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甲府地方裁判所 昭和46年(わ)241号 判決 1972年3月27日

本店所在地

山梨県富士吉田市下吉田八一六番地

有限会社

大西肉店

右代表者代表取締役

五十嵐菊蔵

本籍ならび

山梨県富士吉田市下吉田八一六番地

に住居

会社役員

五十嵐菊蔵

大正二年二月二〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官村瀬武司出席のうえ審理を遂げ、つぎのとおり判決する。

主文

一、被告人有限会社大西肉店を罰金四〇〇万円に、被告人五十嵐菊蔵を懲役六月にそれぞれ処する。

二、被告人五十嵐菊蔵に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

三、訴訟費用は被告人らの連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社大西肉店(以下被告人会社という)は、山梨県富士吉田市下吉田八一六番地に本店を置き、食肉販売等の事業を営むもの、被告人五十嵐菊蔵は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人五十嵐は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、いずれも、売り上げの一部を除外して簿外預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四二年七月一日から昭和四三年六月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額が別紙(二)修正貸借対照表記載のとおり二三、七四一、六三二円であったのにかかわらず、昭和四三年八月三一日、同県大月市駒橋一丁目一〇番二号所在大月税務署において、同税務署長に対し、所得金額は一、二八五、三二一円であり、これに対する法人税額が三三五、五〇〇円である旨の虚偽不正の確定申告書を提出し、もって、別紙(五)税額計算書記載のとおり被告人会社の右事業年度の正規の法人税額八、〇七五、〇〇〇円と右申告税額との差額七、七三九、五〇〇円を逋脱し、

第二、昭和四三年七月一日から、昭和四四年六月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額が別紙(三)修正貸借対照表記載のとおり二三、七八六、五九七円であったのにかかわらず、昭和四四年九月一日、前記大月税務署において、同税務署長に対し、所得金額は、七八三、五〇六円であり、これに対する法人税額が一九四、〇〇〇円である旨の虚偽不正の確定申告書を提出し、もって、別紙(六)税額計算書記載のとおり被告人会社の右事業年度の正規の法人税額八、〇八九、九〇〇円と右申告税額との差額七、八九五、九〇〇円を逋脱し、

第三、昭和四四年七月一日から昭和四五年六月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額が別紙(四)修正貸借対照表記載のとおり一九、五八七、五九七円であったのにかかわらず、昭和四五年八月三一日、前記大月税務署において、同税務署長に対し、所得金額は八〇一、九二七円であり、これに対する法人税額が一九一、四〇〇円である旨の虚偽不正の確定申告書を提出し、もって、別紙(七)税額計算書記載のとおり被告人会社の右事業年度の正規の法人税額六、九〇二、八〇〇円と右申告額との差額六、七一一、四〇〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき、

一、被告人の検察官面前調書六通

一、大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書一七通

一、西室健、田辺昌代、塩沢次郎、和田行雄、渡辺一、斉藤二三男、渡辺君枝(二通)、五十嵐忠幸の各検察官面前調書

一、大蔵事務官作成の西室健、塩沢次郎、渡辺一(二通)、岡田邦男、渡辺君枝(二通)、五十嵐忠幸(三通)、五十嵐敏子に対する各質問てん末書

一、証人早坂撥男、同青柳明男、同桜庭剛宗の当公判廷における各供述

一、長田大作作成の上申書

一、早坂撥男作成の預金関係調査書、社長仮払金調査書および未払事業税調査書

一、大橋勝也作成の修正貸借対照表および商品取引調査書

一、遠藤昭三作成の現金有価証券等現在高検査てん末書

一、青柳明男作成の「預金残高及び支払利息の明細の提出について」と題する書面および上申書二通

一、塩沢次郎作成の「預金残高および支払利息の明細について」と題する書面

一、杉和作成の「定期預金元票等の写しの提出について」と題する書面

一、和田行雄作成の「預金取引内容について」と題する書面

一、鳥井已代治作成の証明書(青色申告承認取消)

一、有限会社大西肉店の登記簿謄本

一、押収中の法人税決議書一冊(昭和四六年押第六五号の一)、同納品票二綴一二冊(同号の二、三)、同仕入帳一冊(同号の四)

判示第一の事実につき、

一、大橋勝也作成の犯則その他所得調書(貸借43・6期分)

一、同人作成の脱税額計算書(42.7.1~436.30分)

判示第二の事実につき、

一、大橋勝也作成の犯則その他所得調書(貸借44・6期分)

一、同人作成の脱税額計算書(43.7.1~44.6.30分)

判示第三の事実につき

一、大橋勝也作成の犯則その他所得調書(貸借45・6期分)

一、同人作成の脱税額計算書(44.7.1~45.6.30分)

(法令の適用)

被告人会社の判示各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に、被告人五十嵐の判示各所為はいずれも同法一五九条一項に、それぞれ該当するから、同被告人については所定刑中いずれも懲役刑を選択し、各被告人毎に、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により各罪につき定められた罰金の合算額以下で、被告人五十嵐については同法四七条本文、一〇条により犯情最も重いと認める判示第二の罪の刑に併合罪の加重をした刑期範囲内で、被告人会社を罰金四〇〇万円に、被告人五十嵐を懲役六月に、それぞれ処し、被告人五十嵐に対しては、情状により、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人らの連帯負担とする。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、判示期間中に、被告人五十嵐が商品取引および有価証券取引をしたことによって生じた損害は、同被告人が被告人会社の資産を増加させるためにした会社行為の結果であるから、これを被告人会社の損金として計上すべきであると主張するが、前掲諸証拠を総合勘案すると、その主張にかかる商品取引および有価証券取引は、被告人五十嵐が被告人会社の代表者として行ったものとは認め難いので、弁護人の右主張を採用することはできない。

よって、在文のとおり判決する。

(裁判官 田中加藤男)

別紙(一) 修正貸借対照表(期首過年度分)

昭和42年6月30日現在

<省略>

修正貸借対照表(別紙(一)続き)

<省略>

別紙(二) 修正貸借対照表

昭和43年6月30日現在

<省略>

修正貸借対照表(別紙(二)続き)

<省略>

別紙(三) 修正貸借対照表

昭和44年6月30日現在

<省略>

修正貸借対照表(別紙(三)続き)

<省略>

別紙(四) 修正貸借対照表

昭和45年6月30日現在

<省略>

修正貸借対照表(別紙(四)続き)

<省略>

別紙(五)

税額計算書(S42.7.1~43.6.30期)

<省略>

税額の計算(S42.7.1~43.6.30期)

<省略>

別紙(六)

税額計算書(S43.7.1~44.6.30期)

<省略>

税額の計算(S43.7.1~44.6.30期)

<省略>

別紙(七)

税額計算書(S44.7.1~45.6.30期)

<省略>

税額の計算(S44.7.1~45.6.30期)

<省略>

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