大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

盛岡地方裁判所 昭和56年(ワ)28号 判決 1982年4月30日

原告

立花信男

梁部徳彦

坪井良雄

右原告ら訴訟代理人

田村彰平

被告

浪岡義美

右訴訟代理人

石川克二郎

主文

一  被告は原告ら各自に対し、各金二〇〇万円とこれに対する昭和五六年一月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文と同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原・被告らは、昭和五五年一一月共同で同額の出資をして宝くじを購入し、当りくじが出た場合は、その賞金を出資に応じて平等に分配する契約を締結した。

2  原・被告らは右契約のもとに昭和五五年一一月二〇日ころ、各自金三〇〇〇円づつ出資(各自、一枚金三〇〇円につき一〇枚分)し、宝くじを購入することとしたが、その際被告は、原告らに無断で自らの右出資分の他、さらに金三〇〇〇円を加えて計金一万五〇〇〇円とし、訴外浪岡由松(以下単に訴外浪岡という。)をして、年末ジャンボ宝くじ番号七八組一八四〇四〇番ないし一八四〇八九番の五〇枚を一括購入させ、訴外浪岡は共同購入分と、被告購入分の区別のないままに一括して被告に送付し、被告はこれを受け取つて保管していた。

3  右宝くじの当せん発表が昭和五五年一二月三一日に行われ内、一八四〇四一番の一枚が金一〇〇〇万円の賞金に当せんした。

よつて原告各自は被告に対し、右契約に基づき、各金二〇〇万円とこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五六年一月二九日から支払ずみまでの民事法定利率年五分の割合による金員の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

いずれも認める。

三  抗弁

1  被告は昭和五五年一二月一〇日ごろ、訴外浪岡から、請求原因のとおりの宝くじ五〇枚の送付を受け、内一八四〇四〇番から一八四〇四九番までを被告個人で購入したものとして区別し特定した。

2  翌一一日ごろ、一八四〇五〇番から一八四〇九八番までの四〇枚を共同購入分の宝くじとして原告坪井に示し、原告坪井の名刺の裏にその番号を記したうえ、原告坪井に対し右名刺とその宝くじを交付したところ、原告坪井は名刺のみ受け取り、宝くじについては被告に保管を依頼して返却し、その後、原・被告らは同二七日ごろ、原告立花宅に集合したが、その際、被告は共同購入分として区別した右宝くじ四〇枚を原告らに呈示したところ、原告らは被告に対し、これを引き続き保管することを依頼した。

3  当せんした一八四〇四一番の宝くじは被告が自らの購入分として特定したものの内の一枚である。

四  抗弁に対する認否

当せんした宝くじが一八四〇四一番であることは認めるがその余の事実はいずれも否認する。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因事実については当事者間に争いがない。

二抗弁事実について

請求原因事実1のような賞金分配契約に基ついて購入された宝くじは右契約当事者の共有物となることは明確であるところ、同2の事実が加わつた場合は、購入した全部の宝くじの所有関係はどのようになるかを検討する必要がある。

よつて検討するに右2の事実は既述のように争いがないところ、一括購入された本件の一八四〇四〇番ないし、一八四〇八九番の五〇枚の宝くじについては、原・被告らの共同購入分と被告個人の購入分とは観念的には区別できるが、実際にはいずれの一〇枚が被告個人の購入分であるかについては識別できないものであり、従つて一括購入された段階において民法二四五条に定める動産の混和が生じたというべきであつて、そうすると一括購入された五〇枚全部につき、原・被告らの共有となるべきものである。

そうすると右五〇枚の宝くじについては、民法二五六条により共有物分割の協議が成立したような場合は別としてそうでないかぎりはいずれの者も一部の宝くじにつき、勝手に区別をしてそれを自らの所有物であると主張できない筋合のものである。しかるに被告の主張は、被告は訴外浪岡から五〇枚の宝くじの送付を受けた後、内一八四〇四〇番から一八四〇四九番の一〇枚を自らの購入分として区別し特定したものであるというのであるが、右区別するに際し、被告が原告らに対し、原告らに無断で金三〇〇〇円を加え、訴外浪岡に宝くじ五〇枚を一括購入させて送付を受けた事情を説明したうえで、自らの購入分として一〇枚の宝くじを区別することにつき原告らの協議を了した事実についてはその主張もなく、また全証拠によるも認められず、かえつて<証拠>によれば、原告らは被告が原告らに無断で金三〇〇〇円を加えて全部で五〇枚の宝くじを一括して購入した事実を全く聞かされていなかつた事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はないし、宝くじ当せん発表のなされた昭和五五年一二月三一日までの間においても、被告が、原告らに前記の事情を明らかにしたうえで自らの購入分として一〇枚を区別したことの承諾を得た事実についてもその主張もなく、また全証拠によるも認められず、かえつて前述のとおり原告らが一八四〇四〇番ないし一八四〇四九番の一〇枚の宝くじが存在することすら知らなかつた事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。そうすると購入された五〇枚全部の宝くじにつき、原・被告らの共有が成立し存続していることとなるから被告の抗弁は失当であり、結局五〇枚の宝くじ全部の内、一枚が当せんすれば、その賞金を出資の割合に応じ、原告ら各自が五分の一、被告が五分の二の割合で分配すべきものである。

三結論

以上の次第で原告らの本件請求はいずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(村上久一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例