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浦和地方裁判所熊谷支部 昭和50年(ワ)62号

原告

高橋政雄

右訴訟代理人弁護士

岡田啓資

(ほか五名)

被告

岩崎電気株式会社

右代表者代表取締役

新垣長栄

右訴訟代理人弁護士

和田良一

(ほか四名)

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告が被告の埼玉製作所第三機器課(以下単に「第三機器課」というときは、同製作所のこれを指す。)管理係で勤務する地位を有することを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 被告は、各種照明ランプ、照明器具の製造、販売等を目的とする会社であるが、肩書地(略)に本社を置き主たる生産部門として埼玉、茨城両県内にそれぞれ工場(埼玉製作所、茨城製作所)を有するほか、全国に一二の支店、九の営業所、一一の出張所を持ち、その従業員数は約一七〇〇名である。なお、被告会社にはその従業員約一三〇〇名をもって組織された岩崎電気労働組合(以下「組合」という。)があり、全日本電機機器労働組合連合会に加盟している。

(二) 原告は、昭和四七年三月、岩手県立盛岡工業高等学校電気科を卒業し、同年四月、被告会社に入社し、当初埼玉製作所第三機器課製造係に配属され、昭和四八年八月から被告主張の本件配転命令までの間、同課管理係員として勤務していた者で、組合に加入している。

2  確認の利益

被告会社は、原告は仙台支店のセールスヘルパーとして勤務すべきことを命じられたとして、昭和五〇年四月二日以降、原告が第三機器課管理係に勤務する従業員であることを争っている。

3  よって、原告は被告に対し、請求の趣旨記載のとおりの地位確認を求める。

二  請求原因に対する認否

1及び2の事実は認めるが、3は争う。

三  抗弁

1  配転命令

被告会社は昭和五〇年四月二日原告に対し、同日付で仙台支店のセールスヘルパーとして配置換えする旨の意思表示(以下「本件配転命令」という。)をした。

2  配転命令の必要性と組合との交渉経過

(一) 業界の不況と第一次不況措置

昭和四八年秋の石油危機を契機とした総需要抑制政策の浸透に伴って我国の経済情勢は低成長、零成長の様相を呈し、被告会社の属する電気機器製造業界も、直接的打撃を受け、低迷の度合を深めるに至った。

そして、被告会社の業績も、第五八期(同年一二月ないし昭和四九年五月)の決算では急激に落ち込み、対前期比四一%の大幅減益となり、第五九期(同年六月ないし一一月)に入ってからも、売上に好転回復の兆がなかった。

そこで被告会社は、売上伸長を図るため、同年七月から八月にかけて、本社技術部及び開発部並びに埼玉製作所から合計一七名を販売事業所六か所及びその関連部門に応援派遣し、又組合との協定に基づき、在庫削減のための生産調整として、同年九月から一一月にかけて、埼玉、茨城両製作所及び本社開発部の従業員を対象に一時帰休を実施する等した。

しかし、依然として市況の好転がなく、結局第五九期の決算も対前期比八二・三%の大幅減益となった。

(二) 第二次不況措置

被告会社は、業績不振を挽回すべく、第六〇期前半期(昭和四九年一二月ないし昭和五〇年五月)に入ってからも、より一層の経営努力を重ねてきたが、販売実績は依然として振わなかった。そこで被告会社は、販売増強、生産面の効率化、製品在庫削減、茨城製作所の操業一時停止等の施策を骨子とする第二次不況措置を立案し、その実施準備をするとともに、同年三月三日組合に対し、右不況措置を提案し、数次にわたる交渉の結果、同月一九日、右不況措置の実施について合意に達した。その概要は次のとおりである。

(1) 昭和五〇年一月三〇日、被告会社の臨時経営会議において、昭和四九年一二月の販売実績その他の情勢からして第六〇期前半期の売上目標の達成は極めて困難な状況にあり、より一層の販売増進を図るとともに収益確保の面でも一段の努力をする必要があるとの経営分析に基づき、各部門では徹底した経費削減に努めると同時に、(a)販売部門においては、販売増進策と流通経費の削減案を、(b)生産部門においては、生産コストの低減、仕入価額の圧縮、余剰人員の活用等を、(c)販売以外の各部門においては、販売部門で即戦力となり得る人材の拠出を、(d)その他管理職やその相当者の昇給延期、新規採用者の入社時期延期と初任給、固定資産の効果的処分等をそれぞれ検討すべきものとされた。

(2) 昭和五〇年二月一七日、被告会社の定例経営会議において、右(1)の検討課題に関する各部門からの諸提案につき検討がなされ、特に販売増進及び在庫削減の方策については次のような基本方針が打ち出された。即ちその内容は、(a)当面の危局打開のためには販売増進以外に途はなく、その方策として、セールス要員の増員、セールスヘルパー要員の新規配置、技術要員やクレーム処理要員の補充ないし増員、その他販売事業所等への必要人員の充足により販売部門の人的増強を図ることとし、その準備作業を鋭意進行させる、(b)本社各部門並びに埼玉製作所では、各販売事業所への人員拠出につき、具体的要請があり次第その協議に応じ得るよう準備を進める、(c)在庫削減方策については、関連各部門で検討のうえ至急結論を出す、というものであった。

(3) 被告会社は、右定例経営会議の基本方針に基づき、全国三二か所の販売事業所等に対して、セールス要員、セールスヘルパー要員、技術要員等を中心に、可能な限り多くの人員を投入することとし、本社各部門及び埼玉製作所に対しその補充要員の拠出方を要請し、これを受けた本社各部門及び埼玉製作所では、関係各部門との調整を図りながら具体的人選を進め、本社各部門から二三名(内組合員一六名)、埼玉製作所から八名(全員組合員)の合計三一名を選んだ。このようにして拠出された要員の配置については、本社総務部において関係各部門と協議のうえ、必要度の高い部署から順次配置することにし、受入先の諸般の事情と当該者の適性等を勘案して、当該者の職種、配置先、配転(異動)・応援派遣の別をそれぞれ内定した。そして原告も、右の経過をたどって、仙台支店のセールスヘルパーに内定した。

(4) 右(3)の配転、応援派遣に関する本社総務部内定案等をもとに、同年三月三日、被告会社は労使協議会において組合に対し、(a)販売部門の人的体制強化のための販売事業所等への配転及び応援派遣、(b)生産の効率化と製品在庫削減のための茨城製作所の操業一時停止等を内容とする第二次不況措置の実施を提案した。

そして、同月一〇日及び一七日の労使協議会等における質疑応答、交渉等を経て、同月一九日の労使協議会において、第二次不況措置の実施につき次のとおり合意した。即ちその内容は、(a)販売増強のための措置として、東京中央支店等七か所の販売部門へ組合員一〇名(但し、他に管理職七名が加わる。)を、同月二七日から同年一一月末日までの間応援派遣する、(b)組合は、販売部門とその関連部門への販売増進のための配転(予定人員組合員一五名)を了承する、(c)茨城製作所の一時帰休(休業)は、特定業務従事者等を除き、同年四月一日から五月二七日まで実施する、(d)茨城製作所から埼玉製作所への応援派遣は二一名とする、というものであった。

なお、右合意について組合側から疑義が示されたため、同年三月二五日に再度労使協議会を開いたうえ、同月二七日、右合意を内容とする協定書の調印がなされた。

(5) そこで、同年三月一九、二〇日の両日、被告会社は所属長を通じて配転及び応援派遣予定者に対し、その配属先と職務を示し、発令予定日を同月二五日とする内示を行なったうえ、同月二七日、然るべき理由により異動が保留又は取止めになった若干名並びに後述のとおり苦情処理に付されることになった原告及び元相原告(後に訴を取り下げた。)石井孝志を除く全員に対し、同日付でそれぞれ配転又は応援派遣の発令をした。

3  人選の経緯

(一) 昭和五〇年二月一八日、埼玉製作所の飯豊邦夫所長は第三機器課の瀬山健三課長に対し、第二次不況措置として販売部門を増強するため、同製作所からも販売事業所に、技術、クレーム処理、積算見積、業務等に従事できる要員を一〇名程度拠出することになったので、同課からも適任者一名を人選するよう指示した。

(二) そこで瀬山課長は、直ちに、係長、サブリーダーらの監督職と女子を除いた課員を対象に人選を開始した。そして人選にあたっては、販売事業所における右のような職務への適性のほか、転出後の同課の業務への支障の有無、程度、被告会社では中学校卒業の現地採用者については通常転勤させていないので、中学校卒業の現地採用者か否か、妻子の有無とか持ち家か否か等の家族関係や家庭環境等を考慮した。その結果、原告のほか同課管理係購買担当の新井凱博と同課製造係第一工程の玉木良一が候補にのぼったが、結局原告を最適任者として選んだ。

原告は、工業高等学校卒業で基礎知識があるし、同課製造係で製造ラインの仕事に従事し、その後同課管理係購買担当として対人折衝とか伝票の処理、事務処理等のスタッフとしての仕事を経験しているので、販売事業所において要請されているいずれの仕事にも十分適応できる能力がある。又、原告は独身で、アパート住いでもある。

これに対し、新井は訓練校卒業であるが、坂口管理係長の補佐的業務を行なう一方、種類が多く複雑な配管器具の購買業務を一手に引き受けており、新井に代わる者は直ぐには得難い状況にあるので、転出後の同課の業務に対する影響は原告の方がより少ない。それに、同人には妻子があるし、持ち家でもある。

又、玉木は原告と同様工業高等学校卒業で、能力的にも要請に適合するが、原告の方が一年先輩でもあるし、製造ラインとスタッフの両方を経験しており、原告の方がより適任である。

以上のような理由から原告を最適任者としたものである。

(三) 瀬山課長は同月二〇日過ぎころ、右の人選結果を同製作所総務課の古西登志雄課長を通じて飯豊所長に報告し、同所長は同月二五日ころまでに同製作所における拠出人員をまとめて本社に報告した。その結果、被告会社は、前述のとおり、原告を仙台支店のセールスヘルパーとして配転することにしたものである。

四  抗弁に対する認否

1  配転命令について

1の事実は認める。

2  配転命令の必要性と組合との交渉経過について2の(一)の事実中、昭和四八年秋の石油危機を契機とした総需要抑制政策により我国の経済情勢が低成長の様相を呈してきたこと、被告会社が、昭和四九年七月から八月にかけて、合計一七名の従業員を販売事業所及びその関連部門に応援と称して派遣し、又組合との協定に基づいて、埼玉、茨城両製作所及び本社開発部の従業員を対象に一時帰休を実施したことは認める。その余の事実は争う。

同(二)の冒頭部分中、被告会社が昭和五〇年三月三日組合に対し、被告主張のとおりの第二次不況措置を提案し、同月一九日に合意が成立したことは認め、その余の事実は争う。

同(二)の(1)の事実は争い、(2)及び(3)の事実は知らない。(4)の事実中、被告会社がその主張の日に労使協議会において組合に対し、その主張のとおりの第二次不況措置の実施を提案し、同月一九日に合意が成立し、同月二七日にその主張のとおりの(但し、配転予定人員数を除く。)協定書の調印がなされたことは認め、その余の事実は知らない。(5)の事実中、被告会社が同月二〇日所属長を通じて原告に対し、被告主張のとおりの本件配転命令の内示をしたことは認め、その余の事実は知らない。

3  人選の経緯について

3の事実は争う。

五  再抗弁

1  不当労働行為、思想差別(憲法一九条、二八条、労働組合法七条一号違反)

(一) 原告は、昭和四七年七月、被告会社と組合間のユニオン・ショップ協定により組合員となり、昭和四八年一二月から昭和四九年七月まで組合の青年婦人部常任幹事、同年八月には組合埼玉支部大会代議員を務める等して、今日まで活発な組合活動を行なってきた。例えば、原告は、昭和四九年四月の春闘においては、組合のストライキの先頭に立ち、決起集会で青年代表として決意表明をし、又卒先して組合のビラを職場の仲間に配付する等の活動を行ない、あるいは組合の真の民主的強化のために特定政党支持を改め、政党支持の自由を保障するよう組合支部大会で積極的に発言をした。

(二) 又、原告は、民青同盟員であり、右のような原告の活発な組合活動は、民青同盟員としての思想に基づくものである。民青同盟は、昨今の頽廃した社会に抗して、青年が真に価値ある人生を送るために、科学的世界観を学習し、それに基づき個人的生活とさまざまな社会的活動を正しく発展させて行くことを目的として結成された青年の民主的組織で、頽廃、不正義、社会的搾取、抑圧に対し、科学的な批判を加えて行動するため、資本の側から憎悪されていることすでに公知の事実である。

(三) しかして、本件配転命令は、原告の民青同盟員たる組合員としての影響力が他に及ぶことを嫌悪した被告会社が、原告の組合活動と影響力の拡大を妨害するためになしたものであるから、憲法二八条、労働組合法七条一号違反の不当労働行為として、又憲法一九条の思想、信条による差別的取扱いとして無効である。

2  労働契約違反

原告が被告会社に入社する際、原告と被告会社との間には、原告が将来、技術・技能系の職場で就業するとの合意がなされた。そして、被告会社もそれを前提にして、原告を、入社以来第三機器課の製造係あるいは管理係という技術関係の職場に勤務させてきたものである。しかるに、本件配転命令は、右労働条件を変更して仙台支店のセールスヘルパーという営業関係の事務職の職場に配置換えするものであるから、原告の同意がない限り、労働契約に違反し、無効である。

3  権利濫用

本件配転命令は、業務上の必要性と人選の合理性とを欠いており、権利濫用として無効である。

4  配転手続の信義則違反

(一) 被告会社は、本件配転命令の内示段階で早々と原告に事務引継を求めたうえ、原告が本件配転命令の内示を不服として組合と被告会社間の労働協約に基づき苦情処理の申立をするや、組合とも馴れ合って、原告をわずか一回しか苦情処理委員会の席に同席させず、かつわずか二回のおざなりな苦情処理委員会(但し、内一回は苦情処理のための中央労使協議会である。)による手続をなしただけで本件配転命令を発令し、原告が被告会社に対し質問書を提出したのに、これに誠意ある対応をしないばかりか、かえって懲戒解雇の脅しで本件配転命令に屈服することを原告に強要した。

(二) 又原告は、配転先の新業務がいかなる内容のものであり、果して原告がそれを十分にこなし得るか否かの判断資料となるべき説明等も被告会社からは受けていなかった。

(三) このように、本件配転命令の手続の実態は、妥当、公正な配転手続のあり方とはかけ離れた異常なものであり、明らかに信義則に違反しているから、本件配転命令は無効である。

六  再抗弁に対する認否

1  不当労働行為、思想差別について

1の(一)の事実中、原告が、昭和四七年七月、被告会社と組合間のユニオン・ショップ協定に基づき、組合員となったとの点は認めるが、その余の事実は不知。(二)の事実は不知。(三)の事実は争う。

2  労働契約違反について

2の事実中、被告会社が原告を第三機器課の製造係あるいは管理係として勤務させてきたことは認め、その余の事実は争う。

3  権利濫用について

3の事実は争う。

4  配転手続の信義則違反について

(一) 4の(一)の事実中、被告会社が本件配転命令の内示段階で原告に事務引継を求めたこと、原告が、本件配転命令の内示を不服として、組合と被告会社間の労働協約に基づき苦情処理の申立をしたこと、被告会社は二回の苦情処理委員会による手続を経て本件配転命令を発令したが、原告は右委員会に一回出席したこと及び原告が被告会社に対し質問書を提出したことは認めるが、その余の事実は否認する。(二)の事実及び(三)の主張は争う。

(二) 本件配転命令は、次のような経過を経て発令されたものであって、手続的にも何ら違法なところはない。

(1) 昭和五〇年三月二〇日、瀬山課長は、原告が仙台支店のセールスヘルパーとして配転されることになった旨の本社からの連絡を古西課長を通じて受け、同課長立会いのもとに原告に対し、次のとおり本件配転命令の内示をした。即ち、瀬山課長は原告に対し、第二次不況措置に伴う販売強化のため、埼玉製作所から一〇名近い人を拠出することになり、原告を右のとおり配転することになったこと、セールスヘルパーは、新しい呼称であるが、仙台支店でのその主な仕事は螢光灯の積算見積であること、詳細は販売部長の説明を聞くこと等を告げた。

これに対し原告は、即答できないとして、同月二四日に返事をする旨述べた。

なお、被告会社は、同月二七日、第二次不況措置に伴う異動者全員を対象に説明会を開き、被告会社がこのような措置をとった背景、販売事業所の実情、配属先販売事業所における仕事の内容等を説明したが、原告はこれに出席しなかった。

(2) 同月二四日、瀬山、古西両課長は返事を聞くため原告と面接した。その際原告は、埼玉にいたいので転勤したくないとか、原告の配転はイデオロギーに基づくものではないか等と述べた。これに対し瀬山課長は、思想的なことは仕事の関係では一切問題にならないし、又原告は長男であり、郷里にも近いので、仙台支店に配置する等将来のことも考えて決定したものである旨説明した。

なお、本件配転命令をめぐる原告との話合いの中で、イデオロギーの問題が出たのはこのときだけである。

(3) 同月二六日、瀬山、古西両課長は原告と面接したところ、原告は、原告が被告会社に提出している自己申告書の希望が取り入れられていないこと、技術系従業員として入社したのに事務系の仕事に変わらせるのはおかしいこと等を問題とし、配転に不満なので苦情処理の申立をした旨述べた。これに対し、右両課長は、被告会社は自己申告書を参考にはするが、これに拘束されるものではないこと、原告はすでに第三機器課で購買担当という事務系の仕事をしてきているのに、セールスヘルパーの仕事が事務系であることを問題とするのは矛盾であること等を指摘し、配転に応じるよう求めたが、苦情処理の結果を待つこととして本件配転命令の発令を見合わせた。

(4) 同月二七日、被告会社側からは瀬山、古西両課長、組合側からは深沢埼玉支部執行委員長、松本職場委員、それに原告が出席して、原告の申立に基づく苦情処理委員会が開かれた。そして、原告の苦情処理申立の理由である(a)被告会社と組合との労働協約二六条には、組合員の異動を必要とするときは本人の希望等を考慮して公正に行なう旨の定めがあるのに、原告の希望が取り入れられていない、(b)本件配転命令は雇用契約違反ではないか、(c)内示の段階で原告に事務引継をさせた理由、(d)原告は販売の経験がないので、仙台支店での仕事に自信がない、(e)同支店での新しい仕事の内容が不明確である、との五点について、被告会社側は逐一説明した。その結果、組合は、右(c)ないし(e)の点については了解するとともに、右(a)及び(b)の点につき苦情処理のための中央労使協議会の開催を求めてきた。

(5) 同年四月一日、組合側から本部の笹川執行委員長、高瀬副委員長、佐藤書記長、その他の執行委員、被告会社側から山中常務取締役、飯豊所長、金谷本社総務部長、その他の関係課長が出席して、苦情処理のための中央労使協議会が開かれた。その席上、被告会社側は右(4)の苦情処理委員会におけると同趣旨の説明をし、その結果組合側から原告の配転はやむを得ない旨の見解が表明され、落着した。

第三証拠(略)

理由

第一当事者

請求原因1の事実は、当事者間に争いがない。

第二配転命令

被告会社が昭和五〇年四月二日原告に対し、同日付で仙台支店のセールスヘルパーとして配置換えする旨の本件配転命令を発令したことは、当事者間に争いがない。

第三配転命令の必要性と組合との交渉経過並びに人選の経緯

当事者間に争いがない事実と(証拠略)によれば、次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

一  業界の不況と第一次不況措置

昭和四八年秋のいわゆるオイル・ショックに基因する一連の政府による総需要抑制政策の浸透に伴い、我国の経済成長は従来の高度成長から低成長あるいは零成長となり、そのため一般の需要が減退し、被告会社の属する照明機器製造業界においても、新規販路、取替需要が大幅に減少して売上が停滞した。

そして被告会社においても、第五八期(同年一二月ないし昭和四九年五月)の決算では、前期に比べ売上が殆んど横ばいで、利益は四一%も大幅に減少し、製品在庫は、同期末現在で、当時の月間平均売上高の約四か月分に相当する五一億円分に達し、右は適正在庫が一・五ないし二か月分であるのに比して異常なものと考えられた。又第五九期(同年六月ないし同年一一月)に入ってからも、市況の好転はなく売上の伸びが期待できなかった。

そこで被告会社は、同年七月から八月にかけて販売部門への人的応援をする等して、売上伸張、在庫削減を図った。けれども、同年八月末には製品在庫は月間平均売上高の約四・七か月分に相当する五九億円にのぼったので、更に在庫削減のための減産措置をとることとし、組合との協定により、同年九月から一一月にかけて、埼玉、茨城両製作所及び本社開発部の従業員を対象に一時帰休等を実施する等してこれに対処した。しかしながら、同期の決算でも対前期比八二・三%の大幅な減益(売上は六%減)に終った。

二  第二次不況措置

被告会社は、前述のとおり、在庫削減のための減産措置等の第一次不況措置を実施してきたにもかかわらず、第五九期も売上減に終ったばかりか、第六〇期前半期(昭和四九年一二月ないし昭和五〇年五月)に入ってからも市況は好転せず、販売実績は販売目標を大きく下回る有様で依然として振わなかったので、なお在庫削減のための生産調整の強化、売上増強のための販売事業所の充実を推進することとし、昭和五〇年三月、第二次不況措置を立案してその実施準備をするとともに、右不況措置を組合に提案し、労使間の数次にわたる交渉の結果、同月一九日右不況措置の実施について合意に達した。その経過の詳細は次のとおりである。

1  被告会社は、第五九期に実施した第一次不況措置後の業績の推移から考えて、第六〇期の収益も大幅に下ると予想し、昭和五〇年一月三〇日に開催された臨時経営会議(被告会社の役員全員及び部長以上の役職者により構成され、その性質は経営全般についての建議、諮問の機関である。)において、第二次不況措置として、(一)販売部門においては、あらゆる方策を用いて販売の増進に務め、あるいは流通経費の削減を図ること、(二)生産部門においては、生産コストの低減、仕入価額の圧縮に務め、余剰人員の活用を図ること、(三)販売以外の各部門においては、不急の業務を停止、中断することにより販売増進のために寄与できる人的拠出をすること、(四)その他管理職の昇給停止もしくは昇給方法の変更、新規採用者の入社時期延期と初任給、固定資産の効果的処分等につき、関係各部門において早急に検討すべき旨決定した。

2  臨時経営会議における右1の決定を受けて、関係各部門で検討を重ねた結果、販売増進策については、(一)従来の代理店訪問の販売方法に加え、末端工事業者に対する巡回の拡大、強化により販売を更に拡充することとし、そのためには即戦力となる販売の経験者ないしその適任者等によってセールスマンの増強を図る必要があること、(二)被告会社が屋内照明、螢光灯分野に進出し、販売も活発化したことにより、それに伴う積算見積業務が増大し、セールスマンの販売活動を少なからず阻害しているので、それを除去することによって販売を増強するための要員として、セールスヘルパーを新規に配置すること、(三)取扱商品の多様化、増加傾向に伴う技術説明、照明設計、クレーム処理の頻度も増してきたので、それらに対処するための技術要員又はクレーム処理要員の充足補充の必要があるので、この際その人員を増強することにより技術面からも販売増進を図ること等が提案され、これに必要な人員拠出に務めるとの結論に至った。

3  そして、関係各部門における右2のような検討結果をもとに、同年二月一七日開催の経営会議において販売増進策としては、セールスマンの増強、セールスヘルパーの新規配置、技術要員やクレーム処理要員の増強、補充あるいは販売業務要員の拡充を図る等の対策を正式に決定すると同時に、それらの要員の拠出準備を本社各部門及び埼玉製作所に要請することとする等の方針を決定した。

4  被告会社は、経営会議の右3の決定に基づき、関係各部門で協議のうえ、販売増進策に必要な要員の職種、人数等を確定し、直ちに具体的な人選に入ることとし、本社総務部において、関係各部門の長に対し人材の拠出方を要請した。その内容は、本社各部門に対しては、できるだけ多数のセールス経験者、販売事業所勤務経験者、販売事業所で活用できる人材の拠出方を、本社技術部に対しては、受入検査要員の拠出方を、埼玉製作所に対しては、技術、業務、セールスヘルパー、クレーム処理の要員等として一〇名以上の拠出方を要請するというものであった。

右要請を受けた各部門の長は、課長に命じる等して必要な人選を行ない、その結果を同年二月二二、三日ころ本社総務部に報告した。

本社総務部では、販売部と協議しながら、人員投入を必要とする販売事業所等の要望や選出されてきた社員の経歴、社内経験、適性等を勘案のうえ、適材を適所に配置する方針により、選出された者の配転(異動)・応援派遣の区別、配属先及び職種の内定作業を進め、三三名の配属先等を内定した。その際原告についても、右一連の経過をたどって仙台支店セールスヘルパーへの配転が内定した。

5  右4の配転、応援派遣に関する本社総務部内定案等をもとに、昭和五〇年三月三日の労使協議会の席上、被告会社は組合に対し、被告主張のとおりの内容の第二次不況措置を行なうことになった事実、その内容の詳細、背景等につき説明を行ない、組合の協力方を要請した。その際被告会社は、販売事業所等への配転等の点については、支店、営業所その他の販売事業所並びにその関連部門に対し、本社各部門及び埼玉製作所から、販売業務経験者、同適応見込ある者を配転一五名、応援派遣一〇名の予定で選出、配置する旨の説明をした。

そして、組合内部における職場討議等あるいは同月一〇、一七両日の労使協議会等における質疑応答、交渉等を経たうえ、同月一九日の被告会社と組合との労使協議会において、被告主張のとおりの内容を含む第二次不況措置の実施に関する合意が成立した。

なお、その後右合意について組合側から、異動予定者中に組合埼玉支部執行委員が含まれているのは春闘を間近に控えて問題があること、イデオロギー的な異動の懸念があること等の疑問が提起されたため、同月二五日に再度労使協議会が開かれて質疑応答がなされ、イデオロギー的異動の疑問点については、一切そのようなことはない旨の被告会社の回答を組合も了承し、同月二七日、右合意どおりの協定書の調印がなされた。

6  そこで、同月一九、二〇日の両日、被告会社は所属長を通じて配転及び応援派遣予定者に対し、その内示をしたうえ、同月二七日、埼玉支部執行委員である関係から配転が同年の春闘終了まで保留されたり、業務上の支障により配転が取止めになった計三名並びに後に認定のとおり苦情処理に付されることになった原告及び元相原告(後に訴を取り下げた。)石井孝志を除いた全員に対し、同日付でそれぞれ配転又は応援派遣の発令をした。

三  人選の経緯

1  昭和五〇年二月一八日ころ、埼玉製作所の飯豊所長は第三機器課の瀬山健三課長に対し、販売不振を打開するため販売事業所を強化することになり、同製作所からも販売事業所に技術、クレーム処理、積算見積、業務等を担当する要員を拠出したいので、同課からもそれらの仕事に適応できる人材を一名選ぶよう指示した。

2  そこで瀬山課長は、係長、サブリーダー、女子従業員を除く課員から人選することにした。係長、サブリーダーを除外したのは、これらの者を拠出してしまうと、その後の同課の業務運営に支障をきたすおそれがあるとの配慮からであった。又人選にあたっては、販売事業所において右のような技術、クレーム処理、積算見積、業務等を遂行できる能力がある者であること及びその者が抜けた後の同課の日常業務に重大な支障をきたさない者であることを留意したほか、妻子の有無、持ち家か否か等の家族、家庭環境、最終学歴が中学校卒業の現地採用者か否か(被告会社では、中学校卒業の現地採用者については原則として転勤させていない。)等の事情を考慮した。そして課員一人一人につき検討した結果、原告のほか同課管理係購買担当の新井凱博と同課製造係第一工程の玉木良一が候補にのぼったが、結局原告を最適任者として選出した。

原告を最適任者とした理由は、原告は工業高等学校を卒業しているので、要求されている職務につき基礎知識を持っていること、被告会社における経験年数も三年間あり、その間同課製造係で製造工程の仕事に従事したほか、同課管理係購買担当として製品の材料の購入や製造工程管理の業務をも経験しているので、対人折衝のほか伝票処理や事務処理の能力もあると認められること等の能力、適性面に加えて、原告が独身であり、その性質も素直であること等の事情によるものであった。

これに対して新井は、購買関係の仕事に不慣れな坂口敏雄管理係長の補佐的業務に従事しているし、又品種が多く複雑な配管器具の購買業務を担当しており、他の者が直ぐに同人に取って代ってその購買業務につくことは困難であり、従って転出後の同課の業務運営に対する影響は原告の方がより少ない。それに、同人には妻子があるし、持ち家でもある。

又玉木についてみると、同人も原告と同様工業高等学校卒業で、能力的には問題はないが、原告の方が一年先輩でもあるし、製造工程と購買というスタッフ的仕事の両方を経験しており、原告の方がより適任と考えられる。

以上のような理由から、原告を最適任者として選んだものである。

3  瀬山課長は、同月二〇日過ぎごろ、原告を拠出要員として選出した旨を、同製作所総務課の古西課長を通じて飯豊所長に報告し、同製作所からの人選結果は、同月二二、三日ころ、同所長から本社総務部へ報告された。

4  ところで、仙台支店においては、セールス要員、セールスヘルパー要員、技術要員を充足する必要があったが、同支店の要求するセールスヘルパー要員には、製品図面の判読や積算見積ができるか、あるいはその素養があることが必要とされていた。

そこで、被告会社は、前述のとおり、本社総務部において、関係各部門から拠出要員としてリストアップされてきた三三名の配属先、職種等をそれぞれ内定したが、原告については、前述のとおりの事情のほか、原告が岩手県出身者であって、仙台支店は原告の郷里に近いこと、原告が長男であること、そしてそのような場合、過去の実情によると一般的には出身地に異動を希望する傾向があること等の事情を考慮して、仙台支店のセールスヘルパーとして配転することにしたものである。

以上一ないし三で認定した各事実によれば、本件配転命令は、被告会社がいわゆるオイル・ショックに基因する不況時の対策として採用したところの、在庫削減、販売増進のための販売部門に対する人的強化策の一環としてなされたものであって、被告会社の業務上の必要に基づくものであると認められ、又原告が仙台支店のセールスヘルパーとして適任者とされたことについても不合理な点は存しないものというべきである。

第四不当労働行為、思想差別について

原告が、昭和四七年七月、被告会社と組合間のユニオン・ショップ協定により組合員となったことは当事者間に争いがなく、(証拠略)によれば、原告は、組合員になってから本件配転命令を受けるまでの約二年九か月間の内昭和四八年一二月から翌四九年七月までの一年間、組合埼玉支部青年婦人部の常任幹事の役職にあったこと、昭和四九年四月の春闘時に組合が行なったストライキに際しては、青年婦人部でまとめ上げた「決意表明(賃上闘争の先頭に立って闘うことを決意する旨のもの。)」を代表として続み上げたこと、同年八月の同支部大会の際、職場から代議員(原則として組合員一〇名につき一名の割合で選出される。)に選出されて大会に出席したこと、その他組合の日常活動(主として青年婦人部の日常活動)としてのビラ配りや学習会、レクリエーションに参加する等して組合員として行動していたこと、又原告は、昭和四八年一〇月ころ、当時の組合のあり方に疑問を持ち、組合を労働者の権利擁護のために行動する真に労働者の立場に立った労働組合にすべき必要がある等との考えから、民青同盟員になったこと、原告は、右のような自己の考えを、昭和四九年八月の前記同支部大会の席上、大会代議員として、社会党一党支持という組合の締めつけを改めて政党支持を自由にすべき旨発言して表明したほか、職場内における日常の議論の場で積極的に述べたりしてきたこと、又民青同盟員とし学習会を持ち、意見を同じくする者達とともに学習をしたり、あるいは組合のレクリエーション活動に参加した機会や個別に面談した際に民青同盟に加入するよう他の組合員を勧誘したりしたことがあることが認められる。

しかしながら、本件配転命令の業務上の必要性と組合との交渉経過並びに人選の経緯についての前認定の事実関係のもとにおいて、なお本件配転命令が原告の右認定のような民青同盟員たる組合員としての活動を嫌悪したが故になされたものであることを裏付ける具体的事実を認めるに十分な証拠はない。原告の不当労働行為、思想差別の主張は採用できない。

第五労働契約違反について

一  労働契約は労務ないし労働それ自体の利用を目的とするものであって、一般に、労働契約において労働者は使用者に対し、包括的に労務の提供を約するのが通例であるから、使用者は労働者から提供される労務を適正に配置して使用する権限を有する。従って使用者は、労働者との個別的労働契約(その内容となった労働協約、就業規則を含む)において、労務の種類、態様、場所等を限定する特別の合意をしない限り、労働契約の趣旨の範囲内において、労働者に対し労務の種類等を具体的、個別的に決定して労務の提供を命ずることができ、労働者はその命令に服して労務を提供すべき労働契約上の義務を負う。

二  そこで、原告が被告会社に雇用される際、将来技術、技能系の職場でのみ就業するとの合意がなされたか否かにつき判断するに、原告が昭和四七年三月に岩手県立盛岡工業高等学校電気科を卒業し、同年四月に被告会社に雇用され、当初第三機器課製造係に配属されたことは、前認定のとおりであるところ、(証拠略)によると、被告会社の就業規則三条には、正社員の資格として(一)事務員―書記―主事補―主事の系統と(二)技術員―技手―技師補―技師の系統の定めがあり、原告は、被告会社に雇用された後三か月の試用期間を経て、同年七月一日に正社員たる技術員になったこと、原告は同課製造係において、水銀灯照明器具、大型スイッチ等注文生産品の製造工程の作業に従事していたことが認められる。

しかし、就業規則三条の右定めは、単に正社員の資格ないし格付を規定したに過ぎず、職種、職場等を限定する趣旨の規定とは解されないし、前掲(証拠略)によれば、就業規則中には他に右正社員資格のいかんによって配転を制限する趣旨の規定も存しないことが認められるから、このことと右一で説示したところを考慮すれば、原告の学歴や原告が技術員として同課製造係で製造工程の作業に従事してきたことをもって、原告と被告会社との労働契約において原告主張のとおりの合意がなされたものと認めることはできず、又原告が昭和四八年八月から同課管理係として勤務するようになったことは前認定のとおりであるが、同係での担当職務をもって仮に技術・技能系のものとみることができるとしでも同断であり、他に原告の主張事実を認めるに足りる証拠はない。

第六権利濫用について

本件配転命令が、被告会社の業務上の必要に基づき、組合との交渉を経たうえなされたものであって、原告を人選したことについても不合理な点がないことは前認定のとおりであるから、本件配転命令を権利濫用であるとする原告の主張は採用するに由ない。

第七配転手続の信義則違反について

被告会社が原告を仙台支店のセールスヘルパーとして配転することにした経緯は前記第三に認定のとおりであるところ、本件配転命令の内示から発令までの間の経過については、当事者間に争いがない事実と(証拠略)によれば、次の事実が認められ、これを左右するに足りる証拠はない。

一  昭和五〇年三月二〇日、埼玉製作所の古西、瀬山両課長は原告に対し、第二次不況措置に伴って同製作所からも販売強化のために一〇名近い人員を販売部門の方に拠出することになり、原告には仙台支店のセールスヘルパーとして転勤してもらいたい旨本件配転命令の内示をするとともに、セールスヘルパーは新しい職種であるが、これは螢光灯の積算見積をする仕事であり、仕事の詳しい内容については後日本社販売部長から説明がある旨伝達した。これに対し原告は即答できないので同月二四日まで考えさせてほしい旨述べた。

なお、被告会社は同月二七日同製作所において、第二次不況措置に伴う異動者全員を対象に説明会を開き、右不況措置をとった背景、販売事業所の実情、配属先販売事業所における仕事の内容等について本社の販売、総務両部長が説明したが、原告はこれに出席しなかった。

二  同月二四日、原告は、古西、瀬山両課長に対し、埼玉にいたいので転勤したくないとか、原告の配転はイデオロギーによるものではないのか等述べ、これに対し古西課長は、思想的なことは仕事上の関係では一切問題にならないし、又原告が長男であり郷里にも近いから仙台支店に配属することに決めたものである等と説明をした。

三  同月二六日、原告は古西、瀬山両課長に対し、原告が被告会社に提出している自己申告書に記載の希望が取り入れられていないし、又技術系従業員として入社したのに事務系の仕事に変わらせるのはおかしいし、異動には不満なので苦情処理委員会にかけたい旨を告げ、これに対し右両課長は、自己申告書の希望は参考にはするが、被告会社がこれに拘束されるものではないし、又原告はすでにこれまで第三機器課で購買担当という事務系の仕事をしているのであるから、今更セールスヘルパーの仕事が事務系であるとしてこれを問題とするのはおかしい旨返答した。

四  原告が本件配転命令の内示を不服として、組合と被告会社間の労働協約に基づき苦情処理の申立をしたので、同月二七日、労働協約一〇二条に基づく苦情処理委員会が開かれ、被告会社側からは古西、瀬山両課長、組合側からは深沢支部執行委員長、松本職場委員並びに原告が出席した。そして被告主張のとおりの原告の苦情処理申立の理由につき討議がなされ、被告会社側も右申立理由について逐一説明したが、結論は出ずに終った。

五  同年四月一日、組合側から本部の笹川執行委員長ら三役や中央執行委員、被告会社側から山中常務取締役、飯豊所長、金谷本社総務部長、その他関係課長が出席して(原告は出席していない。)、苦情処理のための中央労使協議会が開かれ、原告の苦情処理申立の理由中被告主張のとおりの二点(再抗弁に対する認否4の(二)の(4)の(a)及び(b))を中心に協議がなされた結果、原告の本件配転命令はやむを得ないものとして了承するとの組合側の考えが表明された。

以上の事実が認められ、その後同月二日、被告会社が原告に対し、本件配転命令を発令したことは前認定のとおりであるところ右認定の事実からは、本件配転命令の手続に信義則違反の点を見出し難いし、他に信義則違反を裏付ける具体的事実を認めるに十分な証拠はない。

第八結論

以上によれば、本件配転命令に違法な点はなく、有効であるから、本件配転命令が無効であることを前提とする原告の請求は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 飯塚勝 裁判官 髙橋祥子 裁判長裁判官中澤日出國は、退官につき、署名捺印することができない。裁判官 飯塚勝)

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