知財高等裁判所 平成20年(行ケ)10181号 判決 2009年7月07日
原告
美津濃株式会社
同訴訟代理人弁護士
中村稔
田中伸一郎
相良由里子
水沼淳
同弁理士
倉澤伊知郎
田巻文孝
被告
特許庁長官
同指定代理人
上田正樹
中田とし子
長島和子
安達輝幸
被告補助参加人
株式会社ルイスビル・スラッガー・ジャパン
同訴訟代理人弁護士
城山康文
岩瀬吉和
山本健策
同弁理士
束田幸四郎
生川芳徳
主文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は補助参加により生じた費用を含め原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が訂正2007-390143号事件について平成20年4月15日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
原告は,第1記載の審決(以下「本件審決」という。)の取消しを求めて本件訴えを提起した。証拠(丙7),争いのない事実,当裁判所に顕著な事実及び弁論の全趣旨によると,本件訴えの提起に至る経緯及び本件訴えの提起後の経過に係る事実関係は,以下のとおりである。
1 本件訴えの提起に至る経緯
原告は,発明の名称を「野球又はソフトボール用のFRP製バット」とする特許第3474793号(以下「本件特許」という。)の特許権者である。
被告補助参加人は,本件特許の無効審判を請求したところ(無効2006-80252号),特許庁は,本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする旨の審決(以下「前審決」という。)をしたため,原告は同審決の取消しを求めて訴え(知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10375号事件。以下「前訴」という。)を提起した。
原告は,前訴係属中に本件特許の請求項1の記載を訂正するとともに同5ないし7を削除することを求めて訂正審判を請求したが,特許庁は同審判請求は成り立たない旨の審決をした。これが本件審決であるが,そこで,原告は同審決の取消しを求める本件訴えを提起するに至った。
2 本件訴えの提起後の経過
知的財産高等裁判所は,前訴について,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡したため,原告は,上告及び上告受理の申立てをしたが,最高裁判所は,平成21年2月24日,前訴についての原告の上告を棄却するとともに,上告審として事件を受理しない旨の決定をし,前審決は確定した。
第3当裁判所の判断
特許権者がした訂正審判の請求について,請求が成り立たない旨の審決があり,同審決に対し,特許権者が提起した審決取消請求訴訟の係属中に,当該特許登録を無効にする審決が確定した場合には,特許権者は,訂正審判の請求が成り立たないとした審決の取消しを求める訴えの利益を失うに至るものというべきである(最高裁昭和59年(行ツ)第27号昭和59年4月24日第三小法廷判決・民集38巻6号653頁参照)。
これを本件についてみると,本件訴えの提起後の前記経過によれば,原告は,本件訴えについて,訴えの利益を失ったものといわなければならないから,本件訴えは,不適法な訴えとして,却下されるべきものである。
(裁判長裁判官 滝澤孝臣 裁判官 高部眞規子 裁判官 杜下弘記)