知財高等裁判所 平成17年(行ケ)10562号 判決 2006年9月14日
原告
セイコーエプソン株式会社
訴訟代理人弁護士
生田哲郎
同
山田基司
同
森本晋
同
美和繁男
訴訟代理人弁理士
松本雅利
同
吉浦洋一
被告
特許庁長官 中嶋誠
指定代理人
吉田英一
同
平井良憲
同
高木彰
同
大場義則
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が不服2004-9600号事件について平成17年5月24日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成9年6月25日,発明の名称を「偏光変換素子,偏光照明装置,および,これを用いた表示装置並びに投写型表示装置」とする発明につき特許出願(平成9年特許願第540747号。以下「本願」という。優先権主張平成8年6月25日・日本。後記平成16年2月16日付け手続補正書による補正後の請求項の数は13である。)をした(平成15年3月27日付け手続補正書による補正により,発明の名称を「偏光照明装置,および,これを用いた表示装置並びに投写型表示装置」に補正。)。
原告は,本願につき平成15年7月28日付け手続補正書及び同16年2月16日付け手続補正書により明細書の補正(以下,この最終の補正後の明細書を「本願明細書」という。)をしたが,平成16年4月6日に拒絶査定を受けたので,同年5月6日,これに対する不服の審判を請求した。
特許庁は,上記審判請求を不服2004-9600号事件として審理した結果,平成17年5月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年6月7日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲(上記最終の補正後のもの)
本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「【請求項1】光源と,
前記光源から出射された光束を複数の中間光束に分離する第1の光学要素と,
前記中間光束のそれぞれが収束する位置付近に配置された第2の光学要素とを備え,
前記第2の光学要素は,
前記中間光束のそれぞれをS偏光光束とP偏光光束とに空間的に分離する偏光分離素子と,
前記偏光分離素子により分離されたS偏光光束またはP偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束の偏光方向と他方の偏光光束の偏光方向とを揃える選択位相差板と,
それらの偏光光束を重畳結合させる結合レンズとを有し,
前記偏光分離素子は,
複数対の偏光分離面と反射面とを有し,前記偏光分離面は,前記中間光束のそれぞれが収束する位置に対応するように配置され,前記P偏光光束またはS偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束を透過させ他方の偏光光束を反射させて偏光光束を分離し,前記反射面は,前記偏光分離面とほぼ平行に配置され,前記偏光分離面で反射された偏光光束を前記偏光分離面を透過した偏光光束の出射方向に向けて反射してなり,
前記第2の光学要素付近には,それぞれの前記中間光束が前記反射面に直接入射するのを防ぐ遮光手段または光減衰手段が設けられてなることを特徴とする偏光照明装置(以下,この発明を「本。」願発明」という。)
3 審決の理由
(1) 別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本願発明は,優先権主張日前に頒布された刊行物である米国特許第2748659号明細書(甲4。以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)と複数の光束を重畳結合するための結合レンズを光学系の出射面側に設けるという周知の事項(例えば,特開平4-234016号公報。甲8)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,とするものである。
(2) 審決が,進歩性がないとの上記結論を導く過程において,本願発明と引用発明との一致点及び相違点として認定したところは,次のとおりである。
【一致点】
「光源と,前記光源から出射された光束を複数の中間光束に分離する第1の光学要素と,前記中間光束のそれぞれが収束する位置付近に配置された第2の光学要素とを備え,前記第2の光学要素は,前記中間光束のそれぞれをS偏光光束とP偏光光束とに空間的に分離する偏光分離素子と,前記偏光分離素子により分離されたS偏光光束またはP偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束の偏光方向と他方の偏光光束の偏光方向とを揃える選択位相差板と,を有し,前記偏光分離素子は,複数対の偏光分離面と反射面とを有し,前記偏光分離面は,前記P偏光光束またはS偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束を透過させ他方の偏光光束を反射させて偏光光束を分離し,前記反射面は,前記偏光分離面とほぼ平行に配置され,前記偏光分離面で反射された偏光光束を前記偏光分離面を透過した偏光光束の出射方向に向けて反射してなり,前記第2の光学要素付近には,それぞれの前記中間光束が前記反射面に直接入射するのを防ぐ遮光手段または光減衰手段が設けられてなる偏光照明装置」である点
【相違点】
a 本願発明において,第2の光学素子が偏光方向を揃えた一方の偏光光束と他方の偏光光束を重畳結合させる結合レンズを有するのに対して,引用例に記載のものにおいては,偏光器が出射する一方の成分7′と他方の成分9′とを重畳結合する結合レンズを有していない点(以下「相違点a」という。)
b 本願発明における偏光分離面は,中間光束のそれぞれが収束する位置に対応するように配置されているのに対して,引用例に記載のものにおける偏光層36は,光源からの平行光束化された光が凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅が縮小して複数に分離された平行光束が入射した位置に配置されており,偏光層36の位置で入射光束が収束しない点(以下「相違点b」という。)
第3原告主張の取消事由の要点
審決は,遮光手段の有無についての相違点を看過し(取消事由3),相違点aについての判断を誤り(取消事由2),相違点bについての判断を誤った(取消事由1)結果,本願発明の進歩性を否定したものであり,これらの誤りはいずれも審決の結論に影響することが明らかであるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点bについての判断の誤り)
(1) 自動車のヘッドランプにおいては,かなり遠距離まで光を照射する必要があること,照射対象とヘッドランプの光源との間の距離が一定していなくても,運転手が明瞭にそれを認識できるように障害物を十分な輝度で照射できることが,当業者に周知の技術的課題である。この技術的課題の実現のため,ッドランプから前方に照射される光束は平行光束であり,ヘッドランプから所定の位置に光束を収束させることをしないことは,周知の事実である(甲5,甲6)。
引用例(甲4)に「本発明の他の目的は,自動車のヘッドランプのような広面積の光に用いて特に有利な光偏光器を提供することである。」(1欄62行~64行,抄訳1頁下から6行~同5行)と記載されているように,引用発明は,自動車用ヘッドランプに好適に用いられる偏光照明装置であるから,ヘッドランプから前方に出射される照射光束は,平行光束であることが必須の前提である。
他方,本願発明では,「偏光分離面は,中間光束のそれぞれが収束する位置に対応するように配置され」るので,偏光分離面(引用発明の偏光層)に入射する中間光束は当然に収束光束である。
したがって,引用発明と本願発明との間には,中間光束が平行光束(引用発明)か,収束光束(本願発明)かという構成上の差異があることは明白である(審決が,一致点のなかに,「前記中間光束のそれぞれが収束する」ことを含めている(審決書5頁21行)のは,誤りである。)。
(2) そして審決は,相違点bについて「光束の幅を図2の場合よりさらに縮小させてもよいことは明らか」(審決書6頁16行~17行)と判断するが,引用発明において単に光束の幅を縮小させると,プリズム体33から出射する平行光束は光束のある部分とない部分の照明,すなわち縞模様の照明となり,均一な平行光束で前方を照射するという引用発明の技術的課題に反することになる。
審決は,相違点bについて,さらに,「あえて平行光束化せず,凹円筒レンズ32を省いて,光束が凸円筒レンズ31によりプリズム体33の位置,すなわち偏光器の位置付近の位置に収束するようにしてもよいことも明らかである。」(審決書6頁18行~20行)とも判断しているが,凸円筒レンズ31で光束の幅を狭めた状態で凹円筒レンズ32を省いてしまうと,平行光束を偏光層(平行面体)に入射させることができず,ヘッドランプ用の照明装置としてヘッドランプの前方から平行光束を出射するという,引用発明の技術的課題を実現することができなくなるから,「あえて平行光束化せず,凹円筒レンズ32を省いて‥‥‥」などのような構成を採用することはあり得ない。
すなわち,引用発明においては,平行光束を偏光器に入射させることが必須であり,平行光束以外の光束が入射することを排除しているから,引用発明の構成に,特開平7-294906号公報(甲7),特開平4-234016号公報(甲8)のような収束光束を偏光器に入射させる構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得るものではない。
上記のとおり,審決の上記各判断は誤りであり,審決には,相違点bについての判断の誤りがある。
(3) 被告は,相違点bに係る本願発明の技術的事項に関して,本願明細書でも従来技術として認識されている程度のものであり,また引用例には「本発明の一般的な目的は,従来の偏光器の望ましくない光の損失をなくし」と記載されているから,引用発明において,凹円筒レンズ32を省いて光束を偏光層36の位置に収束させてもよいことは明らかである旨主張する。
しかし,偏光層36(偏光分離面30)の偏光分離性能が最もよいのは,平行光束が入射する場合であることは当業者の技術常識であり,引用発明では,偏光層36に平行光束以外が入射すると偏光層36の偏光分離性能が悪化するので,それを損なわないために,凸円筒レンズで収束光束とした後に凹円筒レンズで平行光束に戻しているのである。被告主張のように,光の損失をなくすことが引用発明の目的と解すれば,P波又はS波のいずれかに揃えるべきなのに,凹円筒レンズ32を省略してあえて収束光束を入射させ,偏光分離性能を悪化させる構成をわざわざ採用してP波とS波が混じるような構成を当業者が採ることがないことは明らかである。被告主張では,なぜ凹円筒レンズ32を省いて光束を偏光層36の位置に収束させてもよいといえるのかが論理的にも技術的にも全く不明であって,明らかな論理的な飛躍があり,不当である。
2 取消事由2(相違点aについての判断の誤り)
(1) 審決は,相違点aについて,「複数の光束を重畳結合するための結合レンズを光学系の出射面側に設けることは周知の事項(この点は拒絶査定で引用した特開平4-234016号公報(図26,レンズ111)にも開示されている。)であり,必要に応じて適宜配置し得るものであって,この点において何ら格別な技術的特徴は与えられない。」(審決書6頁6行~10行)と判断している。
確かに,複数の光束を重畳結合するために結合レンズを光学系の出射面側に設けることはプロジェクタ用の均一照明光学系(インテグレータ光学系)としては周知かもしれないが,本願発明の進歩性の判断の際に問われるべきは,引用発明の自動車用ヘッドランプ用の照明装置に好適に用いられる照射装置の出射面側に,結合レンズを組み合わせることが,当業者に容易に想到できるかどうかという点である。
本願発明では,収束光束である中間光束が偏光分離素子により分離され,さらに偏光方向が揃えられた光束が,第2の光学要素の1要素として設けられた結合レンズによって照明領域上で発散光束として重畳されて照射されることにより,液晶パネル等の照射対象に均一かつ高い照度の照明を提供する構成となっている。
このように中間光束が収束光束であることによって照明領域上で発散光束として重畳されるような構成は,引用例には記載されていない。引用発明の出射面側に結合レンズを組み合わせたとしても,照明領域上で重畳することはなく,偏光分離面に入射する光束が平行光束であることから,出射する光束は焦点に光束が集中する収束光束となって,焦点近傍の光の当たらない地点に出現するかもしれない歩行者やその他の障害物等を照明することができなくなり,ヘッドランプに関する引用発明の技術的課題に反することになる。
したがって,当業者が必要に応じて引用発明に結合レンズを適宜配置し得るものではなく,審決の上記判断は誤りである。
(2) 被告は,引用例に記載の光偏光器は,自動車のヘッドランプ用に限定されるものではなく,一般的な用途の光偏光器として理解され,個別の用途に応じた光学要素が組み込まれるのは当然であり,複数の光束を重畳結合するための結合レンズを光学系の出射面側に設けることが周知であることに照らせば,相違点aに係る本願発明の技術的事項は,必要に応じ適宜なし得るものであって,何ら格別な技術的特徴と評価されるものではない旨を主張する。
しかし,上述のように,引用発明の偏光器の目的は偏光した光束を平行光束として出射させることにあるから,仮に結合レンズ自体が周知であるとしても,引用発明に結合レンズを設けると引用発明の目的を達成できない(一方向に平行光束ができない)構成となるのであって,引用発明に結合レンズを組み合わせるような構成を想到することはできない。その点において被告の主張は失当である。
また仮に,引用発明に結合レンズを組み合わせたとしても,結合レンズに入射する(偏光器から出射する)光束が平行光束である以上,どのような結合レンズを持ってきても「重畳結合」させることはできない。
3 取消事由3(相違点の看過)
(1) 審決は,引用例(甲4)図2の実施例において,「一つおきのプリズム体33に凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とで幅が縮小した複数の光束に分離されて入射し,間の一つおきのプリズム体には光束が入射せず,入射面側に設けられた反射面39によって遮光されること」(審決書3頁下から4行~末行)が見てとれるとして,引用例記載の照明装置について,「1つおきのプリズム体33の端面が平行面体の入射面において内側と外側の両方を反射性にした反射面39によって遮光され」(審決書4頁5行~6行)と認定している。
確かに,引用例の図2には,凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32のレンズシステムに加えて,面39が配置されていることが記載されているが,図2において,斜線で表示された部分は光が通らない領域を示しているものであって,面39に光が入射することはなんら考慮されていない。
さらに,引用例では,すべてのランプ出射光を利用するために,「Ⅰ:面39を,ランプの空間に光を反射して戻すために,金属化する」or「Ⅱ:面39に入る光を偏向させるために,板状の金属化されたガラスプレートを斜めに配置する。」or「Ⅲ:ヘッドランプからの平行光束の光線空間内に,入射面34の断面形状に幅を制限することができる伸縮自在のシリンドリカルイメージングシステムを提供する。」と「or」を使用している(抄訳4頁22行~26行)ことから分かるように,ⅠないしⅢの三つの構成は,択一的に選択されることが明示されている。そうすると,構成Ⅲのレンズシステムを採用する場合には,構成Ⅰを採用することはあり得ないと解するのが当業者の通常の解釈であって,図2の構成において面39が反射面,すなわち当業者に「遮光手段」を採用したものと教示することはあり得ない。
この点,審決は,「ランプ出射光を有効に利用する上で何ら相反するものではなく,両方を用いることにより,むしろランプ出射光が確実に有効利用されることは明らか」(審決書6頁下から5行~同3行)と認定するが,引用例の図2の構成においては,上記の構成Ⅲ,すなわち凸レンズ及び凹レンズのシステムにより「34の断面形状に幅を制限している」ので,当業者は,図2の構成を理解するときに,そもそも面39にはレンズシステムで平行光束に縮小された中間光束が入射のしようがないと理解するものであって,面39を金属化する構成Ⅰを採用して,光束を反射させることを行っているとは理解しない。すなわち,引用例の趣旨に従えば,構成Ⅰと構成Ⅲの両方を用いることでランプ出射光が確実に有効利用されると当業者が解することは,あり得ない。
したがって,本願発明と引用発明では,遮光手段の有無という相違点(以下「相違点c」という。)があるものである。審決は,この相違点を看過した誤りがある。
(2) 本願発明の遮光手段は,結合レンズによって照明領域上で重畳結合させるために中間光束を収束光束とするにあたり,P波とS波とが混ざってしまうとの問題を解決するために,設けたものである。つまり,相違点cに係る本願発明の構成は,偏光分離面30に入射する光束が収束光束であることに起因した構成である。このような相違点cに係る本願発明の構成について引用例には一切記載も示唆もないのである。
本願明細書(甲2,甲3)では,従来技術として特開平7-294906号公報(甲7)を示し,この発明を前提として,本願発明では,光源から発せられるランダムな偏光光束を一種類の偏光光束に変換する過程において,他の偏光光束が混入することを抑制することを意図して遮光手段を設けているのである。このような遮光手段については,甲7には記載も示唆もされていないから,当業者がこの従来技術に基づいて遮光手段の採用を容易に想到し得るものではない。
さらに,審決で触れられた特開平4-234016号公報(甲8)も,甲7と同様に,本願発明の特徴の一つである遮光手段については,記載も示唆もしていない。
したがって,当業者が遮光手段の採用を容易に想到し得るということはないから,相違点cの看過は,審決の結論に影響するものであり,審決は取り消されるべきである。
第4被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(相違点bについての判断の誤り)について
原告は,引用発明につき,自動車のヘッドランプのような照明装置であって,ヘッドランプから前方に出射される照射光束が平行光束であることが必須の前提である旨主張する。
確かに,引用例には,「例えば,‥‥‥自動車のヘッドランプ」(1欄18行~19行,抄訳1頁4行~5行),「自動車のヘッドランプのような」(1欄64行,抄訳1頁下から6行)及び「本発明を自動車のヘッドランプに適用した一形態」(2欄1行~2行,抄訳2頁2行)と,自動車のヘッドランプに関する記載があるが,それらは,単に適用の一例を示したものにすぎない。
むしろ,引用例には,産業上の利用分野に関して,「本発明は,光偏光器に関するものである。」(1欄15行,抄訳1頁2行)と記載され,また,発明の目的に関して,「本発明の一般的な目的は,従来の偏光器の望ましくない光の損失をなくし,反射された部分光線を光線の主方向に偏向して戻し,比較的安価な方法で現実的に製造できる光偏光器を提供することである。」(1欄56~61行,抄訳1頁下から9行~同7行)と記載されているものであり,加えて,特許請求の範囲には光偏光器が自動車のヘッドランプに限定したものとして記載されていない(従属項にすら記載されていない)ものであって,これらに照らせば,引用例に記載の光偏光器は,一般的な用途の光偏光器として理解される。
さらに,引用例に記載されたような,偏光分離素子とλ/2板とを備え偏光方向を1方向に揃えて出射する光偏光器を,自動車のヘッドランプとは異なる用途(主に投影型表示装置)に用いることが周知であること(乙1~乙6)からも,引用例に記載の光偏光器は,一般的な用途の光偏光器として理解される。
そして,相違点bに係る本願発明の技術的事項に関しては,本願明細書でも,従来技術(特開平7-294906号公報,甲7)として認識されている程度のものであり,また引用例には,「本発明の一般的な目的は,従来の偏光器の望ましくない光の損失をなくし」と記載されているものであるから,引用発明において,凹円筒レンズ32を省き,光束を偏光層36の位置に収束させてもよいことは明らかである。
2 取消事由2(相違点aについての判断の誤り)について
上記1において述べたとおり,引用例に記載の光偏光器は,自動車のヘッドランプ用に限定されるものではなく,一般的な用途の光偏光器として理解される。そして,個別の用途に用いる場合には,それに応じた光学要素が組み込まれるのは当然であり,複数の光束を重畳結合するための結合レンズを光学系の出射面側に設けることが周知であること(例えば,特開平4-234016号公報,甲8)からすれば,相違点aに係る本願発明の技術的事項は,当業者が必要に応じて適宜なし得るものであって,何ら格別な技術的特徴と評価されるものではない。
3 取消事由3(相違点の看過)について
(1) 引用例には,「ランプの放射を完全に利用するために,表面39に当たる光が反射してランプ空間に戻されるように表面39を金属化する‥‥‥」(4欄37~39行,抄訳4頁22行~23行)とあるように,ランプの光を十分に利用するために,面39を反射面とすることが明確に記載されている。
そして,引用例において,凹凸円筒レンズ31,32からなるレンズシステムを用いることと面39を反射面とすることは,ランプの放射を完全に利用するという目的の観点からみて,排他的な関係にあるものではない。そして,引用例の図2に,反射面39と凹凸円筒レンズ31,32からなるレンズシステムが共に記載されていること及び図2の形態に対応する事項を記載した請求項3に,「帯状の遮断層」(抄訳8頁1行)が記載されていることからみても,引用例には,それらを併用することが記載されていることが明らかである。
また,現実的にも,光源1が有限の大きさを持つものであること及びミラー3を完全な放物面形状にすることが困難なことから,プリズム体33へ入射する光のすべてが平行光束になるとは限らず,したがって,凹凸円筒レンズ31,32からなるレンズシステムがあるからといって,面39への光の入射を完全に防げるとはいい切れないから,図2のように,該レンズシステムと共に面39への光の入射を防ぐ反射面を設けることには,十分な合理性がある。
上記のとおり,引用例には,面39を反射面とすることが明確に記載され,凹凸円筒レンズ31,32と反射面39を共に用いることも記載されているのであるから,原告が主張する相違点cは存在せず,審決に上記相違点cの看過はない。
(2) 原告は,本願発明は,従来技術である特開平7-294906号公報(甲7)を前提として,他の偏光光束の混入の抑制を図ることを意図して遮光手段を設けたものである旨主張する。
これによれば,本願発明は,上記従来技術と比較すると,遮光手段を設ける点に特徴があると主張するものと解されるが,引用例には,前述したように,面39を反射面とすること,つまり遮光手段を設けることが明確に記載されており,面39の目的においても本願発明のものと格別異なるものではない。上記従来技術からみても,引用例は本願発明の課題を解決すべき構成を備える適切な文献であることが理解できる。
第5当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点bについての判断の誤り)について
(1) 原告は,引用発明は,自動車のヘッドランプのような照明装置であるから,ヘッドランプから前方に出射される照射光束は平行光束であることが必須の前提である,と主張する。
確かに,引用例(甲4)には,「図1は,本発明を自動車のヘッドランプに適用した一形態を示す略図である。」(抄訳2頁2行)との記載があり,図1~図5に関する記載においても,ヘッドランプに適用することを前提にした説明がされているから,引用例の図2に示されるものは,具体的には,自動車のヘッドランプに引用例記載の光偏光器を適用したものと認められる。
しかし,引用例(甲4)の特許請求の範囲(抄訳8頁~11頁)には「光偏光器」の発明が記載されているところ,ここでは,その用途が特定されることはなく,この「光偏光器」が自動車のヘッドランプに適用されるものであるとか,出射される光束が平行であるといった限定もされていない。さらに,引用例(甲4)には,この「光偏光器」の発明に関して,「本発明は,光偏光器に関するものである。従来知られている光偏光器は,元の光量のほんの一部分(理論的最大値で50%)しか利用していないことがわかっている。例えば,現在入手出来る偏光フイルムを使って直線偏光光を提供するように構成された自動車のヘッドランプは,元の光量のおよそ1/3のみが放射され,その結果平行な位置に置かれたアナライザ・ゴーグルを通過後,偏光されていない放射のおよそ20から25パーセントのみが目に到達する。」(抄訳1頁2行~7行),「本発明の一般的な目的は,従来の偏光器の望ましくない光の損失をなくし,反射された部分光線を光線の主方向に偏向して戻し,比較的安価な方法で現実的に製造できる光偏光器を提供することである。本発明の他の目的は,自動車のヘッドランプのような広面積の光に用いて特に有利な光偏光器を提供することである。」(抄訳1頁下から9行~同5行)との説明がされている。
上記によれば,引用例記載の「光偏光器」は,具体例としては自動車のヘッドランプを構成するものが説明されているものの,自動車のヘッドランプはあくまで「光偏光器」の適用対象の一例を示したものと認められる。そして,引用例に記載されたような,偏光方向を1方向に揃えて出射する光偏光器を,自動車のヘッドランプとは異なる用途の照明装置(主に投影型表示装置)に用いることが周知であること(乙1~乙6)に照らせば,引用例に接した当業者は,引用例記載の「光偏光器」は,自動車のヘッドランプに限らず,その他の照明装置にも適用可能なものとして理解し得るというべきである。
そして,自動車のヘッドランプにおいては,照射光束が平行光束であることを要するとしても,引用発明をこれと異なる照明装置に適用する際にまで,照射光束が平行光束でなければならないわけではない。したがって,引用発明において出射される照射光束は平行光束であることが必須の前提であるとする原告の主張は採用することができない。
(2) そこで,相違点bに係る本願発明の構成の進歩性の有無について検討するに,この種の光偏光器において光が入射ないし出射するためのレンズなどの光学系を具体的にどのように構成するかということ自体は,当業者であれば,用途に応じた機能を得られるように設計上適宜工夫し得るものというべきである。
本願明細書(甲2)には,「背景技術」との見出しの下に,「液晶装置のように,偏光光束を変調するタイプのパネルを用いた表示装置における照明装置としては,一種類の偏光光束を効率よく発生できる偏光照明装置が理想的である。そこで,光源から発せられるランダムな偏光光束を一種類の偏光光束に変換し,その光で液晶装置を照明し,明るい表示を可能にする照明光学系が提案されており,特開平7-294906号公報にはそのような照明光学系を搭載した画像表示装置の一例が開示されている。」(6頁10行~16行)とした上で,同公報の内容が説明されている(同頁17行以下)。そして,当該特開平7-294906号公報(甲7)には,特許請求の範囲に「【請求項2】請求項1において,前記光源と前記偏光変換板との間に前記光源からの光を前記偏光ビームスプリッタの作用面に収束させるためのレンズ板を設けたことを特徴とする映像表示装置。」と記載されており,これは,相違点bに係る本願発明の構成そのものということができる。上記によれば,相違点bに係る本願発明の構成は,本願の優先権主張日当時における周知技術というべきであるから,技術的に格別の意味のあることということはできず,引用発明において上記のような構成とすることは,当業者において容易になし得るものであったというべきである。
したがって,審決が相違点bについて「この相違点も何ら格別なものではなく,当業者が容易に採用し得る程度のことである」(審決書6頁20行~21行)と判断したことに,誤りがあるということはできない。
(3) 原告は,引用発明において出射される照射光束は平行光束であることが必須であることを前提として,単に中間光束の幅を引用例の図2の場合よりもさらに縮小させるとプリズム体33から出射する平行光束が縞模様の照明となり,また,凸円筒レンズ31で光束の幅を狭めた状態で凹円筒レンズ32を省いてしまうと平行光束を偏光層に入射させることができず,均一な平行光束で前方を照射するという引用発明の技術的課題に反し,あるいはその技術的課題を実現することができなくなる旨を主張するが,上記(1)において説示したとおり,引用発明において出射される照射光束は平行光束であることが必須である旨の原告の主張は採用できないものであるから,原告の上記主張は,いずれもその前提を欠くものであり,失当である。
原告は,また,引用発明では,偏光層36に平行光束以外が入射すると偏光層36の偏光分離性能が悪化するので,それを損なわないために,凸円筒レンズで収束光束とした後に凹円筒レンズで平行光束に戻しているのであり,凹円筒レンズ32を省略してあえて収束光束を入射させ,偏光分離性能を悪化させる構成を当業者が採ることがないことは明らかである旨主張する。しかし,具体的にどの程度の偏光分離性能を持たせるかということは,その他の機能との兼合いを考慮して当業者において適宜定め得る事項というべきであり,現に甲7では,収束光束を入射させる構成が採用されているのであるから,引用例に光の損失をなくすことが目的として記載されているとしても,引用発明において収束光束を入射させる構成を採ることが容易でないということにはならない。
(4) なお,原告は,審決が,一致点のなかに,「前記中間光束のそれぞれが収束する」ことを含めている(審決書5頁21行)のは誤りである旨を指摘している。
確かに,審決は,相違点bを「本願発明における偏光分離面は,中間光束のそれぞれが収束する位置に対応するように配置されているのに対して,引用例に記載のものにおける偏光層36は,光源からの平行光束化された光が凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅が縮小して複数に分離された平行光束が入射した位置に配置されており,偏光層36の位置で入射光束が収束しない点」(審決書5頁下から2行~6頁3行)と認定しながら,一致点として「前記中間光束のそれぞれが収束する位置付近に配置された」(第2の光学要素)との点を含めて認定したのは,矛盾するものであって,誤りといわざるを得ない。しかしながら,審決は,上記のとおり相違点bを認定し(相違点bの認定は,原告も争っていない。),相違点bを前提としての判断を行っているのであるから,一致点に関する審決の上記の誤りは,審決の結論に影響するものではない。
2 取消事由2(相違点aについての判断の誤り)について
(1) 原告は,引用発明の出射面側に結合レンズを組み合わせたとしても,偏光器から出射する光束が平行光束である以上,照明領域上で重畳することはなく,偏光分離面に入射する光束が平行光束であることから,出射する光束は焦点に光束が集中する収束光束となって,ヘッドランプに関する引用発明の技術的課題に反することになるから,このような組合わせは当業者が容易に想到し得るものではないとして,審決が,相違点aについて,「複数の光束を重畳結合するための結合レンズを光学系の出射面側に設けることは周知の事項・・・であり,必要に応じて適宜配置し得るものであって,この点において何ら格別な技術的特徴は与えられない。」(審決書6頁6行~10行)と判断したことは誤りである旨主張する。
(2) しかし,引用例記載の「光偏光器」が自動車のヘッドランプに限らず,その他の照明装置にも適用可能なものとして理解し得ること,及び,自動車のヘッドランプにおいては照射光束が平行光束であることを要するとしても,引用発明をこれと異なる照明装置に適用する際にまで照射光束が平行光束でなければならないわけではないことは,上記1において説示したとおりである。原告の上記主張は,前提を欠くものであって,採用できない。
(3) そして,この種の光偏光器において光が入射ないし出射するためのレンズなどの光学系を具体的にどのように構成するかということ自体は,当業者であれば,用途に応じた機能を得られるように設計上適宜工夫し得るものであることも,上記1において説示したとおりである。
特開平4-234016号公報(甲8)には,冒頭に「要約」として,発明の目的と構成が説明され,当該構成を示す図面が添えられているところ(1頁),(当該図面は「図11」として掲げられ17頁),「発明の詳細な説明」欄には,「図11は更に別のレンズ67が偏光検知ビーム分割器20の後ろに配置されていることを示している。中間像60の像70,つまりレンズ551…5510の重畳された最終像が,このレンズの集束面に形成される。」(10頁18欄23行~27行)との説明がされているものであり,これによれば,図11におけるレンズ67は,ビーム分割器20から出射される,偏光方向を揃えた一方の偏光光束と他方の偏光光束を重畳させるものである。すなわち,上記のレンズ67は,相違点aに係る本願発明の「第2の光学素子が偏光方向を揃えた一方の偏光光束と他方の偏光光束を重畳結合させる結合レンズを有する」との構成における「結合レンズ」に相当するものである。そして,甲8の上記図面に示されているように,複数の光束を重畳結合するための結合レンズを光学系の出射面側に設けることは,本願の優先権主張日当時における周知技術というべきであるから,技術的に格別の意味のあることということはできず,引用発明に上記周知技術を適用することは,当業者において容易になし得るものであったというべきである。
したがって,審決が相違点aについて「必要に応じて適宜配置し得るものであって,この点において何ら格別な技術的特徴は与えられない」(審決書6頁8行~10行)と判断したことに,誤りがあるということはできない。
3 取消事由3(相違点の看過)について
(1) 原告は,審決が遮光手段の有無という相違点(相違点c)を看過した旨を主張する。
(2) 引用例(甲4)には,「図中の図1では,数字1はヘッドランプの光源を示し,このヘッドランプは放物面ミラー3を持ち,光源あるいはランプ1の放射をヘッドランプミラーに偏向する小さな球形ミラー2を備える。ヘッドランプミラー3は,ほぼ平行な光線が,階段状またはV字状の波形21’で交互に重なる高屈折偏光層と低屈折偏光層21を含む干渉偏光器本体4を通過するような形状を持つことが望ましい。」(抄訳2頁8行~12行)との記載があり,これによれば,図1において光源1から発した光は放物面ミラー3によりほぼ平行な光線とされることが認められる。そして,引用例(甲4)の図2においては,光源1,球形ミラー2の記載はないものの,「図2は,本発明により構成される別の形態の光偏光器を示す略図であり,その偏光器で使用される光収束装置の形態を示す。」(抄訳2頁3行~4行)との記載があること及び図2に放物面ミラー3の一部が記載され,該ミラー3から反射した光が平行線で示されていることに照らせば,図1と同様に,光源から発した光が放物面ミラー3によりほぼ平行な光線とされるものと認められる。
そして,引用例(甲4)には,図2に関する説明として,「ランプの放射を完全に利用するために,表面39に当たる光が反射してランプ空間に戻されるように表面39を金属化するか,表面39に当たる光が偏向されるように,偏光システムの前の光の中に,帯状の金属化されたガラス板を斜めに置くか,ヘッドライトからの平行光線の光線空間内に,入射面34上で光線断面の帯域を制限することができる望遠型の(原告提出に係る抄訳では「伸縮式の」とあるが,被告準備書面(第1回)8~9頁の指摘(原告も認める。)に従って「望遠型の」と訳す。)円筒形イメージングシステムを提供する。図2に示されるように,かかるイメージングシステムは,互いに接触して一列に配置され,それぞれが入射面34の幅の二倍の幅を持つ,帯状の凸型円筒形収束レンズのシステム31から構成される。レンズ31の配置は,それぞれの円筒形レンズ帯の中央面が入射面34の中央面と一致するようにされる。このシステムの焦点距離の半分の所で,そのシステムと表面34の間に,焦点距離が半分の発散レンズシステム32が置かれ,システム31からの収束された光が表面34に平行に入るように配置される。」(抄訳4頁22行~末行)との記載がある一方,図2には,凸型円筒形収束レンズのシステム31と発散レンズシステム32の円筒形イメージングシステムに加えて,表面39が配置されていることが記載されている(このことは,原告も認めている。)。
(3) 原告は,引用例には,「Ⅰ:面39を,ランプの空間に光りを反射して戻すために,金属化する」,「Ⅱ:面39に入る光を偏向させるために,板状の金属化されたガラスプレートを斜めに配置する。」,「Ⅲ:ヘッドランプからの平行光束の光線空間内に,入射面34の断面形状に幅を制限することができる伸縮自在のシリンドリカルイメージングシステムを提供する。」との3つの構成は,択一的に選択される旨が明示されており,構成Ⅲのレンズシステムを採用する場合には,構成Ⅰを採用することはあり得ないと解するのが当業者の通常の解釈であって,図2の構成において面39が反射面,すなわち当業者に「遮光手段」を採用したものと教示することはあり得ない旨を主張する。
確かに,原告主張のように,引用例の図2に関する前記説明では,「ランプの放射を完全に利用するために,‥‥‥表面39を金属化するか,‥‥‥帯状の金属化されたガラス板を斜めに置くか,‥‥‥望遠型の円筒形イメージングシステムを提供する。」と,3つの構成が選択的に採用されると解される記載があり,「システムの焦点距離の半分の所で,‥‥‥発散レンズシステム32が置かれ,システム31からの収束された光が表面34に平行に入るように配置される。」と記載されている。
しかし,引用例の図1における光源1は有限の大きさをもつものであるから,放物面ミラー3に反射された光が完全な平行光とならないことは,技術常識である(本願明細書にも「実在する光源は,有限の発光領域を有している。従って,光源から出射される光束の平行性は必ずしも良いとは言えない。」(甲2,7頁11行~12行)と記載されている。)。このことは,引用例において,「ほぼ」平行な光線とされることとも符合する。
そして,引用例の図2においても,放物面ミラー3に反射された光,すなわち凸型円筒形収束レンズのシステム31に入る光は「ほぼ」平行なものであるから,発散レンズシステム32から出る光も「ほぼ」平行なものであって,表面39の位置にも多少なりとも光が入射するものと認められる。さらに,放物面ミラー3を誤差のない完全な放物面とすることは製造技術上困難であることに照らしても,表面39の位置にある程度光が入射することは,推測に難くないところである。
してみれば,引用例の図2に記載された,凸型円筒形収束レンズのシステム31と発散レンズシステム32の円筒形イメージングシステムに加えて,表面39が配置された構成において,金属化された表面39が光を反射し遮光手段として機能し得ることは,当業者が十分理解し得ることというべきである。
原告は,引用例の図2において,斜線で表示された部分は光が通らない領域を示しているものであるとも主張するが,そのように解すべき根拠を,引用例の記載から見いだすことはできない。
したがって,審決が,原告指摘の構成Ⅰと構成Ⅲについて,「ランプ出射光を有効に利用する上で何ら相反するものではなく,両方を用いることにより,むしろランプ出射光が確実に有効利用されることは明らか」(審決書6頁下から5行~同3行)とした判断に誤りはない。引用例の図2の構成において面39が当業者に「遮光手段」と理解されることはあり得ない旨の原告の主張は採用できず,これを前提として審決が相違点cを看過した旨をいう原告の主張も,採用できない。
4 結論
以上によれば,原告主張の取消事由には理由がなく,その他,審決に,これを取り消すべき誤りは見当たらない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 佐藤久夫 裁判官 三村量一 裁判官 古閑裕二)