熊本地方裁判所 平成13年(行ウ)11号 2002年7月19日
原告
合資会社A
同代表者代表社員
甲
同訴訟代理人弁護士
森本耕司
被告
熊本西税務署長
田尻英敏
同指定代理人
西郷雅彦
同
金子健太郎
同
音山啓二
同
福永一郎
同
野村英雄
同
廣石光生
同
東川政治
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告が平成12年6月28日付けでした原告の平成9年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、消費税については差引税額142万8400円を超える部分、地方消費税については譲渡割額29万9000円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。
(2) 被告が平成12年6月28日付けでした原告の平成10年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、消費税については差引税額112万1600円を超える部分、地方消費税については譲渡割額28万0400円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち1万1000円を超える部分を取り消す。
(3) 被告が平成12年6月28日付けでした原告の平成11年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち、消費税については差引税額144万1500円を超える部分、地方消費税については譲渡割額36万0300円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
(4) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第2請求原因
1(1) 原告は、自動車板金塗装等の業務を行う合資会社である。(訴状2頁)
(2) 原告は、平成元年10月2日、消費税法37条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)1項で定められている、いわゆる簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を被告に提出した。(訴状2頁)
(3) 原告の簡易課税制度の適用を受ける基準期間の課税売上高は、平成9年1月1日から同年12月31日までの期間(以下「平成9年12月期」という。)については4億円を、平成10年1月1日から同年12月31日までの期間(以下「平成10年12月期」という。)及び平成11年1月1日から同年12月31日までの期間(以下「平成11年12月期」という。)についてはそれぞれ2億円を超えておらず、原告は、簡易課税制度の適用基準を満たしていた。(訴状2頁)
(4) 原告は、課税資産の譲渡等の記帳において、消費税法施行令57条(平成8年政令第86号による、改正前施行令(以下「改正前施行令」という。)も同じ)に規定する事業の区分を行っている。(訴状3頁)
2 原告の平成9年12月期、平成10年12月期及び平成11年12月期(以下、これらを併せて「本件各課税期間」という。)について、原告の行った消費税及び地方消費税の各確定申告並びにこれらに対して被告が平成12年6月28日に行った各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税の賦課決定(以下「本件各賦課決定処分」という。また、本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて、「本件各処分」という。)の経緯は、別表1ないし3記載のとおりである。(訴状2頁、準備書面(3))
3 本件各処分の違法事由
(1) 原告の営む事業のうち自動車板金塗装業の業務は、客からの注文による自動車板金塗装等の業務(以下「本件業務」という。)であるところ、被告は、本件業務について、簡易課税制度の適用上、平成9年12月期分については、改正前施行令57条5項4号に規定する第四種事業に、平成10年12月期分及び平成11年12月期分については、消費税法施行令57条5項4号に規定する第五種事業に該当するとしている。(訴状3頁)
(2)ア しかし、本件業務は、消費税法施行令57条5項3号(改正前施行令も同じ。)に規定する第三種本業に該当する。(訴状3頁)
イ すなわち、本件業務は、客から持ち込まれた車両に原告が新たな部品、原材料を使用し、原告の創意工夫により板金、組立て、溶接鍛造、ボルトの組付け、塗装等を行うことから、作業前の車両に比べ作業後の車両を社会的に全く別のものに造り変えるものといえる。これは、単に価値的のみならず、外観的にもあるいは社会的評価としても、全く異なるものを作り上げる作業であり、製造業に該当する。(訴状3頁)
ウ また、本件業務は、輸送用機械器具である自動車を修理するものではあるが、実質は修理ではなく、自動車の一部分である部品を製造しているものである。したがって、本件業務は、日本標準産業分類上、自動車・同附属品製造業に該当し、又はこれに準ずるものである。(訴状3頁)
エ さらに、消費税法の簡易課税における事業区分の判定において、鉄道車両の製造者が行う鉄道車両の修理、船舶の製造業者が行う船舶の修理及び航空機用原動機製造業者が行う航空原動機のオーバーホールは第三種事業に該当する取扱いになっているところ、本件業務も、同じ輸送用器具である自動車の修理であるから第三種事業に該当し、又は準じるものといえる。(訴状4頁)
(3) 以上のとおり、原告の本件業務は、消費税法施行令57条5項3号(改正前施行令も同じ。)の第三種事業に該当するのであり、これを前提としない本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は違法である。(訴状4頁)
4 よって、原告は、前記第1の1のとおり、被告の本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の一部又は全部の取消しを求める。(訴状4頁)
第3請求原因に対する認否及び被告の主張
1 請求原因に対する認否
(1) 請求原因1は認める。
(2) 請求原因2は認める。
(3)ア 請求原因3(1)は認める。
イ(ア) 請求原因3(2)アは争う。
(イ) 請求原因3(2)イは争う。
本件業務は、価値的、外観的、社会的に全く異なるものを作り上げるものであるとは認められないし、後記2(1)(2)のとおり、消費税法基本通達13-2-4で、消費税法施行令57条5項3号で定める第三種事業と、同項4号で定める第四種事業(第三種事業とは製造業等を指し、第四種事業とはサービス業等を指す。消費税法施行令57条5項3号へ、4号ハ。)の範囲は「おおむね日本標準産業分類(総務庁)の大分類に掲げる分類を基礎として判定する。」(以下、日本標準産業分類を、単に「産業分類」という。)こととされており、この産業分類によれば、製造業とは、有機又は無機の物質に物理的、化学的変化を加えて新製品を製造し、これを卸売する事業所をいい(乙6(208頁))、消費税法上でも、製造としているのは物の製造であり、単なる価値の創出をいうものではないと解されるから、原告の主張は独自の見解に基づくものといわざるをえない。(被告第1準備書面10頁)
(ウ) 請求原因3(2)ウのうち、本件業務が輸送用器具である自動車を修理するものであることは認めるが、その余は争う。
本件業務は、後記2(2)のとおり、新製品としての部品を製造するものではなく、むしろ、その本質は「つくろい直す」というサービスの提供にあるものと認められるから、本件業務は産業分類上「サービス業(大分類)」に該当し、部品の製造には該当しない。(被告第1準備書面10頁)
(エ) 請求原因3(2)エのうち、鉄道車両の製造者が行う鉄道車両の修理、船舶の製造業者が行う船舶の修理及び航空機用原動機製造業者が行う航空原動機のオーバーホールが第三種事業に該当することは認め、その余は争う。
後記2(2)のとおり、鉄道車両の製造者が行う鉄道車両の修理等については、製造能力を有する工場設備を有していなければできないので、特例として製造業に取り扱われているものである。よって、このような製造能力を有していなくても営むことができる自動車の修理を製造業として取り扱う根拠はなく、本件業務を鉄道車両の修理等と同列に論じることはできない。また、簡易課税制度の規定は、中小事業者の事務負担の軽減を図りつつ、業種によって異なる課税売上げに占める統計的な課税仕入額の割合の差異を調整するものと解されるところ、同じ輸送用機械器具ということだけで、その保有する設備、その作業内容、課税売上げに占める課税仕人類の割合の異なる特殊なものである船舶修理・航空機等のオーバーホールについての取扱いを本件業務に適用することは相当でない。(被告第1準備書面10頁)
2 被告の主張
原告の本件業務は、以下のとおり、消費税法施行令57条5項4号に規定する第五種事業(改正前施行令57条5項4号に規定する第四種事業)に該当する。
よって、原告の本件各課税期間の課税標準額等は、別表1ないし3記載の「課税標準額」欄の「審判所認定額」欄のとおりであり、本件各更正処分の額は、いずれも国税不服審判所の認定額を下回るから、その範囲内でなされた本件各更正処分は適法である。
また、上記のとおり本件各更正処分は適法であり、かつ、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法65条4項に規定する正当な理由がある場合に該当するとは認められないから、同条1項の規定に基づいてされた本件各賦課決定処分は適法である。(被告第1準備書面11頁)
(1) 消費税法基本通達13-2-4の規定について
消費税法基本通達13-2-4は、消費税法施行令57条5項の第三種事業及び第五種事業の範囲について、おおむね産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定するとしている。
ところで、産業分類は、日本の産業に関する統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較と利用度の向上を図るために、統計調査の産業表章の基準の一つとして規定されたものであり、そこでいう事業と、課税政策に基づいて規定された消費税法施行令57条5項に列挙される事業とは概念を異にするものである。したがって、事業者が営む事業が、同条に規定する事業のいずれに該当するかの判定にはこれが直接影響を及ぼすものではないとの考え方もあり得るところである。しかし、ある事業が簡易課税制度上のどの事業に当たるかの判断をするに当たっては、もともと簡易課税制度自体が小規模事業者の事務負担を考慮した特殊な制度であり、簡易課税制度の公平性を保つことは極めて重要である。そこで、このような観点から総務庁による産業分類を基礎とすることは、他に普遍性を有する合理的な基準が見当たらない以上、合理性があるというべきである。(被告第1準備書面6頁)
(2) 産業分類を基礎とする製造業とサービス業の分類について
産業分類によれば、製造業(大分類F)は、有機又は無機の物質に物理的、化学的変化を加えて新製品を製造し、これを卸売する事業所をいう。すなわち、製造業とは、主として新製品の製造加工を行う事業所であることを要する(なお、船舶の修理、鉄道車両の修理又は改造(鉄道業の自家用を除く。)、航空機及び航空機用原動機のオーバーホールを行う事業所については、製造業とされている。)。
他方、サービス業(大分類L)には、主として個人又は事業所に対してサービスを提供する他の大分類に分類されない事業所が分類され、物品の整備・修理に係る技能・技術を提供するサービスを提供する事業所が含まれる。自動車の整備修理を行う事業所は、サービス業(大分類L)に分類され、中分類としては自動車整備業(中分類77)に分類される。(被告第1準備書面6頁)
(3) 本件業務の事業区分について
本件業務は、客からの注文により、客から持ち込まれた車両に修理、板金、塗装等を行い、客に引き渡すものであり、これは「いたんだりこわれたりしたものをつくろい直す」ことを約した請負契約に該当する。つまり、本件業務は、客から持ち込まれた車両に「つくろい直す」という役務を提供し、その対価として報酬を得るという事業であり、その本質は、「つくろい直す」というサービスを提供し、客から持ち込まれた車両の価値を高めるものと認められる。
そうすると、本件業務は、新製品の製造加工を行うものではなく、個人又は事業所に対して修理、板金、塗装等のサービスを提供するものであるから、産業分類上サービス業(大分類L)のうち自動車整備業(中分類77)に該当する。(被告第1準備書面9頁)
(4) よって、本件業務は、消費税法施行令57条5項4号ハのサービス業(第五種事業)(改正前施行令57条5項4号の第四種事業)に当たる。
第4当裁判所の判断
1 請求原因1、同2及び同3(1)は、当事者間に争いがない。
2 そこで、請求原因3(2)、(3)及び被告の主張について、以下一括して判断する。
(1) 簡易課税制度等について
消費税法は、消費税の税負担の累積を排除するため、納税者が売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除した残額を納付する制度を採用しているが、中小事業者については、消費税法30条以下の実額による課税仕入れ額の煩雑な計算を避けて事務負担を軽減するため、具体的な事業者の個別性による差異を捨象し、事業者の営む事業の区分に応じ、それぞれの事業ごとの売上げに係る消費税額に、一定の率(以下「みなし仕入れ率」という。)を乗じて計算した金額を算出し、これを売上げに係る消費税額から控除する仕入れに係る消費税額とする、いわゆる簡易課税制度を設けている(消費税法37条)。
みなし仕入れ率については、消費税法37条を受けた消費税法施行令57条1項、5項では、製造業を含む第三種事業の場合は100分の70(同条5項3号)、サービス業を含む第五種事業の場合は100分の50(同条5項4号)(改正前施行令では、製造業を含む第三種事業の場合は100分の70(57条1項、5項3号)とされ、第五種事業の規定はなく、第一種事業から第三種事業に掲げる事業以外は第四種事業に分類されていた。)と定めている。
このように、事業ごとにみなし仕入れ率が異なるのは、消費税法施行令57条(改正前も同じ。)が消費税法37条で「当該事業の種類ごとに当該事業における課税資産の譲渡等に係る消費税額のうちに課税仕入れ等の税額の通常占める割合を勘案して政令で定める率」とされていることを受けた規定であり、事業ごとに課税仕入れ等の税額の通常占める割合が異なると解されるからである。
(2) 消費税法基本通達13-2-4について
消費税額の控除率に差異のある第三種事業と第五種事業との分類については、消費税法基本通達13-2-4で、「おおむね日本標準産業分類(総務庁)の大分類に掲げる分類を基礎として判定する。」とされている。
そして、産業分類は、日本の産業に関する統計の正確性を客観的に保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図るために、統計調査の産業表章の基準の一つとして設定されたものであって、簡易課税制度上の事業の分類を目的としたものではないものの、簡易課税制度の公平性を重視する観点から、産業分類を基礎とすることは、他に普遍性を有する合理的な基準は見当たらない以上、合理的なことと認められる。
(3) 産業分類を基礎とした場合の製造業とサービス業の分類について
ア 乙6から、産業分類によれば、製造業(大分類F)には、有機又は無機の物質に物理的、化学的変化を加えて新製品を製造し、これを卸売する事業所が分類され、新製品の製造加工を行う事業所であること及び新製品を主として卸売する事業所であることが必要とされていると認められる。(乙6(208頁))
イ 他方、サービス業(大分類L)には、主として個人又は事業所に対してサービスを提供する他の大分類に分類されない事業所が分類され、物品の整備・修理に係る技能・技術を提供するサービス(自動車整備業、機械・家具等修理業)を提供する事業所を含むと認められる。(乙6(524頁))
ウ 製造業(大分類F)と修理業との関係については、修理を専業としている事業所はサービス業とされ、また、修理のために補修品を作ってもサービス業とされる。
ただし、船舶の修理、鉄道車両の修理又は改造(鉄道業の自家用を除く。)、航空機及び航空機用原動機のオーバーホールを行う事業所並びに金属工作機械又は金属加工機械をすえ付け、多種多様の機械及び部分品の製造加工と修理を行う事業所は、その工場設備からみても製造能力がなければできないので、特例として製造業に分類されることが認められる。(乙6(208頁、210頁、525頁))
エ 自動車の整備修理を行う事業所は、サービス業(大分類L)のうち、自動車整備業、(中分類77。自動車の整備修理を行う事業所が分類される。)に分類され、さらに、自動車整備業(小分類771)に分類され、またさらに、自動車一般整備業(細分類7711。 主として自動車の一般的整備修理を行う事業所をいい、自動車整備業、自動車修理業及びオートバイ整備修理業がこれに当たる。)、自動車車体整備業(細分類7712。主として自動車の車体の整備修理を行う事業所をいい、自動車車体修理業、自動車車体整備業、自動車再塗装業及び自動車溶接業(自動車修理のためのもの)がこれに当たる。)、自動車電装品整備業(細分類7713。主として自動車の電気装置及び蓄電池の整備修理を行う事業所をいい、自動車電装品整備業及び自動車蓄電池修理業がこれに当たる。)、自動車タイヤ整備業(細分類7714。主として自動車のタイヤの整備修理を行う事業所をいい、自動車タイヤ修理業及び自動車タイヤ整備業がこれに当たる。)、自動車・自動車エンジン再生業(細分類7715。主として中古自動車、自動車エンジンを解体して、自動車・自動車エンジンの再生を行う事業所をいい、自動車再生業、自動車エンジン再生業及び自動車工場(自動車・自動車エンジンの再生を主とするもの)がこれに当たる。)及びその他の自動車整備業(細分類7719。主として自動車ブレーキの整備修理、自動車の清掃など他に分類されない自動車整備を行う事業所をいい、自動車ブレーキ修理業、自動車清掃業、自動車部品整備業、自動車エシジン修理業及び自動車洗車業がこれに当たる。)に分類されている。(乙6(547頁))
(4) 本件業務の分類について
ア 本件業務は、ユーザーからの注文による自動車板金塗装の業務(以下「ユーザー分の業務」という。)及びディーラーからの注文による自動車板金塗装の業務(以下「ディーラー分の業務」という。)からなるところ、ユーザー分の業務の内容は次のとおりである。
(ア) ユーザーから持ち込まれた事故車及び故障車に、ユーザーの注文に応じた修理、板金及び塗装を施す作業
(イ) ユーザーから持ち込まれた車両に、ユーザーの注文に応じた車両の性能アップを目的とした改造(補強)を施す作業
(ウ) ユーザーから持ち込まれた車両に、ユーザーの注文に応じた指定色の塗装を施す作業
ディーラー分の業務の内容は、ディーラーから持ち込まれた事故車等に、ディーラーから無償支給を受けた部品を使用し、ディーラーの注文に応じた修理、板金及び塗装を施す作業である。
原告が本件業務の一部として主張する①キャンピングの構造要件(就寝設備・炊事設備・水道設備)を備える作業(甲3、8)、②防錆剤の塗装(甲3)、③スポイラーの取付け(甲2、甲3)、④車高調整(甲3)、⑤広告宣伝車への改造(甲3)、⑥身体障害者用車両への改造(甲3)、⑦霊柩車用車両への改造(甲3、8、原告代表者)も上記業務内容のいずれかに含まれることが認められる。(甲1ないし3、8、原告代表者、弁論の全趣旨(原告準備書面(4))
イ 上記アの事実によれば、本件業務は、顧客からの注文により、顧客から持ち込まれた車両につき、その同一性を失わせることなく、修理、板金、塗装及び改造等を行い、顧客に引き渡すものであり、これは「いたんだりこわれたりした物をつくろい直すこと」、又は、「車両の性能を変化・向上させるため、車両の一部分を造り直す又は交換等すること」を約した請負契約に基づくものであると認められる。
そうすると、本件業務は、持ち込まれた車両につき「つくろい直す、造り直す及び交換等をする」という技能・技術を提供し、その対価として報酬を得る事業であり、その本質は、「つくろい直す、造り直す及び交換等をする」というサービスを提供し、顧客から持ち込まれた車両の価値を高めることにあると認めるのが相当である。
したがって、本件業務は、新製品の製造加工を行うものではなく、個人又は事業所に対して修理、板金、塗装及び改造等のサービスを提供するものであるから、産業分類上、サービス業(大分類L)に当たり、製造業(大分類F)には当たらないというべきである。
そして、本件において、本件業務の事業区分につき産業分類を基礎とすることが不合理であるとするべき特段の事情がない以上、本件業務は、平成9年12月期においては改正前施行令57条5項4号の第四種事業に、平成10年12月期及び平成11年12月期においては消費税法施行令57条5項4号の第五種事業に該当すると認められる。
ウ(ア) 以上に対し、原告は、本件業務は、価値的のみならず、外観的にもあるいは社会的評価としても全く異なるものを作り上げる作業であり、製造業に該当すると主張するが、本件業務により、新たな製品(物)が製造・加工されたとは解されないことは上記イのとおりであるから、原告の主張は採用できない。
(イ) また、原告は、本件業務のうち自動車の修理について、自動車の一部分である部品を製造するものであり、産業分類上、自動車・同附属品製造業に該当し、又はこれに準ずるものと主張するが、上記イのとおり、自動車の修理の本質は、新製品としての部品の製造ではなく、つくろい直すというサービスの提供にあること、前記(3)ウのとおり、産業分類においては、製造業と修理業の関係について、修理のために補修品を作ってもサービス業とされることからして、本件業務を、自動車・同附属品製造業と認めることはできない。
(ウ) さらに、原告は、本件業務について、自動車と同じ輸送用器具である鉄道車両の製造者が行う鉄道車両の修理、船舶の製造業者が行う船舶の修理及び航空機用原動機製造業者が行う航空原動機のオーバーホールと同様、第三種事業(改正前施行令も同じ。)に該当する等と主張する。
しかし、産業分類において、上記鉄道車両の製造者が行う鉄道車両の修理等が製造業として扱われるのは、その工場設備からみても製造能力がなければできないので特例として認められている(乙6(210頁))のであって、そのような製造能力を有しなくても営むことができる本件業務を製造業として取り扱う根拠はない。また、簡易課税制度の規定は、中小事業者の事務負担の軽減を図りつつ、業種によって異なる課税売上げに占める統計的な課税仕入額の割合の差異を調整するものと解される(前記(1)参照)ところ、同じ輸送用機械器具ということだけで、その保有する設備、その作業内容、課税売上げに占める課税仕入額の割合の異なる特殊なものである鉄道修理等についての取扱いを、本件業務にあてはめることは相当ではない。
したがって、原告の主張は採用することができない。
エ 以上によれば、本件各更正処分が適法である旨の被告の主張には理由があり、これに関する請求原因3(2)、(3)の主張には理由がない。
また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められないから本件各賦課決定処分は適法である。
3 よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中哲郎 裁判官 市川多美子 裁判官 堀部麻記子)
別表 1
平成9年12月期
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別表 2
平成10年12月期
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別表 3
平成11年12月期
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