熊本地方裁判所 昭和35年(ヲ)14号 決定 1960年3月12日
申立人 小林善三
相手方 藤山重義
主文
本件申立を却下する。
申立費用は申立人の負担とする。
理由
本件申立の要旨は、申立人は、当裁判所昭和三一年(ケ)第二四九号不動産競売申立事件において、昭和三三年六月五日別紙目録記載の不動産につき競落許可決定を受け、その確定をまつて代金を完納した上、相手方に対しその引渡を求めたが、相手方は一向に応じないから、引渡命令の発布を求めるというのである。
一件記録によれば、申立人は、債権者小林善三・債務者兼所有者藤山重義間の当裁判所昭和三一年(ケ)第二四九号不動産競売申立事件において、同三三年六月五日別紙目録記載の不動産につき競落許可決定を受け、その確定をまつて同年七月二八日競落代金を完納したが、同三五年一月二〇日に至り本件引渡命令の申立をなしたことを認めることができる。
よつて案ずるに、競売法第三二条第二項により準用される民事訴訟法第六八七条において、競落人に引渡命令を求める権利を付与して競落不動産の占有を得る途を開いたのは、競落人を保護し換価手続の促進をはかつたものに相違ないが、制度上、引渡命令は、競売裁判所が競売手続の付随的な手続として簡易に処理するに適当なものとして制定されていることにかんがみれば、引渡命令の申立は、申立の時期の点においても、右制度上の特質にもとらないよう競落代金完納後相当の期間内に申し立てることを要するものと解される。しかるに、前示事実関係より明らかなとおり、本件引渡命令の申立は競落代金完納後一年五箇月余を経過した後提起されたものであつて、右申立は著しく遅滞しているから、その遅滞の原因を尋ねるまでもなく、引渡命令を申し立つべき相当の期間経過後の申立にかかるものと判断するほかない。
されば、本件申立を許すことができないので、これを却下することとし、申立費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 吉井参也)
目録
宇土市網津字長部田四、四一三番
一、宅地 一五〇坪
同所同番
家屋番号同町第二三三番
一、木造瓦葺二階建居宅 一棟
建坪 三一坪六合
外二階坪 一三坪二合
附属
一、木造瓦葺平家建物置 一棟
建坪 八坪
附属
一、木造草葺平家建物置 一棟
建坪 一五坪五合
宇土市網津字丸山四、四二五番
一、山林 二反一畝歩
同所四、四二四番
一、山林 二反一畝歩