(一)の事実につき
一、被告人小内の司法警察員に対する昭和四八年四月一八日付供述調書
一、阪本市五郎(前掲)、木村光男の検察官に対する供述調書謄本
一、木村光男(昭和四八年四月九日付)、吉野豊喜(同年三月三日付)、阪本市五郎(同月二七日付)の司法警察員に対する各供述調書謄本
一、小杉博一の司法巡査に対する供述調書謄本
判示第二の三の事実につき
一、被告人小内の検察官に対する昭和四八年四月二五日付(四枚綴のもの)および司法警察員に対する同月二〇日付各供述調書
一、司法警察員作成の覚せい剤と思料される粉末の発見についてと題する報告書
一、司法警察員作成の鑑定嘱託書写
一、埼玉県警察本部刑事部鑑識課長作成の鑑定結果についてと題する送付書および同鑑識課技術吏員作成の鑑定書
一、押収してある覚せい剤二袋(昭和四八年押第一六二号の一、二)
判示第二の四、同第二の五の(二)の各事実につき
一、被告人小内の検察官に対する昭和四八年五月一四日付および司法警察員に対する同月一〇日付各供述調書
一、中野順二、山田昭男の検察官に対する供述調書謄本
一、鈴木実、新井邦幸(二通)、佐藤政男、清水邦彦(昭和四八年五月一一日付、九枚綴図面一葉添付のもの)、宮寿三郎、渡辺雅仁、白子隆三郎(三通)、山田昭男(二通)の司法警察員に対する各供述調書謄本
一、司法警察員作成の博徒稲川会八木田一家の幹部及び組員らによる賭博開張図利事件についてと題する報告書
判示第二の五の(一)の事実につき
一、被告人小内の司法警察員に対する昭和四八年五月九日付(一五枚綴、図面一葉添付のもの)供述調書
一、松本次夫、杉本春夫、酒井一三、松本福次、清水邦彦(昭和四八年四月二八日付)、阪本市五郎(同年五月三日付)の司法警察員に対する各供述調書謄本
判示第二の五の(一)、(二)の各事実につき
一、検察事務官作成の前科照会に対する昭和四八年五月二日付回答書
(法令の適用)
被告人六弥太観光株式会社の判示第一の一ないし三の各所為はいずれも法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するが以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人六弥太観光株式会社を罰金一、〇〇〇万円に処し、被告人小内岩一の判示第一の一ないし三の各所為はいずれも法人税法一五九条一項に、同第二の一、四の各所為はいずれも刑法一八六条二項、六二条一項に、同第二の二の(一)、(二)の各所為はいずれも同法一八五条、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第二の三の所為は昭和四八年法律第一一四号附則第七号により同法による改正前の覚せい剤取締法(以下単に改正前の覚せい剤取締法という。)一四条一項、四一条一項二号に、同第二の五の(一)、(二)の各所為は包括して刑法一八六条一項に各該当するところ、被告人小内岩一の判示第一の一ないし三の各罪につき懲役刑を、判示第二の二の(一)、(二)の各罪につき罰金刑を各選択し、判示第二の三の罪につき改正前の覚せい剤取締法四一条二項により懲役刑と罰金刑を併科することとし、被告人小内岩一の判示第二の一、四の各罪は従犯であるから刑法六三条、六八条三号によりそれぞれ法律上の減軽をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条、一〇条により最も重い判示第二の三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人小内岩一を懲役二年六月および罰金一〇万円に処し、同被告人において右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金一、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、改正前の覚せい剤取締法四一条の五により押収してある覚せい剤二袋(昭和四八年押第一六二号の一、二)を被告人小内から没収することとし、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人両名の連帯負担とする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 中野保昭)