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浦和地方裁判所 昭和49年(行ウ)2号 判決 1981年10月28日

原告

金子幸男

外四名

原告ら訴訟代理人

福田徹

外三名

被告

朝霞市長

渡辺源蔵

外一三名

被告ら訴訟代理人

名尾良孝

外五名

主文

一  被告渡辺源蔵、同渡辺えん、同渡辺太郎、同渡辺亀蔵、同渡辺徳蔵、同榎本二雄、同富岡さく、同富岡武三郎、同富岡奥太郎、同富岡穣、同本橋昌旺、同田口洋子及び同塩味三郎は、それぞれ朝霞市に対して、別表(9)の該当欄記載の各金銭及びこれに対する別表(10)の該当欄記載の日から完済までの年五分の金銭の支払をせよ。

二  被告渡辺源蔵は、朝霞市に対して、金一九六四万五六〇〇円の支払をせよ。

三  原告らの被告朝霞市長に対する訴を却下し、被告渡辺源蔵に対するその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用中、原告らと被告朝霞市長との間に生じたものは原告らの負担とし、原告らとその余の被告らとの間に生じたものは同被告らの負担とする。

事実《省略》

理由

第一被告市長に対する請求について

地方自治法二四二条及び二四二条の二によると、二四二条の二第一項三号に規定する違法確認の訴は、普通地方公共団体の職員等の違法な二種類の不作為、すなわち、(ア) 公金の賦課、徴収を怠る事実、(イ) 財産の管理を怠る事実についてのみ認められるのであつて、公金の支出等の積極的行為については、これを対象とすることができない。

ところで、被告市長に対する本件訴は、本件差額金及び報償金(ともに公金)の支出が違法であることに基づいて、同被告がその返還請求を怠つている事実の違法確認を求めるものである。

しかし、まず、右事実が(ア)に該当しないことはいうまでもない。次に、(イ)について考えると、地方自治法にいう「財産」とは、一般に、公有財産、物品及び債権並びに基金をいうものとされる(同法二三七条一項)けれども、同法二四二条及び二四二条の二の旧規定(改正前の二四三条の二)においては、住民による監査請求及び訴訟の対象が、公金の支出その他の積極的行為に限定されていたものを、昭和三八年の改正によつて、一定の不作為についてまで拡張したという立法の経緯や、同法二四二条一項には「公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分……」とあつて、「公金の支出」と「財産の管理」とを書き分けている点からみると、公金の支出によつて生じたところの不当利得その他の返還請求権(債権)についてまで違法確認を求めることは、同法二四二条の二第一項三号の規定の予想するところではなかつたというべきであり、したがつて、同号にいう「財産」の中には、公金はもちろんのこと、支払われた公金の変形たる債権は含まれないものと解するのが相当である(そのように解しても、もともと「公金の支出」はそれ自体、住民による監査請求及び訴訟の対象となりうるのであるから、住民に対して公金又はその変形たる広義の財産の行方を追及させようとする本制度の意義、目的に反するものとはいえない)。

そうすると、原告ら主張の事実は、法の認める二種類の不作為のどれにも該当しないから、これを対象とする本件違法確認の訴は、不適法であるといわざるをえない。

第二その余の被告らに対する請求について

一争いのない事実

次の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

1  原告らは朝霞市の住民であり、被告渡辺源蔵は、昭和四二年三月から同市の市長の地位にある。

2  朝霞市は、本件用地買収事業の一環として、別表(1)から(5)のとおり、昭和四六年一一月一〇日から昭和四七年二月一六日にわたり、それぞれ渡辺利兵衛、富岡勝太郎、被告富岡さく、同榎本、同田口及び同塩味との間に、同市大字溝沼字池田地内にある各所有土地について、本件売買契約を締結した。

3  その後、本件売買契約に関して、被告市長の支出行為により、別表(6)、(7)記載のとおり、昭和四七年一〇月二一日から昭和四八年五月三一日にわたり、右六名の地主に対して本件差額金が支払われた。

4  ところが、本件差額金のうち被告田口及び同塩味に対する分については、昭和四八年一二月の朝霞市議会において、これを過年度誤払返戻金として返還させたうえ、同被告らに対し、報償費として同額の金銭を支払う旨の補正予算案が提出、可決され、同月二五日頃、同被告らから本件差額金の返還を受けるとともに、被告市長の支出行為により、同被告らに対して本件報償金が支払われた。

5  原告らは、それぞれ主張の日に、朝霞市監査委員に対して、本件売買契約及び差額金の支出について、更に、本件報償金の支出について、各監査請求をしたところ、いずれも原告ら主張のとおりの通知があつた。

二本件用地買収の経過

<証拠>を総合すると、次の経過を認めることができる。

1  朝霞市においては、昭和四五、六年頃、人口が急増して、中学校進学者の増加が予想されたのに、当時市立中学校が二校しかなかつたので、新たな中学校の設立が要望されていた。そこで、同市は、市立第三中学校の設立を検討していたところ、灘屋物産業株式会社が同市大字溝沼字池田地内に約二五〇〇坪の土地を所有して、これを市に売却したい意向を持つていたこと、また、同地区が他の二校の中間にあつて、場所も適当であつたことから、昭和四六年一月末頃には、同地区において、学校用地として一万一三〇〇坪の土地を買収したうえ、生徒数一〇〇〇人程度の第三中学校を設立する方針が決定された。

2  朝霞市は、同年二月二日、同市役所において、買収予定地の地主約二〇名を集めて買収説明会を開催し、被告市長ほか市側担当職員が出席して、買収事業計画の概要を説明して、地主側に協力を求めた。そして、地主側は、以後代表者を通じて市と買収に関する団体交渉をすることとし、代表者一〇名を選出した。

3  その後、同月九日及び同年四月一五日、同市と地主側代表者との打合わせ会が開催され、団体交渉が行なわれた。二月九日の会合においては、地主側の要請に応じて、市側は、買収単価として坪当り三万五〇〇〇円を提示したが、問題にされなかつた。なお、上記の会合の際(正確な時期は確認できない。)、被告市長が、挨拶あるいは地主との質疑中において、買収の前後によつて単価に差があつた場合、先に売つた者が馬鹿を見ないような方法をとる趣旨の発言をした事実はあつた。

4  更に、同年五月八日、打合わせ会が開催された。席上、市側は、買収単価として五万円ないし五万五〇〇〇円を提示したが、地主側に容れられなかつたので、団体交渉を中止して各地主との個別交渉を行なうこととし、その旨を地主側に伝えた。

5  朝霞市は、同年一〇月一四日、灘屋物産株式会社との間に、前記地区内の土地合計六八〇七平方メートルについて売買契約を締結し、次いで、同年一一月一〇日から昭和四七年二月一六日にわたり、順次個別交渉によつて、被告田口、富岡勝太郎、渡辺利兵衛、被告富岡さく、同榎本及び同塩味との間に本件売買契約を締結した。なお、渡辺利兵衛の分については、被告渡辺源蔵が、同市長として朝霞市を代表するとともに、みずから父利兵衛を代理して契約の調印に当つている。

ちなみに、本件売買契約における買収代金の坪当り単価は、次のとおりであつた。

被告田口   四万五〇〇〇円

富岡勝太郎  四万六〇〇〇円と四万七〇〇〇円

渡辺利兵衛  五万二〇〇〇円

被告富岡さく 四万二〇〇〇円

同榎本    四万六〇〇〇円

同塩味    四万八〇〇〇円

6  ところで、昭和四六年一二月一〇日、朝霞市と富岡勝太郎とが契約する際、同人の代理人である被告富岡武三郎から、将来の紛争を避けるために、先の打合わせ会において被告市長のした発言を明文にしてもらいたいとの申出があつたため、同市の担当職員であつた吉岡敏夫(総務部企画財政課長)は、上司の了解を得たうえで、契約書に、第二条の二として「本契約締結後同事業計画完了までの間に他の土地代価について変動があつた場合は、所有権移転後といえども、本代価を変動土地と同様増減するものとする。」との本件特約条項を挿入し、その後に締結された渡辺利兵衛、被告富岡さく及び同榎本との本件売買契約においても、各契約書に同様に本件特約条項が記載された(渡辺利兵衛ほか三名との各契約書にのみ本件特約条項が記載された点は、被告らの認めるところである)。

7  朝霞市は、昭和四七年四月三日、未買収地主との間に打合わせ会を再開し、席上、最終的な買収単価として坪当り五万五〇〇〇円を提示したが、結局、地主側との折合いがつかなかつたため、団体交渉を打切つた。そして、更に個別交渉を行なつた結果、同月五日から一三日にわたり、浅川倉太郎、灘屋物産株式会社及び浅川章臣との間に、合計四三〇〇平方メートルの土地について売買契約を締結した。なお、右各売買契約における坪当り単価は、浅川倉太郎及び浅川章臣についてともに五万五〇〇〇円、灘屋物産について五万円と五万五〇〇〇円であつた。

8  他方、買収地主に対して租税特別措置法に基づく特例措置が適用される期限は、同月一四日であつた。朝霞市としては、右期限経過後に買収することは実際上困難であり、また、既買収土地だけでも第三中学校建設が可能であると判断したため、同日をもつて、本件用地買収事業を打切ることに決定した。

三本件差額金支出の適否

そこで、渡辺利兵衛ほか三名に対する本件差額金の支出について検討する。

本件差額金が渡辺利兵衛ほか三名との本件売買契約の各契約書に記載された特約条項、すなわち本件特約に基づいて支出されたことは、当事者間に争いがない。そして、前項6の認定によると、朝霞市と渡辺利兵衛ほか三名との間には、おそくとも本件売買契約締結に際して、それぞれ本件特約が成立したものということができる。

次に、<証拠>によると、朝霞市契約規則(昭和三九年四月一日施行)は、「市の契約に関する事務については、法令その他別に定めるものを除くほか、この規則の定めるところによる。」(第一条)とし、「契約の内容が軽微で、かつ、その履行の確保が容易と認められる契約で、その金額が三〇万円をこえないとき」及び「物品を売り払う場合において、買受人が直ちに代金を納付してその物品を引き取るとき」以外には、市長は、「契約の締結につき、契約書を作成するものとする。」(一四条一項、一五条一項)と規定したうえ、その一四条二項には、契約書に掲げるべき事項として「一 契約の当事者、二 契約の目的、三 契約金額、四 契約の履行の方法、期限又は期間及び場所、五 契約保証金、六 契約金の支払の時期及び方法(七以下省略)」が挙げられていることが認められる。

被告らは、右規則は、競争契約が可能な場合における契約の締結に関するものであつて、本件には適用されない旨主張するが、同規則一四条一項には「市長は、一般競争入札若しくは指名競争入札により落札者を決定したとき又は随意契約の相手方と決定したときは、当該契約の締結につき、契約書を作成するものとする。」と定められており、その文言自体、同規則は、競争契約が可能な場合における契約の締結のみに限定したものでないことが明らかであるから、被告らの右主張は採用できない。

ところで、地方自治法二三四条五項は、地方公共団体が契約につき契約書を作成する場合においては、長又はその委任を受けた者が相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は確定しないものとすると規定しているが、同規定は、地方公共団体を当事者とする契約の公共性に鑑み、契約書を作成する場合の契約成立時期を明定するとともに、特に、契約書の作成によつて契約が成立する旨をも定めたものと解される。そして、同規定と朝霞市契約規則の前掲各規定とをあわせると、朝霞市長が契約につき、契約書の作成を義務づけられる場合においては、契約金額、契約金支払の時期及び方法等の事項は、契約書上に具体的かつ明確に記載されるべきであり、契約書上の文言によつてその金額が確定できないようなものは、その限度において、契約としての効力を生じないものと解するのが相当である。

本件についてみると契約書の作成を省略しうる場合に当らないことは明らかである。そして、渡辺利兵衛ほか三名との本件売買契約の各契約書には、契約金(買収代金)が具体的数字をもつて表示されているものの、これらに付された本件特約条項は、要するに、今後他の買収土地の単価が値上りした場合には、それと買収代金との差額を支払う(より端的にいうならば、買収代金の定めにかかわらず、今後の買収事例中の最高単価を基準として実際の買収代金とする)との趣旨に帰着するのであつて、契約書上、その差額金を算定すべき具体的時期及び方法については、何ら記載されていない。

被告らは、その具体的時期は昭和四七年四月一四日であり、算定方法は路線価方式であると主張するようであるが、これに関する<証拠>は、いずれも曖昧であつて採用しがたく、他に、前項認定の朝霞市、地主側間の団体及び個別交渉の過程において、差額金の算定時期及び方法が明確に話合われた事実については、これを確認するに足りる証拠はない。

なお、本件差額金は、実質的には買収代金の一部であり、したがつて、本件売買契約における重要な契約金であることはいうまでもない。

そうだとすると、本件特約(特約条項)にいうところの差額金は、結局、契約書上確定することができないものであり、本件特約は、地方自治法二三四条五項及び朝霞市契約規則一四条一、二項に違反し、その効力を生じないというべきである。

したがつて、本件特約に基づいてされた渡辺利兵衛ほか三名に対する本件差額金の支出は、違法を免れない。

四本件報償金支出の適否

次に、被告田口及び同塩味に対する本件報償金の支出について検討する。

被告らは、まず、同田口及び同塩味に支払われた本件差額金について、各契約書に本件特約条項の記載がないことを認めながら、昭和四六年二月九日の朝霞市、地主代表者間の打合わせ会において、本件特約を付する旨の合意が成立したと主張し、<証拠>中にはこれに添う部分がある(但し、その時期については必ずしも一致しない)。

しかし、

(ア)  <証拠>によると、被告市長は、昭和四八年六月開催された朝霞市議会の定例会において、議員から本件差額金の支出に関して追及された際、地主代表者との間に本件特約が成立している点については全く触れていないことが認められる。

(イ)  本件用地買収に関する市長の基本的姿勢を表明するというのであればとも角、地主側との団体交渉が緒についたばかりの時点において、被告市長が個別的な買収単価の差額支払を約束すること自体、理屈に合わないし、容易に納得しがたい。

(ウ)  地主代表者との間に合意が成立したというが、その代表者の氏名及び権限については、証拠上明らかにされていない。

(エ)  また、仮に、右合意が認められるとすれば、地主代表という以上、地主の一人である灘屋物産株式会社についても、本件特約の効力が及ぶべきであるのに、前記各証人及び本人は、いずれも同会社との間には差額金の特約がないという点で一致している。しかし、第二項に認定した団体交渉の過程において、同会社が格別除外されていた形跡は認められないのである。

これらの点を考慮すると、被告らの前記主張に添う前掲各証言及び供述は採用することができないし、他に、これを裏付けるに足りる証拠はない。

また、前記証人及び本人は、いずれも、被告田口及び同塩味との本件売買契約の際、当事者間において口頭で本件特約がされた旨を述べているが、それが各契約書に記載されなかつた理由については、説得力のある説明がなく、採用することができない。

仮に、朝霞市と被告田口及び同塩味間に、口頭による本件特約があつたとしても、先に判示したとおり、本件差額金は、本件売買契約における重要な契約金であるから、朝霞市契約規則一四条の規定によつて、契約書に記載しなければその効力を生じないものである。

したがつて、口頭による本件特約の有無にかかわりなく、同被告らに対する本件差額金の支出は、その根拠を欠くものであつて違法である。

次に、<証拠>によると、昭和四八年一二月の朝霞市議会に提出された補正予算案中には、本件報償金(合計六〇〇万六〇〇〇円)が報償費の名目で記載され、かつ、これについて「用地提供者謝金」という説明が加えられていたことが認められ、他方、<証拠>によると、被告田口及び同塩味に対する本件差額金の支出については、すでに監査委員の月例出納検査において不適当であると指摘されていたこと、そのため、その差額金の支払を正当化するよう、市理事者らが善後策を講じた結果、右補正予算案中に報償費の費目を作つて予算化し、議会の議決を得たうえ、報償金という形で処理することになつたことが認められ、その反証はない。

およそ、地方公共団体の議会が法の認める権限に基づき財産の処分(地方自治法九六条一項七号)について議決した場合においては、もとよりその議決は尊重されるべく、司法審査の対象外であることは当然であるが、本件は、そのような財産処分に関するものではなく、単に、長の提出したところの報償費を含む予算案について議決したにとどまるから、報償費自身に違法性があるときは、これに対する議会の議決があつても、その支払が適法な支出になる理由はない。

右に認定した事実からすると、本件報償金は、もともと違法であつた被告田口及び同塩味に対する本件差額金の支出を形式的に合法化するためにとられた便法にすぎず、両者は実質上全く同一である。したがつて、本件報償金の支出は、いわゆる脱法行為に当り、違法といわざるをえない。

五被告市長を除くその余の被告らの不当利得

以上判示したところによると、渡辺利兵衛、富岡勝太郎、被告富岡さく、同榎本、同田口及び同塩味は、いずれも法律上の原因がなく、朝霞市から本件差額金(前四者)又は報償金(後二者)の支払を受け、他面、同市は、右各金銭を支出したことによつて、同額の損害を蒙つたことになる。

被告らは、同市が現に本件用地を使用することによつて、本件差額金及び報償金の支出による損失を上廻る利得を得ている旨主張するが、仮に、そのような利益があるとしても、それは、無効な本件特約がなくても取得できたものであるから、右主張は理由がない。

そこで、上記六名は、不当利得金として、同市に対して、別表(7)記載の各金銭を返還すべき義務があるところ、富岡勝太郎が昭和四九年一月一一日死亡し、その権利義務を被告富岡武三郎、同富岡奥太郎、同富岡穣及び同本橋が各四分の一ずつ承継したこと及び渡辺利兵衛が昭和五一年一月七日死亡し、その権利義務を被告渡辺えんが三分の一、同渡辺源蔵、同渡辺太郎、同渡辺亀蔵及び同渡辺徳蔵が各六分の一ずつ承継したことは、当事者間に争いがない。

したがつて、原告らは、地方自治法二四二条の二第一項四号により、朝霞市に代位して、被告市長を除くその余の被告らに対して、別表(9)記載の各金銭とこれに対する同(10)記載の各起算日(いずれも本件訴状送達後の日である。)から各完済までの年五分の遅延損害金の支払を求めることができる。

六被告渡辺源蔵の不法行為

上記判示したところによると、被告渡辺源蔵は、朝霞市長として、本件差額金(但し、渡辺利兵衛ほか三名に対する分)合計一三六四万五〇円と本件報償金合計六〇〇万五五五〇円を違法に支出して、同市に対して同額の損害を与えたものであり、これについて、少なくとも過失があることは明らかであるから、民法七〇九条により、同市に対して、総計一九六四万五六〇〇円の損害賠償をすべき義務がある。なお、市長については、その文理上地方自治法二四三条の二第一項の規定は適用されないものと解する。

したがつて、原告らは、同法二四二条の二第一項四号により、朝霞市に代位して、被告渡辺源蔵に対して、右総計金の支払を求めることができる。なお、原告らの請求する一九六四万八九五〇円は、計算違いと考える。

第三むすび

以上のとおりであつて、原告らの被告渡辺えん、同渡辺太郎、同渡辺亀蔵、同渡辺徳蔵、同富岡武三郎、同富岡穣、同本橋昌旺、同富岡さく、同榎本、同田口及び同塩味に対する請求は、いずれも正当であるから認容し、同渡辺源蔵に対する請求は、別表(9)の該当欄記載の金銭と第二、第六項記載の総計額との支払を求める限度において正当であるから、これを認容し、その余の部分を棄却し、同市長に対する請求は、不適法として却下することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(橋本攻 一宮なほみ 並木正男)

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