浦和地方裁判所 昭和56年(行ウ)5号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
原告は、本件青色取消処分及び本件課税処分は、違法な調査に基づくものであるから取消されるべきである旨主張する。
一般に、青色申告承認取消処分、更正処分等の適否は、客観的な取消要件、課税要件の存否によつて決まるのであつて、仮に違法な調査手続により収集された資料に基づいて右処分がなされた場合であつても、そのことだけで、当該処分に取り消されるべき瑕疵があると解すべきではない。しかし、調査手続の違法性の程度が刑罰法令に触れたり、あるいは、公序良俗に反する程度に至つたような場合には、憲法における適正手続保障の精神に照らして、取消要件、課税要件の存否にかかわりなく、処分の取消事由と解すべきである。
ところで、本件において原告が違法な調査であると指摘する点は、第一に、被告署長所部税務調査担当者が原告に対し、調査対象時期について昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの期間を限定して告知し、本件係争事業年度についてはこれを調査対象とする旨告知していないのであるから、原告が右告知に係る期間分の調査を承諾したことは、本件係争事業年度分の調査を承諾したことにはならず、したがつて、右事業年度分の税務調査は原告の承諾なしに行なわれたものであるということであり、第二に、帳簿書類の収集が偽計又は強制により行われたということであり、第三に、税務調査担当者が原告に対し、日本物産が原告と事実上同一の会社であることを認める旨記載した書面を提出するように脅迫的言辞をもつて要求したということである。
第一の点については、仮に調査者が原告に対し昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの期間における事業を調査対象とする旨告知し、特に本件係争事業年度の事業を調査対象とする旨告知していなかつたとしても、調査対象となる会社の当該事業年度の事業は、その前後に続く事業年度の事業と連続性を有しているものであるから、当該事業年度の事業を調査するためにその前後に位置する他の事業年度の事業についても調査が必要となることは予測可能であり、特定年度の告知に対して与えられた調査の承諾も、右特定年度と相前後する事業年度の事業についても調査が及ぶことを受忍する意思が含まれていると考えられる。従つて、原告が昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの間の原告の事業の調査を承諾したものである以上、本件係争事業年度の事業についての調査も承諾したものと解すべきであり、原告の第一点の主張は理由がない。
第二の点については、調査担当者が原告に対し虚偽の目的を告げ、かつ、原告の承諾をえないまま帳簿類を強制的に押収したことを認めるに足る証拠はなく、かえつて、<証拠>を総合すれば、原告がその自由意思に基づいて、調査担当者である小池文雄に帳簿類を預けたことを認めることができる。
第三の点については、<証拠>によれば、原告の法人税調査を担当した所沢税務署の係官らは、その調査の過程で、日本物産は原告のいわゆるダミー会社ではないかとの疑念を抱き、概ね原告主張のような言辞をもつて、藤元に対し、原告と日本物産との関係につき口頭又は文書をもつて明らかにするよう求めたことが認められるけれども、右の程度をもつては、まだ右係官らの行為をもつて刑罰法令に牴触するとか、公序良俗に違反すると評価するには足らず、右第三点もまた理由がない。
以上、原告が指摘する点は、いずれも、本件青色取消処分及び本件課税処分の取消事由にはならない。
(高山 晨 小池信行 深見玲子)