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浦和地方裁判所川越支部 平成10年(ワ)170号 判決

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告らに対し、各自、金二〇六七万七一三二円及びこれに対する平成七年六月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、側溝強化、溜桝移設工事のために路側帯の部分が非舗装等になっていた道路において、自転車を運転していた亡F(以下、「亡F」という。)が、普通貨物自動車に接触して転倒し、死亡したことから、亡Fの遺族である原告らが、右工事に関与した被告らに対し、民法七〇九条、七一七条に基づき、右事故による損害賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実及び証拠上明かな事実

1  交通事故の発生

亡Fは、以下の交通事故により死亡した(以下、この交通事故を「本件事故」という。)

(一) 日時 平成七年六月一二日午前七時三〇分ころ

(二) 場所 埼玉県所沢市<以下省略>先道路上

(三) 事故態様 a株式会社(以下、「訴外会社」という。)の従業員であるG(以下、「G」という。)が、訴外会社所有の普通貨物自動車(春日部○○あ○○○、以下、「訴外車両」という。)を運転して新所沢方面から川越方面に微速で進行中、前記場所を自転車に乗って、同一方向に道路左側を併走していた亡F運転の自転車のハンドルと訴外車両左側面が接触し、転倒した亡Fが訴外車両後部左側車輪に巻込まれ、頭蓋骨脳挫滅傷により即死した。

2  本件事故現場の状況

本件事故現場の道路(以下、「本件道路」という。)は、埼玉県道川越所沢線で、片側一車線の、車道幅員七・一メートルであり、同県川越市方向に向かって左側は、建築途中のガソリンスタンド(以下、「本件ガソリンスタンド」という。)があり、本件ガソリンスタンドと本件道路との境には、もとコンクリート製の有蓋側溝が設けられていたが、平成七年五月ころから、側溝強化、溜桝移設工事(以下、「本件工事」という。)が行われ、本件事故当時、本件事故現場を含む路側帯の部分が幅五〇センチメートル、長さ約八〇メートルに亘り非舗装となっており、砂利が敷かれていた(以下、右非舗装部分を「本件工事部分」という。)。

3  当事者

(一) 原告ら

亡Fは、原告らの長女であり、原告らは、亡Fの相続人(相続分各二分の一)である。

(二) 被告ら

(1) 被告Y1社

被告Y1株式会社(以下、「被告Y1社」という。)は、本件ガソリンスタンド建設工事のために本件工事の施工を計画し、道路管理者である埼玉県b土木事務所に道路工事施行承認書を提出し、平成七年六月一日から同月三〇日までの間、右場所の工事施行承認(以下、「本件承認」という。)を得、本件工事を被告Y2株式会社(以下、「被告Y2社」という。)に注文した。

(2) 被告Y2社

被告Y2社は、被告Y1社から本件工事を請け負い、これを被告Y3株式会社(以下、「被告Y3社」という。)に注文した。

(3) 被告Y3社

被告Y3社は、被告Y2社から本件工事を請け負い、被告有限会社Y4(以下、「被告Y4社」という。)又は被告株式会社Y5(以下、「被告Y5社」という。)に注文した。

(4) 被告Y5社

被告Y5社は、被告Y3社又は被告Y4社から本件工事を請け負い、埼玉県所沢警察署から本件工事部分の道路使用許可を受けて、平成七年五月ころから、本件工事を施工した。

4  損害の填補

原告らは、本件事故の損害の填補として、自賠責保険から三〇〇〇万一六〇〇円の支払を受け、また、G及び訴外会社を被告とする損害賠償請求訴訟(当庁平成八年(ワ)第六六三号、以下、「別件訴訟」という。)の判決に基づいて訴外会社から二〇〇五万四五一二円の支払を受けた。

二  争点

1  被告らの責任

(一) 民法七〇九条(同法七一六条但書)に基づく責任

(1) 原告らの主張

ア 被告Y5社の責任

被告Y5社は、本件道路の側溝部分が、本件工事前は、幅員〇・五メートルのコンクリート製の側溝であり、十分自転車及び歩行者が通行できたのであるから、本件工事によって本件道路の一部を使用する場合、交通事故の発生する危険性が予想されるので、本件工事においては、工事当日工事を完了できる部分だけを掘削すべきであり、未完部分が残存した場合には、これを埋戻し、舗装することにより通行の妨害を阻止する義務を負っていたにもかかわらず、これを怠り、本件工事部分を掘削し、側溝部分に有蓋の側溝を設置し、砂利を敷いた状態で本件事故発生時まで放置したという過失により、亡Fが、車道部分を普通車と自転車を含む軽車両とが併進せざるをえなかった状況を生じさせ、本件事故を生じさせたものであるから、原告らに対し、民法七〇九条に基づいて、本件事故によって生じた亡F及び原告らの損害を賠償する責任がある。

イ 被告Y1社の責任

被告Y1社は、本件工事の発注者で、埼玉県b土木事務所から、本件工事の施行に関し、工事時間外は、施工した道路を復旧し、路盤を充分転圧して舗装し、歩行者通路を確保するなどして安全確保に努めること等を条件に本件承認を得たものであるから、本件工事の請負人や下請負人に右条件を告知し、これを厳守させる義務があるのにもかかわらず、これを怠り、舗装による仮復旧工事をさせないまま放置した点において過失があり、この過失によって、本件事故が発生したのであるから、原告らに対し、民法七〇九条、七一六条但書に基づいて、本件事故によって生じた亡F及び原告らの損害を賠償する責任がある。

ウ 被告Y2社の責任

被告Y2社は、土木工事の専門業者であり、本件工事を請負い、被告Y1社から道路工事施行承認書の交付を受け、これを確認したものであるから、本件承認において、右イの復旧工事を為すことが条件となっていることを知っていたので、本件工事を下請けに出す場合には、下請人に右条件を告知し厳守させる注意義務があり、また、本件工事が平成七年五月末には完了しているのに、右復旧工事が行われていないことを知っていたので、請負人に対して速やかに復旧工事を為すよう指示する義務があるにもかかわらず、これを怠り、復旧工事をさせないまま放置した過失があり、この過失によって、本件事故が発生したのであるから、原告らに対し、民法七〇九条、七一六条但書に基づいて、本件事故によって生じた亡F及び原告らの損害を賠償する責任がある。

エ 被告Y3社及び同Y4社の責任

被告Y3社は、同Y2社から本件工事を含む本件ガソリンスタンドの建設工事を請け負い、同Y4社に右工事を注文し、同Y4社は、同Y3社から右工事を請け負い、本件工事を同Y5社に注文したのであるから、右イの条件を被告Y5社に遵守させるべきであり、また、本件道路の側溝部分が、本件工事前は、幅員〇・五メートルのコンクリート製の側溝であり、十分自転車及び歩行者が通行でき、本件工事によって本件道路の一部を使用する場合、交通事故の発生する危険性が予想されることを熟知していたので、本件工事においては、被告Y5社に、工事当日工事を完了できる部分だけを掘削させ、未完部分が残存した場合には、これを埋戻し、舗装させることにより通行の妨害を阻止する義務を負っていたにもかかわらず、これを怠り、本件工事部分を掘削させ、側溝部分に有蓋の側溝を設置し、砂利を敷いた状態で本件事故発生時まで放置させたという過失により、亡Fが、車道部分を普通車と自転車を含む軽車両とが併進せざるをえなかった状況を生じさせ、本件事故を生じさせたものであるから、原告らに対し、民法七〇九条、七一六条但書に基づいて、本件事故によって生じた亡F及び原告らの損害を賠償する責任がある。

(2) 被告らの主張

被告らには、次の理由から過失がない。

ア 本件工事以前の本件工事部分は、路側帯及び側溝を含む本件ガソリンスタンド敷地であったところ、右路側帯部分は、車道と側溝に挟まれた五〇センチメートルに満たないものであり、電柱等の障害物があったり、側溝に向かってかなり下りに傾斜した路肩に挟まれており、また、右側溝部分には、コンクリート製の蓋に多数の隙間や凸凹があったため、およそ自転車が走行できる状態ではなく、被告らに、本件道路においてその車線及び路側帯を自転車が走行することを予見し、これに備えるべき義務を課することはできない。

イ また、本件工事部分は、右アのような状況であったから、本件工事部分の路側帯の自転車の通行は、「著しく歩行者の通行を妨げる」ことになるから、自転車が例外的に通行を許される場合にあたらない(道交法一七条の二第一項)ので、被告らに、本件道路においてその車線及び路側帯を自転車が走行することを予見し、これに備えるべき義務を課することはできない。

ウ 本件工事部分の反対車線側には、自転車通行可の標識が設置され、車道一車線分の十分な幅員(三・五メートル)が確保された歩道が存在したため、被告らに、本件道路においてその車線及び路側帯を自転車が走行することを予見し、これに備えるべき義務を課することはできない。

エ 被告らは、本件工事部分につき、砂利を敷いて埋め戻し、転圧を加えて平らにし、歩行者が右工事部分において転落、転倒等しないようにし、セイフティーコーンを置いて注意を促す等の措置を講じており、道路車両に対する注意義務として欠けるところはない。

(二) 七一七条に基づく責任

(1) 原告らの主張

ア 被告Y5社の責任

被告Y5社は、本件工事を行うことにより、本件道路を占有していたものであるところ、右工事を施行するため本件道路を掘削し、平成七年五月末までに右工事を完成させたものであるから、完成後速やかに掘削した道路を埋め戻し、転圧をかけ、舗装して、もとの状態にし、道路と工事部分との間に段差のない状態にしなければならない義務があるのにこれを怠り、被告Y3社からガソリンスタンドの裏側の舗装と一緒にやろうと言われたことから、右復旧工事を為さず、既存の道路と工事部分との間に段差のある状態に放置した点において、道路の保存に瑕疵があり、本件事故は、右瑕疵に基づくものであるから、原告らに対し、民法七一七条に基づいて、本件事故によって生じた亡F及び原告らの損害を賠償する責任がある。

イ 被告Y1社、同Y2社、同Y3社及び同Y4社の責任

被告Y1社、同Y2社、同Y3社及び同Y4社は、本件工事を順次請け負わせ、直接又は間接的に本件事故現場付近の道路を占有していたところ、本件事故現場には、前記アのとおりの保存に瑕疵があり、本件事故は、右瑕疵に基づくものであるから、原告らに対し、民法七一七条に基づいて、本件事故によって生じた亡F及び原告らの損害を賠償する責任がある。

(2) 被告Y2社、同Y3社、同Y4社及び同Y5社の認否及び主張

本件事故は、本件工事施工時間外の事故であり、工事中の事故ではないから、被告らには、本件工事部分に対する占有はない。また、被告らは、本件掘削工事部分につき、砂利を敷いて埋め戻し、転圧を加えて平らにしたのであるから、その設置・保存に瑕疵はなく、また、民法七一七条一項但書所定の損害発生を防止するに必要な注意をした。

(3) 被告Y1社の認否及び主張

被告Y1社は、本件工事部分についての占有の事実を否認する。占有があるとしても、間接占有であるので、原告主張の瑕疵についての責任は二次的なものである。

2  損害額

原告らの主張する亡F及び原告らの損害額は、以下のとおりである。

(一) 亡Fの損害

(1) 死体検案料 一〇万円

(2) 逸失利益 五四一二万四八三二円

(3) 慰謝料 二六〇〇万円

(二) 原告X1の損害

(1) 葬儀費用の半額 一三九万七七七二円

(2) 固有の慰謝料 二〇〇万円

(三) 原告X2の損害

(1) 葬儀費用の半額 一三九万七七七二円

(2) 固有の慰謝料 二〇〇万円

3  過失相殺

(一) 被告らの主張

本件事故について、被告らに責任が認められるとしても、本件道路は、元来自転車が通行するには危険であり、セイフティーコーン等により工事中であることをあらかじめ認識でき、かつ、反対車線側には自転車通行用の歩道があり、ほとんどの自転車が右歩道を通行していたにもかかわらず、亡Fは、あえて本件事故現場をトラックの後方から通行し、トラックに追突するような形で接触していることに鑑みると、亡Fにも過失があった。

(二) 原告らの主張

本件事故は、被告らが掘削した道路を放置したことにより生じたものであり、本件事故による亡F及び原告らの前記2の損害は、全部被告らが負うべきものである。道交法一八条に基づき、自転車は道路の左側端に寄って通行することができ、亡Fは、右側歩道を通行しなければならない義務もないし、又通行しなかったことを理由に過失を問われる問題ではない。なお、別件訴訟の判決において、訴外車両の動静及び訴外車両と路側帯との間の状況を認識した行動をとらなかったことが亡Fの過失と認定されているが、右路側帯の状況は、被告らが掘削した道路を放置したことにより生じたものであるから、右Fの過失は、全部被告らの行動により惹起されたものであり、その責任は被告らが負うべきものである。

4  損害の填補

(一) 被告らの主張

本件事故について、被告らに責任が認められるとしても、被告らの責任とG及び訴外会社の責任は、民法七一九条所定の共同不法行為に基づく不真正連帯債務の関係にあるところ、原告らは、亡FとGとの過失割合を二割五分対七割五分と認定した別件訴訟の判決に基づいて、訴外会社から損害の填補を受けているので、被告らの亡Fに対する過失割合が、Gの亡Fに対する過失割合を超えない限り、原告らが被告らに請求する余地はない。

(二) 原告らの主張

G及び訴外会社と被告らとでは、本件事故発生に対する原因をもたらした態様が異なっている。すなわち、被告らは、本件道路部分を通行できない状態に放置したことによって、亡Fの過失の原因をもたらしたのである。したがって、訴外会社が自己の責任について弁済をしたとしても、被告らの責任についてまで弁済をしたことにはならない。

第三争点に対する判断

一  前記争いのない事実、証拠(甲3ないし5、甲20、甲22の1ないし15、乙3、丙1及び2、証人H)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1  本件道路の状況

本件事故現場は、埼玉県所沢市のやや北方で、主要地方道である県道川越所沢線上であり、西武線c駅の北西約三五〇〇メートル、同線d駅の北東約二九〇〇メートルの地点に位置する。本件道路を北進すると、埼玉県狭山市上赤坂を通り、同県川越市に至る。本件道路は、同県所沢市の主要な道路であり、朝・夕の通勤時間帯は、渋滞の多い道路である。本件道路は、片側一車線の車道幅員七・一メートルで、川越市方面に向かって右側には、幅員三・五メートルの歩道が設けられており、同歩道は自転車通行可となっている。本件道路の道路規制は、指定速度四〇キロメートル毎時、駐車禁止及び追越しのための右側部分はみ出し禁止となっている。本件道路の同県川越市方面に向かって左側は、本件工事開始以前には、幅員約〇・五メートルのコンクリート製の側溝が設けられていた。

2  請負契約

被告Y1社と被告Y2社は、本件ガソリンスタンドの出入口を設置するために側溝を強化し、溜桝を移設するという内容の本件工事を含む本件ガソリンスタンド建設工事についての請負契約を締結し、被告Y2社と被告Y3社は、右工事についての下請負請負契約を締結し、さらに、被告Y3社と被告Y4社も、右工事についての請負契約を締結し、被告Y4社と被告Y5社は、本件工事についての請負契約を締結した。

3  本件承認及び承認条件

被告Y1社は、本件工事をするため、平成七年二月一三日、道路管理者である埼玉県b土木事務所に対し、道路法二四条による道路工事施行承認申請書を提出し、同年三月二八日、平成七年六月一日から同月三〇日までの間の本件工事の道路工事施行承認(本件承認)を得た。本件承認には、次の承認条件が付されていた。

(一) 工事現場には、さく又はおおいを設け夜間は赤色燈又は黄色燈を設置すること。また、交通の危険防止のため、所長が指示する道路標識その他工事標示施設を完備すること。

(二) 工事材料及び機械器具等は常に整理し交通の妨げにならないよう注意して、工事の進ちょくに応じ逐次路外へ搬出すること。

(三)(1) 工事時間は午前九時から午後五時までとする。

(2) 工事状況(工事施行前、施行中、施行後)が分かるように写真撮影を行い、完了届とともに写真を土木事務所長に提出すること。

(3) 転圧は、山砂二〇センチメートル以下、路盤一〇センチメートル以下(ランマーの場合)、舗装七センチメートル以下にて行い、写真を撮ること。

(4) 路盤等を充分転圧してから舗装すること。

(5) 工事施行に際しては、歩行者通路等の安全施設を設置し、安全確保に努めること。

(6) 道路交通法の使用許可を警察署でとること。

4  道路許可及び許可条件

被告Y5社は、本件工事を請け負い、埼玉県所沢警察署長に対し、平成七年五月一日、ロングU字溝設置及び集水桝移設工事のため、同年六月一三日、舗装本復旧工事のため、道路交通法七七条所定の本件工事部分の道路使用許可申請をし、道路使用許可を得た。右許可いずれについても、工事は午前九時から午後五時までの間とする、工事工程は、一日で終了できる範囲とし、工事の施工時間外は道路の掘削箇所等については埋め戻し、又は覆工板等により復旧させ全面交通開放することという条件が付されていた。

5  本件工事

被告Y5社は、被告Y3社と打ち合わせをし、前記3の道路工事施行承認書記載の承認条件も見た上で、平成七年五月、本件工事部分において、既設の古いU字溝を撤去して新しいU字溝を設置する本件工事を開始し、同月末ころ、砕石で復旧するところまで工事を終了させた。本件工事には、被告Y3社の社員Iが現場監督として立ち会っていた。

被告Y5社の担当者Hは、Iに対し、右工事終了に際し、本件現場付近を舗装することにより仮復旧をする旨提案したが、Iが、別紙交通事故現場見取図中の建築中のガソリンスタンドに接する左端の交差点から北岩岡方面に延びる道路の舗装工事と一緒にやるように述べたので、砕石で原状の舗装と同じ高さで復旧して、自然転圧をしたところで工事を止め、工事箇所の上にセーフティーコーンを並べておいた。

6  本件事故当時の本件事故現場の状況

本件事故当時は、別紙交通事故現場見取図のとおり、建築途中のガソリンスタンドがあり、道路との境に有蓋の側溝が設けられ、路側帯の部分が幅五〇センチメートル、長さ約八〇メートルに亘り非舗装となっており、砂利が敷かれ、車道との段差が最大一二センチメートルあり、同所にはセーフティーコーンが並べられ、その一部は車道にもはみ出していた。また、本件道路は、本件事故当時、川越方面に向かって渋滞しており、自動車が頻繁に通行していた。

7  本件事故の態様

訴外会社の従業員であるGが、訴外車両を運転して、本件道路を川越方面に微速で進行していたところ、亡F運転の自転車が、本件工事部分が右6の状況であったため、訴外車両の後方から同一方向に、本件道路の車道を進行し、訴外車両を追い越そうとして、ハンドルと訴外車両左側面を接触させ、転倒し、亡Fが訴外車両後部左側車輪に巻込まれ、頭蓋骨脳挫滅傷により即死した。

二  争点1(一)(民法七〇九条〔七一六条但書〕に基づく責任)について

以上認定した事実に基づいて判断する。

1  被告Y5社の責任

前記一のとおり、被告Y5社は、被告Y1社が被告Y2社に、被告Y2社が被告Y3社に、被告Y3社が被告Y4社に、被告Y4社が被告Y5社に請負わせた本件工事を施工した。そして、被告Y5社は、被告Y1社が得た本件承認に、転圧は、舗装七センチメートル以下にて行うこと、路盤等を十分転圧してから舗装することが条件として付されていることを熟知しており、また、自らが埼玉県所沢警察署長から得た道路使用許可にも、工事の施工時間外は道路の掘削箇所等については埋め戻し、又は覆工板等により復旧させ全面交通開放することという条件が付されており、右各条件に照らすと、本件工事において、工事施工時間外においては、本件工事部分について、本件工事部分の舗装までを含む仮復旧工事をし、本件工事部分を全面交通開放し、交通の妨害にならないようにする義務を負っていたと認められる。にもかかわらず、被告Y5社は、平成七年五月末に、本件工事部分について、舗装をすることをせず、砕石で原状の舗装と同じ高さで、自然転圧をしたところで工事を止め、セーフティーコーンを並べておいたのみで放置したのであるから、過失があったというべきである。

そして、その結果、亡Fは、本件工事部分の内の路側帯を通行することができず、車道に出て、訴外車両を追い越そうとして、本件事故に遭遇したものであるから、右被告Y5社の過失と本件事故の発生との間には相当因果関係が認められる。

2  被告Y3社の責任

前記一のとおり、被告Y3社は、被告Y1社が被告Y2社に注文した本件工事を含む本件ガソリンスタンド建設工事を、被告Y2社から請負ったものであり、さらに、右工事を被告Y4社に注文したものであるから、民法七一六条但書所定の事由があるか否かについて検討する。

前記一のとおり、被告Y3社は、本件工事について、被告Y5社と打ち合わせをし、本件承認の条件を被告Y5社に示し、本件工事に社員のIを現場監督として立ち会わせていたものである。したがって、被告Y3社は、被告Y1社が得た本件承認に、転圧は、舗装七センチメートル以下にて行うこと、路盤等を十分転圧してから舗装することが条件として付されていることを熟知しており、被告Y5社が埼玉県所沢警察署長から得た道路使用許可にも、工事の施工時間外は道路の掘削箇所等については埋め戻し、又は覆工板等により復旧させ全面交通開放することという条件が付されていたのであるから、右各条件に照らすと、本件工事において、工事施工時間外においては、本件工事部分について、被告Y5社に対し、本件工事部分の舗装までを含む仮復旧工事をし、本件工事部分を全面交通開放し、交通の妨害にならないように指図する義務を負っていたと認められる。

にもかかわらず、前記のとおり、被告Y3社は、平成七年五月末、本件工事の一時中止に際し、被告Y5社の担当者Hの本件工事部分を舗装することにより仮復旧をする旨の提案に対して、別の工事場所の舗装工事と一緒にやるように指示し、本件工事部分を、砕石で原状の舗装と同じ高さで復旧して、自然転圧をしたところで工事を止め、工事箇所の上にセーフティーコーンを並べたままの状態で放置させたのであるから、被告Y3社の指図には過失があったというべきである。

そして、その結果、亡Fは、本件工事部分の内の路側帯を通行することができず、車道に出て、訴外車両を追い越そうとして、本件事故に遭遇したものであるから、右被告Y3社の過失と本件事故の発生との間には相当因果関係が認められる。

3  被告Y1社の責任

被告Y1社は、本件工事の注文者であるから、民法七一六条但書所定の事由があるか否かについて検討する。

前記一のとおり、被告Y1社は、本件工事を施行するに当り、転圧は、舗装七センチメートル以下にて行うこと、路盤等を十分転圧してから舗装することが条件として付されている本件承認を得ており、また、右承認には、道路交通法の使用許可を警察署でとることも条件とされており、被告Y5社をして本件道路使用許可をとらせたところ、右許可には工事の施工時間外は道路の掘削箇所等については埋め戻し、又は覆工板等により復旧させ全面交通開放することという条件が付されていたのであるから、右各条件を請負人らに遵守させる義務、すなわち、本件工事において、工事施工時間外においては、本件工事部分について、請負人らを通じて、又は、直接に被告Y5社に対し、本件工事部分の舗装までを含む仮復旧工事をし、本件工事部分を全面交通開放し、交通の妨害にならないように指図する義務を負っていたと認められる。

にもかかわらず、被告Y1社は、請負人ら又は被告Y5社に特段の指示をせず、その結果、被告Y5社が、平成七年五月末、本件工事の一時中止に際し、本件道路部分を舗装して仮復旧することをせず、砕石で原状の舗装と同じ高さで復旧して、自然転圧をしたところで工事を止め、工事箇所の上にセーフティーコーンを並べたままの状態で放置することになったのであるから、被告Y1社の指図には過失があったというべきである。

そして、その結果、亡Fは、本件工事部分内の路側帯を通行することができず、車道に出て、訴外車両を追い越そうとして、本件事故に遭遇したものであるから、右被告Y1社の過失と本件事故の発生との間には相当因果関係が認められる。

4  被告Y2社及び同Y4社の責任

被告Y2社は、被告Y1社から本件工事を含む本件ガソリンスタンドの建設工事を請け負い、これを被告Y3社に注文した者であり、被告Y4社は、被告Y3社から右工事を請け負い、本件工事を被告Y5社に注文したものであるから、それぞれ、民法七一六条但書所定の事由があるか否かについて検討する。

前記一のとおり、被告Y1社は、本件工事について、転圧は、舗装七センチメートル以下にて行うこと、路盤等を十分転圧してから舗装することが条件として付されている本件承認を得ており、また、右承認には、道路交通法の使用許可を警察署でとることも条件とされており、被告Y5社をして本件道路使用許可をとらせたところ、右許可には工事の施工時間外は道路の掘削箇所等については埋め戻し、又は覆工板等により復旧させ全面交通開放することという条件が付されていたのであるから、被告Y2社も、被告Y1社から請け負った本件工事において、自ら工事をする際には右各条件を遵守し、他者に注文する場合には、孫請人らに右各条件を遵守させる義務、すなわち、本件工事において、工事施工時間外においては、孫請人らに対し、本件工事部分の舗装までを含む仮復旧工事をし、本件工事部分を全面交通開放し、交通の妨害にならないように指図する義務を負っていたと認められる。

また、被告Y4社が被告Y3社から請け負った本件工事には、右各条件を被告Y5社に遵守させる義務が課せられており、被告Y4社は、本件工事において、工事施工時間外においては、被告Y5社に本件工事部分の舗装までを含む仮復旧工事をし、本件工事部分を全面交通開放し、交通の妨害にならないように指図する義務を負っていたと認められる。

にもかかわらず、被告Y2社は、孫請人らに、被告Y4社は、被告Y5社に、特段の指示をせず、その結果、被告Y5社が、平成七年五月末、本件工事の一時中止に際し、本件道路部分を舗装して仮復旧することをせず、砕石で原状の舗装と同じ高さで復旧して、自然転圧をしたところで工事を止め、工事箇所の上にセーフティーコーンを並べたままの状態で放置することになったのであるから、被告Y2社及び同Y4社の指図には過失があったというべきである。

そして、その結果、亡Fは、本件工事部分内の路側帯を通行することができず、車道に出て、訴外車両を追い越そうとして、本件事故に遭遇したものであるから、右被告Y2社及び同Y4社の過失と本件事故の発生との間には相当因果関係が認められる。

三  争点1(二)(民法七一七条に基づく責任)について

1  本件工事部分について

民法七一七条所定の「土地の工作物」は、広く土地に接着して人工的作業を加えることによって成立した物をいい、本件工事部分は、被告Y5社によって、既設の古いU字溝を撤去して新しいU字溝を設置し、砕石で復旧するところまで工事がされたものであるから、「土地の工作物」に該当する。

2  被告Y5社の責任

前記一のとおり、被告Y5社は、平成七年五月ころ、本件工事部分について、本件工事をし、同月末ころ、砕石で原状の舗装と同じ高さで、自然転圧をし、工事箇所の上にセーフティーコーンを並べておいたのであるから、本件事故当時、本件工事部分を占有していたものというべきである。そして、本件工事部分は、交通の妨害にならないよう全面交通開放されているべきところ、被告Y5社は、本件工事部分を舗装することをせず、砕石で原状の舗装と同じ高さで、自然転圧をしたところで工事を止め、セーフティーコーンを並べておいたのみで放置したのであるから、本件工事部分の保存に瑕疵があったというべきである。

そして、その結果、亡Fは、本件工事部分内の路側帯を通行することができず、車道に出て、訴外車両を追い越そうとして、本件事故に遭遇したものであるから、右瑕疵と本件事故の発生との間には相当因果関係が認められる。

3  被告Y3社の責任

前記一のとおり、被告Y3社は、社員Iを本件工事の現場監督として本件工事に立ち会わせており、被告Y5社は、右Iに相談しながら本件工事を進めていたのであるから、本件事故当時、被告Y3社は、本件工事部分を占有していたものというべきである。そして、本件工事部分は、交通の妨害にならないよう全面交通開放されているべきところ、被告Y5社は、右Iの指示で本件工事部分を舗装することをせず、砕石で原状の舗装と同じ高さで、自然転圧をしたところで工事を止め、セーフティーコーンを並べておいたのみで放置したのであるから、本件工事部分の保存に瑕疵があったというべきである。

そして、その結果、亡Fは、本件工事部分内の路側帯を通行することができず、車道に出て、訴外車両を追い越そうとして、本件事故に遭遇したものであるから、右瑕疵と本件事故の発生との間には相当因果関係が認められる。

4  被告Y1社の責任

民法七一七条にいう「占有者」とは、当該工作物を現に事実上支配する者をいう。前記一のとおり、本件工事の現実の施工者は被告Y5社であり、現場監督をしていたのは被告Y3社の社員Iであったが、それのみで、被告Y1社の右占有を排除するものではない。本件工事部分について本件承認を得、本件承認に付された条件を工事施工業者に遵守させる指揮・監督権限を有し、また、その義務を負っていたことに照らすと、被告Y1社は、本件工事部分について、その指揮・監督権限に基づいて、被告Y5社及び同Y3社と共に直接に支配していたと評価すべきであり、民法七一七条所定の「占有者」に該当するというべきである。

そして、本件工事部分には、前記2及び3のとおり、保存に瑕疵があり、右瑕疵と本件事故の発生との間には相当因果関係が認められる。

5  被告Y2社及び同Y4社の責任

本件全証拠によっても、被告Y2社は、被告Y1社から本件工事を含む本件ガソリンスタンドの建設工事を請け負い、被告Y3社に右工事を注文し、被告Y4社は、被告Y3社から右工事を請け負い、被告Y5社に本件工事を注文したことしか認めることはできず、これだけでは、被告Y2社及び同Y4社が本件工事部分を現に事実上支配していたと認めることはできないので、同人らに民法七一七条に基づく責任を認めることはできない。

四  争点2(損害額)について

1  亡Fの逸失利益

証拠(甲1、甲21)及び弁論の全趣旨によれば、亡Fは、昭和五〇年○月○日生で、本件事故当時、スーパーのレジ係として働いていた二〇才の健康な女子であったことが認められる。

亡Fは、本件事故により死亡しなければ、六七才までの四七年間就労可能であったと考えられるところ、平成六年賃金センサスにおける産業計、企業規模計、学歴計の女子労働者の全年齢平均賃金年額三二四万四四〇〇円を基礎とし、生活費控除を三〇パーセントとして、ライプニッツ方式係数一七・九八一〇を乗じて、亡Fの逸失利益を算出すると、四〇八三万六二八九円となる。

2  死体検案料

証拠(甲6)によれば、死体検案料一〇万円が、亡Fの損害と認められる。

3  葬儀費用

証拠(甲7ないし17)によれば、原告らが、亡Fの葬儀、四九日納骨、仏壇等の諸費用として三〇〇万円を超える金員を支出したことが認められるところ、亡Fの身分関係等に照らし、本件事故と相当因果関係を有する葬儀費用等としては一二〇万円(原告ら各自につき六〇万円)をもって損害と認める。

4  慰謝料

亡Fと原告らとの身分関係、本件事故の態様等本件訴訟に表われた諸事情を考慮すると、亡Fの死亡による慰謝料は、亡Fにつき一八〇〇万円、原告ら各自につき一〇〇万円とするのが相当である。

5  そうすると、過失相殺前の原告らの損害額(亡Fからの承継分及び固有の損害の合計額)は、原告ら各自につき三一〇六万八一四四円となる。

五  争点3(過失相殺)について

前記二及び三のとおり、被告らの過失行為及び道路の保存についての瑕疵と本件事故との間には因果関係があるので、前記四の本件事故によって亡F及び原告らに生じた損害について、被告らは、不法行為に基づく責任を負うべきである。しかし、前記一のとおり、本件工事部分は、本件事故現場を含めて長さ約八〇メートルに及び、本件事故現場の手前からずっとセーフティーコーンが並べられ、通行不可能であることは一目瞭然の状態であったこと、本件道路は、本件事故当時、川越方面に向かって渋滞しており、自動車が頻繁に通行していたことに照らすと、亡Fは、本件事故現場付近の本件道路の左側を自転車で通行するにはかなりの危険を伴うことは容易に予測できたと推認でき、かつ、本件道路の右側に自転車も通行可能な幅員三・五メートルの歩道があり、亡Fは、右歩道を利用するか、又は、訴外車両の動静に注意を払い、自転車から降りたり、より慎重な自転車運転を心がけたりすることにより、本件事故を回避することが容易にできたにもかかわらず、本件道路を進行中の訴外車両の後方から訴外車両を追い越そうとして、本件道路の車道部分に出て、本件事故に遭ったものであるから、本件事故の発生についての過失があると認められ、双方の過失を対比すると、亡Fの過失割合は二割五分を下ることはないというべきである。したがって、原告らが、被告らに前記二及び三の各不法行為に基づく損害として請求できる金額は、最大でも各自二三三〇万一一〇八円ということになる。

六  争点4(損害の填補)について

被告Y1社、被告Y2社、被告Y3社及び被告Y5社の責任とG及び訴外会社の責任は、民法七一九条所定の共同不法行為に基づく不真正連帯債務の関係にあるところ、原告らは、本件事故の損害の填補として、自賠責保険から三〇〇〇万一六〇〇円の支払を受け、また、別件訴訟の判決に基づいて訴外会社から二〇〇五万四五一二円の支払を受けたことについては、当事者間に争いがないので、原告らの未填補の損害はないこととなる。

第四結論

以上の次第で、原告らの請求は、いずれも理由がないので、主文のとおり、判決する。

浦和地方裁判所川越支部

(裁判官 坂田千絵)

<以下省略>

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