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甲府地方裁判所 平成13年(行ウ)12号 判決 2004年3月09日

平成13年(行ウ)第12号事件原告 甲(以下「原告甲」という。)

平成13年(行ウ)第13号事件原告 乙(以下「原告乙」という。)

平成13年(行ウ)第14号事件原告 丙(以下「原告丙」という。)

上記3名訴訟代理人弁護士 米澤幸子

平成13年(行ウ)第12号、第13号、第14号事件被告 大月税務署長

関谷隆

上記指定代理人 古川忠雄

同 石川和博

同 櫻井保晴

同 手川一夫

同 北村修

同 中澤淳

同 鍋内幸一

同 實川嘉晴

同 為我井利昌

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1  請求

1  平成13年(行ウ)第12号事件

被告が平成12年1月31日付けで原告甲に対してした同人の平成8年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

2  平成13年(行ウ)第13号事件

被告が平成12年1月31日付けで原告乙に対してした同人の平成8年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

3  平成13年(行ウ)第14号事件

被告が平成12年1月31日付けで原告丙に対してした同人の平成8年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

第2  事案の概要

1  本件は、原告らが、被告の原告甲に対する平成8年分所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分、原告乙及び原告丙に対する平成8年分各所得税決定処分及び各無申告加算税賦課決定処分は、遡及的解除条件が成就したか解除された土地贈与について所得税法59条1項1号に基づき課税した違法があり、また土地の価額評価を誤って課税した違法があると主張して、被告に対し上記各処分の取消を求める事案である。

2  争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(以下「争いのない事実等」という。)

(1)  原告乙、原告丙、丁(以下「丁」という。)は原告甲の子であり、戊(以下「戊」という。)は丁の妻であり、A(以下「A」という。)は丁及び戊の子である。

(2)  原告らは、もと別紙物件目録記載2、3(以下別紙物件目録記載の土地をそれぞれ「本件土地1」「本件土地2」などといい、本件土地2、3を合わせて「本件土地」という。)の土地を所有していた(なお、原告らの持分は各3分の1であり、本件土地3は平成8年2月9日付けで本件土地2から分筆登記された土地である(甲5の2・3)。)。

(3)  社会福祉法人B(以下「B」という。)は、特別養護老人ホームCの設置経営を目的として、平成8年1月31日、山梨県知事の認可により設立され、同日法人登記がされた。

なお、設立時の理事長は戊であった。

(4)  原告らは、平成8年1月31日ころ、Bに対し、その基本財産とし、老人介護施設の敷地とするため、本件土地を贈与した(以下「本件贈与」という。なお、登記簿上は、平成8年1月31日寄付行為を原因として、平成8年2月14日付けで、有限会社DからBに所有権移転登記がなされているが、これは原告らが有限会社Dとの間の譲渡担保契約を合意解除し、中間省略登記の方法によりBに所有権移転登記したためである。)。

また、Aも、同日、Bに対し、同様の趣旨により、本件土地1を贈与した。

(5)  被告は、平成12年1月31日付けで、原告甲に対し、平成8年分所得税689万1500円を納付すべき旨の更正処分及び過少申告加算税103万4000円を納付すべき旨の賦課決定処分をし、原告乙及び原告丙に対し、それぞれ平成8年分所得税を704万7400円とする旨の決定処分及び無申告加算税105万6000円を納付すべき旨の賦課決定処分をした(以下これらを合わせて「本件処分」という。)。

本件処分は、本件贈与に所得税法59条1項1号の適用があることを理由に譲渡所得に対する課税をしたものである。

(6)  原告らは被告に対し、平成12年2月28日、本件処分についてそれぞれ異議申立てをしたが、同年5月29日付けでいずれも棄却決定がされた。さらに、原告らは国税不服審判所長に対し、同年6月27日、それぞれ審査請求をしたが、平成13年6月22日付けでいずれも棄却決定がされた。

3  本件の争点

本件処分のうち、被告の所得税、過少申告加算税及び無申告加算税の計算方法、各種控除額等については当事者間に争いがないので、本件の争点は以下の点である。

(1)  本件贈与は遡及的解除条件付又は負担付であり、解除条件成就又は負担不履行による解除が認められるか。

上記事実が認められる場合、本件贈与に所得税法59条1項1号を適用して譲渡所得に対する課税をした本件処分は違法となるか。

(2)  本件処分における本件土地の価額評価に違法があるか。

第3  争点に対する当事者の主張

1  争点(1)について

(1)  原告らの主張

ア 本件贈与は、Bが本件土地をその目的(福祉サービスを必要とする者が、その環境、年齢及び心身の状況に応じ、地域において必要な福祉サービスを総合的に提供されるように援助すること。)に沿うように老人介護施設の敷地として使用し、その目的を達成するような運営をするという負担又は上記目的に沿った事業ができなくなったときは遡及的に贈与が無効になる旨の解除条件が付いていた。

ところが、Bは、補助金交付に対する反対運動及び施設の建築工事中断の結果、平成9年3月に山梨県の補助金交付決定が取り消され、その後厚生省や山梨県厚生部に対する働きかけや理事長交代によっても特別養護老人ホームの建設費用を捻出することができず、平成11年末までにはその目的を達することが不能となった。

したがって、本件贈与は、Bがその目的に沿った事業ができなくなったことにより平成11年末までに上記解除条件が成就しているか、又は原告らがBに対してした抹消登記手続請求訴訟(甲府地方裁判所都留支部平成12年(ワ)第57号。以下「別訴事件」という。)の訴状送達(平成12年5月26日ころ)をもって、上記負担の不履行による解除の意思表示をしたことにより遡及的に無効となった。

仮に、上記解除が認められないとしても、原告らはBとの間で本件贈与契約を合意解除した。

イ 上記のとおり、本件贈与は、本件処分以前に遡及的解除条件が成就したか負担の不履行による解除をしたことにより遡及的に無効になっており、これに所得税法59条1項1号を適用して課税した本件処分は違法である。

また、本件処分は、上記のとおり本件贈与が解除されたこと、かかる事実が別訴事件における認諾(平成12年9月8日)により確定していること又は合意解除されたことにより後発的に瑕疵があるものとなるから、国税通則法23条2項1号、3号、同法施行令6条1項2号の趣旨からして、本件処分は遡って違法となる(なお、上記認諾をしたEは、平成12年2月5日、Bの理事及び理事長に就任しており、別訴事件において認諾する際、Bの代表権があった。)。

ウ 税務署長は、更正又は決定後に課税処分に後発的瑕疵が生じ、課税標準等が過大又は過少であることを知ったときは更正をすべき義務があるから(国税通則法26条)、税務署長がこれを怠っている場合に、更正請求の期間を徒過しているとの理由で課税処分の違法について裁判所の判断を求められないとすることは、納税義務者の裁判を受ける権利を害することになるし、本件処分については、審査請求の中で本件贈与の解除による遡及的無効を主張し、実質的に被告の判断を仰いでいるから、更正請求を経ることなく訴えを提起し、課税処分後の事情を主張することができるのは当然である。

(2)  被告の主張

ア 原告らが主張するような遡及的解除条件又は負担について書面その他これを裏付ける証拠はないし、本件土地はBが社会福祉法人として認可を受けるために必要不可欠な資産であり、これを譲り受けるに際し、遡及的解除条件又は負担を付けることは到底考えられない。

イ Eは、平成12年1月31日、理事長の任期が切れ、それ以降Bの代表権限を失ったところ、別訴事件における認諾は、同年9月8日、Bの代表権がないEによりなされたものである上、Bの定款13条で定められている理事の3分の2以上の同意及び山梨県知事の承認を得ていないから、無効である。

ウ 課税処分の取消訴訟における違法性の判断は当該課税処分が行われた時点を基準に判断すべきであり、本件処分後の事情により本件処分が違法になることはない。

仮に本件処分後に本件贈与が解除されたとしても、かかる事由を課税処分等の取消原因として主張することは許されず、国税通則法23条2項所定の期間内に更正請求をすることにより是正を求めるべきであり、また審査請求における主張をもってこれに代えることもできない。

2  争点(2)について

(1)  原告らの主張

ア 被告は本件土地の「その時における価額」(所得税法59条1項)を1億1731万3350円としているが、本件土地の平成9年度の固定資産評価額は合計4万8514円であり、財産評価基本通達により倍率方式で算出すると約1577万円になる。税の目的が異なるからといって時価とされる価額が全くかけ離れるということはあり得ず、譲渡所得に対する課税における評価額が財産評価基本通達による評価額の数倍になるのは不合理であるから、本件処分には本件土地の価額評価を誤った違法がある。

イ 本件土地は、辺鄙な場所にあり、本件贈与当時、土地を利用するためには雑木の伐採、造成などが必要であり、とても1億1731万3350円(1平方メートル当たり3万6275円)と評価されるような土地ではない。

被告が挙げる取引実例は、L公社が道路改良事業にかかる代替地として買収したものであり、相場よりも高額になっており、これを基準に価額を算出するのは妥当でなく、またBの依頼による平成7年11月10日時点の株式会社F銀行の評価額も必ずしも客観的なものではない。

東京国税局は、原告甲及びA所有の不動産について滞納処分に基づく差押えをしているが、そこでの不動産の価額評価と本件処分における不動産の価額評価との間に一貫性がない。

ウ 原告ら提出の不動産鑑定書(以下「原告ら鑑定書」という。)によれば、本件土地の平成8年1月31日時点の評価額は、本件土地2が5468万円(1平方メートル当たり1万8100円)、本件土地3が38万6000円(1平方メートル当たり1810円)である。

(2)  被告の主張

ア 本件処分における本件土地の評価額は、本件贈与が行われた平成8年1月に時期的に近接し、本件土地の近隣に所在する土地の取引実例に基づき、1億1731万3350円(1平方メートル当たり3万6275円)と算定しており、Bの依頼による平成7年11月10日時点の株式会社F銀行の評価額(2億2546万9000円)よりも低額であり、正当かつ妥当なものである。

なお、相続税の財産評価基本通達は、譲渡所得に対する課税とは対象・目的を異にするから、財産評価基本通達により算定した価額をもって所得税法59条1項の「その時における価額」を主張すること自体失当である。

イ 被告提出の不動産鑑定書(以下「被告鑑定書」という。)によれば、本件土地の価額は、1平方メートル当たり3万6980円であり、本件処分の評価額(1平方メートル当たり3万6275円)はこれを下回っており、本件処分の評価額は妥当なものである。

第4  当裁判所の判断

1  争点(1)について

(1)  証拠(甲4、6の1ないし3、甲9ないし14、甲24、25の6、7、乙3、6、14。ただし、甲24、乙14については下記認定に反する部分を除く。)によれば、Bの設立から解散に至る経緯について以下の事実が認められる。

ア 丁及び戊は、平成6年12月ころ、老人介護施設を作ることを計画し、その敷地とするため原告らから本件土地を、Aから本件土地1を寄付してもらう内諾を得た。

イ その後、上記計画の準備が進み、平成7年10月30日、山梨県から施設整備費補助金交付の内示があり、同年11月15日、富士吉田市からも利子補給及び施設整備費補助の内示があり、同年12月15日、戊が山梨県に対しB設立認可申請書を提出し、平成8年1月31日、山梨県からB設立認可がされた。

ウ Bは、平成8年3月11日、本件土地1及び本件土地に抵当権を設定してGから3億2320万円を借り入れ、同月25日、入札の結果建設業者となったH株式会社との間で工事請負契約を締結し、同年5月ころ特別養護老人ホームの建設に着工した。

エ 山梨県からBに対し、平成8年6月5日、施設整備費補助金として5億6741万2000円を交付する旨の内示があったが、同月22日ころ、富士吉田市議会でBへの補助金交付に対する反対が強くなってその凍結が問題となり、同年8月ころ、特別養護老人ホームの建設は中断され、平成9年3月31日、山梨県のBに対する施設整備費補助金交付決定が取り消された。

オ その後、Bは、理事長をI、E、Jとするなどして事態の打開を図ろうとしたが、功を奏せず、平成12年10月24日、仮理事長Kによって解散認可申請が出されて解散した。

(2)  ところで、原告らは、本件贈与には、Bが本件土地をその目的(福祉サービスを必要とする者が、その環境、年齢及び心身の状況に応じ、地域において必要な福祉サービスを総合的に提供されるように援助すること。)に沿うように老人介護施設の敷地として使用し、その目的を達成するような運営をするという負担又は上記目的に沿った事業ができなくなったときは贈与が遡って無効になる旨の遡及的解除条件が付いていた旨主張し、丁の陳述書(甲24)及び東京地方裁判所平成13年(行ウ)第259号事件における証人尋問調書(乙14)にはこれに沿う部分もある。

しかしながら、証拠(甲1、2、5の各1ないし3、甲23)によれば、本件贈与に関する契約書(甲23。ただし、Bと有限会社D間のものであり、原告らとB間の直接の契約書は存在しない。)には、原告らの主張するような遡及的解除条件又は負担について何ら記載がなく、Bが設立の認可を得られない場合に贈与契約が無効になる旨の記載がされているだけであること、原告らは本件処分に対する異議申立てにおいて遡及的解除条件又は負担について何ら主張することなく、単にみなし譲渡課税(所得税法59条1項)についての知識不足から寄付(贈与)について課税することへの不平を述べていたにすぎないこと、本件土地の所有権移転登記は依然としてBのままになっていることが認められ、これらの事実を総合すれば、本件贈与に遡及的解除条件又は負担が付けられていたと認めることはできない。

なお、丁の証人尋問調書(乙14)によれば、原告甲は本件贈与契約締結時に老人ホームができなければ土地の寄付はなかったことにしてもらうと言っていたというものの、その趣旨は極めてあいまいなもので、むしろ、同証人尋問調書によれば、原告らはBに補助金が交付されず計画が頓挫することなど毛頭考えていなかったというのであるから、丁の同証人尋問調書及び陳述書(甲24)のうち本件贈与には遡及的解除条件又は負担が付されていたとの部分は採用することができない。

(3)  次に、原告らは本件処分後に本件贈与契約を解除しており、本件処分には後発的な瑕疵があるから取り消されるべきである旨主張する。

しかしながら、本件贈与契約に負担が付されていないことは上記説示したとおりであるから、本件処分後に本件贈与契約が負担の不履行により解除されたということはできない。また、原告らは本件贈与契約が合意解除されたとも主張するが、その時期すら明らかでなく、これを認めるに足りる証拠もない。

仮に本件処分後に本件贈与契約が解除されたとしても、かかる事情による原告らの救済は、国税通則法23条2項の規定により所定の期間内に更正請求をすることにより図られるべきで、課税処分についての抗告訴訟においてかかる事情を取消原因として主張することは許されないし、審査請求における主張をもって更正請求があったと解することもできない。

なお、原告らが提起した本件土地に関する所有権移転登記抹消登記請求事件(甲府地方裁判所都留支部平成12年(ワ)第57号)の平成12年9月8日の第2回口頭弁論期日において、被告であるBが認諾をしている(甲7の1)ものの、証拠(甲3の1、乙2、4、5)に弁論の全趣旨を総合すれば、上記認諾は、代表権を持たないEが、定款13条に基づかずに行った無効なものであり、実体的にみても、原告らが専ら納税を免れる目的でなれ合いによってなしたものというほかない(Eは、原告甲の義理の兄であり、丁の叔父に当たる。)から、これが国税通則法23条2項1号の「判決と同一の効力を有する行為」に当たらないことも明らかである。

したがって、本件処分には後発的な瑕疵があるから取り消されるべきであるとの原告らの主張も採用することができない。

(4)  以上検討したとおり、本件処分のうち本件贈与に所得税法59条1項1号を適用して譲渡所得に対する課税をした点に、何ら違法はない。

2  争点(2)について

所得税法59条1項1号所定の「その時における価額」とは、通常の取引価額をいうと解されるところ、証拠(乙1、9、10、15、16)によれば、本件土地に近接する土地(所在・富士吉田市、地目・山林、地積827㎡)について平成7年12月ころに価格3000万円(1平方メートル当たり約3万6275円)での取引事例があったこと、その後同土地は平成8年9月30日価格3110万円で売買されたこと、本件土地は被告鑑定書(乙9。取引事例比較法による比準価格、開発方式による価格、基準地価格との均衡を勘案した評価)によれば、平成8年1月31日時点で1平方メートル当たり3万6980円と評価されることが認められ、被告主張の本件土地の価額1億1731万3350円(1平方メートル当たり3万6275円)は本件土地の通常の取引価額を上回ることはないものと認めることができる。

これに対し、原告らは、被告の本件土地の評価額は、固定資産評価額をもとに相続税の財産評価基本通達により倍率方式で算出した価額に比して高すぎる旨主張するが、相続等による財産の取得に担税力を認めて課税する相続税と、譲渡所得に対する課税とでは対象、目的を異にするから、譲渡所得の資産評価において相続税の財産評価基本通達によることは相当でない。

また、原告らは、被告の挙げる取引実例のうちL公社の買収は相場より高額になっていると主張するが、その土地は代替地として取得されたもので同公社が収用したものではなく、通常、被買収者と代替地提供者により価格が決定されるものである(乙1、弁論の全趣旨)。次に、平成7年11月10日時点のF銀行の評価は、Bが本件土地を取得した時期に、同土地を直接評価したものであり(乙7)、参考となるといえる。

そして、原告らは、原告ら鑑定書(甲21。取引事例比較法による比準価格、基準地価格を基準とした価格、原価法による積算価格、開発方式による価格を勘案した評価)によれば、本件土地を個別にみた場合、本件土地2は1平方メートル当たり1万8100円、本件土地3は1平方メートル当たり1810円と評価される旨主張する。しかしながら、原告ら鑑定書は取引事例比較法において資料とした取引事例が3例しかない上、このうち1例は比準価格の算出上、除外されており、もう1例は本件土地との地域格差が約2.6倍にもなっており取引事例としての採用は不適当である。

また、原告ら鑑定書が規準価格を試算するために用いた基準地と本件土地との地域格差率(285分の100)は、同鑑定書及び被告鑑定書において採用された取引事例から導かれる地域格差率と大きく異なる。これに対し、被告鑑定書が用いた地域格差率(136分の100)は、上記取引事例から導かれる地域格差率に近似している。

さらに、原告らは、被告鑑定書記載の諸条件等についてもるる反論するが、その大半は同鑑定書においても検討しており、原告らの反論は適切ではない。

これらの事情にかんがみれば、原告ら鑑定書は、被告鑑定書に比べて信用性が劣るというほかなく、被告主張の価額が本件土地の通常の取引価額を上回るということはできない。さらに、本件土地3は本件贈与後に本件土地2から分筆登記されたものであり、かつ、本件土地はBの建物の敷地として一体利用する目的で同時期に贈与されたものであるから、これを個別に評価することは相当でない。

また、原告らは原告甲やAに対する滞納処分による差押えにおける不動産評価額と本件処分における本件土地の評価額との間に一貫性がない旨主張するが、これらは評価時点を異にしており、これにより本件処分における被告の本件土地の価額評価が誤っているということもできない。

したがって、本件処分における被告の本件土地の価額評価に違法な点はない。

3  以上の次第であって、原告らの請求には理由がないからいずれもこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 新堀亮一 裁判官 倉地康弘 裁判官 知野明)

別紙物件目録

1 所在 富士吉田市

地番

地目 山林

地積 2629㎡

2 所在 富士吉田市

地番

地目 山林

地積 3021㎡

3 所在 富士吉田市

地番

地目 山林

地積 213㎡

以上

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