甲府地方裁判所 平成6年(わ)52号 判決 1994年6月17日
本店所在地
山梨県都留市鹿留一〇六一番地
株式会社
相川プレス工業
(右代表者代表取締役 相川猛)
本籍
山梨県都留市十日市場一四一二番地
住居
同所八〇番地
会社役員
相川猛
昭和二一年二月二七日生
主文
被告人株式会社相川プレス工業を罰金五〇〇〇万円に
被告人相川猛を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人相川猛に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社相川プレス工業は、山梨県都留市鹿留一〇六一番地に本店を置き、音響機器部品のプレス加工販売を目的とする資本金六四〇〇万円の株式会社(平成元年一二月一五日以前は有限会社)であり、被告人相川猛は同会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人相川は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、雑収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和六三年八月一日から平成元年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二九億一八七八万四八八五円あったのにもかかわらず、平成元年一〇月二日、山梨県大月市駒橋一丁目一〇番二号所在(平成五年六月一四日、同市御太刀二丁目八番一〇号に所在地変更)の所轄大月税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二五億九八五六万〇四三七円で、これに対する法人税額が一〇億三七九五万五二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一一億七九二五万七三〇〇円と右申告税額との差額一億四一三〇万二一〇〇円を免れ
第二 平成元年八月一日から平成二年七月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二一億五九四七万五二五八円あったのにもかかわらず、平成二年一〇月一日、前記大月税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二〇億三三七五万六九二二円で、これに対する法人税額が八億三一一九万四一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額八億八一九四万四八〇〇円と右申告税額との差額五〇七五万〇七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実について
一 被告人相川猛の当公判廷における供述
一 被告人相川猛の検察官に対する供述調書
一 瀧本光清、小山幸春、渡辺直子、白井俊光の検察官に対する各供述調書
一 天野孝敏の検察官に対する供述調書の謄本
一 検察官及び弁護人作成の合意書と題する書面
一 検察事務官大木孝夫作成の電話聴取書
一 大月税務署長作成の証拠品提出書の謄本
一 大蔵事務官関根勝則作成の領置てん末書の謄本
一 大蔵事務官河原司作成の期首製品棚卸高調査書、期首原材料棚卸高調査書、期末原材料棚卸高調査書、期首仕掛品棚卸高調査書、期末仕掛品棚卸高調査書、減価償却費調査書、期末製品棚卸高調査書、雑収入調査書、接待交際費調査書、交際費の損金不算入額調査書
一 登記官作成の被告人会社の商業登記簿の謄本
判示第一の事実について
一 押収してある平成元年七月期法人税確定申告書(平成六年押第五号符号1)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官河原司作成の事業税認定損調査書
一 押収してある平成二年七月期法人税確定申告書(平成六年押第五号符号2)
(法令の適用)
罰条
被告人会社について いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項
被告人相川猛について いずれも同法一五九条一項(懲役刑を選択)
併合罪加重
被告人会社について 刑法四五条前段、四八条二項
被告人相川猛について 同法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)
執行猶予 同法二五条一項
(量刑の理由)
本件犯行は、逋脱金額も決して少ないものではなく、一般人をして税に対する規範意識の低下を招きかねない、また、計画的な悪質な犯行であるといわなければならない。しかし、被告人相川猛の指導により、被告人会社は本件以後反省して税務申告を訂正し、本件分を含めて全額を完納していること、以後の年度分については正しく申告し、納税していること、本件を契機として再びこのような行為をくり返さないことを誓約していること、被告人相川猛には前科前歴はないことなど諸般の事情を総合考慮し、主文掲記の刑を量定し、被告人相川猛に対しては今回に限りその懲役刑の執行を猶予することとした。
出席検察官・鶴田小夜子
(弁護人・(主任)寺島勝洋、古屋俊仁)
(求刑・被告人会社、罰金六〇〇〇万円
被告人相川猛、懲役一年六月)
(裁判官 三浦力)