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浦和地方裁判所 昭和56年(行ウ)6号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

二本件換地処分の適否

1 <証拠>を総合すると次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足る証拠はない。

(一) 本件事業をその一部とする埼玉県営圃場整備事業(江南地区)の基本目的は、改良工事を施した約一七五ヘクタールの農地に、農道、水路及び附帯農業施設を新設又は整備し、かつ区画整理を行うことにより農業近代化施設の整備とあいまつて、① 農産物の生産力を増強して農業収益を増大すること、② 農業経営の規模の拡大と農用地の集団化を図ること、③ 農作業の機械化を容易にし、農業経営の合理化に資することにあり、右基本目的に沿つて、被告が定めた右地域における換地設計方針は、① 施行区域の少なくとも五〇パーセント以上は標準区画(幅三〇メートル、奥行一〇〇メートルの長方形の区画)による集団換地を実施する、② 従前地の地目は現況により定め、その地積は、昭和五三年八月一〇日現在の登記簿上のそれとする、③ 換地指定する地積は、従前地の面積と改良工事施行後の面積とを比較して一定の減歩率を算出し、それを個々の従前地の地積に乗じて得た結果に基づいて標準地積を定め、換地の組合せを行う、④ 宅地廻り、県道沿い、送電線下、日陰、墓地、小面積等の条件を持つ土地を特殊地とし、換地に当たつて考慮するなどであつた。そして、実際の換地選定にあつては、特殊地は、これを従前地所有者に換地するか、これをしない場合にはその土地所有者に対する換地の減歩率や清算金で調整を図ること、できる限り現地換地とするほか、原則として各人の従前地の母集団を中心とする集団換地を図ること等の配慮をするものとされた。

なお、原告の従前地に関していえば、そのうち、上宿道北三〇五番一、同三〇六番一、同三〇八番の各土地により構成される土地集団が母集団と目しうるものであつた。

(二) 原告に対する換地の選定にあたつては、次のような事情が考慮された。

(1) 原告を含めた五戸の農家で構成する御正第二ハウス団地組合は、江南土地改良区と協議の上、本件事業開始前の昭和四八年に、同年度第二次農業構造改善事業補助金の交付を受けて本件工区内にビニールハウスを建設した。そこで、被告は、原告が、右ビニールハウスの敷地として利用している換地九〇番一の土地を原告に指定することとし、また、同土地の東側に隣接する換地九〇番二の土地についても、原告の農用地の集団化を図り、その耕作の便宜に資するため、原告に指定することとした。

右のような原告に対する換地とその従前地の位置関係についてみると、換地九〇番一の土地は、原告の従前地上宿道北二八〇番一、同二八一番二、北内手二一五番一の各土地と部分的に重なる位置にあり、また、九〇番二の土地は、原告の従前地北内手二一五番一、上宿道北二八〇番一の各土地と部分的に重なる位置にある。

(2) 原告の従前地北内手一五八番の土地は、その南側が宅地に隣接し、右宅地上の建物の影響を受けて、一部に日陰が生ずる土地であつたため、被告はこれを特殊地とし、右日陰が生ずる部分をその一部にとり込んで区画された換地九六番二の土地を原告に指定することとした。そして、換地九六番二の土地の西側に隣接する換地九六番一の土地及び同土地の西側に隣接する換地九五番の土地を併せて原告に指定して、原告の農地の集団化を図つた。

右のような原告に対する換地とその従前地との位置関係についてみると、換地九六番一の土地は、原告の従前地北内手一五八番の土地と部分的に重なる位置にあり、換地九五番の土地は、原告の従前地上宿道北三〇五番一、同三〇六番一、同三〇七番、同三〇八番の各土地と部分的に重なる位置にある。

(3) 原告は、本件工区外に自作地を有しているため、この土地に隣接する換地一六二番一の土地を原告に指定して、原告の便宜を図った。

(4) その他の原告に対する換地とその従前地との位置関係についてみると、換地四九番二の土地は、従前地上宿道北三〇七番、同三〇八番の各土地と、右換地四九番二の土地の西側に隣接する換地五一番の土地は、従前地同所三一〇番の土地と、五番二の土地及びその西側に隣接する換地五番一の土地は、ともに従前地同所三一二番一の土地と、換地一二〇一番の土地の東側に隣接する換地一二〇番二の土地は、従前地稲荷林三七四番の土地とそれぞれ部分的に重なる位置にあり、また、換地八八番一の土地は、従前地上宿道北二八一番二の土地と近接した位置にある。

(三) 本件事業に基づく換地処分に当たつては、土地評定委員会が、従前地及び換地の双方を地質、水利、形状、日照、通風、耕作の便等の一三項目につき土地評定基準に基づいて五段階評価し、これを換地選定の参考に供している。右評価の精度は別として、これによると、原告の従前地の評価は、上宿道北三〇五番一(一三四七平方メートル)が一等位、北内手二一五番一、上宿道北三〇六番一、同三一〇番、同三一二番一、宿北側三六九番、稲荷林三七四番の各土地(合計五五二二平方メートル)が二等位、北内手一五八番、同一七一番、上宿道北二八〇番一、同二八一番二、同三〇七番、同三〇八番の各土地(合計六九〇一平方メートル)が三等位にそれぞれ格付けされ、他方、原告に対する換地の評価は五番一、五番二、四九番二、五一番、八八番一、九〇番一、九〇番二、九五番、九六番一、一二〇番一、一二〇番二の各土地(合計一万二二四二平方メートル)が一等位、九六番二(一六〇四平方メートル)の土地が二等位にそれぞれ格付けられている。

右(一)ないし(三)の認定事実を総合すると、原告に対する換地は、従前地の母集団を中心に配置されているとはいい難いけれども、原告が指摘する通達は、あくまで一般的基準を示すものであつて、合理的な理由がある場合にはこれと異なる態様の換地処分をも是認するものであると解すべきところ、原告に対する換地処分においては、右母集団の位置から離れている換地九〇番一の土地及び換地九六番二の土地を、前者は原告が所有するビニールハウスの敷地であるという理由で、後者は原告の従前地のうち日陰地に相応するものとして、それぞれ原告に指定する合理的理由があつたため、従前地の母集団を中心とする集団化を図ることができなかつたものであり、かつ、右合理的理由に基づく制約の範囲内において可能な限り集団化を図つたものと評して妨げない。

2(一) ところで、原告は、従前地の母集団が良好な水田であつたのに対し、換地された九六番一及び九六番二の各土地は、その一部にもと畑であつたものを水田に造成した部分を含み、殊に従前地の高低差を解消するため削土工事を施行した結果、砂礫の層が露出して水田に適さず、また、土地の傾斜に逆行して排水路が設置されていることや全体が鍵型の不整形地であることから劣悪な土地であつて照応の原則に反する旨主張するのでこの点について検討する(なお、原告は、本件換地処分にあつては、換地明細書上の従前地とこれに対応する換地とが各筆毎に照応していない旨主張する(請求原因3(二)(1))けれども、従前地と換地とが照合しない事由を具体的に摘示しているのは、右頭書主張にかかる従前地の母集団と換地九六番一の土地及び同書二の土地との関係のみであるから、右請求原因3(二)(1)の主張についての検討も、併せてここですることとする。)。

まず、<証拠>によれば、本件工区内の従前地は、いずれも不整形であるうえ、その間に高低差があつたことから、これを整然とした大型区画に変更するためには、一帯の土地を掘削し、その土を用いて全体を均平化する改良工事が必要であつたこと、右工事の実施に当たつては、従前地の表土を標準区画(幅三〇メートル、奥行一〇〇メートル)毎に剥ぎ取つて一か所に集積しておき、その後、道路造成に必要な土を削り取つて土地全体を均平化したうえ、集積しておいた表土を撒き戻して整地する工法が採られたことを認めることができ、右事実によれば、右工事施行後の本件工区内の土地については、従前畑として使用されていた土地から造成された田と、従前田として使用されていた土地から造成された田との間に、土質において際立つた差異はないことが推認される。

次に、<証拠>を総合すると、本件工区内の土地には、総体的に礫が多く、耕作者は、礫を拾い出すなどして耕作地を管理していること、従前は、現在の換地九六番一の土地に当たる部分と同じく現在の換地九六番二の土地に当たる部分との間には、約六〇センチメートルの高低差があり、これを解消するため、換地九六番一の土地に当たる部分を削つた結果、そこから砂礫が多く露出したこと、しかし、換地処分に先立つ一時利用地指定処分の際、原告の異議申立により、現在の換地九六番一の土地に当たる部分について坪抜き工事(深さ五〇センチメートルにわたる耕土の入れ替え)を、同部分及び現在の九六番二の土地に当たる部分について水張り攪拌工事をそれぞれ実施した結果、礫が減少したことを認めることができる。

更に、<証拠>によれば、換地九六番一及び同番二の土地の北側に給水路、南側に排水路がそれぞれ設置されているが、右両土地全体は前者から後者に向つて(東西方向)緩やかに傾斜しており、給排水は、この傾斜を利用して行われ、排水が逆行することはないことが認められる。なお、右の点に関し、証人橋本正思の供述中には、換地九六番一及び同番二の各土地の排水口は、その下端が排水路(U字溝)の底面から一五センチメートル、上端が同じく三〇センチメートルの各位置となるように設置されているため、排水路を流れる水の量が右排水口の上端を超えた場合には、排水が右両土地に逆流してくる惧れがあるとの供述部分が存するけれども、<証拠>によれば、換地九六番一及び同番二の田面は、前記排水路の底面から五〇センチメートルの位置にあり、その排水は、土中に埋設された口径一五センチメートルの塩化ビニール製の排水管により行なわれているが、その取水口の上端は田面から一〇センチメートル下にあることが認められるから、右排水口を流れる水の量が底面から四〇センチメートルを超えたときは、排水が逆流する可能性があるとはいい得る(証人橋本正思の供述にいう、底面から三〇センチメートルの水量で逆流するとの点は、物理法則に反する。)けれども、右の場合のように排水溝の水量が、排水管の取水口の上端を超える位置にまで達するときは、ひとり換地九六番一及び同番二の土地のみに排水逆流の現象が生ずるものとは考え難い。

また、換地九六番二の土地が鍵型の不整形地であることは、<証拠>により認められるが、これは、前記のとおり、原告の従前地の一部に隣接宅地上の建物により日陰を生ずる特殊地があつたため、この部分を包含する換地九六番二の土地を原告に指定したことの結果であつて、本件工区内の換地の中には同様の不整形地が他にも多数存在していることが<証拠>により認められることにも鑑みれば、右換地指定をもつて、原告に格別不利益ということはできない。

(二) 原告は、良好な水田である原告の従前地の母集団の一部を舟橋敬祐に対し換地する一方で、同人の従前地で劣悪な条件の換地九六番一及び同番二の土地を原告に指定した処分は、舟橋敬祐を優遇するために意図的になされたものであり、換地処分において遵守されるべき平等、公平の原則に反する旨主張するところ、舟橋敬祐に原告の従前地の一部が換地指定されたことは、被告が明らかにこれを争わないから自白したものとみなすべく、原告に換地九六番一及び同番二の土地が指定されたことは前記のとおりであるけれども、右のような換地処分が、舟橋敬祐を優遇するために意図的になされたことを認めるに足る証拠はない。かえつて、換地九六番二の土地を原告に指定した理由は前記のとおりであり、また、換地九六番一の土地を原告に指定したのは、換地同番二の土地及び換地九五番の土地と相俟つて、原告の農用地の集団化を図る目的に出たものであることも前記のとおりであるうえ、<証拠>によれば、舟橋敬祐に指定された換地九四番一の土地は、本件事業に基づく換地処分に当たつて、土地評定委員会が下した評価では一等地ママであるが、同人の従前地宿北側三二三番一の土地も、同じ評価において二等位(五段階)というかなり高い評価を受けていたことが認められること、<証拠>によれば、本件事業に基づく一時利用地指定処分においては、舟橋敬祐に対し、現在の換地九五番の土地の位置に、原告に対し現在の換地九四番一の土地の位置にそれぞれ一時利用地の指定がなされたところ、原告の異議申立により右各一時利用地の交換的指定替がなされ、これがそのまま換地処分に引き継がれたことが認められ、これら事実を併せ考えれば、原告の頭書主張にかかる各換地処分が、原告の不利益において舟橋敬祐を優遇するものではないと推認するのが相当である。

(三) 原告は、本件換地処分は、換地委員長である橋本三郎、換地委員である橋本広安に対する各換地処分に比して著しく不利なものであつて、平等、公平の原則に反する旨主張するのでこの点について検討する。

(1) 橋本三郎に対する換地処分

<証拠>によれば、同人の従前地は二三筆九ブロックであるのに対し、その換地は一〇筆四ブロックとなっているけれども、他方、同人の従前地は比較的まとまつており、同人に対する換地は、ほぼその従前地の存した位置に指定されていること、同人に対する換地の中には不整形地も含まれていることが認められ、この事案に鑑みると、同人に特に有利な換地処分がなされたとみることはできない。

(2) 橋本広安に対する換地処分

<証拠>によれば、同人の従前地は一七筆一四ブロックであるのに対し、換地は七筆四ブロックとなっているけれども、他方、同人に対する換地はほぼ従前地の存した位置に指定されていること、右換地の四ブロックは近接するものではなく、東西南北に拡散していること、同人に対する換地の中には不整形地も含まれていること、同人に対する換地二四二番の二ないし四の土地は最寄の有料道路沿いに位置してはいるものの、右各土地と右道路との段差は約一メートルあり、加えて、その間には幅員四メートルの排水路が設置されているため、特に耕作に便利な土地とはいえないことを認めることができ、これらの事実に鑑みれば、同人に特に有利な換地処分がなされたとみることはできない。

(四) 原告は、本件工区内に従前地を所有していない保泉源作に対し本件工区内の土地が換地されたことが、原告に対し著しく不利益な換地処分がなされた原因の一つである旨主張するけれども、<証拠>によれば、埼玉県営ほ場整備事業(江南地区)に基づく換地計画は、各工区単位にではなく、各換地区単位に立てられ、従つて、同一換地区内の換地交付率は工区が異なつても同一であること、保泉源作は本件工区が属している第一換地区の昭和四八年工区内に従前地を所有していたことを認めることができるから、同人に対し本件工区内の土地を換地したからといつて、原告が不利益を被る理はない。

(五) 原告は、換地九六番一の土地は換地九六番二の土地と同等の二等位とすべきところ一等位と評価され、また、換地九〇番一の土地については畑であるのにこれを田として不当に高い評価がなされている旨主張するけれども、仮に原告主張のとおり右二筆の土地についての評価が誤りであるとしても、それによる原告の不利益は清算金の算定において調整されるべき問題であつて、直ちに照応の原則に反するとはいえない。

3 以上のとおりであるから、本件換地処分は農地の集団化を図り、かつ、照応原則にも適合するものであつて、適法というべきである。

(高山晨 小池信行 深見玲子)

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