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盛岡地方裁判所 昭和55年(ワ)77号 判決 1981年5月25日

原告

高田良吉

ほか一名

被告

遠藤安広

ほか一名

主文

被告ら各自は、原告高田良吉に対し金四四三万一八四〇円、同高田キヨに対し金四〇三万一八四〇円、及び右各金員に対する昭和五五年三月一九日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用はこれを五分し、その三を原告らの、その余を被告らの各連帯負担とする。

この判決は原告ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の申立

一  原告ら

1  被告ら各自は各原告に対し、それぞれ一〇五〇万円及びこれに対する昭和五五年三月一九日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言。

二  被告ら

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

3  担保の提供を条件とする仮執行免脱の宣言。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告らの長男高田幸彦(満一八歳)は次の交通事故により死亡した。

(一) 日時 昭和五五年一月二六日午後一一時ころ

(二) 場所 花巻市二枚橋五の一〇五付近国道四号線

(三) 加害車両 被告遠藤安広(以下、被告安広という)運転の普通乗用車

(四) 事故の態様 右高田幸彦(以下、幸彦という)は被告安広の運転する加害車両に同乗し、盛岡から花巻方面にドライブしての帰途、被告安広は、信号を無視し、時速八〇キロメートル以上の速度で加害車両を運転したため、道路傍の金網に加害車両を激突させ、さらに反転大破させたが、その衝撃により幸彦は道路に放り出され、よつて頭蓋骨々折により死亡した。

2  被告らの責任

被告遠藤忍(以下、被告忍という)は加害車両の所有者であるから自賠法三条により、被告安広は民法七〇九条によりそれぞれ前記交通事故(以下、本件事故という)により生じた損害を賠償する責任がある。

3  損害

(一) 幸彦の逸失利益 四〇四五万二六一八円

幸彦は満一八歳で就職のため自動車運転免許を取得すべく自動車学校に通つていたから、近く就職し、満六七歳まで稼働可能であるので、その間、毎年昭和五四年度の賃金センサスによる男子労働者の平均賃金三一五万六六〇〇円に昭和五五年度のベースアツプ分五パーセントを加算した三三一万四四三〇円の年収があるものとし、これから生活費五〇パーセントを控除し、中間利息を新ホフマン方式(係数二四・四一)により控除すると、その逸失利益は四〇四五万二六一八円となる。

(二) 治療費 三万七八四〇円

(三) 原告らの慰藉料 各五〇〇万円

幸彦は原告らの長男であり、老後の扶養を同人に頼つていたもので、同人死亡により原告らの受けた精神的打撃は大きく、慰藉料は原告ら各五〇〇万円(合計一〇〇〇万円)をもつて相当である。

(四) 葬儀費 各三九万五一五〇円

御布施二六万円、葬儀屋に対する葬儀料四七万九六〇〇円、寺の暖房料二万円、タクシー代二万五二〇〇円、火葬場の線香代五五〇〇円の合計七九万三〇〇円を原告がそれぞれ二分の一ずつ負担した。

(五) 権利の承継

原告らは幸彦の父母であり、幸彦の権利を各二分の一の割合で相続により承継したから、幸彦の被告らに対する右(一)、(二)による損害合計四〇四九万四五八円の賠償請求権も原告らが各二分の一ずつ(二〇二四万五二二九円づつ)承継した。

(六) 弁護士報酬 各五〇万円

原告らは本件訴訟の提起追行を原告代理人に委任し、その報酬として一〇〇万円を支払うことを約したので、原告らそれぞれにつきその二分の一を負担する。

(七) 損害の填補

本件事故により、原告らは、自賠責保険金二〇〇三万七八四〇円の支払を受け、また、被告忍から四万一〇〇〇円の支払を受けた。

したがつて、原告ら各自が被告らに対して請求できる賠償金(弁護士報酬を除く)は(一)、(二)の二分の一である二〇二四万五二二九円、(三)の五〇〇万円、(四)の三九万五一五〇円の合計二五六四万三七九円から右自賠責保険金二〇〇三万七八四〇円と被告忍の支払分四万一〇〇〇円の合計の二分の一である一〇〇三万九四二〇円を控除した一五六〇万九五九円であるが、その内一〇〇〇万円を本訴において請求する。

4  結論

よつて、原告ら各自は被告らに対し、連帯して、右一〇〇〇万円に弁護士報酬分五〇万円を加算した一〇五〇万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和五五年三月一九日以降完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1の事実のうち、被告安広が信号を無視して加害車両を運転したとの点は否認し、その余の事実は認める。

2  請求原因2の事実は認める。

3  請求原因3の事実につき

(一) (一)は争う。

本件事故当時、幸彦は満一八歳で無職、無免許であつたから就職時期、就職先が全く不明であつたから、逸失利益は一八歳初任給固定方式によつて算出すべきである。これによると五三年度の初任給一三六万三八〇〇円、稼働年数満六七歳までの四九年、生活費控除五〇パーセントとして、新ホフマン方式により(係数二四・四一)中間利息を控除すると、幸彦の逸失利益は一六六四万五一七九円となる。

(二) (二)は不知。

(三) (三)は争う。

幸彦死亡に伴う慰藉料は、同人が未成年者で無職であつたから原告ら合計で六〇〇万円が相当である。

(四) (四)は不知。

(五) (五)のうち、原告らが幸彦の父母であり、幸彦の権利を二分の一の割合で相続により承継したことは認め、その余は争う。

(六) 3(六)は争う。

(七) 3(七)のうち、原告らが自賠責保険金二〇〇三万七八四〇円を受領したことは認める。

三  被告らの主張

1(一)  被告安広は昭和五五年一月二六日午後九時ころ、加害車両を運転して友人の晴山博宅を訪問したところ、同人宅にはすでに幸彦も来ていた。同被告は晴山から運動公園まで乗せてくれと頼まれて承知したが、その際、幸彦も同乗を申出、晴山及び同被告はこれを断つたけれども幸彦は絶対に乗ると云つて譲らず、ついに同人も加害車両に同乗することとなつたもので、同被告が幸彦に同乗を勧めたことはなく、同人が強引に乗り込んできたものである。

そして、運動公園においては、晴山と幸彦は、暴走族の集会に顔を出したりした後被告安広に花巻へ行くことを命じ、同被告は暴走族の車とともに花巻へ行き、一旦花巻市内のデイスコの駐車場に駐車した後、同被告は幸彦と晴山に盛岡へ帰るよう命じられて、盛岡へ向つて加害車両を運転中、加害車両を追跡してくる車を暴走族の追跡車両と考え時速八〇キロメートルで走行して本件事故を起こしたものである。なお、被告安広は昭和五四年九月一日普通免許証を取得したばかで、運転未熟も本件事故の一因となつていた。

(二)  幸彦は右のとおり被告安広の意に反し、かつ同被告が普通免許証を取得したばかりで運転未熟であることを知りながら、同被告運転の加害車両に同乗したものであるから、幸彦は運転者たる同被告との関係で他人性を三割阻却したものとみるべきであるので、過失相殺の類推適用により、原告らの全損害の三割を減額すべきである。

2  被告らは原告らに対し、昭和五五年一〇月二三日ころ損害賠償の一部として一〇〇万円を支払つた。

四  被告らの主張に対する原告らの認否

1  被告らの主張1の事実のうち、幸彦が被告安広を強要して加害車両に同乗したとの点は否認。

晴山、幸彦、被告安広らが誘合つて加害車両に同乗したものであり、また本件事故は同被告の信号無視、時速約一〇〇キロメートルの速度による暴走に原因するもので、加害車両が暴走族に追われていた事実はなく、幸彦において同被告が右のような無謀運転をするとは全く予想できなかつた。したがつて、幸彦の好意同乗が考慮されるとしても減額は一割が相当である。

2  同2の事実は認める。

第三証拠〔略〕

理由

一  本件事故について

1  請求原因1の事実は、被告安広が信号を無視して加害車両を運転したとの点を除き当事者間に争いがない。

2  右当事者間に争いのない事実と成立に争いのない甲第八ないし甲第二二号証、証人晴山博の証言、原告高田キヨ、被告安広の各本人尋問の結果を総合すれば、本件事故に至るまでの経過は次のとおりであつたものと認められる。

(一)  被告安広は、昭和五四年九月一日普通免許を取得し、加害車両は同被告の父である被告忍が被告安広の通勤用として買つたもので、同被告が通勤その他の私用に供していたものであるが、昭和五五年一月二六日午後六時ころ遊び友達の晴山博を、同人が住む盛岡市厨川五丁目一四番二号所在のアパートに訪ねたところ、同人から今夜九時ころ暴走族の集会があるので運動公園(同市上堂所在)まで車で乗せて行つて欲しい旨依頼されてこれを承諾し、いつたん帰つて夕食をとつたりした後、同夜八時四五分ころ再び同人のアパートを訪ねた。

(二)  同人のアパートには、同人のほか、同人を通じて知合つた幸彦と上田美佳子もいて雑談などをしていたが、晴山は被告安広に対し再度運動公園まで乗せて行つてくれと頼み、幸彦、上田も運動公園での暴走族の集会を見に行きたいと云つて晴山とともに加害車両に乗り込み、その際被告安広において幸彦や上田が加害車両に同乗することを明示的に承諾したことはなかつたが、かといつて右両人の同乗を拒絶するような言動をしたこともなかつた。

(三)  被告安広は同夜九時ころ、晴山、幸彦、上田の三名が同乗した加害車両を運転して晴山の右アパートから運動公園に行つたが、同公園には十数台の乗用車が駐車しており、晴山、幸彦、被告安広は顔見知りの暴走族仲間と話をしたりした後、晴山が幸彦や被告安広に暴走族の仲間とともに花巻に行こうと相談を持ちかけ、幸彦、被告安広はこれに同意した。もつとも、幸彦が晴山の誘いに積極的に応じていたのに比し、被告安広は暴走族の仲間とともに花巻に行くことには内心必ずしも積極的ではなかつたため、晴山、幸彦のいる前で、「夏タイヤだし、ガソリンもないから」などと晴山の右誘いを拒わるような言葉を口にしたりしたが、晴山に気がねして結局これに同意した。

(四)  被告安広は晴山、幸彦、上田を加害車両に同乗させて(助手席に晴山、後部座席に幸彦、上田が乗車)暴走族の車両とともに花巻に向い、花巻市内のデイスコの駐車場に着き、暴走族の仲間は右デイスコに入つたが、被告安広らは相談の結果そのまま盛岡に帰ることとし、被告安広は国道四号線を花巻市から盛岡市に向つて加害車両を運転し、同夜午後一一時ころ花巻市二枚橋五地割一〇五番地先において、法令に定められた最高速度五〇キロメートル毎時をはるかに超える約九〇キロメートル毎時の速度で加害車両を走行させたため、安定を失つた加害車両を、左斜め前方に暴走させて道路左端のポール、金網フエンスに加害車両の前部を衝突させたうえその先の路上に転覆させ、そのため路上に放り出された幸彦は脳挫傷により同日午後一一時五二分ころ死亡した。

なお、被告安広は加害車両を右のように衝突、転覆させる直前に信号機により交通整理の行われている交差点の赤信号を看過して同交差点を通過したりもしているが、同被告が右信号看過や前記の如き高速運転をしたのは、同被告らが暴走族の仲間に黙つて帰つてきたため、暴走族の車両に自分たちが追いかけられているものと錯覚して恐れを抱いたためであつたし、晴山、幸彦、上田は被告安広の高速運転を知りながら、これを制止したり、同被告に注意したりしたことはなかつた(幸彦が被告安広の高速運転を認識していたことについては直接証拠はないが、ほぼ同じ状態にあつた晴山、上田が右認識を有していたことから推認しうる)。

以上の事実が認められ、前出甲第一五号証(晴山の供述を録取した書面)、同第一八、第一九、第二二号証(いずれも被告安広の供述を録取した書面)の各記載、及び証人晴山の証言、被告安広の供述中右認定に反する部分は措信しがたく、他に右認定を左右するに足る証拠はない。そして、幸彦において、被告安広が普通免許を取得して間がなく運転技術が未熟であることを知つていたことを認めるに足る証拠はない。

右事実によれば、本件事故は加害車両の運転手である被告安広のスピードの出しすぎなどによる一方的過失によつて惹起されたものであり、幸彦は加害車両の好意同乗者であること明らかである。そして幸彦は被告安広が晴山に頼まれて同人を暴走族の集会が行われる運動公園まで加害車両に乗せて行く際、自己の遊興のため被告安広の黙示の承諾のもとに加害車両に乗り込み、ついで同公園から花巻へ暴走族の仲間とともに加害車両で行くことにつき、被告安広が必ずしも積極的でなかつたのに、晴山の誘いに積極的に応じ、もつて被告安広がこれに応じて同被告運転の加害車両で花巻へ行く一因をつくり、花巻からの帰途本件事故に遭遇したものではあるが、幸彦の加害車両への同乗が被告安広の意思に反した強引なものであつたとも、加害車両で花巻へ行くこと及び花巻から盛岡に帰ることが晴山や幸彦の一方的指示命令によつたものであるともいうことはできない。

二  被告らの責任

請求原因2の事実は当事者間に争いがないので、被告らは本件事故による損害を連帯して賠償する責任を負担する。

しかしながら、幸彦が加害車両の好意同乗者であり、その同乗に関する前記経緯に、幸彦が被告安広の法定速度をはるかに超過する高速運転を制止したり、これについて同被告に注意をしたりした事実のないことをも考慮すると、被告らの本件事故による損害賠償額は、本件事故による全損害額(弁護士費用を除く)からその二割相当を減じた額とするのが、衡平にかなうものと解する。

三  損害について

1  幸彦の逸失利益

幸彦が本件事故当時満一八歳の青年であつたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一七号証、原告高田キヨ本人尋問の結果によれば、幸彦は高校を二年で中退した後食堂などでアルバイトをしたりしていたが、本件事故当時は無職で、自動車免許取得のため教習所通いをして将来の就業の準備(就職先、就職時期は具体化していなかつた)をしていた健康な青年であつたことが認められるから、同人の満一八歳から満六七歳までの稼働期間中の収入は中卒男子の平均賃金によつて算定するのが相当であるところ、昭和五四年賃金センサスによると、同年の中卒男子の平均賃金(企業規模・年齢計)は年間二八七万五五〇〇円(196,900円×12月+512,700円)であるが、昭和五五年中に賃金が少くとも五パーセントは上昇するものと認められる(同年中の賃金の上昇率については弁論終結の時点ではこれを明らかにするに足る公的統計資料は発表されていないので、過去五年間の上昇率を参考に控え目に推定した)ので、本件事故時の属する昭和五五年の右平均賃金は年間三〇一万九二七五円となる。そして、生活費控除割合を五割とし、ライプニツツ方式により民事法定利率年五分の割合による中間利息を控除して(ライプニツツ係数一八・一六八七)、本件事故時における幸彦の逸失利益を算定すると、その額は二七四二万八一五〇円(3,019,275円×(1-5)×18.1687)である。

2  幸彦の治療費

原告高田キヨ本人の供述及びこれによつて真正に成立したものと認められる甲第三号証によれば、幸彦は本件事故による負傷後死亡までの間財団法人総合花巻病院で治療を受け、その治療費として、被告らが支払をした四二〇〇円を除き、三万七八〇〇円を負担したことが認められる。

3  原告らの慰藉料

幸彦は本件事故当時、未成年で無職であつたことは前述のとおりであるが、前出甲第一七号証、成立に争いのない甲第一号証、原告高田キヨの供述によれば、原告らには幸彦のほか二女があるけれども、幸彦がただ一人の男の子であつたことから、幸彦に原告らの老後の扶養も期待していたことなど諸般の事情を考慮すると、原告らの幸彦死亡による慰藉料はそれぞれ四〇〇万円(合計八〇〇万円)とみるのが相当である。

4  葬儀費

原告高田キヨの供述及びこれによつて真正に成立したものと認められる甲第四ないし第六号証ならびに弁論の全趣旨を総合すれば、原告高田良吉は幸彦の葬儀を営み、その葬儀費として葬儀料、御布施、線香代など一切で七七万〇三〇〇円を支払つたことが認められるが、幸彦の死亡時の年齢、身分等からすると、そのうち五〇万円が本件事故と相当因果関係にあるものと認める。

なお、原告高田キヨが幸彦の葬儀費を負担したことを認めるに足る証拠はない。

5  権利の承継等

以上によれば、幸彦の損害は1、2の合計二七四二万八一五〇円、原告高田良吉の損害は3、4の合計四五〇万円、原告高田キヨの損害は3の四〇〇万円となるが、前示二に説示したところにより、これらの損害から二割を減じた額が被告らに請求しうる賠償額であるから、幸彦に対する要賠償額は二一九四万二五二〇円、原告高田良吉に対する要賠償額は三六〇万円、同高田キヨに対する要賠償額は三二〇万円となる。

そして、原告らが幸彦の両親として同人の権利を各二分の一の割合で相続により承継したことは当事者間に争いがないから、原告らは、幸彦の被告らに対する右二一九四万二五二〇円の損害賠償請求権を各二分の一すなわち一〇九七万一二六〇円づつ承継したので、原告高田良吉、同高田キヨの被告らに対する損害賠償請求権はそれぞれ、一四五七万一二六〇円、一四一七万一二六〇円となつた。

しかるところ、原告らが本件事故により自賠責保険金二〇〇三万七八四〇円の支払を受けたこと及び原告らが被告らから昭和五五年一〇月二三日ころ賠償金として一〇〇万円の支払を受けたことは当事者間に争いがなく、また原告らが被告忍から本件事故により四万一〇〇〇円の支払を受けたことは原告らの自認するところであるから、右合計二一〇七万八八四〇円の各二分の一すなわち一〇五三万九四二〇円づつが原告らの前記損害賠償請求権に充当され、原告高田良吉の残請求権は四〇三万一八四〇円、同高田キヨの残請求権は三六三万一八四〇円となつた。

6  弁護士費用

原告高田キヨの供述ならびに弁論の全趣旨によれば、原告らが本件訴訟の提起追行を原告代理人に委任し、その報酬として各五〇万円づつ合計一〇〇万円の支払を約したことが認められるが、本件訴訟の難易、経過、弁護士費用を除く損害の認容額等を考慮すると、原告ら各自につきそれぞれ四〇万円の弁護士費用をもつて本件事故と相当因果関係にある損害と認める。

したがつて、原告高田良吉、同高田キヨが被告らに対し、連帯により支払を求めうる賠償額は、それぞれ前記5の金額に右四〇万円を加算した四四三万一八四〇円、四〇三万一八四〇円である。

四  結論

よつて、原告らの本訴請求は、被告ら各自に対し、原告高田良吉が四四三万一八四〇円、同高田キヨが四〇三万一八四〇円、及び右各金員に対する本訴状副本が被告らに送達された日の翌日であること記録上明らかな昭和五五年三月一九日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるのでこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九二条、九三条一項但書、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して(なお、仮執行免脱の宣言は相当でないからこれを付さない)、主文のとおり判決する。

(裁判官 長門栄吉)

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