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盛岡地方裁判所 昭和36年(わ)57号 判決 1971年12月01日

本籍

名古屋市北区東大曾根町中三丁目三三番地

住居

盛岡市大通三丁目一〇番一〇号

鉱業および山林経営等

岡部岩雄

明治三七年三月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官本間達三出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金五〇〇万円に処する。

被告人に対しこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

被告人が右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和一五年ころから盛岡市に居住し、同市新築地一五番地の一(現在の表示は大通三丁目一〇番一〇号)に事務所を設け、岡部工業所の商号のもとに個人企業として西和賀炭鉱外二十数個所に採掘、試掘鉱区を所有して鉱業経営を行い、盛岡市繋その他に山林を所有して山林経営を行い、その他貸家、貸宅地等の不動産業をなす他、石鳥谷化学工業株式会社、盛岡運送株式会社および東北急行運送株式会社を各設立し、それらの取締役社長に就任して各会社経営にもあたつていた者であるが、右会社の設備資金、運転資金に窮し、これらの資金搬出のため所得税を免かれようと企て、山林売却収入について虚偽の山林立木売買契約書を作成して隠蔽仮装するなどの不正な方法により、昭和三二年分の実際課税所得金額は別紙(一)修正損益計算書並びに別紙(二)税額計算書各記載のとおり、四、五三八万五、〇〇〇円であつてこれに対する所得税額は二、〇四五万一、四一〇円であつたにもかかわらず、昭和三三年三月一五日、盛岡市本町通三丁目八番三七号所在所轄盛岡税務署において同署長に対し、課税所得金額が六一二万二、五〇〇円でこれに対する所得税額は一五五万四、八五〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額一、八八九万六、五六〇円については法定の納付期限までに納付せず、もつて不正の行為により右同額の所得税をほ脱したものである。

(証拠の標目)

一、盛岡地方裁判所昭和三八年(行)第五号事件の第二三ないし二六回口頭弁論調書中証人橋元邦雄尋問調書(裁判所)謄本四通

一、被告人作成の昭和三二年度所得税確定申告書

一、第二七回公判調書中証人山本千里の供述記載

一、第二六回公判調書中証人中山尚弥の供述記載

一、被告人の昭和三六年一月二八日付、同年三月一日付検察官に対する各供述調書

一、左記の者の検察官に対する各供述調書

片谷国雄、梅田哲太郎、向井薫、高橋栄三郎、高橋清次郎、菊地善五郎、三好巽、佐藤正三および佐々木直三郎

別紙(一)修正損益計算書中<1>山林立木売却収入(以下全て同計算書の事実を番号で表示)

一、被告人の左記収税官吏に対する質問顛末書

昭和三三年一二月四日付

同三四年一〇月五日付(五枚綴)、同月二九日付、同年一一月一一月付

一、第二五回公判調書中証人木村政義の供述記載

一、第三三回公判調書中証人小関忠男の供述記載

一、木村政義、小関忠男および宮崎亀治の検察官に対する各供述調書

一、宮崎亀治の収税官吏に対する質問顛末書

一、押収してある杉立木売買契約書四部(昭和三九年押第八号の三七ないし三九、四二)、同立木売買契約書綴一冊(同押号の二六)、元帳一冊(同押号の二)、補助簿一冊(同押号の三)、領収書控一冊(同押号の一二)、請求書控一冊(同押号の一〇)、山林売買契約書綴一綴(同押号の四五)、領収証一枚(同押号の五六)、受領書類綴一綴(同押号の五七)

<2>取得価額管理費

一、被告人の左記収税官吏に対する各質問顛末書

昭和三四年三月一八日付、同月一九日付、同年九月三〇日付(六枚綴)、同年一〇月五日付(五枚綴)、同月二九日付(四枚綴)、同年一一月一日付、同三五年一月一二日付

一、第二五回公判調書中証人木村政義の供述記載

一、第二七回公判調書中証人熊谷正五郎、同那須辰男および高橋貞夫の各供除記載

一、第三三回公判調書中証人千葉豊治の供述記載

一、第三四回公判調書中証人八幡定吉の供述記載

一、第三五回公判調書中証人木村功一郎、同藤原嘉右エ門および室岡長次郎の各供述記載

一、那須辰男、宮崎亀治および鈴木多吉の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官作成の昭和三四年一〇月六日付検査顛末書

一、那須辰男(二通)および宮崎亀治の収税官吏に対する各質問顛末書

一、押収してある元帳一冊(前同押号の二)、丸太発送簿一冊(同押号の一四)、立木売買契約書二部(同押号の四〇、四一)、寺田山林契約書写一部(同押号の一一)および山林売買契約書綴一綴(同押号の四五)

<3>譲渡経費

一、被告人の左記収税官吏に対する各質問顛末書

昭和三四年九月二八日付、同三五年一月一二日付

一、第二六回公判調書中証人中山尚弥の供述記載

一、阿部八雄作成の上申書(昭和三四年二月二日付)

一、収税官吏作成の盛岡市役所調査書、千代田火災海上保険(株)調査書および日新火災海上保険(株)調査書

一、右同人作成の支出金額集計表および修正支出金額集計表

一、押収してある元帳一冊(前同押号の二)、川目鉱山経費メモ三枚(同押号の四)、証憑書類一一綴(同押号の五)、証憑書類八綴(同押号の六)、証憑書類三綴(同押号の四四)、公課領収書綴一綴(同押号の四九)、賃金計算書二冊(同押号の四三の一、二)、夏油鉱山関係書類一冊(同押号の三〇)、大柴鉱山関係書類一冊(同押号の三二)、御明神鉱山書類一冊(同押号の二四)、嗚子川渡鉱山関係書類一袋(同押号の二五)、川目鉱山関係書類綴三綴(同押号の三三)、川渡鉱山関係書類綴一冊(同押号の三一)、納税領収書綴一綴(同押号の四八)領収書綴一綴(同押号の一五)、領収書綴一綴(同押号の一六)

<5>配当金収入

一、左記各取引先回答書

岩手殖産銀行、東北電力、弘前相互銀行、興産相互銀行、東北銀行、盛岡倉庫、盛岡瓦斯

<6>賃貸料収入、<7>権利金収入

一、被告人の昭和三四年九月二八日付収税官吏に対する質問顛末書

一、阿部八雄作成の上申書(昭和三四年二月三日付)

一、押収してある諸契約書綴二冊(前同押号の二八、二九)、家賃受入調一冊(同押号の四六)

<8>保険料、<9>営繕費、<10>雑費、<11>諸税公課

一、収税官吏橋元邦雄作成の修正支出金額集計表

<12>謝礼費

一、被告人の収税官吏に対する質問顛末書(昭和三四年九月二八日付)

一、阿部八雄作成の上申書(昭和三四年二月三日付)

<13>減価償却費

一、被告人作成の上申書(昭和三四年九月二八日付、同年一一月一一日付)

一、佐藤正三作成の上申書(昭和三四年一一月一〇日付)

一、収税官吏作成の脱漏所得計算調書

<14>貸倒金

一、被告人の昭和三五年一月一一日付収税官吏に対する質問顛末書

一、押収してある諸契約書綴一冊(前同押号の二九)

<15>亜炭売上収入

一、被告人の昭和三四年一〇月五日付(三枚綴)収税官吏に対する質問顛末書

一、佐藤正三の収税官吏に対する質問顛末書(昭和三四年三月一八日付)

一、佐藤正三(昭和三四年一〇月三日付)および柴田貞蔵各作成の上申書

一、柴田貞蔵作成の回答書

一、第三六回公判調書中証人柴田貞蔵の供述記載

一、押収してある補助簿一冊(前同押号の三)、西和賀炭鉱証憑書類四冊(同炭鉱日報二綴)(同押号の八、九)、西和賀炭鉱元帳(合名会社岡部工業所仕訳帳)一冊(同押号の四七)、証憑書類八綴(同押号の六)、西和賀炭鉱証拠書類三綴(同押号の七)、マルタン商会帳簿四冊(同押号の五五)

<16>期末材料棚卸高、<17>期末商品棚卸高

一、佐藤正三作成の上申書(昭和三四年一〇月三日付)

<18>鉱石売上収入

一、被告人の昭和三四年一〇月一日付収税官吏に対する質問顛末書

一、押収してある買掛金補助簿一綴(前同押号の三五)

<19>タイヤ売上収入

一、収税官吏作成の脱漏所得計算調書

一、押収してある本社分資産負債補助簿一冊(前同押号の一九)、仕切書控二冊(同押号の一三)

<20>丸三商事収入利息

一、被告人の昭和三四年一〇月二九日付収税官吏に対する質問顛末書(四枚綴)

一、第三四回公判調書中証人小野寺健助の供述記載

一、第三六回公判調書中証人関口二郎供述記載

一、関口二郎作成の上申書

一、押収してある総勘定元帳、損益勘定元帳(本社分)二冊(前同押号の一七、一八)、盛岡分総勘定元帳三冊(同押号の二〇、二一、二二)

<21>保険代理店収入

一、被告人の昭和三四年九月二八日付収税官使に対する質問顛末書

一、日新火災海上保険(株)および千代田火災海上保険(株)各作成の取引先回答書

<22>期首材料棚卸高、<23>期首商品棚卸高

一、佐藤正三作成の上申書(昭和三四年一〇月三日付)

<24>タイヤ仕入

一、増田滋作成の上申書

一、収税官吏作成の脱漏取得計算調書

一、押収してある自動車タイヤ売掛金台帳三冊(前同押号の五〇、五一、五二)、売掛金不渡手形台帳二冊(同押号の五三、五四)

<25>西和賀炭鉱経費

一、佐藤正三作成の上申書(昭和三四年一〇月三日付)

一、収税官吏作成の脱漏所得計算調書

一、押収してある西和賀炭鉱元帳(合名会社岡部工業所仕訳帳)

一冊(前同押号の四七)および西和賀炭鉱証憑書類三綴(同押号の七)

<26>大檜山鉱山経費、<27>大柴鉱山経費、<28>御明神鉱山経費

一、被告人の昭和三四年九月三〇日付および同三五年一月一二日付収税官吏に対する各質問顛末書

<29>川目鉱山経費、<30>夏油鉱山経費

一、収税官吏橋元邦雄作成の修正支出金額集計表

<31>大佐内鉱山経費

一、被告人の昭和三四年二月三日付および同三五年一月一二日付収税官吏に対する各質問顛末書

<32>ないし<43>の諸経費

一、収税官吏橋元邦雄作成の修正支出金額集計表

<44>鉱業権償却費

一、被告人の昭和三四年二月三日付収税官吏に対する質問顛末書

一、収税官吏橋元邦雄作成の仙台通産局調査書

一、押収してある北山鉱山関係書類一綴(前同押号の三四)

<45>減価償却費

一、被告人作成の昭和三四年九月二八日付および同年一一月一一日付の各上申書

一、佐藤正三作成の上申書(昭和三四年一一月一〇日付)

一、収税官吏作成の脱漏所得計算調書

一、収税官吏作成の盛岡市役所調査書

一、押収してある不動産売買関係書類綴一冊(前同押号の二七)

<46>ないし<50>の共通経費

一、収税官吏橋元邦雄作成の修正支出金額集計表

<52>旅費交通費、<53>交際費

一、被告人の昭和三四年二月三日付収税官吏に対する質問顛末書

<56>給料

一、被告人の昭和三五年一月一二日付収税官吏に対する質問顛末書

<57>支払利息

一、被告人の昭和三四年一〇月二九日付(三枚綴)および同年一一月一一日付収税官吏に対する各質問顛末書

一、収税官吏橋元邦雄作成の銀行調査書(株式会社興産相互銀行材木町支店、株式会社岩手銀行材木町支店、株式会社富士銀行盛岡支店)三通

一、収税官吏作成の脱漏所得計算調書

一、押収してある未払金補助簿一綴(前同押号の三六)

(法令の適用)

被告人の判示所為は昭和四〇年法律第三三号付則第三五条により、同二九年法律第五二号によつて改正された所得税法第六九条第一項に該当するので、右所定刑期および罰金額の範囲内で被告人を懲役六月および罰金五〇〇万円に処し、なお被告人に対し、諸般の事情を考慮して、刑法第二五条第一項によりこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、また被告人が右罰金を完納することができない場合は同法第一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部被告人の負担とする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 片岡正彦)

別紙(一) 修正損益計算書

自 昭和32年1月1日

至 昭和32年12月31日

岡部岩雄

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙(二) 税額計算書

<省略>

<省略>

(△印は赤字金額を示す。)

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