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知財高等裁判所 平成20年(行ケ)10055号 判決 2008年5月29日

原告

アルゼ株式会社

訴訟代理人弁護士

田中康久

中込秀樹

岩渕正紀

岩渕正樹

松永暁太

長沢幸男

長沢美智子

今井博紀

訴訟代理人弁理士

正林真之

井口嘉和

八木澤史彦

小野寺隆

佐藤玲太郎

佐藤武史

清水俊介

進藤利哉

小椋崇吉

被告

特許庁長官 肥塚雅博

指定代理人

伊波猛

三原裕三

山本章裕

小林和男

主文

1  本件訴えを却下する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

理由

1  当事者間に争いのない事実並びに証拠(甲18,21,乙1)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。

(1)  原告は,発明の名称を「遊技機」とする特許第3708056号(特願2000-155626号(国内優先権主張平成12年4月26日)を親出願として,平成14年2月15日分割出願。平成17年8月12日設定登録。以下,「本件特許」という。)の特許権者である。

原告は,平成19年2月9日,特許庁に対し訂正審判の請求をし,訂正2007-390015号事件として特許庁に係属した後に,特許庁は,平成20年1月4日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。そこで,原告は,本件審決の取消しを求めて本訴を提起した。

(2)  本件特許については,サミー株式会社が請求人として無効審判請求をしたところ,特許庁は本件特許を無効とする旨の審決をしたので(以下「本件無効審決」という。),原告は本件無効審決の取消訴訟を提起した(当裁判所平成18年(行ケ)第10504号)。当裁判所は,平成19年11月14日,原告の請求を棄却したので,原告は最高裁判所に対し,上告の提起及び上告受理の申立てをした(最高裁判所平成20年(行ツ)第46号,同裁判所平成20年(行ヒ)第46号)。

これに対し,最高裁判所は,本訴係属中の平成20年5月8日,「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない。」との決定をしたので,本件無効審決が確定した。

2  訂正審判の請求について,請求が成り立たない旨の審決があり,これに対し特許権者が提起した取消訴訟の係属中に,当該特許登録を無効にする審決が確定した場合には,特許権者は,上記取消訴訟において勝訴判決を得たとしても訂正審判の請求が認容されることはあり得ないのであるから,上記審決の取消しを求めるにつき法律上の利益を失うに至ったものというべきである(最高裁判所昭和57年(行ツ)第27号,同裁判所昭和59年4月24日第三小法廷判決参照)。

本件においても,前記1で認定した事実によると,訂正審判請求が成り立たない旨の本件審決に対して取消しを求めて本訴提起したところ,本訴係属中に本件特許登録を無効にする旨の本件無効審決が確定したのであるから,本訴請求は法律上の利益を失うに至ったものといえる。

したがって,原告の本訴請求は訴えの利益がなく不適法であるから,本件訴えを却下することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 中平健 裁判官 上田洋幸)

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