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盛岡地方裁判所 昭和57年(わ)124号 判決 1982年11月17日

裁判所書記官

平井吉彦

本店の所在地

岩手県岩手郡雫石町二三地割字板橋七九番地の三

有限会社南部御所

(右代表者代表取締役大坪昇)

本籍

同県同郡滝沢村大字鵜飼第九地割字御庭田九一番地二

住所

盛岡市西青山二丁目一三九番九号

会社役員

大坪昇

昭和一二年一一月一八日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官水上盛市並びに弁護人田村彰平各出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社南部御所を罰金一、〇〇〇万円に、

被告人大坪昇を懲役八月にそれぞれ処する。

被告人大坪昇に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社南部御所(以下「被告会社」という。)は、岩手県岩手郡雫石町二三地割字板橋七九番地の三に本店を置き旅館業を目的とする資本金二〇〇万円の有限会社であって、「別荘ホテル南部御所」、「ホテル南部御所」の二店舗を経営していたもの、被告人大坪昇(以下「被告人大坪」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人大坪は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、親戚や架空名義の簿外預金を設定するなどの不正手段によって所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五三年九月一九日から同五四年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二六、六九六、〇二二円でこれに対する法人税額が九、七〇四、六〇〇円であったにもかかわらず、同年八月二七日、盛岡市本町通三丁目八番三七号盛岡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、八〇四、七三五円でこれに対する法人税額が二、六〇一、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出してそのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額七、一〇三、五〇〇円を免れ、

第二  昭和五四年七月一日から同五五年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四七、〇五三、四九七円でこれに対する法人税額が一七、九八一、二〇〇円であったにもかかわらず、同年八月九日右税務署において同税務署長に対し、その所得金額が五、九八〇、八一五円でこれに対する法人税額が一、六七四、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出してそのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額一六、三〇六、八〇〇円を免れ、

第三  昭和五五年七月一日から同五六年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四九、七九八、八〇五円でこれに対する法人税額が一九、九五五、一〇〇円であったにもかかわらず、同年八月三一日、右税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三、九七二、五七八円でこれに対する法人税額が一、一九一、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出してそのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額一八、七六三、五〇〇円を免れ、

たものである。

(免れた所得金額の内容は、別紙1ないし3の各修正損益計算書の、税額計算については、同4ないし6の各脱税額計算書のとおりである。)

(証拠の標目)

一  被告人大坪の当公判廷における供述

一  被告人大坪の検察官に対する供述調書二通

一  被告人大坪の大蔵事務官に対する質問てん末書二八通

一  大坪澄志の検察官に対する供述調書二通

一  大坪澄志(一七通)、吉川勇(二通)、鈴木皓也(四通)、沢口裕光、武田キヌの大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大坪澄志作成の上申書

一  大蔵事務官作成の調査書一五通

一  盛岡税務署長作成の「青色申告の承認の取消通知書」と題する書面の謄本

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書三通

一  押収してある法人税確定申告書三通(昭和五七年押第四一号の1ないし3)、決算整理資料綴三綴(同号の4ないし6)

(法令の適用)

被告人大坪の判示各所為は法人税法一五九条(第一、第二の各罪については昭和五六年法律第五四号による改正前のもの)に該当し、被告会社については、右罰条の外さらにそれぞれ同法一六四条一項を適用すべきところ、被告人大坪については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各罪の罰金額を合算した金額の範囲内で罰金一、〇〇〇万円に、被告人大坪については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役八月にそれぞれ処し、被告人大坪に対し同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人大坪がモーテルを個人経営していた昭和五〇年三月ころから、経理担当者に売上の一部除外、簿外処理などを命じて脱税を始め、法人成りした後もこれを続けて、判示のとおり第三事業年度においては実際納税額の九四・〇二パーセントもの所得を秘匿して、著しく過少の申告納税をし、三事業年度にわたり、被告会社が、納付すべき正規の法人税額の八八・五二パーセントにあたる合計金四、二一七万余円の税を免れたというものであって、国家課税権に対する侵害が大きいばかりでなく、誠実な納税者に与えた不公平感も少なくない事案である。また、被告人大坪は、昭和五二年にも脱税の疑いで税務調査を受けたことがあるのにもかかわらず、その直後から脱税発覚の端緒となったシーツの洗濯形態をより巧妙に変えるなどして、脱税を続けたことを併せ考慮すると、犯情には悪質なものがあるといわざるを得ない。

しかしながら、被告会社は三事業年度分の本税、利子及び重加算税(一三、一六六、七〇〇円)の合計六一、九七八、三〇〇円を既に納付し、被告人大坪の改悛の情が顕著であることなどの有利な事情があるので、これらを勘案のうえ、被告人らに対しては主文掲記の刑を量定した。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小島建彦 裁判官 竹花俊徳 裁判官 堀満美)

別紙1 修正損益計算書

自 昭和53年9月19日

至 昭和54年6月30日

<省略>

別紙2 修正損益計算書

自 昭和54年7月1日

至 昭和55年6月30日

<省略>

別紙3 修正損益計算書

自 昭和55年7月1日

至 昭和56年6月30日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

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