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浦和地方裁判所 昭和58年(ヨ)258号 判決

【主文】

一 債権者がこの判決の送達を受けた日から一〇日以内に、金七五〇万円の保証を立てることを条件として、債務者は、業としての別紙第一又は第二目録記載の各方法を使用してハニカムコアを製造し、また、この各方法により製造したハニカムコアを譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のため展示してはならない。

二 申請費用は債務者の負担とする。

【事実】

「第一 当事者の求める裁判

一  債権者

「 債務者は、業として別紙第一及び第二目録記載の各方法を使用してハニカムコアを製造し、また、この各方法により製造したハニカムコアを譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡のため展示してはならない。申請費用は債務者の負担とする。」

との判決

二  債務者

「 本件申請を却下する。申請費用は債権者の負担とする。」

との判決

第二、当事者の主張

一  債権者の申請の理由

1  債権者は次の特許権(以下、本件特許権という。)の権利者である。

発明の名称 ハニカムの展張整形方法および装置

出願日 昭和五〇年一月一〇日

出願番号 昭和五〇年特願第五七二二号

公告日 昭和五五年一一月八日

公告番号 昭和五五年特許出願公告第四三九一一号

登録日 昭和五六年七月二三日

登録番号 特許第一〇五四九八七号」

【理由】

一本件発明とその技術的範囲

債権者が本件特許権の権利者であること、及び、右特許にかかる特許公報の記載が本件公報のとおりであり、右四個の発明(発明に該当するか否かは、四に後述する。)のうち、本件発明(方法1、同2)のみが、本件に直接関係があることは、当事者間に争いがない。

右当事者間に争いのない本件発明の特許請求の範囲によれば、本件発明は、熱可塑性プラスチックを素材とするハニカムの展張整形方法に関するものであつて、本件公報の記載に基き、その構成要件を分説すると次のとおりである。

イ  折畳状態の熱可塑性プラスチックハニカムの展張方向の両端部へ、幅方向伸縮自在に引張装置を取り付けること。

ロ  引張装置を互いに反対方向に引張り、ハニカムを所定のセルサイズに展張すること。

ハ  ハニカムを展張状態のまま、加熱及び冷却によつて整形硬化すること。

ニ  ハにおける加熱をハニカム素材の軟化点付近の温度で行なうこと。

二債務者実施方法の内容

債務者が、イ号図面第二ないし第四に表示され、債権者主張(申請理由6)の構造を有する装置(本件装置)を用いるロ号方法によつて硬質塩化ビニール製のハニカムを製造販売していること、ロ号方法を分説するとイ''ないしニ''(請求原因8)となることは、当事者間に争いがない。

さらに、債権者は、債務者がイ号方法によつて同様のハニカムを製造している旨主張し、債務者はこれを争うところ、債務者が現にかかる方法を実施しているか否かは別として、債権者主張のイ号方法と前記のとおり現に債務者において実施していることにつき当事者間に争いがないロ号方法との主要な相違点は、後者において、本件装置により原反を展張状態においたまま、湯槽に浸漬する前と浸漬中の二回にわたり案内枠15を幅方向に移動するという作業工程が付加されるにとどまること、<疎明>によれば、当庁が債権者の申立により、本件係属前の昭和五七年一二月一六日債務者の肩書に表示した事実上の本店において施行した証拠調(検証)の際には、債務者は、少なくとも右に摘示した湯槽浸漬中に案内枠15を幅方向に移動するという作業を実施しなかつたことが一応認められることから推すと、債務者が、本件装置を用いてイ号方法により硬質塩化ビニール製ハニカムを製造することは容易であり、かつ、その可能性も存するものと推認すべきである。もつとも、右に述べたとおり、ロ号方法にはイ号方法にみられない作業工程が付加されているから、以下には専ら本件発明とロ号方法とを対比して、後者が前者に牴触するか否かを検討することとする。

三ロ号方法と本件発明との牴触

1  本件発明とロ号方法の目的、構成をそれぞれ対比してみると、次のとおりである。

(一)  目的の対比

本件公報には「汚水処理の充填材に用いられる」「熱可塑性プラスチック素材のハニカム」で「セル方向の高さが従来品よりはるかに大型のハニカムでも容易に展張整形し得るようにすると共に歩留を向上させ」るとの記載があり、又、効果については、「ハニカム素材の展張に機械力を使用するので、事実上セル高さの制限がなくなるとともに、ハニカム取付部を幅方向摺動自在に構成したので、ハニカムが展張せられ、幅方向に縮少力が働けばこれにつれて取付部も縮少するので、ハニカムの六角形状は、端部まで正確かつ均一に保たれ、従来の欠点(ハニカムの両端部のセル形状が著しく変形するため、正確かつ均一な六角形状を要求される場合には、両端部の不正確形状部分を破棄しなければならないこと。)を是正し、歩留を著しく向上させることに成功した」旨の記載があるから、本件発明の目的が、大型のハニカム製品を展張整形の方法を用いて能率的に、かつ、歩留良く製造するというにあることは明らかである。

一方、後記のとおり、債務者は業としてロ号方法を実施している事実と<疎明>によれば、ロ号方法の目的も、汚水処理用充填材としての熱可塑性プラスチック素材の大型ハニカム(セル高さ一メートル程度)を能率的に、かつ、歩留良く製造するにあることが一応認められる。債務者は、ロ号方法の目的は、① 簡易な設備装置でハニカムを製造すること、② 材料を節約すること、③ 正確な六角形を有するハニカムを製造することにある旨主張するけれども、これらはいずれも究極において、前記認定のロ号方法の目的に合致するものに外ならない。

(二)  構成の対比

(1) イとイ''との比較

<疎明>によれば、債務者が実施しているロ号方法のイ''において、原反Pの積層シートの最下層セル内に挿入された引張棒を下方に押し下げて原反を展張する際、最上層セル内に挿入された引張棒5は本件装置上方の支持枠6に固定されることなく、単に同支持枠に係止されている状態にあり、他方、右最下層のセル内に挿入された引張棒もそのままの状態で両端を人に把持されて押し下げられること、右展張前の原反の幅は約六四〇ミリメートルであるところ、展張後は、約五〇〇ミリメートルに縮少すること、右展張後の展張方向両端部附近のセルが変形六角形ではなく、中央部とほぼ均一な整つた六角形状をしていることが一応認められる。右認定事実によれば、イ''において、原反Pの積層シートの最上層及び最下層セル内に挿入された各引張棒5は、原反がその展張に伴つて幅方向に縮少する(この事実は物理上自明である。)のに応じて、同方向中心部に向い摺動するものと推認すべきであり、右各引張棒が原反Pの「引張装置」であることは明らかであるから、結局ロ号方法におけるイ''はイの構成要件を充足するものと認むべきである。

債務者は、ロ号方法においては、引張棒の移動があつたとしても、それは、原反Pの当初のセットの仕方によつてランダムに生じるものであつて規則性がないから、ハニカム取付部が積極的に変位するイの構成要件を充足しない旨主張するけれども、右のとおり、イ''における引張棒は、展張に伴う原反の幅方向への縮少に伴つて、同方向中心部に向つて変位するものであるところ、本件発明において予定されているハニカム取付部の動きも、「ハニカムが展張せられ、幅方向に縮少力が働けば、これにつれて取付部も縮少する」というものであつて、イ''における引張棒の動きと同質のものであることが明らかである。

(2) ロとロ''の比較

ロ''においては、原反Pの最下層セル内に挿入された七本の引張棒の原反Pからのはみ出した両端部分を人力により押し下げることによつて原反Pを展張することは前記のとおりであるが、ロ号方法における原反は、多数のシートが一枚ずつ一定の間隔幅(ロ号方法においては糊付部分の幅が約一三ミリメートル、次の糊付部分までの幅が約二一ミリメートル)で互いに接着されているもので、これを上下方向に引張ることによつて非接着部分を斜めの四辺、接着部分を上下の二辺とする六角形とするのであるから、ハニカムとの製品幅は原反幅によつて、展張方向のサイズは積層シートの枚数によつてそれぞれ規定されるのである。したがつて、ロ''においても、ロにおけると同様、原反Pの展張により、必然的に所定のセルサイズを有するハニカムが得られるのであつて、ロ''はロの構成要件を充足する。

この点に関し債務者は、まず、ロ''において展張のみによつて所定のセルサイズの製品としているのではなく、右展張に引き続いて湯槽への浸漬前に行われる幅方向への若干の拡張も所定のセルサイズを得るために不可欠の手段である旨主張するけれども、前記のとおり、ハニカム製品の各セルのサイズは、原反の糊付部分の幅及び次の糊付部分までの幅により規定されるのであつて、原反を幅方向に拡張することによりセルサイズそのものに影響が与えられるものとは考え難く、むしろ右のような幅方向への拡張は、展張によつて生じた六角形のセルの形状を整えるという以上の効果をもたないとみるべきである。

次に、債務者は、本件発明は機械力により原反を展張するのに対し、ロ号方法は、人力により原反を展張している点が相違すると主張する。

なるほど、本件発明における引張装置は、本件公報の記載からも、それが専ら機械力を用いるものであることが推知され、他方、ロ号方法における原反の展張作業は、その積層シートの最下層セル内に挿入された引張棒を人力により下方に押しさげ、支持枠7に係止することによつて行なわれることは前記のとおりである。しかしながら、前記当事者間に争いがない本件装置の構造及びロ号方法におけるイ''、ロ''に示される原反展張作業工程の内容に鑑みれば、ロ号方法においても上方の支持枠6、下方の支持枠7及びこれらの枠に係止される引張棒5などから生ずる機械的支持力をも利用しつつ、原反を展張し、更に、その展張状態を維持していることが明らかであつて、右のように最下層セル内の引張棒を下方に押し下げ、支持枠7に係止する作業自体が人力によりなされるとしても、なお、全体として機械力を用いて展張していると評して妨げないから、債務者の右主張も採ることはできない。

更に、債務者は、ロ号方法においては、原反の最下層セル内に挿入した引張棒を一方向(下方)にのみ引張つて原反を展張するのであるから、「互いに反対方向に」引張つて原反を展張する本件発明とは異なる旨主張する。

しかしながら、ロ号方法におけるように、一方向を固定し、他方のみを引張る場合にも、その引張力に相応し、かつ、加えられる力と逆向きの力が固定した側にも生ずる(作用反作用の法則)から、双方を互いに反対方向に引張つた場合と同一の効果が生ずることは物理学上明らかである。したがつて、仮に、本件発明における「引張装置を互いに反対方向に引張る」の意味が、二個一対の引張装置を各別に反対方向に移動させるとの趣旨であるとしても、ロ号方法における右展張の方法は本件発明におけるそれと均等と評すべきであるから、債務者の右主張も当を得ない。

(3) ハとハ''の比較

ハ''においても、前記のとおり、熱可塑性プラスチックの属性に従つて、展張状態のハニカムを整形硬化するため、まず、展張状態のハニカムを加熱軟化させ、然る後冷却硬化させており、ハの構成要件を充足する。

なお、ハ''において、加熱中に行なわれる案内枠15の移動による幅方向への拡張も、前記加熱前のそれと同様、ハニカム製品のセルサイズに影響を与えるものではなく、展張により生じた六角形のセルの形状を整える程度の効果を生ずるに止まるものと認むべきであるから、右拡張は、ハ''において、ハの構成要件を全て充足した上で付加されたものにすぎない。

(4) ニとニ''の比較

いずれも、ハニカムの加熱温度をハニカム素材の軟化点附近の温度に調整することであるから、ニ''がニの構成要件を充足することは明らかである。

以上のとおり、ロ号方法は、本件発明の構成要件を全て充足し、これに牴触するというべきである。そして、前記のとおり、ロ号方法はイ号方法に、湯槽浸漬前及び浸漬中の二回にわたり原反を幅方向に拡張するという工程を付加したにすぎないものであるから、ロ号方法が本件発明に牴触する以上、イ号方法もまたこれに牴触することは論を俟たない。

2  <疎明>によれば、債務者会社の目的が、合成樹脂製品の製造販売であることが一応認められ、この事実によれば、債務者は、業としてロ号方法を実施しており、かつ、業としてイ号方法を実施する虞があるものと認むべきである。

四債務者の「自由技術」及び「権利濫用」の主張について

債務者は、本件特許出願前に発行された米国特許A明細書には、本件発明におけるイ、ロの構成要件と同一の技術事項が開示されており、ハ、ニの構成要件は、本件出願当時公知公用の技術であつて、本件特許は、公知技術の寄せ集めにすぎず、新規性、進歩性が欠如するものとしてもともと無効とされるべきものであるから、債務者実施のロ号方法は本来自由技術に属するものであるか、そうでないとしても、右のような無効とさるべき特許権に基づいて妨害排除を請求することは権利の濫用に当たる旨主張する。

もとより、仮に、本件発明が公知の技術であるとしても、現段階においては本件特許を無効とする旨の確定審決がなされていないことは弁論の全趣旨により明らかであるから、本件特許権は一応有効な権利とみなさざるを得ないけれども、およそ特定の特許が、何らの新規性、進歩性を有さず、出願時公知公用の技術そのものを内容とするものである場合には、自由技術又は権利濫用等の法理の適用により、当該特許権利者の独占的権利の行使が制約されることがあるというべきであるから、以下に本件特許の内容の公知性について検討する。

<疎明>によれば、米国特許Aは、ハニカムシート材料を展張する方法及びその手段に関する発明で、その目的はハニカムの原反の両端の幅方向における多数の等間隔点に単一の展張力を加えることにより、末端部におけるセルも中央部におけるセルも均一な六角形状に展張されるようにすることにあり、かかる目的を達するため、原反の展張方向末端に係合すると共に展張に伴う原反の幅方向への縮少に伴つて内側にすぼまつていくように取り付けた幅方向に伸縮自在の係合手段を組み込んだ引張装置を用いること、米国特許Aの主目的は、以上のような作用効果を有する引張装置そのものの考案にあることが一応認められる。このように、米国特許Aは、装置の発明を内容とするものであるけれども、右引張装置を原反の両端に幅方向伸縮自在に取り付けて、ハニカムを展張することにより、全体が均一なセルとなるようにするというものであるから、その構成、目的、作用、効果において本件発明におけるイ、ロと同一の技術的思想を包んでいるといいうる。

しかしながら、<疎明>によれば、米国特許Aは、主として紙、アルミニュウム箔、織布、繊維、ガラス繊維などの可撓性材料を素材とするハニカムの製造に適用される発明であることが一応認められるに止まり、当該発明が熱可塑性プラスチックを素材とすることを予定しているか否かは、右書証によつても必ずしも判然としないし、他に本件特許が出願当時公知公用の技術を内容とするものであることを認めうる証拠はない。かえつて、<疎明>によれば、「概説」には、プラスチックを含む高分子材料を用いて所定の形態の製品を得る典型的な加工方法として、材料を溶融状態になし、これを適当な金型(mold)に導き、その型通りの形態にする成形法(molding)と適宜熱軟化状態で、別に型を用いないで、材料に適宜外力を加えながらそれぞれの形態に変形する成形法(shaping)の二つが紹介されており、これによれば、本件発明のように固形の熱可塑性プラスチックに常温状態で外力を加えることにより成形する方法は、およそ典型的な成形方法に属さないことが窺われるうえ、プラスチックについては、その特性につき、本件特許出願時はもとより、現在においても、未開の分野が少なくないことは公知の事実であつて、紙その他の物質に関する成形の技術をプラスチックに応用すること自体、新規性、進歩性を有するものといつても過言ではない。

そうすると、本件特許が出願当時公知公用の技術を内容とするものであることを前提とする前記債務者の「自由技術」及び「権利濫用」の主張は、いずれも理由がない。

五債権者の差止請求権

債務者が、昭和五五年一一月ころより前から、ロ号方法を使用して、硬質塩化ビニール製のハニカムの製造販売を開始し、自ら又はニューアドバンス株式会社を介して関東一円に存在する最終ユーザーに販売していることについては当事者間に争いがなく、債務者が右製造販売を業として行つており、かつ、業としてイ号方法による同様製造販売を行う虞のあることは前記三2で認定したとおりである。

以上によれば、債権者は、特許法一〇〇条により侵害差止請求権を有する。

六保全の必要性

<疎明>を総合すると、次の事実が一応認められる。

(一)  債権者会社の目的は、ハニカム等を応用した公害防止関連装置や各種ハニカム製品の製造販売及びこれに関連する事業であり、債権者がその製造方法としての本件発明の開発に少なくとも金二〇〇〇万円を投入した硬質塩化ビニール製ハニカムは、ペーパーハニカムと並んで、債権者会社の主力商品の一つであること。

(二) しかし、汚水処理装置としての接触材については、昭和五五年当時は、硬質塩化ビニール製ハニカムが市場において一〇〇パーセントに近い割合を占めていたが、徐々に他種の接触材に市場を侵蝕され、現在では、硬質塩化ビニール製ハニカムが接触材全体に占める割合は、約三〇パーセントに減少し、他種の接触材との間で激しい競争を強いられているところ、債務者が、本件発明の構成要件を充足するイ号方法又はロ号方法を用いて製造し、市場に送り込む硬質塩化ビニール製ハニカムは、全体の三分の一の割合を占めるに至つており、さらにその割合を拡大するおそれもあること。

(三) 債権者は、セルサイズ三〇ミリメートル、フィルムの厚さ一八〇ミクロンの硬質塩化ビニール製ハニカムを、昭和五四年当時は、一立方メートル当たり二万円の価格で販売していたが、同五五年にはこれを一万九五〇〇円に、同五六年には一万八〇〇〇円に、同五七年には一万七〇〇〇円に漸次値下げを余儀なくされてきているが、このような値下げは、前記他種接触材との競争がその一因であることは否めないもの、債務者が債権者製品と同様の硬質塩化ビニール製ハニカムを一立方メートル当たり一万五〇〇〇円という低廉な価格で最終ユーザーに販売していることも影響していること。

以上の事実を総合すると、債務者がイ号方法又はロ号方法を用いて硬質塩化ビニール製ハニカムを製造販売することを放置するならば、債権者の営業上の利益が侵害され、重大な損害を被るおそれがあると認められ、従つて、民事訴訟法七六〇条但書にいう保全の必要性を認めることができる。

七結論

以上により、本件申請は理由があるので、本件にあらわれた諸事実によつて推認される債務者に生ずべき損害(その損害は金銭によつて償われるものというべきである。)その他の諸事情を考慮して主文第一項所定の保証を条件として債務者に対し仮の地位を定める仮処分として同項のとおり不作為を命ずるのを相当とする。

(高山晨 小池信行 深見玲子)

第一目録(イ号方法)

一、別紙イ号図面記載の引張装置を用い、この引張装置に熱可塑性プラスチックシートの積層体から成る原反Pを次のようにセットしてから、これを加熱、冷却してハニカムコアを製造する方法

二、引張装置の構造

右引張装置はイ号図面中、第二図(平面図)、第三図(正面図)、第四図(側面図)に示すとおりである。

① 右引張装置の主体は、上下に相対向して配設された長方形の枠体1、2の四隅に支柱3を溶接して、直方体の形状としたフレーム4で構成されている。そして第二図に示すように、前記枠体1および2の内側において、該枠体と平行に、多数本の引張棒(串)5を掛止めるための左右一対の支持枠6、7がとりつけられ、かつ一方の支持枠6はフレーム4に固定され、他方の支持枠7は前記枠体1、2に対して左右方向(第二図参照)に移動しうるようにとりつけられている。すなわち各枠体1、2の内側にとりつけられた金具8により回転自在に装着されたネジ杆9に対して、前記支持枠7の両端に設けられたネジ環10が螺合し、このネジ杆が、その先端にとりつけられたチェンホイール11を介して回転すると、それに伴つて支持枠7が左右方向(第二図参照)に移動する構成となつている。なお前記チェンホイール11にはチェン12が懸張され、このチェンはハンドル13で駆動される。

② また、前記枠体1、2の各面には、前記各支持枠6、7と直交する関係を保つて、2本一対の案内枠14、15が井桁状にとりつけられ、この案内枠の間にも多数本の引張棒(串)5が挿入されるようになつている。そして一方の(第二図において下方の)案内枠14は枠体1、2に固定されているが、他方の(上方の)案内枠15は前記と同様にして、ネジ杆16、チェンホイル17およびチェン18等を介してネジ杆の長手方向に移動しうる構造となつている。なお、チェン18を駆動するためのハンドル20がとりつけられ、このハンドルを操作することによつて案内枠15を移動させる構成である。

ちなみに符号19は枠体1の上面にとりつけられたモータ、21はフレーム4の全体を吊りあげるためのワイヤである。

三、右引張装置を用いてのハニカムの製造法

① 第五図〜六図の説明図に示すように、右原反における積層シートの最上層と最下層とに、それぞれ多教本(各9本)の引張棒(串)5を挿入し、かつこの引張棒の前後両端を原反Pの端縁よりはみ出させながら、まず最上層における引張棒5の一方のはみだし部分を前記案内枠7、7に引掛ける(第五〜六図参照)。次いで右原反Pの最下層に挿入した引張棒5を、フレーム4の下側(第二〜三図の右側)に設けた固定の支持枠6、6内に挿入して、ハニカムが所定のセルサイズとなるとなるようにセットする。

② 第三図において原反Pを引張つて所定のセルサイズに展張させたならば、今度は原反の横方向における端縁部にも多数本(各32本)の引張棒5を挿入して(第二図参照)ハニカムの全面を固定するようになす。

③ 次いで展張したハニカムを引張装置ごと、ワイヤ21を介してホイストで吊りあげる。吊りあげる際、原反セット時の引張装置は90度回転して、その向きが変わる。すなわち、当初第二〜三図の右辺が床面に着地していたのが、ホイストで吊りあげると、第三図に矢印で示す向きに変わる。ホイストで吊りあげた引張装置全体を原反がセットされたまま、次のようにして加熱、冷却する。

④ すなわち約70℃の温水を満たした湯槽に浸漬し、数秒間浸漬させた後、これを引上げて今度は隣接する水槽(水道水(常温)を満たした水槽)に浸漬して、加熱軟化したハニカムを冷却硬化させる(第一図参照)。

⑤ 前記のようにして冷却硬化したハニカムは、これを前記三①②と逆の操作、すなわちハニカムの四辺に挿通してある多数本の引張棒5、5を引抜いた後、引張装置本体からとり出して、完成品とする。

第二目録(ロ号方法)

一、別紙イ号図面記載の引張装置を用い、この引張装置に熱可塑性プラスチックシートの積層体から成る原反Pを次のようにセットしてから、これを加熱、冷却してハニカムコアを製造する方法

二、引張装置の構造  第一目録二と同旨

三、右引張装置を用いてのハニカムの製造法

① 第二図に示すように、支持枠7が上方に、支持枠6が下方に位置するように、フレーム4を床面に設置しておく。なお、このとき、案内枠14と案内枠15との間隔を約四四五ミリメートルとしておく。

次いで、支持枠7近傍に位置するように幅六四〇ミリメートルの原反Pをフレーム4に挿入しつつ、原反Pにおける積層シートの最上層セル内それぞれに、長手方向断面が方形(一辺一一ミリメートル)の引張棒(串)5を人手により挿入する。挿入する引張棒5の前後両端を原反Pの端縁よりはみ出させ、引張棒5のはみ出した部分を前記支持枠7に人手により引掛ける。最上層セル内に挿入した引張棒5は、九本であり、そのうち、両端に位置する引張棒5、5のはみ出し部分は、案内枠14、15の枠内に位置する。

② 原反Pにおける積層シートの最上層セル内に引張棒を挿入した後、積層シートの最下層セルのうち案内枠14と案内枠15との間に位置するセル内に七本の引張棒5を挿入し、引張棒5の前後両端を原反Pの端縁よりはみ出させる。

次いで、案内枠14と案内枠15との間に位置すると共に最下層セル内に挿入された七本の引張棒5のはみ出し部分を人力により押し下げることにより原反Pを展張し、前記はみ出し部分を支持枠6に引掛ける。そして、案内枠14、15の枠に対応する最下層セル内に引張棒5を挿入し、引張棒5の前後両端を、支持枠6に引掛けると共に案内枠14、15の枠内に位置させる。

③ 次いで、原反の幅方向における両端縁部のセル内にも、セル毎に一本ずつ、多数本の丸棒5'を挿入し、挿入した丸棒5'の前後両端をハニカムの端縁よりはみ出させ、そのはみ出し部分を案内枠14、15の枠内に位置させる。その後ハンドル20を操作して案内枠15を幅方向に若干移動させる。

このようにしてから、未完成品であるハニカムを装着するフレーム4を、ワイヤ21を介してホイストで吊り上げる。吊り上げると、原反セット時のフレーム4は九〇度回転してその向きが変わる。

④ ホイストで吊り上げたフレーム4を、未完成品であるハニカムを取り付けたまま、約七三度の温水を満たした湯槽に浸漬し、ハニカムを加熱軟化する。湯槽に浸漬されたフレーム4に取り付けてあるハンドル20を操作して、案内枠15を幅方向に移動させることにより、ハニカムを湯槽に浸漬した状態でハニカムの幅を拡張する。

ハニカムの幅を拡張した後、さらに数秒間ハニカムを湯槽に浸漬し、その後、ハニカムを装着するフレーム4を引き上げて、今度は隣接する水槽に浸漬し、加熱軟化したハニカムを冷却硬化させる。

⑤ 冷却硬化後、ハニカムの四辺に挿通してある多数本の引張棒5および丸棒5'を引き抜き、ハニカムをフレーム4より取り出し、ハニカム完成品を得る。

特許公報

ハニカムの展張整形方法および装置

特願 昭五〇―五七二二

出願 昭五〇(一九七五)一月一〇日

公開 昭五一―八八五七六

昭五一(一九七六)八月三日

発明者 寺岡玲二

札幌市西区発寒八条五丁目五五七番地新日本コア株式会社内

出願人 新日本コア株式会社

札幌市西区発寒八条五丁目五五七番地

代理人 弁理士 鈴木正次

特許請求の範囲

一 折畳状態の熱可塑性プラスチックハニカムの展張方向の両端部へ、幅方向伸縮自在に引張装置を取付け、該引張装置を互に反対方向に引張つて前記ハニカムを所定のセルサイズに展張し、加熱および冷却によつてハニカムを展張状態のまま整形硬化することを特徴とするハニカムの展張整形方法。

二 折畳状態の熱可塑性プラスチックハニカムの展張方向の両端部へ、幅方向伸縮自在に引張装置を取付け、該引張装置を互に反対方向に引張つて前記ハニカムを所定のセルサイズに展張し、該ハニカムの素材の軟化点付近の温度に加熱した後、冷却硬化させることを特徴とするハニカムの展張整形方法。<中略>

図面の簡単な説明

第1図はこの発明により整形硬化したハニカムの一部斜視図、第2図は同じく折畳時の斜視図、第3図は折畳したハニカムの両端面へ鉄板を固着した状態の正面図、第4図は吸盤を吸着し、一部展張開始時の一部正面図、第5図は同じく吸盤吸着部の一部拡大平面図、第6図はこの発明の装置の正面図、第7図は同じく平面図、第8図は同じく展張時の一部平面図、第9図は環流ダクト断面図、第10図は下部が冷却した場合の展張ハニカムの正面図、第11図は不均等加熱の場合の展張ハニカムの正面図、第12図は展張固定具の斜視図、第13図は他の実施例の平面図、第14図は同じく正面図である。

1……吸盤、2……吸盤取付杆、3……支持金具、4……取付孔、5、5a……引張装置、6、6a……支軸、7、8、8a……ホース、9……環流ダクト、10……フィンヒーター、11……ファン、12……取入用ダンパー、13、13a……排風用ダンパー、14……ハニカム出入用ドアー、15……熱風整流装置、16、17……矢示、18……両面接着テープ、19……展張固定具、20……支持杆、21……温水槽、22、22a……レール、23、23a……可動レール台、23、24a……固定レール台、25、25a……レール、26、26a……基台、27、27a……支柱、28、28a……流体圧シリンダー、29、29a……ピストンロッド、30、30a……昇降盤、31、31a……支持腕、32、32a……支軸、33、33a……吸盤、34、34a……取付杆、35、35a……支持金具、36……案内杆、37……螺杆、38……ギャー、39……支持枠、40……鉄板。

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