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甲府地方裁判所 昭和25年(行モ)10号 決定

相手方山梨縣東八代郡芦川村長が昭和二十五年十一月五日申立人等に対してした、右芦川村選挙管理委員の職を免ずる旨の懲戒処分の執行を停止すべきことを命ずる。

二、理  由

本件申立の要旨は、

「申立人等四名は山梨縣東八代郡芦川村選挙管理委員であつて、申立人藤原美貞は同選挙管理委員会の委員長でもあるが、相手方芦川村長は、昭和二十五年十一月五日地方自治法施行規程第五十條に基く懲戒処分として、右選挙管理委員たる申立人等の職を免ずる旨の処分をし、申立人等にその通知があつた。

けれども右行政処分には次のような違法の原因があつて取り消さるべきものである。すなわち村選挙管理委員の懲戒免職の処分をするには地方自治法施行規程第四十九條、第三十四條第三項によつて村吏員懲戒審査委員会の議決を経なければならぬことになつており、本件懲戒処分も芦川村吏員懲戒審査委員会の議決を経てしたことになつているが、その芦川村吏員懲戒審査委員会の委員たるや、芦川村議会が昭和二十五年七月二十三日村長たる相手方の不信任決議の結果解散された後に、地方自治法第百七十九條による村長の專決処分によつて命ぜられたものであるから、その後村議会が成立するに至つたときは、遅滯なくこれを招集し、同條第三項の規定によるその承認を得なければならないものであつたことは、同條全文の趣旨からして明らかである。而うして同村においては既に同年八月十七日村議会の議員選挙が施行され、同月十八日の議員の当選が確定し、村議会はここに成立したのに拘らず、村長である相手方は荏苒これが招集をなさず、從つて前記吏員懲戒審査委員会の委員任命の承認をも受けていない。しかるにたまたま山梨縣教育委員の選挙期日が昭和二十五年十一月十日に決定されるや、相手方は申立人等を懲戒すべき何等正当の理由がないのに、これにさきだつ十月三十日右芦川村吏員懲戒審査委員会に対し、申立人等の懲戒審査の要求をし、相手方の親族及び協力者のみにより成り、事実上相手方と一身同体の関係にある同委員会はこれが議決をしたというので、これに基き相手方の本件懲戒処分がなされたものである。右に述べるように、右懲戒処分はその任命につき村議会の承認のない懲戒審査委員会の議決を経て而も何等の理由もなくされた違法のものであつて、到底取消を免れない。

申立人等はおうむね以上の理由に基き、右懲戒処分の取消請求訴訟法を提起し、右訴訟は甲府地方裁判所昭和二十五年(行)第三六号として係属した。けれども前記のように山梨縣教育委員の選挙期日は來る十一月十日に迫つており、本件懲戒処分の執行停止を得て選挙管理委員としての申立人等の手によつてこれを施行するのでなくては、右選挙の違法を惹起し、後日選挙無効の原因となることは必至であり、ひいては折角選出された山梨縣教育委員の職務執行を不能にし、償うべからざる損害を生ずる虞れが大であるので、本件執行停止の申立に及んだ。」と云うのである。

よつて考えてみるのに、相手方がした本件懲戒免職の処分が、果して申立人等主張の点で違法であり、取消を免れないものであるかどうかは、本案審理の上でなくてはにわかに断定できないところである。しかし乍らこれが適法であつて、全然取消の虞れがないものとも亦断言を憚かるものがあつて、將來もしもこれが取り消されるようなことがあれば、申立人等主張のような公共の不利益を生ずるであろうことは予想に難くない。このようなことは、償うことのできない損害を避けるため、右懲戒処分の効力の発生を停止すべき緊急の必要がある場合と認められ、而うして行政事件訴訟特例法第十條第二項にいわゆる処分の執行停止とは、單に行政処分に基き、その執行行爲として現実に何らかの法律行爲又は事実行爲がなさるべき場合に、これが執行を停止することを意味するに止まらず、廣く本件懲戒処分のように、行政上の意思表示の効力の発生を停止する必要のある場合も含めて考えらるべきであるので、申立人等の本件申立を相当と認め、主文のとおり決定する。

(裁判官 入山実 五味逸郎 宮沢邦夫)

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