大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

盛岡地方裁判所 昭和45年(わ)54号 判決 1970年11月09日

本店所在地

盛岡市本町通一丁目九番二四号

株式会社 丸中洋装

右代表者代表取締役

中野孫治郎

本籍

盛岡市本町通一丁目二四四番地

住居

同市本町通一丁目一七番三三号

会社役員

中野孫治郎

大正五年四月二一日生

右被告会社および被告人に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官本間達三出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金一〇〇万円に、

被告人中野孫治郎を罰金五〇万円に、それぞれ処する。

被告人中野において、右罰金五〇万円を完納できないと

きは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人

を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は肩書地に本店を置き、衣料品一般の加工販売等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人中野孫治郎は、右会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄掌理しているものであるが、

被告人中野孫治郎は、被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的で、売上げの一部を除外し、あるいは社員出張旅費を水増し支払いし、これらによつて浮かした裏金を架空人名義の簿外預金とするなどの不正な方法を用い、その所得の一部を秘匿したうえ

第一、昭和四一年八月一日から、同四二年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が、六二一万三、二八六円であつたのに、同四二年九月二一日、盛岡市本町通三丁目八番三七号所在の所轄盛岡税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六〇万九、一〇三円で、これに対する法人税額は一五万二、五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額一九四万一、九〇〇円と、右申告税額との差額一七八万九、四〇〇円をほ脱し、

第二、昭和四二年八月一日から、同四三年七月三一日までの事業年度における、被告会社の実際の所得金額が、六八六万一、二一二円であつたのに、同四三年九月二八日、前記所轄盛岡税務署において、同税務署長に対し、所得金額は六七万一、二四六円で、これに対する法人税額は一六万五、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額二一六万三、八〇〇円と、右申告税額との差額一九九万八、四〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人中野の当公判廷における供述

一、被告人中野の収税官吏に対する供述調書(質問てん末書)一四通

一、同被告人作成の収税官吏に対する上申書三通

一、同被告人の検察官に対する供述調書二通

一、登記官作成の会社登記簿謄本

一、松浦洋子の収税官吏に対する供述調書(質問てん末書)

一、右同人の検察官に対する供述調書

一、収税官吏森田茂作成の銀行調査書、社長勘定調査書、および「中野孫治郎、中野静代報酬調査書」

一、証人森田茂の当公判廷における供述

一、収税官吏菅谷啓造作成にかかる預金等調査書

一、収税官吏斎藤巽作成の預金取引の内訳表

一、東海林勇造作成の収税官吏に対する上申書

一、収税官吏作成の青色申告書提出承認の取消し通知書謄本

一、畑本可知三作成の収税官吏に対する上申書

一、高橋信一作成の収税官吏に対する上申書

一、収税官吏作成の申告所得税納付状況調査書、個人市県民税等納付状況調査書および法人税事業税等納付状況調査書

一、中野静代の収税官吏に対する供述調書(質問てん末書)

一、佐藤アサ子の収税官吏に対する供述調書(質問てん末書)

一、検察事務官作成の45・3・23付報告書二通

一、森川カイの収税官吏に対する供述調書(質問てん末書)

一、文屋明男作成の収税官吏に対する上申書

一、生内当従の収税官吏に対する供述調書(質問てん末書)

一、大場梅蔵作成の収税官吏に対する上申書

一、南忠作成の収税官吏に対する上申書

一、小高洋一、矢羽々文一郎、八幡知三、高橋市文、村上秀三、女鹿常八の収税官吏に対する各供述調書(質問てん末書)

一、押収してある法人税確定申告書(昭和四〇年度分)一綴(昭和四五年押第四七号の一二)、同申告書(昭和四一年度分)一綴(前同号の一六)、同申告書(昭和四二年度分)一綴(前同号の一九)、元帳(昭和四〇年度分)一綴(前同号の一一)、総元帳(昭和四一年度分)一綴(前同号の一五)、経費台帳(昭和四一年度分)一綴(前同号の一七)、元帳(昭和四二年度分)一綴(前同号の一八)、売掛帳一綴(前同号の二〇)、経費台帳(昭和四二年度分)一綴(前同号の二一)

(法令の適用)

被告人中野孫治郎について、判示第一、第二の事実は各法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中各罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるので、同法四八条二項により、所定罰金額の合算額の範囲内で同被告人を罰金五〇万円に処し、同法一八条一項、四項により右罰金の換刑処分につき主文記載のように定め、被告会社については、法人税法一六四条一項、一五九条一項、刑法四五条前段、四八条二項を適用し、所定罰金の合算額の範囲内で被告会社に対し罰金一〇〇万円を科することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 和田保)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例