甲府地方裁判所都留支部 昭和40年(ワ)10号 判決
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〔判決理由〕原告は、多数持分権者として、民法第二百五十二条を根拠に、自から使用収益することに決定し、若しくは従前の使用貸借を解約したから、本訴請求が認容されるべきであると主張する。ところで、このような共有者の占有する共有物を他の共有者に移転することが、民法第二百五十二条の「管理事項」として多数決で決められるか、又は民法第二百五十一条の「変更」として全共有者の同意を要するかは、問題のあるところと言わねばならない。之を本件についてみるに、訴外亡敬男<注、原告の実弟>がその生前、家業を継いで亡父より山澄園の建物を贈与され、爾来同訴外人及びその妻子である被告等が二十年以上に亘り孜々営々として家業を発展させて来たのに対し、爾余の兄弟姉妹が夫々他の個所で独立している場合、同建物の敷地が相続により共有財産に転化し、同訴外人が少数持分権者になつた結果、未だ遺産の分割前に他の共有者から共有持分の過半数を占めることを理由に、店舗兼居宅の収去と該敷地の明渡とを要求され、然も、同訴外人が生存していれば、多数持分権者と雖もそのような要求を持出さないであろうと容易に推認されるのに拘らず、死亡した許りに、被告等の生活の根拠が一挙に覆滅されるかも知れぬと言う事態が、共有関係を律する規定の適用によつて如何に解決されるかと言うことである。勿論、遺産の共同相続の場合、その共有物の使用管理に関しては、民法物権篇の共有の規定によつて決する外はない。然し、その適用の仕方については、民法典の前提とする市民法的原理がそのままの形で適用されるとする解釈と、之を一連の社会法的立法にみられる社会法的原理により、修正を受けた上で適用されるべきであるとする解釈との二つが考えられる。思うに、戦後より今日に続く困難な住宅事情と、家業を継いだ相続人の一人及びその同居相続人を、他の相続人等が多数決によつて追出し得るとすることが、社会常識的立場からしても不合理であることに加え、借地法の制定と昭和四十一年度の改正の趣旨、借家法第一条ノ二、第七条の二の立法趣旨等を斟酌すれば、被告等の居住の利益は、共有物の処分が遺産分割などにより最終的に決着する迄、保護されねばならないものであると考えるのが妥当である。尚、直接には関係のないことであるが、共有物である目録(一)(二)の土地<注、本件明渡請求にかかる土地>を最終的に処分するに当つても、被告等の居住継続の利益は、充分に尊重されねばならないであろう。そうだとすると、本件の如き場合、原告の主張する使用収益方法の決定及び使用貸借の解約は、単なる管理事項ではなく、共有物に重要な事実上及び法律上の処分を加える共有物の変更に該当し、共有者全員の同意を要するものと解すべきである。果して然らば、共有者の一員である原告が、単独で行つた使用収益方法の決定及び使用貸借の解約はその要件を欠き、何等効力を生ずるに由なきものと言わねばならず、この点に関する原告の主張もまた失当として排斥を免かれないものである。(石垣光雄)