浦和地方裁判所 昭和57年(ワ)545号 判決
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【判旨】
1 <証拠>によれば次の事実を認めることができ、<証拠>中、この認定に反する部分は採用できない。
訴外会社の倒産の噂は昭和五五年一月頃から業界に広がり、被告の取引先の小売店から訴外会社の製品が多量に返品されるようになり、訴外会社が昭和五五年三月四日に東京地方裁判所に対して会社更生手続開始の申立を行うに至つて返品が相次ぎ昭和五五年七月初めの頃の被告における返品在庫の帳簿価格は約八〇〇万円となつた。
しかし、その商品価値は殆んどなく、販売することができないものであつたため、被告は訴外会社にその引取りを求めたところ、同年七月二日に訴外会社の従業員平間和彦が被告の営業所に来て、被告の二トントラックで二、三回在庫の返品を訴外会社に運んだが、多量のため全部を運び切れず、また、商品価値のないものであつたため残品の処分を被告に依頼し、被告はこれを焼却した。
その後、訴外会社の経理係で持ち帰つた商品の価格を計算したところ、同年七月二日当時の被告に対する売上残高より約八〇万円余分に商品を持ち帰つたことが判明したが、余分の商品を返還することができなかつた。そのため訴外会社はその代りに四六万八〇〇〇円相当のファミリー・スノーマット(F)六〇〇個と三七万〇九二〇円相当のファミリー・スノーマット(R)五六二個を被告に引き渡し、これにより訴外会社との間の売買代金の清算を終了することとしたが、訴外会社の帳簿には右ファミリー・スノーマットが被告に対する売上げとして計上された。
2 1で認定したところと<証拠>によれば、昭和五五年七月二日当時における訴外会社の被告に対する売掛債権は、昭和五五年二月二二日から同年二月二九日までの間の売買契約に基づく一六三万一一八二円であり、それ以前の売買契約に基づく被告の訴外会社に対する売買代金の支払は終了していることが認められ、<証拠>中この認定に反する部分は採用できない。
3 右1及び2の事実によれば、訴外会社と被告との間で昭和五五年七月二日、別紙記載の内容の売買契約が合意解約されたと認めることができる。<証拠>によれば、昭和五六年八月二〇日訴外会社の保全管理人井出正敏が被告に対して本件請求にかかる売買代金二四七万〇一〇二円を請求したのに対し、被告はその所持していた訴外会社引受けの為替手形による二四七万円の債権で相殺する旨の書面を訴外会社に対して送つたことを認めることができる。しかし、これは、保全管理人が帳簿に被告に対する売上金が計上され残高があつたためこれに基づき請求したものと推認でき、これに対して被告が右の書面を送つたのは訴外会社の従業員である前記平間和彦の勧めによつたものであることが被告代表者本人尋問の結果によつて認めることができるから、右事実は前記認定を妨げるものではない。なお、本件記録中の訴外会社の登記簿謄本によれば、右合意解約当時訴外会社の財産の管理処分権は保全管理人井出正敏に専属していたことが認められるが、合意解約が東京地方裁判所の要許可事項であつたことについては立証がなく、また、特段の事情の立証がない本件においては保全管理人の意思に反して右合意解約がなされたと認めることはできない。
従つて、被告の抗弁は理由がある。
(菅野孝久)