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盛岡地方裁判所一関支部 昭和41年(ワ)97号 判決 1968年4月10日

原告 村上邦東

右訴訟代理人弁護士 吉田政之助

被告 川内好夫

右訴訟代理人弁護士 浅野幸一

主文

大船渡市立根町字釜石沢三七番の一山林五三、六五六平方メートル(五町四反一畝一歩)と同所同番の二山林一九、八三四平方メートル(二町歩)との別紙図面表示のロ点以東の境界線は同図面表示のイ、ロの各点を結んだ線であると確定する。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一双方の求める裁判

一  原告

「1 大船渡市立根町字釜石沢三七番の一山林五三、六五六平方メートル(五町四反一畝一歩、以下甲山林という。)と同所同番の二山林一九、八三四平方メートル(二町歩、以下乙山林という。)との別紙図面表示のロ点以東の境界線は、同図面表示のホ、ニ、ハ、ロの各点を順次結んだ線であると確定する。

2 被告は同図面表示のイ、ホ、ニ、ハ、ロ、イ2、イ1、イの各点を順次結んだ線で囲まれる地域(以下本件係争地という。)の樹木を伐採してはならない。

3 訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第二双方の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、甲山林を所有し、被告は乙山林を所有している。

2  甲、乙山林は相隣接している。

3  甲山林と乙山林の境界線は別紙図面表示のホ、ニ、ハ、ロ、ロ2、ロ3、ロ4、ロ5、ロ6、ロ7、ロ8、ロ9、ロ10、ロ11、ロ12、ロ13、37の各点を順次結んだ線(そのうち、同図面表示のホ、ニ、ハ、ロの各点を順次結んだ線を以下A線という。)である。

4  ところが、被告は、甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線は別紙図面表示のイ、イ1、イ2、ロの各点を順次結んだ線(以下B線という。)であると主張して、A線が境界線であることを争っている。

5  A線が境界線である理由はつぎのとおりである。

(一) 土地台帳付属図面によれば、地形上A線が境界線であることは明白である。

(二) 地積をみると、甲山林は公簿上五三、六五六平方メートルであるところ、境界線をB線として実測すると五二、九六三平方メートルに過ぎないこととなり、乙山林は公簿上一九、八三四平方メートルであるところ、境界線をA線として実測しても二〇、五一九平方メートルとなる。

(三) 公図によれば、乙山林は東々北においては訴外鈴木甚吉所有の大船渡市立根町字釜石沢二八番の山林にのみ接しているのに、もしB線を境界線にすると訴外千葉与三郎所有の同所三四番の五の山林にも接することとなり、公図の地形に反する。

一方、甲山林は公図では東方において右二八番の山林に接するのに、B線を境界線にするとこれに接しないこととなり、公図の地形に反する。

(四) 本件係争地内の現存杉立木は原告の前主訴外村上正平が、昭和一四年三月頃から昭和一八、九年にわたり甲山林全部に植林したときのものである。

その際被告の前主訴外千葉秀雄は、訴外村上正平が本件係争地内に植林することを承諾していたものである。

6  本件係争地は、甲山林の一部分である。

したがって、原告はその地上の樹木の所有権を有している。

7  ところが、被告は本件係争地は乙山林の一部分であるとして原告が右樹木の所有権を有することを争い、これを伐採しようとしている。

8  よって、原告は被告に対し甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線がA線であることの確認と本件係争地内の樹木の伐採禁止を求める。

二  被告の答弁及び主張

請求原因1、2の事実は認める。

同3のうち別紙図面表示のロ点以東の境界線は否認するが、その余の事実は認める。なお、甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線はB線である。

同4の事実は認める。

同5(一)乃至(三)は争う、(四)の事実は否認する。

同6の事実は否認する。なお、本件係争地は乙山林の一部分である。

同7の事実は認める。

なお、甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線がB線であること、本件係争地が乙地の一部であることの理由は、つぎのとおりである。

1  公図、公簿面積の不正確なこと

原告のA線主張の根拠は、公図、公簿面積と実地、実測面積の不符合にある。

しかし、公図、公簿面積が実地に合わないことは公知の事実であるから、公図、公簿面積によって境界を定めることはできない。乙山林は甲山林から分筆されたものであるが、少くとも明治三〇年二月一七日以前になされたものであるところ、当時かりに測量したとしても測量技術が拙劣であったであろうし、測量機械の面でも今日と著しくへだたりがあるであろう。

2  本件係争地上の植林について

原告が請求原因5(四)で主張する杉植林は訴外千葉秀雄がしたものである。

すなわち、訴外千葉秀雄が、訴外村上正平が甲山林に植林する頃に本件係争地内に植林したのである。このことは、本件係争地では下枝も刈払いもされず、地上も乱雑になっているところ、訴外村上正平が植林した甲山林に争いなき部分は下枝等も刈払い、下草の除去もよくなされているから、本件係争地の植林も同訴外人が植えたものであれば手入れをしないはずはないので、同訴外人が植えたものでないことが明らかである。また訴外千葉秀雄がまたはその母が同訴外人の植林を承諾した事実はない。

かりに、訴外人村上正平が植林したとしても本件係争地の所有者であった訴外千葉秀雄がその植林について承諾を与えていないので、民法二四二条によって訴外千葉秀雄がその所有権を取得したものである。

3  使用収益状況

被告が昭和三七年春頃本件係争地を含めて乙山林上の雑木を買い受け伐採したときもかなり長期間、多人数であったにもかかわらず、訴外村上正平は何らの異議も申立てなかった。

また、被告は、本件係争地を含めて乙山林を買い受けて昭和三八年春頃杉を本件係争地にも植林した。

4  地形上の特徴

原告主張のA線には地形上境界線らしいものはなく、本件検証の際にも訴外村上正平は別のところを指示しようとした。

それ反し、被告主張のB線はイ点が道の中心であって地形上明瞭である。

5  原告の前々主の指示

原告の前々主である訴外村上芳三郎は、訴外村上正平への売買に当って乙山林との境界線をB線と指示していたものである。

三  被告の主張に対する原告の答弁

1の主張は争う。

2の主張は否認する。

3の事実は否認する。

4の主張は争う。

5の事実は否認する。

第三証拠関係≪省略≫

理由

第一境界確定の請求について

一  原告の請求原因1、2の事実及び同3のうち別紙図面表示のロ、ロ2、ロ3、ロ4、ロ5、ロ6、ロ7、ロ8、ロ9、ロ10、ロ11、ロ12、ロ13、37の各点を順次結ぶ線がその主張の境界線であることは当事者間に争いがない。

二  原告は、甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線はA線であると主張し、被告はB線であると主張するので、この点について検討する。

≪証拠省略≫を合わせ考えると、つぎの事実が認められる。

1  まず、現地の地形についてみると、甲山林はほぼその中央辺を東西に走る峯の両側斜面部分の地域で、乙山林はその沢をへだてた南側の峯からほぼ北側に向けての下り斜面部分の地域であって、甲、乙山林の相互の位置関係はおおむね沢を下辺とする対面する二つの下り斜面で向かい合っていて、別紙図面表示のイ、ロの各点を結ぶ線は沢に続く右両斜面の下辺折目としての位置にほぼ当っていること

また、甲山林のほぼ中央の峯と乙山林の南の峯とは北東に張り出したU字型状をなしてつながっているが、右イ点はその北東部のやや低くなった峯の垂見にあって、本件係争地付近から日頃市方面に通ずる小径の一番高い地点に当り、右ロ点は甲、乙山林にはさまれた沢の始点で水の湧出口となっている地点に当っており別紙図面表示のホ点は右U字型状の北東部でイ点の南東に位置する地点であるが、地形上他に特徴はないこと

右イ、ロの各点を結ぶ線にほぼ沿った位置に右の小径があること

2  原告の前主訴外村上正平は、昭和一四年三月頃訴外村上芳三郎から甲山林(正確には甲山林を含む山林で昭和三六年六月二日にそのうち一八歩を三七番の三として分筆してその残余が甲山林となったものであるが、右分筆部分は僅少でその位置も本件係争地に遠くへだたっているので、その分筆の前後を問わず便宜甲山林という。)を買い受け、昭和一四年三月一六日訴外芳三郎の前主訴外佐藤正七ほか六名の共有者から中間省略による所有権移転登記を得たこと

3  訴外村上正平が、訴外村上芳三郎から甲山林を買い受けるに当り、訴外芳三郎は訴外正平を現地に案内し右共有者の一人である訴外佐藤正七の父訴外佐藤七右エ門に教えられたとおりに甲山林の東側の乙山林との境界線は、上部は別紙図面表示のイ点に相当する峯の垂見からロ点に相当する水の湧出口とを結ぶ線にほぼ沿った小径、下部は湧出口から下流する沢の中心線であると説明したこと

4  ところが、訴外村上正平は右買受け後間もなく、訴外村上芳三郎の右指示を無視し、公図によれば甲山林は右イ、ロの各点を結ぶ線を東に越えて別紙図面表示のホ点付近とロ点を結ぶ線まで及んでいるとして、本件係争地上の杉立木を無断で伐採し、かつその部分の土地所有権確認請求訴訟を乙山林の当時の所有者訴外千葉秀雄を被告として提起したこと

その第一審である遠野区裁判所は昭和一四年(ハ)第二五号事件として審理したうえ昭和一六年一〇月一六日原告の請求を棄却するとの判決を言渡し、訴外正平はその控訴をしたが、盛岡地方裁判所民事部は昭和一六年(レ)第四二号事件として審理したうえ昭和一七年九月四日控訴棄却の判決を言渡し、同訴外人はさらにその上告をしたが、大審院第四民事部は、昭和一七年(オ)第八五四号事件として審理したうえ、昭和一七年一二月二六日上告棄却の判決を言渡し、同日確定したこと(この訴訟を以下前訴という。)

原告は、昭和四一年九月三〇日訴外村上正平から甲山林を買い受け、同年一〇月一日その旨の所有権移転登記を了し、被告は、昭和三八年一一月四日訴外千葉秀雄から乙山林を買い受け、同日その旨の所有権移転登記を得ていること

5  右紛争の発端は訴外村上正平が本件係争地内の杉立木を無断で伐倒したことであるが、右訴訟前の昭和一四年五月一四日訴外千葉秀雄と訴外正平間で右イ、ロの各点を結んだ線付近に境界を定める旨の境界協定が成立したことのあること、その後訴外千葉秀雄方では訴外鈴木新作を管理人として本件係争地を含む乙山林に杉の植林をしたこと

6  訴外千葉秀雄は、昭和三七年春頃訴外川内貢に対し本件係争地を含む乙山林の雑木を売却し、訴外川内貢は昭和三七年夏から秋にかけて三〇日乃至四〇日間にわたって人夫数名を雇ってその雑木の伐採を行ったが訴外村上正平の使用人が甲山林で杉の間伐に来ていて右訴外貢が本件係争地内の雑木を伐採するのを知りながら訴外正平は何らの異議も述べなかったこと

その後被告が乙山林を買って昭和三八年春本件係争地を含む乙山林一帯に植林したときも訴外正平は何らの異議も述べなかったこと

7  右雑木伐採当時別紙図面表示のイ、ロの各点を結ぶ線の両側はいずれも杉木であったが手入れの状況は全く異なっていたこと、すなわち甲山林内の杉林は下枝刈り、刈払い等手入れはゆきとどいて整然としており本件係争地内の杉林は雑木の入り混った藪になっていて、藤、つたなどつるものや笹も生えていること

≪証拠判断省略≫

右認定事実によると、地形的にも沿革上も、使用収益の点からも甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線は、同図面表示のイ、ロの各点を結ぶ線(被告主張のイ1、イ2は測量の便宜上選んだ点であるので、境界線としてはイ、ロの各点を直接結ぶべきである。)と確定するのが相当である。

三  ところで、原告がA線が、甲、乙山林の境界線であると主張する根拠について以下検討する。

1  ≪証拠省略≫によれば、盛岡地方法務局大船渡出張所保存字絵図(以下公図という。)上の地形でみると、乙山林は北東部においては大船渡市立根町字釜石沢二八番の山林にのみ接して、同所三四番の五の山林には全く接しないこと、一方甲山林は東部において右二八番の山林に接していることが認められ、一方現地においてイ、ロの各点を結ぶ線が境界線であるとすれば、いずれも右地形と異なる地形となることが認められるが、鑑定人跡部一雄の鑑定の結果によれば、公図における甲、乙山林の地形と現場実測図の地形とはその形状においても面積についても全く相異しているため、実測図に公図の侵入を試みることは不可能であり、どの部分がどこに当るかも見当がつかないほど相違しているため、公図によって本件係争地が甲、乙いずれの山林に含まれるかを判定することは全く不可能であることが認められる。

そうすると、公図のある特定部分が現地のある特定部分に合わないことを理由に境界線を云々することは余り意味のないことといわざるを得ない。

このように現地と公図の各地形が山林において甚しく異なるのは、公図の多くは明治初期に作成されたため、測量機械を使用せず目測によって線をひいたか、あるいは拙劣な測量技術で線をひいたずさんなものであることが主たる原因と考えられ、本件の公図も現地に比較して極めて単純な地形を表示していることから右のような不正確なものとみて差し支えないものと思われる。

また、乙山林は甲山林ともと一筆の山林であって分筆されたものではあるが、その分筆は前掲≪証拠省略≫によると少くとも明治三〇年二月一七日以前であることが認められ、また乙山林が単純な線で分割されているのに二町歩という端数のない面積であることからみても分筆があったとはいえ、その測量もなされていないものと推認することができ(る。)≪証拠判断省略≫

したがって、この点については、境界線をイ、ロの各点を結ぶ線と認定する妨げとはならない。

2  つぎに、鑑定人跡部一雄の鑑定の結果によれば、甲山林は公簿上五三、六五六平方メートルであるところ境界線をB線として実測すると、五二、九六三平方メートルに過ぎず、乙山林は公簿上一九、八三四平方メートルであるところ、境界線をA線として実測しても二〇、五一九平方メートルとなることが認められるが公図の地形が不正確である以上公簿面積もまた不正確であることは容易に推認することができるので、この点も境界線をイ、ロの各点を結ぶ線と認定する妨げとはならない。

3  また、鑑定人跡部一雄の鑑定の結果によれば、甲山林内の杉の樹令と本件係争地上の杉の樹令と同一のものがあることが認められ、一方≪証拠省略≫によると訴外村上正平は甲山林は昭和一四年頃杉の植林をしたことが認められるが、前記認定の如く訴外千葉秀雄方においてもその頃本件係争地内に杉の植林をしているのであるから、この点も境界線をイ、ロの各点を結ぶ線と認定する妨げとはならない。

四1  ところで、ある権利または法律関係について既判力の及ぶ確定判決があるかどうかは、裁判所が職権をもって調査すべき事項である。

そして、本件に関連して前訴のあること前記認定のとおりであるが、前訴は本件係争地付近の山林の所有権確認請求事件についての確定判決であること明らかであるから、地番と地番との境界線についての判断にはその判決の既判力は及んでいないものというべきである。

したがって、前訴の確定判決のあることは本件について境界確定の判決をするにつき何ら妨げとはならない。

もっとも、所有権確認事件の確定判決があることによって、ある人がある地番の土地所有権を有しないことが確定されているため、他の地番との境界確定を求める当事者適格が否定される場合もあり得るが、本件の如くある地番の一部分の所有権を有しないことが確定されているにとどまるときは、原告の所有する甲山林、被告の所有する乙山林はいぜんとして存在するのであり、また、原告の求める裁判は甲、乙山林の地番界の境界確定であって、原告の主張する境界線の確認が訴訟の対象となっているのではないと考えるので、原告は、いぜんとして、甲、乙山林の境界確定を求める当事者適格を有するものというべきである。

2  つぎに、地番と地番の境界線の一部の確定が許されるかについて考えるに、境界線の一部について当事者間に争いがなく、かつ現地の状況からいってその争いなき線を動かす必要のない場合にはその部分の境界線を訴訟上確定する必要がないから、争いのある部分の境界線のみを確定することができるというべきである。

かかる観点から本件をみるとき、甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以西の境界線が、ロ、ロ2、ロ3、ロ4、ロ5、ロ6、ロ7、ロ8、ロ9、ロ10、ロ11、ロ12、ロ13、37の各点を順次結んだ線であることについて当事者間に争いがなく、かつその線は現地では沢の中心線にあたっているため客観的にも明瞭な境界線状の地形をなしているので、この部分については境界確定の必要はなくしたがって別紙図面表示のロ点以東の境界線のみを確定することができるというべきである。

五  以上の理由によって、甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線は、同図面表示のイ、ロの各点を結ぶ線と確定することとする。

第二樹木伐採禁止の請求について

一  原告は、本件係争地の所有権が原告に属することを理由にその地上の樹木の所有権をも有している旨主張するので検討する。

まず、≪証拠省略≫によれば、前訴の確定判決は、本件係争地付近の地盤と立木とを一個の客体とする所有権確認訴訟についての訴外村上正平の請求を棄却する旨の判決であることが認められるので、訴外村上正平の最終口頭弁論期日後の特定承継人である原告は、訴外千葉秀雄の特定承継人である被告との間ではその土地の範囲が同一である限りその既判力に牴触するため、その土地所有権及び立木所有権を主張することはできず、また裁判所は右既判力に牴触する判断はできないはずである。

二  そこで、前訴の係争土地と本件係争地との位置関係についてみるに、≪証拠省略≫と前記境界確定の請求についての認定事実とによって考えると前訴における第二審判決添付図面表示の(イ)点は峯の垂見の地点であることからほぼ本件別紙図面表示のイ点に、右添付図面表示の(ロ)点は水の湧出口であることからほぼ本件別紙図面表示のロ点に、そして右(イ)、(ロ)点からの各方位角、距離から推測して前訴の係争土地はほぼ本件係争地に該当するものといい得るが、右判決添付図面の基点とされた松伐根は、検証の結果によればその存在すると推測される付近から跡形もなく朽ち果てて消失していることが認められるので、右判決添付図面表示の各地点が本件係争地のどの地点に当るか、判決自体からは正確には断定することができなくなっているといわなければならない。

そうすると、前訴の及ぶ既判力の範囲を右判決添付図面のみによって正確に特定することはできないのであるから、かかる場合には確定判決があってもさらに判決をする必要があるものというべく、再訴も許すべきである。その場合勿論右確定判決によって既判力の及んでいる範囲がどこまでか可能な限り合理的に追求してその既判力に牴触しない判決をなすべきものと考える。

右の見解のもとに本件をみた場合前記各認定事実によれば、右判決添付図面表示の(イ)点は本件別紙図面表示のイ点に、同(ロ)点は同ロ点にそれぞれ該当し、前訴の係争土地と本件係争地とは大部分一致しているものと認めることができ、一方実体的にも前記境界確定の請求についての認定事実によると、本件係争地が原告所有の甲山林の一部分であるとは到底これを認めることができない。そうすると、原告の主張する本件係争地中前訴の係争土地と重なり合う範囲内においては原告はその所有権を主張することができず、重なり合わない若干の部分については原告の所有権が認められないのであるから、結局原告が本件係争地の所有権を有することを請求原因とする本件樹木伐採禁止請求はその理由がないものといわなければならない。

第三結論

以上の判示のとおり、甲、乙山林の別紙図面表示のロ点以東の境界線は同図面表示のイ、ロの各点を結ぶ線と確定すべく、原告の樹木の伐採禁止を求める請求はこれを棄却すべきである。

よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小倉顕)

<以下省略>

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