知財高等裁判所 平成20年(行ケ)10283号 判決 2008年12月24日
原告
株式会社ナチュラルプランツ
訴訟代理人弁理士
工藤一郎
吉良香
被告
株式会社クラブコスメチックス
訴訟代理人弁護士
三山峻司
井上周一
金尾基樹
木村広行
同弁理士
深見久郎
森田俊雄
竹内耕三
並川鉄也
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が再審2007-950009号事件について平成20年6月13日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,確定審決に対して再審の請求をしたところ,請求を却下するとの審決がされたので,同審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯(争いのない事実)
(1) 被告は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件商標」という。)を有する。
商標登録 第4277280号
出願年月日 平成9年12月22日
商品の区分 第3類
指定商品 歯みがき,化粧品,香料類
登録年月日 平成11年5月28日
(2) 原告は,平成17年8月30日,商標法50条1項に基づき,本件商標の指定商品である「化粧品」に係る商標登録の取消審判(以下「本件取消審判」という。)を請求した。
特許庁は,本件取消審判請求を取消2005-31067号事件として審理し,平成18年3月31日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年5月12日,同審決は確定した(以下,この審決を「本件確定審決」という。)。
(3) 原告は,平成19年12月4日,商標法57条1項に基づき,本件確定審決に対する再審を請求した。
特許庁は,上記再審請求を再審2007-950009号事件として審理し,平成20年6月13日,「本件審判の請求を却下する。」との審決をし,その頃,その謄本を原告に送達した。
2 別件訴訟等の係属
(1) 商標権侵害訴訟
被告は,株式会社フィッツコーポレーション(以下「フィッツコーポレーション」という。)が被告の有する別紙商標権目録1ないし3記載の各商標権を侵害しているとして,平成16年7月6日,フィッツコーポレーションを被告として商標権侵害訴訟を大阪地方裁判所に提起した(同庁平成16年(ワ)第7663号事件。以下「フィッツ訴訟」という。甲12)。
大阪地方裁判所は,平成19年11月5日,フィッツ訴訟について判決を言い渡した(甲1)。
(2) 商標登録無効審判請求
被告は,平成18年2月17日,フィッツコーポレーションが商標権を有する商標登録第4925546号商標について,無効審判を請求(無効2006-89019号事件として係属。以下「フィッツ無効審判」という。)し,特許庁は,同年10月27日,同事件について「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした(甲7,11)。
3 審決の理由の要旨
審決は,本件再審の請求は,適法な再審事由の主張を欠いた不適法な請求であって,その補正をすることができないものに該当するから,商標法61条において準用する特許法174条2項において準用する同法135条の規定によって請求を却下すべきものとした。
審決が,上記結論に至った理由は,次のとおりである。なお,審決の引用部分には本判決の略語に合わせるなどして一部訂正したところがある。また,本判決においても審決の略語を使用する。
(1) 請求人の主張
ア 「被請求人(フィッツ訴訟の原告)は,フィッツ訴訟において,登録第2219231号商標,登録第2219232号商標及び登録第2431617号商標(これらをまとめて「フィッツ訴訟の引用商標」といい,その商標権を「フィッツ訴訟の引用商標権」という。)及びこれと社会通念上同一と認められる商標について,本件確定審決においてその使用時期を認められた時期(2002年(平成14年)12月)には使用していないと述べているのに対して,本件確定審決においては,本件商標を使用していると述べており,その主張に一貫性を欠き,禁反言の原則にも反する。」
イ 「本件商標と同様に「LOVE」の文字からなるフィッツ訴訟の引用商標権の侵害に関する訴えの提起があったことが,裁判所から特許庁長官に通知されている(商標法第56条第1項で準用する特許法第168条第3項)。また,フィッツ訴訟の原告(本件再審の被請求人)は,フィッツ訴訟の被告(フィッツコーポレーション)の有する登録第49225546号商標について,無効審判の請求(フィッツ無効審判)をしており,該無効審判が請求されたことが特許庁長官から裁判所に通知されている(同法第56条第1項で準用する特許法第168条第4項)。さらに,フィッツ訴訟において,被告がフィッツ訴訟の引用商標について無効の主張をしている旨が,裁判所から特許庁長官に通知されている(同法第56条第1項で準用する特許法第168条第5項)。
そして,フィッツ無効審判は,請求日が平成18年2月17日(審決注:「2月7日」は誤記である。)であり,その審判請求書とともに,訴状などフィッツ訴訟関連資料が提出されている。
そうすると,本件確定審決がなされる約2ヶ月前に,特許庁において,フィッツ訴訟の引用商標が侵害対象となっていることを認識する機会があったと言えるので,審判官は本件確定審決を審理するに当たっては,当然にフィッツ訴訟資料を参照すべきであり,審判官がもしこれらの資料を参照していたならば,本件確定審決における乙第4号証のみから判断すべきでないとし,「本件商標を取り消す」との審決がなされた可能性が非常に高く,それを参照せず,乙第4号証の正当性を審理しなかったことによる「判断の遺脱」に他ならない。」
ウ 「したがって,本件確定審決は,商標法第57条第2項において準用する民事訴訟法第338条第1項第9号の「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」に該当する。」
(2) 審決の判断
ア 「商標法第57条第2項において準用する民事訴訟法第338条第1項第9号は,「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。」と規定されており,これは,確定審決に対する再審の事由としては,「本件確定審決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」と読み替えることとなる。」
ところで,本件確定審決は,商標法第50条に基づく商標登録の取消審判であるところ,同条第2項により,本件商標の証明責任を負う被請求人(本件再審被請求人)が各要証事実を証明するために証拠を提出し,これに基づいて審判官は,各要証事実を認定し,本件商標の使用をしていたか否かを判断すれば足りるのであって,その審判の係属中に,別途の商標権侵害差止等請求訴訟事件(フィッツ訴訟)において,その当事者が主張した事実を当該審判で審理し,事実を認定しなければならない理由はない。
ましてや,本件確定審決は商標権者等が登録商標を所定の期間や商品等に使用していたか否かを争う取消審判であるのに対して,別途のフィッツ訴訟は自己の商標権に基づき,他人の商標の使用行為が当該商標権を侵害するか否かの差止請求等であり,訴訟物を異にするものである。
そして,本件確定審決は,上述したとおり,本件商標の証明責任を負う被請求人(本件再審被請求人)が証拠によって要証事実を証明し,これに基づいて審判官の合議体は,被請求人が,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者(クラブ化粧品販売株式会社)が請求に係る指定商品中の「ネイルポリッシュ(ネイルエナメル),ネイルリムーバー(除光液)」について,本件商標の使用をしていたと認定,判断し,当該取消審判の請求は,成り立たないとの審決に至ったものであり,何ら審決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったことにはならないこと明らかである。」
イ 「請求人は,フィッツ訴訟において,被請求人(フィッツ訴訟の原告)がフィッツ訴訟の引用商標及びこれと社会通念上同一と認められる商標について,本件確定審決における使用時期を認められた時期(2002年(平成14年)12月)には使用していないと述べているのに対して,本件確定審決においては,本件商標を使用していると述べており,その主張に一貫性を欠くと主張するが,フィッツ訴訟において,上記フィッツ訴訟の引用商標及びこれと社会通念上同一と認められる商標を使用していないと述べている使用の主体は,被請求人(フィッツ訴訟の原告)であるのに対して,本件確定審決における本件商標の使用者は本件商標の通常使用権者と認め得るクラブ化粧品販売株式会社であり,それぞれの商標の使用者を異にしているものである。
また,フィッツ訴訟において商標権侵害差止等請求の根拠としているのはフィッツ訴訟の引用商標である登録第2219231号商標,登録第2219232号商標及び登録第2431617号商標の各商標権であり,本件確定審決の対象である本件商標権をその請求の根拠にしていない。」
ウ 「以上のとおり,本件確定審決の係属中に,別途のフィッツ訴訟において,その当事者が主張した事実を当該審判で審理し,事実を認定しなければならない理由はないばかりでなく,フィッツ訴訟と本件確定審決における商標の使用者を相違するものであり,さらに,フィッツ訴訟と本件確定審決の対象である商標権をも異にしているものである。
そうすると,請求人の主張は,本件確定審決の審判官の合議体が本件確定審決を審理するに当たって,フィッツ訴訟資料を必ず参照しなければならないものではないから,本件確定審決が商標法第57条第2項において準用する民事訴訟法第338条第1項第9号の「判決(本件確定審決)に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」とする理由の前提を欠く主張といわなければならない。
したがって,本件再審の請求は,不適法な請求であって,その補正をすることができないものに該当し,商標法第61条において準用する特許法第174条第2項において準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。」
第3審決取消事由の要点
原告は,審決取消事由として,要旨次のとおり主張した。
1 商標法50条2項の解釈の誤り
審決は,「本件確定審決は,商標法第50条に基づく商標登録の取消審判であるところ,同条第2項により,本件商標の証明責任を負う被請求人(本件再審被請求人)が各要証事実を証明するために証拠を提出し,これに基づいて審判官の合議体は,各要証事実を認定し,本件商標の使用をしていたか否かを判断すれば足りる」と判断しているが,誤りである。
審判は,職権主義を前提とするから,当事者の主張の正当性に対する疑義の有無に拘わらず,審判官が自ら率先して職権で審理をしなければならない。本件取消審判で被請求人である被告が本件商標の使用の事実を立証するために提出した3つの証拠(以下「本件証拠」という。)は,正当性に極めて疑義があったから,審判合議体は,本件証拠に基づいて本件商標の使用の有無を判断するだけでは足りず,職権主義の下で十分な職権審理を行う義務があった。
しかるに,本件取消審判においては,審判合議体は職権証拠調べを行わなかったから,その審理は不十分であり,本件確定審決には再審事由がある。
2 本件取消審判における審判合議体の職権審理義務の懈怠
本件取消審判と同時期に,本件商標と関連する別紙商標権目録1ないし3記載の各商標(以下「本件関連商標」という。)についてのフィッツ訴訟が大阪地方裁判所に係属し,フィッツ無効審判が特許庁に係属していたから,職権証拠調べに関する商標法56条の準用する特許法150条ないし153条の規定により,及び,特許庁と裁判所との調整及び合理的な紛争解決を図るための商標法56条の準用する特許法168条の規定の運用により,本件取消審判において,審判合議体は,本件商標の使用の事実を認定するに当たり,フィッツ訴訟の訴訟資料について職権証拠調べを行うべきであった。
3 フィッツ訴訟における被告の本件商標不使用の主張
被告は,フィッツ訴訟においては平成元年10月から平成16年8月10日まで本件関連商標及びこれと社会通念上同一と認められる本件商標を使用していなかったと主張していたにもかかわらず,本件取消審判においては本件商標を使用していた旨,フィッツ訴訟と相反する主張をしていたから,本件取消審判において,審判合議体がフィッツ訴訟の訴訟資料を職権で証拠調べしていれば,被告の提出した本件証拠が本件商標の使用の事実を認定するのに不適切な証拠であることが容易に判明したはずである。
しかるに,そのような職権証拠調べは行われず,本件確定審決は,本件証拠に基づき,本件商標の使用の事実を認定した。
したがって,本件取消審判における審理が不十分であったことは明らかである。
4 本件取消審判における本件商標の使用者と被告との相違
審決は,原告が,被告はフィッツ訴訟では本件関連商標及びこれと社会通念上同一と認められる本件商標を使用していないと主張したのに対し,本件取消審判では本件商標を使用していると述べ,その主張に一貫性を欠くと主張したのに対し,本件確定審決で本件商標の使用者と認められたのはクラブ化粧品であり,フィッツ訴訟で本件商標を使用していないと述べたのは被告であって,商標の使用者を異にすると判断しているが,誤りである。
本件取消審判において,被告は,被告製造に係る本件商標を付した化粧品を通常使用権者であるクラブ化粧品が販売したことをもって本件商標を使用したと主張したが,被告による本件商標の使用行為(本件商標を付した化粧品の製造行為)がなければ,クラブ化粧品の本件商標の使用行為(本件商標を付した化粧品の販売行為)はないのであるから,クラブ化粧品と被告とは,本件商標の使用主体として同一視できる。
したがって,被告がフィッツ訴訟において本件商標を使用していないと主張しているのであれば,クラブ化粧品も本件商標を使用していないといえるから,審決の上記判断は誤りである。
5 まとめ
以上により,本件取消審判においては十分な審理が行われずに本件確定審決に至ったものであり,本件確定審決に商標法57条2項の準用する民事訴訟法338条1項9号の再審事由があることは明らかである。
第4被告の反論の要点
原告の主張する取消事由は,本件確定審決の単なる事実誤認に関するものであり,商標法57条2項が準用する民事訴訟法338条1項9号の再審事由に該当しない。
すなわち,民事訴訟法338条1項9号の規定する「判断の遺脱」とは,当事者が適法に提出した攻撃防御方法について,確定審決が理由中で判断を示さない場合をいい,それが職権調査事項であると弁論主義に服する事項であるかを問わない。
しかし,原告の主張の骨子は,①本件確定審決は職権で調査すべき証拠があるのにこれを採用せず,②不十分な証拠で事実を認定したために,③事実認定に誤りが存在する,というものであり,これらは,いずれも当事者が適法に提出しなかった証拠に係る主張に過ぎず,再審事由である「判断の遺脱」を主張するものと解する余地はない。
したがって,本件再審請求は,そもそも民事訴訟法所定の再審事由の主張を欠くものであるから,不適法であり,その補正ができないことは明白である。
よって,審決の判断は正当である。
第5当裁判所の判断
1 本件で原告が審決取消事由として,すなわち本件確定審決の再審事由として主張するところは,要旨,以下のとおりである。
① 審判においては職権主義が採用されているから,審判官は積極的に職権審理を行わなければならない。
② 本件取消審判において,被告が本件取消審判請求の登録日前3年以内の期間(以下「本件所定期間」という。)に本件商標を使用した事実を証明するために提出した本件証拠には疑わしい点があった。
③ 本件取消審判と同時期に裁判所に係属していたフィッツ訴訟では,被告は本件所定期間内に本件商標を使用していなかったことを自認していたから,商標法56条の準用する特許法168条の運用により,審判合議体がフィッツ訴訟の訴訟資料についての職権証拠調べを行っていれば,本件証拠が被告の本件商標の使用の事実を認定するのに不適切な証拠であることが容易に判明した。
④ しかるに,本件取消審判の審判合議体は,フィッツ訴訟の訴訟資料について職権証拠調べを行わなかったため,本件証拠のみに基づいて被告の本件所定期間中の本件商標の使用の事実を認定し,本件確定審決がされた。
⑤ 以上のとおり,本件確定審決は不十分な審理に基づいてされたものであるから,民事訴訟法338条1項9号の再審事由がある。
2 しかしながら,原告の上記主張を採用することはできない。その理由は以下のとおりである。
商標法57条2項が準用する民事訴訟法338条1項9号の「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」(本件では,準用の結果,「確定審決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」と読み替えることになる。)とは,職権調査事項であると否とを問わず,その判断の如何により判決の結果に影響を及ぼすべき重要な事項であって,当事者が口頭弁論において主張し又は裁判所の職権調査を促してその判断を求めたにもかかわらず,その判断を脱漏した場合をいうものと解される(大審院昭和7年5月20日判決民集11巻10号1005頁参照)。そして,同条項が商標法の確定審決に準用された場合にも同様に解するのが相当であるから,前審に当たる審判において当事者が主張していなかった事項について確定審決が判断をしていないとしても,再審事由たる判断の遺脱とはならないというべきである。
しかるに,原告は,上記のとおり,本件取消審判において審判合議体がフィッツ訴訟の訴訟資料について職権証拠調をしなかったことをもって本件確定審決に再審事由たる判断の遺脱があると縷々主張するものであるが,この主張の趣旨は,本件証拠の評価に当たり,フィッツ訴訟において被告が本件所定期間中における本件商標の不使用の事実を自認していた事実を考慮すべきであった旨の主張に帰着するのであり,原告が本件取消審判において自らそのような主張をしなかったことは原告の自認するところであるから,結局,原告の前記主張の実質は,本件証拠に基づいて被告の本件商標の使用事実を認定した本件確定審決の証拠評価の誤りないしは事実誤認を主張するに過ぎないのであり,審決の事実認定に対する不満は,原則として,審決取消訴訟においてその是正を求めるべきものであるから,上記説示のとおり,本件確定審決がフィッツ訴訟の訴訟資料について判断をしなかったことは,再審事由たる判断の遺脱となるものでないことは明らかである。
したがって,原告の主張する取消事由は,その主張自体に照らし理由がないというほかなく,到底これを採用することはできない。
付言するに,原告は本件取消審判において被告提出に係る本件所定期間内における本件商標の使用を裏付ける本件証拠の信用性について疑義を呈し,これを採用すべきではない旨を主張していたものであるが,本件証拠の信用性の有無を検証する方法はフィッツ訴訟における被告の陳述以外にも様々な方法が存在するのであり,さらに本件確定審決がした本件商標の使用の事実に係る事実認定に不満があるのであれば,その是正を求めて審決取消訴訟を提起して本件証拠の信用性を弾劾する途も有ったのである。また,原告は,被告がフィッツ訴訟等の係属の事実を認識していたことを前提として,その職権調査義務を強調するが,商標登録の取消審判の制度においては,所定期間内における商標使用の事実の存否が問題となるところ,かかる事実は商標権者自身が最もよく知るところであるから使用事実の主張・立証責任を商標権者に課すものとした(商標法50条2項)結果,商標権者の主張・立証により商標使用の事実が具体的に特定されるとともにその裏付けとなる証拠が提出され,これに対する反証活動の対象が明確化され,取消審判の請求権者の反証活動により商標権者の使用事実に係る事実主張の当否が検証されるものである。このような構造の上記取消審判制度においては,原則として,当事者の主張・立証活動が中心になることが予定されており,本件においてもこれと異なる特段の事情の存在も窺われないのであるから,被告の職権調査義務の不履行が違法視されることはないものというべきである。よって,原告の上記主張は失当である。
3 以上によれば,本件再審請求は,その前提となる再審事由の主張が主張自体理由のないものであるから,これが不適法な請求であってその補正ができないものに該当し,商標法61条の準用する特許法174条2項で準用する135条の規定により却下すべきものとした審決の判断に誤りはないものと認められ,他に審決を違法とする事由もないから,審決は適法であり,本件請求は理由がない。
第6結論
よって,本件請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中信義 裁判官 榎戸道也 裁判官 浅井憲)
file_2.jpg別紙