浦和家庭裁判所 平成10年(少)1236号
主文
少年を、児童自立支援施設に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、共犯者A(少年の双生児の弟、以下「A」という。)、触法少年Bと共謀の上、被害者Cから遊興費を喝取しようと企て、平成9年9月24日午後6時30分ころ、春日部市○○町×丁目××番地○○町×丁目○○広場内において、同人に対し「金を持って来たか。」「金を持って来ないのならば家出しろ。」等と申し向け、被害者に対し右手で右肩を殴打する暴行を加えて金員を要求し、右要求に応じなければいかなる危害を加えるかもしれないような気勢を示して脅迫し、同人を困惑畏怖させたが、被害者の母親が被害者を助けに来たため、その目的を遂げなかったものである。
(法令の適用)
刑法60条、250条、249条1項
(処遇の理由)
本件は、平成10年3月23日少年が本件非行事実により当庁において少年を初等少年院に送致する決定を受け、これに対し少年が抗告をなし、同年4月17日抗告審が「少年にはこれまで保護処分歴がないこと、共犯者である弟が本件等により教護院送致の保護処分を受けたことなどを考慮すると、少年に対しては児童自立支援施設に送致するのが相当であり、初等少年院に送致した原決定は著しく不当である。」として原決定を取消し、本件を当庁に差し戻すとの決定をなしたため、審判開始となったものである。
1 少年の生育史と本件非行に至る経緯
少年は、昭和58年8月19日亡父Dと実母E子の間に双生児の兄として出生した。当時少年ら双生児の兄弟として他に1歳年上の兄Fがいた。
少年の父母は、昭和59年4月2日協議上の離婚をし、上記3子は亡父に引取られたが、父も平成3年2月6日脳出血のため3子を残して死亡した。上記3子と母とは離婚以来音信がない。
亡父の闘病中少年ら兄弟3人は、養護施設に預けられて辛い経験をしたとして、父の死後、全員が施設入所を嫌ったため、少年の後見人である祖母G子(以下「祖母」という。)並びに父方伯母H子及び同I子が相談して、祖母がFを、H子が少年とAをそれぞれ引取り養育することとなった。
平成4年4月少年とAはH子宅のある春日部市で生活することになり、春日部市立○□小学校3年に編入した。H子は、公務員であったため、少年らは、放課後学童保育所に通所した。
平成5年に至って、上記小学校にBが転校してきて、AとBが同じクラスとなり交遊するようになった。この頃、少年は、Aより体も小さく、口もうまく回らなかったので、何事につけてもAに譲る態度であった。また、少年らは、学童保育所で下級生を苛めたことから苦情が出て辞めざるを得なかった。
平成7年4月少年、上記共犯者ら及び上記Bの姉が一緒になって少年らが通う学童保育所に窃盗の目的で侵入し越谷児童相談所に通知された。少年らはH子の夫の財布からも合計10万円を窃取した。
平成9年4月少年とAは、中学2年生に進級し、この頃から盛り場に遊びに出るようになり、暴走族とも顔見知りになってバイクに乗せてもらって遊ぶなどして、夜遊びをするようになって、同年9月頃に至ると少年は、ほとんど学校に登校せず、上記共犯者らと3人で夜遊びを繰り返して、暴力行為、恐喝まがいの行為を反復するようになった。少年は、H子から喫煙や夜遊びを注意されたことに腹を立て、H子に対し痣が残るほどに殴る蹴るの暴力を加えるようになった。
少年は、喫煙をすることから小遣いを1000円しかもらえないことになって、遊ぶ金欲しさに、共犯者らと本件被害者から金を取ろうという話がまとまり、犯行に至ったものである。少年らは、本件恐喝以前にも本件被害者から金を脅し取ったことがあったことから、本件犯行を企図するに至ったものである。
2 本件非行内容の検討と要保護性
本件は、未遂に終わっているが、少年が共犯者らと遊興費欲しさに、かって標的としたことのある弱い子を相手にして集団で繰り返し喝取しようとした点で悪質であるし、金額的にも高額を要求するようになっていて犯罪性が高い。
少年とAの窃盗等一連の非行は、家庭的に不遇であったことから、基本的な躾けが身につかず、自由奔放に振る舞う生活態度及び愛情欲求の代償から始まったものと認められる。
少年とAは双生児で幼いときから頼り頼られる関係であるため、非行の場合も簡単に共同歩調をとってしまい、二人一緒なためにかえって心の葛藤もなしに追随的に犯行に至ってしまうところがある。本件犯行においてもAが脅し文句を言い、少年と上記Bが近くで見張っていた。少年は、Aとは全く別行動であっても小学生から恐喝したり、小学生が窃取した金員の分配を受けたりしているので、かならずしもAの影響ばかりではないが、少年の場合は、特に、この機に自分の行動について一人で判断させ、責任も一人で負担しなければならないことを自覚させる必要がある。
保護者となっているH子は、可能な限り少年と接触するようにしたり、近所や学童保育での喧嘩、苛め等の行動や盗みに対しても謝罪するなどして少年とAの引起こしたあらゆる問題に熱心に対応してきた。しかしながら、少年とAの二人連れの非行は成長とともに深刻化し、H子の夫の財布から高額な金銭を盗み出したり、H子に対しても痣の残るような暴力を振るうようになって来ている。H子や上記I子の親族としての情愛は変わらないが、もはや上記親族の指導も限界に達しているといわざるを得ない。
また、盛り場で暴走族に近づき、先輩といれば怖いものなしと思うようになっていて、再び非行に誘われる可能性も高い。
以上のとおりであるから、少年の要保護性が高いといわざるを得ない。
少年は、本件一連の手続きを通じてようやく自己の問題点に目が向いてきて、中学生として勉学に励み、将来は進学もしたいと希望していることから、少年の場合は、規則正しい集団生活の中で基本的な生活習慣を身につけ、学業を修め、他者との関わりの中で、欲求本位で自己中心的な生活態度を改め、他者への配慮を学び、規範意識が涵養されるように、この際、少年を児童自立支援施設に送致して今後における少年の健全な育成を期するのが相当である。
よって、少年法24条1項2号を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 坂本由喜子)