熊本家庭裁判所 昭和52年(家)709号 審判 1977年7月11日
申立人 山本洋子(仮名)
事件本人 山本由美(仮名)
主文
事件本人の後見人として申立人を選任する。
理由
1 当庁昭和五一年(家)第五八六号親権者変更申立事件(昭和五二年四月二七日取下)、及び本件記録編綴の諸資料及び申立人審問の結果によると、
(1) 申立人は昭和四四年頃○○○市で韓国人(本籍慶尚南道○○郡○○面○○里)朴勝栄と親しくなり昭和四五年九月三〇日から同棲し昭和四六年七月三〇日に事件本人をもうけた。
(2) その後申立人は昭和四六年一〇月五日上記朴勝栄と婚姻し、同日朴勝栄は事件本人を認知した。
(3) しかしながら申立人は夫の国の風俗習慣になじめないこともあつて昭和五〇年二月一三日朴勝栄と協議離婚するに至つた。
(4) 離婚に際し、申立人は事件本人を引取つて肩書住所の申立人の母の許に居住し事件本人を養育している。事件本人の父朴勝栄は離婚後事件本人の養育については無関心で、事件本人に会いに来たこともなく又養育費を送つたこともない。
(5) なお、事件本人は韓国人朴勝栄に認知され、大韓民国国籍法三条二号により韓国籍を取得したがその後も日本国籍を離脱することがなかつたので六月の経過によつて韓国籍を喪失した。
以上の事実を認めることができる。
2 ところで、親子間の法律関係は法例二〇条によつて、父の本国法が適用されるところ、事件本人の父の本国法である大韓民国民法七八一条一項、九〇九条一項によれば、子は父の家に入籍し、その子が未成年者であれば、その家にある父の親権に服従するのであるから、事件本人は前記認知届後六月間即ち事件本人が韓国籍を有して父朴勝栄の家にある間は、父朴勝栄の親権に服していたが、右六月の経過により、事件本人が韓国籍を喪失して父の家から出ることにより、(大韓民国戸籍法二一条)、父朴勝栄は親権者でなくなり、結局民法八三八条一項(法例二三条一項により日本民法)によつて事件本人につき後見が開始したと解される。
そうすると、前記認定した事実によると、申立人は事件本人の実母であり、事件本人の後見人として何ら欠けるところがないので、本件申立を認容して主文のとおり審判する。
(家事審判官 赤塚健)