熊本地方裁判所 昭和57年(わ)343号 判決 1982年12月03日
裁判所書記官
西坂保
本店所在地
熊本県本渡市中央新町一一番一一号
法人の名称
有限会社 ひらやま衣料品店
右代表者代表取締役
平山隆敏
右同
平山松若
本籍
熊本県天草郡新和町碇石一七一六番地
住居
同県本渡市城下町一番一三号
会社役員
平山松若
大正一五年二月五日生
事件名
被告人両名に対する各法人税法違反被告事件
公判出席検察官
麻生興太郎
主文
一 被告人有限会社ひらやま衣料品店を罰金八〇〇万円に処する。
一 被告人平山松若を懲役六月に処する。
同被告人に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社ひらやま衣料品店は、熊本県本渡市中央新町一一番一一号に本店を置き、衣料品雑貸等の販売業を営むもの、被告人平山松若は、被告人会社の代表取締役としてその業務を統括していたものであるが、被告人平山松若は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、経理担当役員橋口吉雄に指示し、衣料品等の仕入れや経費を架空計上して、これにより得た資金を簿外の普通預金に預け入れるなどの不正手段により所得の一部を秘匿したうえ、昭和五三年七月一日から同五四年六月三〇日までの事業年度における所得金額が一億三、一一〇万八、一三九円でこれに対する法人税額は五、〇二二万三、三〇〇円であるにもかかわらず、昭和五四年八月二八日、同市古川町四番二号所在の所轄天草税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五、七一六万二、一八〇円でこれに対する法人税額は二、〇六六万八、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により、右事業年度の正規の法人税額五、〇二二万三、三〇〇円と右申告額との差額二、九五五万五、三〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人平山松若の当公判廷における供述
一 被告人平山松若の検察官に対する供述調書二通
一 平山隆敏、濱崎昭二、吉野ユミ子、平山シズヨ、平道正人、岩尾恭子の検察官に対する各供述調書
一 登記簿謄本
一 大蔵事務官作成の告発書、脱税額計算書説明資料、査察官調査事績書一三通
一 検察事務官作成の捜査報告書六通及び電話録取書
一 竹中はすえ、水谷義治、杉田哲男、溝口良枝、小松力、岩崎良彦、石井洋亘、坂井田静子、西尾友幸、赤地武、石川豊子、滝明夫、仲儀貢、山内道夫、野口賢一、川原幸輔、加藤由時、金子正弘、澤頭靖、武野輝夫、神崎勇夫、及び中平昭男作成の各申述書
一 橋本和義、佐久間昭三(三通)、山岡徳夫(二通)、竹田忠昭(二通)、太田登作成の各証明書
一 押収してある資産負債元帳一冊(昭和五七年押第一四四号の1)、損益勘定元帳一冊(同号の2)、預金補助簿二冊(同号の3及び4)及び法人税決議書綴一綴(同号の5)
(法令の適用)
被告人有限会社ひらやま衣料品店及び被告人平山松若の判示各所為は、いずれも行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項(右被告人会社に関し更に右改正前の法人税法一六四条一項)に、裁判時においては右改正後の法人税法一五九条一項(右被告人会社に関し更に右改正後の法人税法一六四条一項)にそれぞれ該当するが、右は、右被告人会社に関しては犯罪後法律の改正があったが刑に変更がない場合であるから行為時法の刑によることとし、被告人平山松若に関しては犯罪後の法律により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、なお右被告人会社に関し情状により法人税法一五九条二項を適用し、その所定金額の範囲内で同被告人会社を罰金八〇〇万円に処し、被告人平山松若に関し所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処し、同被告人に対し情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予することとする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 上原吉勝)