甲府地方裁判所 昭和51年(わ)164号 判決 1976年11月05日
本店所在地
山梨県甲府市丸の内二丁目一二番一六号
合資会社保坂商店
右代表者代表社員
保坂正
本籍
同県同市丸の内二丁目一三五番地
住居
同県同市丸の内二丁目一二番一六号
会社役員
保坂正
大正一二年四月二六日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官古川元晴及び弁護人古屋俊仁各出席のうえ審理して、次のとおり判決する。
主文
一、被告人合資会社保坂商店を罰金二五〇万円に、被告人保坂正を懲役四月にそれぞれ処する。
二、ただし、被告人保坂正に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人合資会社保坂商店は、甲府市丸の内二丁目一二番一六号に本店を置き、鮮魚及び食料品の卸小売等の事業を営むもの、被告人保坂正は、同会社の代表社員としてその業務全般を統括するものであるが、被告人保坂正は、同会社の経理責任者保坂淑子と共謀のうえ、同会社の業務に関し、法人税を免れるため、いずれも売上げの一部を除外するなどの行為により所得を秘匿したうえ
第一、昭和四七年五月一日から同四八年四月三〇日までの事業年度における同会社の所得金額が金二、七二六万八、三四八円でこれに対する法人税額が金九七五万八、四〇〇円であるのにかかわらず、同四八年六月二九日、甲府市丸の内一丁目一一番六号所在の甲府税務署において、同税務署長に対し所得金額が金八一九万四、〇五二円でこれに対する法人税額が金二七四万八、七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税額金七〇〇万九、七〇〇円を免れ
第二、同四八年五月一日から同四九年四月三〇日までの事業年度における同会社の所得金額が金二、一四〇万二、三三九円でこれに対する法人税額が金七六〇万二、七〇〇円であるのに、同四九年六月二九日、前記甲府税務署において、同税務署長に対し、所得金額が金一八六万六、五二一円でこれに対する法人税額が金五二万二、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税金七〇八万〇、三〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一、被告人保坂正の当公判廷における供述
一、被告人保坂正の大蔵事務官(四通。質問てん末書)及び検察官(四通)に対する各供述調書
一、保坂淑子の大蔵事務官(一一通。質問てん末書)及び検察官(四通)に対する各供述調書
一、甲府地方法務局登記官作成の登記簿謄本
一、検察事務官作成の報告書
判示第一及び第二の事実につき
一、大蔵事務官作成の告発書
一、検察官作成の捜査報告書
一、前島忠夫(二通)及び矢崎和隆の検察官に対する各供述調書
一、前島忠夫、芦沢紘及び小沢勇の検察事務官に対する各供述調書
一、深沢孝子、宮川美恵(二通)、窪田久夫、有野茂、牛山傅及び牛山紘一の大蔵事務官に対する各供述調書(質問てん末書)
一、保坂淑子(昭和五一年三月一八日付作成のものを除いた三通)及び中央信託銀行株式会社赤羽支店各作成の各上申書
一、大和商事株式会社(二通)、株式会社第一勧業銀行甲府支店、大和証券株式会社赤羽支店、甲府税務署長(二通)、新日本証券株式会社甲府支店、株式会社山梨中央銀行竜王支店、新日本証券株式会社甲府支店及び保坂淑子(二通)各作成の各証明書
一、社団法人山梨勤労者医療協会作成の「保坂氏よりの借入及返済状況」と題する書面
一、株式会社富士銀行甲府支店作成の「預金取引について」と題する書面
一、甲府商工信用金庫本店(二通)、同金庫北支店、甲斐信用組合北支店(二通)、株式会社山梨中央銀行甲府駅前支店(二通)、株式会社協和銀行甲府支店(二通)、株式会社第一勧業銀行甲府支店、及び甲斐信用組合西支店(二通)各作成の「預金等取引について」と題する各書面
一、農林中央金庫甲府事務所作成の「帳票写の提出について」と題する書面
一、明治生命保険相互会社(四通)、富国生命保険相互会社、三井生命保険相互会社、安田生命保険相互会社、住友生命保険相互会社、東邦生命保険相互会社(六通)、甲府郵便局(一〇通)、第一生命保険相互会社(三通)、及び朝日生命保険相互会社(六通)各作成の生命保険契約内容等の照会に対する各回答書
一、大蔵事務官作成の電話聴取書
一、第一生命保険相互会社作成の「保険料払込み明細表」と題する書面(七通)
一、甲府税務署及び甲府市長各作成の回答書
一、三井銀行株式会社(二通)、住友信託銀行株式会社(二通)、甲斐信用組合、中央信託銀行株式会社及び東洋信託銀行株式会社(五通)各作成の株式の異動及び支払配当金額照会に対する各回答書
一、大蔵事務官作成の査察官調査書(昭和五一年二月六日付「不動産取得について」の書面を除く一九通)
一、被告人保坂正作成の昭和五一年三月一二日付「修正申告書類の提出について」と題する書面
一、押収してある売掛帳八綴(昭和五一年押第七〇号の1ないし8)、同領収書(49・6・29付、49・6・22付、49・6・28付、48・6・1付、48・6・16付のものを除く)九枚(同押号の9ないし15、52、53)、同給料明細帳三冊(同押号の16ないし18)、同普通預金通帳三冊(同押号19、20、26)、同当座出納帳三綴(同押号の21ないし23)、同定期積金通帳一冊(同押号の24)、同ワリノーお買上明細書一一枚(同押号の25)、同振替伝票一九枚(同押号の27)、同決算書一綴(同押号の28)、同メモ三枚および二袋(同押号の29、51、55、56)同振込金受取書一枚(同押号の30)、同入学手続案内書一枚(同押号の31)、同「授業料等納付について」と題する書面一枚(同押号の32)、同振込金受取書四枚(同押号の33)、同所得税の確定申告書(昭和四七年ないし同四九年度分)三枚(同押号の34、36、38)、同所得税の予定納税額の通知書控三枚(昭和四七年ないし同四九年度分)三枚(同押号の35、37、39)、同注文書一枚(同押号の54)、同総勘定元帳一綴(同押号の57)
判示第一の事実につき
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(47・5・1~48・4・30)二通(損益、貸借)
判示第二の事実につき
一、大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(48・5・1~49・4・30)二通(損益、貸借)及び昭和五一年二月六日付査察官調査書(「不動産取得について」のもの)
一、時田譲治、横山幸吉及び丸山保各作成の回答書
一、押収してある領収書(49・6・29付、49・6・22付、49・6・28付、48・6・1付、48・6・16付)五枚(昭和五一年押第七〇号の50、47、48、41、42)、同土地売買契約書二枚(同押号の44、45)、同請求書一枚(同押号の46)、同不動産売買契約書一枚(同押号の43)、同損益比較表一枚(同押号の58)、同念書一枚(同押号の49)
(法令の適用)
被告人合資会社保坂商店の判示各所為は法人税法一六四条一項、一五九条一項に、被告人保坂正の判示各所為は法人税法一五九条一項、刑法六〇条にそれぞれ該当するところ、被告人保坂正については所定刑中懲役刑を選択し、被告人両名の以上の各罪はいずれも同法四五条前段の併合罪であるから、被告人合資会社保坂商店については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人保坂正については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人合資会社保坂商店を罰金二五〇万円に、被告人保坂正を懲役四月にそれぞれ処し、被告人保坂正に対しては情状により同法二五条一項一号を適用してこの裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予することとする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 小林一好)