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知財高等裁判所 平成20年(行ケ)10442号 判決 2009年5月27日

原告

インテグリス・インコーポレーテッド

訴訟代理人弁護士

中島和雄

訴訟代理人弁理士

川口義雄

小野誠

渡邉千尋

金山賢教

大崎勝真

坪倉道明

被告

特許庁長官

指定代理人

木村一弘

石田清

小林和男

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は,原告の負担とする。

3  この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1請求

特許庁が不服2007-6459号事件について平成20年7月16日にした審決を取り消す。

第2当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は,平成15年12月10日,「QuickChange」の文字を標準文字で表記した商標(以下「本願商標」という。)について登録出願し(商願2003-109742号),その後,手続補正書により,指定商品を第7類「ろ過機,その他の化学機械器具,半導体製造工程で使用されるろ過機,その他の半導体製造装置」に補正したが,平成18年12月5日発送の拒絶査定を受け,平成19年3月2日,同査定に対する不服の審判(不服2007-6459号事件)を請求した。

特許庁は,平成20年7月16日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,同月29日,その謄本(出訴期間として90日を付加)を原告に送達した。

2  審決の理由

別紙審決書写しのとおりである。要するに,①本願商標は,「QuickChange」の欧文字より成るところ,構成中の「Q」及び「C」の文字が大文字で表記されていることから,「Quick」及び「Change」の2語から成るものと容易に看取され,これより生ずると認められる「クイックチェンジ」の称呼はよどみなく一連に称呼し得るものであり,また「早変わりの,すばやく交換できる」という観念が生じ,②他方,登録第2702516号の商標(構成は別紙商標目録のとおりである。以下「引用商標」という。)は,左右の中央に僅かな隙間を設けた黒色の横長矩形内に楕円を白抜きし,該楕円内の中央に「BL」の欧文字を配してなる図形(以下,判決において「BL図形」という場合がある。)と,該図形の右側に「クイックチェンジ」の片仮名文字を横書きにしてなるところ,その構成中の文字部分と図形部分とを常に一体不可分のものとしてみるべき特別な事情を見いだせないから,該文字部分と該図形部分とは,それぞれ独立して自他商品の出所識別標識としての機能を果たすとみるのが相当であり,引用商標は,「クイックチェンジ」の片仮名文字部分に相応して「クイックチェンジ」の称呼を生じ,「早変わりの,すばやく交換できる」の観念が生ずるものであり,③本願商標と引用商標とは,外観が相違することを考慮しても,「クイックチェンジ」の称呼及び「早変わりの,すばやく交換できる」の観念を共通にする類似の商標であり,④本願商標の指定商品である第7類「ろ過機,その他の化学機械器具」は,引用商標の指定商品(引用商標の指定商品は別紙商品目録のとおりである。)である第7類「化学機械器具」と,また,本願商標の指定商品である第7類「半導体製造工程で使用されるろ過機,その他の半導体製造装置」は,引用商標の指定商品である第7類「半導体製造装置」と,それぞれ同一又は類似の商品であると認められるから,本願商標は商標法4条1項11号により商標登録を受けることができない,というものである。

第3当事者の主張

1  原告の主張

審決は,商標法4条1項11号該当性についての判断の誤りがあるから,取り消されるべきである。

(1)  引用商標における特徴部分(要部)の認定の誤り

審決は,「BL図形」の部分と「クイックチェンジ」の文字部分との組合せからなる結合商標である引用商標について,その構成の一部である「クイックチェンジ」の文字部分を抽出し,この部分を,引用商標の特徴的部分(要部)として認定している。しかし,審決の同認定には,誤りがある。引用商標中の「BL図形」部分は,視覚的にも顕著に表示され,看者の注意を惹きやすい商標の前段(左側)に配されている。これに対し,引用商標中の「クイックチェンジ」の片仮名文字部分は,①指定商品の品質・効能を示す慣用語であること,②普通の書体で,看者の注意を惹きにくい態様で,後段(右側)に配され,視覚的に顕著とはいえないこと,③引用商標の商標権者であるビー・エル・オートテック株式会社は,「BL図形」部分のみからなる標章について,登録商標を有し(甲111,甲112),これを自社のハウスマークとして使用していること(例えば甲113)等に照らすならば,引用商標からは,「クイックチェンジ」部分が特徴的部分であると解すべきではなく,「BL図形」の部分が特徴的部分であると解するのが相当である。

特に,産業機械器具の分野においては,交換が不可欠な消耗品を使用する機械・装置や多品種生産のため臨機に交換して使用する部品を組み込んだ機械・装置が数多く存在することは取引者の常識であって,それらの消耗品や部品あるいはそれらの受入れ側の機械・装置に係る商品について付される「クイックチェンジ」の表示は,それらの交換が素早く行えるという商品の品質・機能として認識されるというべきである。

(2)  本願商標と引用商標との類否判断の誤り

上記のとおり,引用商標の特徴的部分(要部)は「BL図形」の部分にあり,引用商標からは,「ビーエル」又は「ビーエルクイックチェンジ」の称呼が生ずる。引用商標と本願商標とは,称呼・観念・外観のいずれも異にしており,本願商標と引用商標は類似しない。

以上によれば,本願商標と引用商標が類似するものとした審決の判断は,誤りである。

2  被告の反論

本願商標と引用商標とは,同一又は類似の商品について,称呼及び観念を共通にする類似の商標であり,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはない。

(1)  引用商標における特徴部分(要部)の認定の誤りに対し

ア 引用商標は,左右の中央に僅かな隙間を設けた黒色の横長矩形内に楕円を白抜きし,該楕円内の中央に「BL」の欧文字を配してなる図形(「BL図形」)と,その右横に半文字程度の間隔をおいて,「クイックチェンジ」の片仮名文字を太字(ゴシック体風)で横書きにして表した構成からなるものであって,図形と文字とを結合した,いわゆる結合商標である。

引用商標の構成は,「BL図形」部分と「クイックチェンジ」の片仮名文字部分からなるものであり,両構成部分の間に間隔があること,「BL」が欧文字で「クイックチェンジ」が片仮名文字であるという文字構成の相違,「クイックチェンジ」の文字が太字で構成全体にわたり顕著に表されているという相違があることから,「BL図形」部分とその右横に配してなる「クイックチェンジ」の文字部分とは,分離して看取され得るといえる。

また,「BL図形」は,特定の観念を生ずるものではなく,また,「クイックチェンジ」の文字とは,その意味内容において相互に関連性を有するものともいえないから,観念上も分離して認識されるものである。

さらに,引用商標を一体として発音した場合の「ビーエルクイックチェンジ」の称呼も12音(促音,長音を含む。)と冗長といえるものであり,常に一連のものとして称呼されるということはできない。

そうすると,引用商標の構成中,「BL図形」部分と「クイックチェンジ」の片仮名文字部分は,外観,観念,称呼のいずれの面においても,分離して把握され得るものである。

加えて,「クイックチェンジ」の文字は,黒色のゴシック体風の太字をもって,視覚上看者の注意を強く惹く態様で表示しているのに対し,「BL図形」は,構成中の左端に表わされてなるものであるから,引用商標に接する取引者,需要者は,その構成全体のうち,視覚的に顕著に表された「クイックチェンジ」の文字部分に着目し,これより生ずる「クイックチェンジ」の称呼及び「早変わりの,すばやく交換できる」の観念をもって取引に当たる場合もあることは,取引の経験則に照らして自然なことというべきである。

イ 「クイックチェンジ」の文字が商品の品質・機能を表すものとして取引者,需要者に認識されているか否かは,その指定商品との関係において,個別的,具体的に検討されるべきである。原告は,甲8を根拠に,「クイックチェンジ」の文字が,商品の品質・機能を表すものとして使用されていると主張するが,同証拠に係る商品は,主に「旋盤などの金属加工機械器具」,「工作機械用工具」,「鋼板用塗装機械」ということができ,産業機械器具の一部である「金属加工器具」,「金属工作機械用工具」及び「塗装用機械器具」の各分野に含まれる商品とはいえるとしても,本願商標及び引用商標の指定商品中に含まれる「化学機械器具」及び「半導体製造装置」の商品分野における「クイックチェンジ」の使用例は示されていない。加えて,前記の使用例は,「クイックチェンジ」の文字が単独で使用されているというよりは,むしろ,「クイックチェンジ刃物台」,「塗装クイックチェンジ」及び「クイックチェンジホルダー」のように,「クイックチェンジ」の文字とその対象となる商品とが結合した態様において使用されているものである。

すなわち,「クイックチェンジ」及び「quick change」の語に他の語を結びつけ,どのように,あるいは,何をすばやく交換するものであるのかを表すものとして使用されるのが一般的であるというべきである。

そうすると,「クイックチェンジ」及び「quick change」の語から「早変わりの,すばやく交換できる」という意味合いを想起せしめたとしても,それだけではその意味合いは抽象的なものであり,指定商品との関係において,該文字が商品の品質・機能を具体的に想起させるものとはいい難いものであるから,商品の品質・機能を表示するものとして認識させるものとはいえないというべきである。

本願商標と引用商標の指定商品に含まれる「化学機械器具」及び「半導体製造装置」を取り扱う業界においては,「クイックチェンジ」及び「quick change」の文字は,自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものというべきである。

(2)  本願商標と引用商標との類否判断の誤りに対し

本願商標は,「QuickChange」の文字からなり,「クイックチェンジ」の称呼を生ずる。他方,引用商標は,前記(1)のとおりの構成からなるところ,その構成中の「クイックチェンジ」の文字自体が,独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといえるから,該文字部分より「クイックチェンジ」の称呼を生ずるものである。したがって,本願商標と引用商標とは,「クイックチェンジ」との称呼において共通する。

本願商標は,「QuickChange」の英語自体の意味合いから,「早変わりの,すばやく交換できる」(乙6)の観念が生ずる。他方,引用商標は,前記(1)のとおりの構成からなるところ,構成中「クイックチェンジ」の文字部分は,独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものといえ,かつ,「QuickChange」の表音を片仮名表記した外来語と容易に理解されるから,前記「QuickChange」の意味合いと同様な「早変わりの,すばやく交換できる」の観念が想起されるというべきである。したがって,本願商標と引用商標とは,「早変わりの,すばやく交換できる」との観念において共通する。

本願商標と引用商標とは,外観において相違する。しかし,本願商標と引用商標との称呼及び観念の共通性に照らして,両者の外観上の相違は,両商標の類否の判断に大きく影響するものということはできない。

なお,本願の指定商品「ろ過機,その他の化学機械器具,半導体製造工程で使用されるろ過機,その他の半導体製造装置」は,引用商標に係る指定商品中の「化学機械器具」及び「半導体製造装置」にそれぞれ含まれる。

以上のとおりであり,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断に誤りはない。

第4当裁判所の判断

当裁判所は,本願商標は,引用商標に類似し,商標法4条1項11号に該当するものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

1  商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判所時報1467号7頁参照)。

以下,本願商標と引用商標との類否を判断するに当たって,上記の点を考慮して考察する。

2  本願商標と引用商標における外観,観念及び称呼

(1)  本願商標の外観,観念及び称呼

本願商標は,「QuickChange」の欧文字を横書きの標準文字で表記したものであり,「Quick」「Change」の各文字が等間隔に一列に表示され,各単語の冒頭の「Q」及び「C」の文字を大文字とし,他の文字を小文字として構成した外観を有する。

本願商標中の「Quick」も「Change」も比較的平易な単語であり,順に「速い」,「変化(する)」との意味を有することはよく知られているから,「QuickChange」の文字からは,「素早い変化」あるいは「素早く取り替えることができる」という観念が生ずる。

本願商標は,「Quick」と「Change」との2つの単語からなると理解されるものではあるが,各文字が等間隔に一列に表示され,「Quick」末尾の「k」の文字と「Change」の冒頭の「C」の文字との間隔は,他の文字相互の間隔と等しいことから,一体のものと理解され,「クイックチェンジ」又は「クイックチェインジ」との称呼を生ずる。

(2)  引用商標の外観,観念,称呼及び取引の実情

ア 引用商標は,左側に「BL」の欧文字を配した「BL図形」部分とその右側に「クイックチェンジ」の片仮名文字を横書きに表記した文字部分からなる。

まず,外観について検討すると,引用商標中の「BL図形」部分は,黒色の横長矩形内に横長の楕円を白抜きにし,矩形の縦2辺のそれぞれ中点部分付近から白抜きの楕円部分にかけて水平方向に白抜きの細長い切れ目を配することにより,黒色の上下2つの枠が白抜きの楕円を囲んでいる形状とし,その白抜き横長の楕円内に「BL」の欧文字2文字をゴシック体で横書きにしてなる特有の図形が描かれている。「B」の文字を構成する3本の水平の線のうち上下2本は縦の線に接しているが,中央の線は縦の線に接していない。また「L」の文字を構成する縦横2本の線は,互いに接していない。また,引用商標中の「クイックチェンジ」部分は,「BL図形」とやや間隔を置いて,右側に配置され,「BL」の文字より大きくかつ太く,片仮名文字によって横書きに表記されている。引用商標からは,上記のとおりの外観を生ずる。

次に,観念について検討すると,「BL図形」部分の「BL」の文字については,特定の意味を想起させるものではなく,取引上,周知著名なものと認める証拠はないから,「BL図形」からは特段の観念を生じない。これに対して,「クイックチェンジ」の部分から,「素早い変化」,「素早く取り替えることができる」との観念を生ずるものと認められる。したがって,引用商標全体から,「素早い変化」,「素早く取り替えることができる」との観念を生ずる。

さらに,称呼について検討すると,引用商標中の「BL図形」部分は,「BL」の文字を中心とするその図形の意味が不明であるのに対して,クイックチェンジ部分は,「素早い変化」,「素早く取り替えることができる」との観念を生ずることに照らすならば,引用商標全体から,「クイックチェンジ」の称呼が生ずるものと認められる。引用商標を一体として発音した場合の「ビーエルクイックチェンジ」の称呼については,12音(促音,長音を含む。)と冗長といえるものであること,「BL図形」からは特段の観念を生じないこと,「BL図形」が装飾が施され,特有の形状とされていること等から,必ずしも一連のものとして称呼されるとはいえない。

なお,引用商標の商標権者であるビー・エル・オートテック株式会社は,第9類の産業機械器具等を指定商品として,「BL図形」のみからなる商標を商標登録し(甲111,112),その商品カタログ中の冒頭に「BL図形」を「BL AUTOTEC,LTD.」の社名の左側に使用していることが認められるが,同カタログの作成時期は明らかでなく,また,甲8の17枚目によれば,平成3年3月の時点の情報としてビー・エル・オートテック社は「資本金五千万円,一九八七年に設立されたロボット手首回り部品の専門メーカー」であるとの記載はあるものの,これらの証拠によっては,「BL図形」が取引者,需要者の注意を惹く部分として出所識別力を有するものと認めることはできない。

イ 原告の主張に対し

これに対し,原告は,「BL図形」の部分は,引用商標の商標権者であるビー・エル・オートテック株式会社のハウスマークであり,視覚的にも顕著に表示され,看者の注意を惹きやすい商標の前段部分に配置されていることに照らすならば,引用商標から「ビーエル」又は「ビーエルクイックチェンジ」の称呼が生ずると主張する。

しかし,前記のとおり,「BL図形」は,それ自体として特段の意味を有するものではないこと,「BL図形」は,「クイックチェンジ」部分に比較して小さく表記されていること,具体的取引において,「BL図形」のみで,出所の識別標識として使用されている等の特段の事情は認められないこと等の取引の事情に照らすと,引用商標から,「ビーエル」又は「ビーエルクイックチェンジ」の称呼を生ずることはないというべきである。

また,原告は,産業機械器具の分野においては,交換が不可欠な消耗品を使用する機械・装置や多品種生産のため臨機に交換して使用する部品を組み込んだ機械・装置が数多く存在することは取引者の常識であって,それらの消耗品や部品あるいはそれらの受入れ側の機械・装置に係る商品について付される「クイックチェンジ」の表示は,それらの交換が素早く行えるという商品の品質・機能として認識されるというべきであると主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。すなわち,確かに,「クイックチェンジ」の語が,「ワイヤクイックチェンジなどのオプショナル機構をもち」,「使用時のランプ切れにもレバー操作で瞬時にスペアランプに切り替えられるクイックチェンジ機構」のように,商品やその消耗部品の交換に関する特性を表す意味に使用される例(甲8,12ないし16,19,20,116)があるが,そのような例が存在するからといって,引用商標において,その特徴的部分(要部)は,「クイックチェンジ」部分にはなく,「BL図形」部分にあると解するのは相当でない。

(3)  類否の判断

本願商標及び引用商標のいずれからも,「素早い変化」,「素早く取り替えることができる」との観念を生じ,観念において同一である。

また,本願商標からは,「クイックチェンジ」,「クイックチェインジ」との称呼が生じ,引用商標からは,「クイックチェンジ」との称呼が生ずるから,両商標は,称呼において,同一又は極めて類似しているといえる。

本願商標と,引用商標とは,外観は異なる。しかし,観念及び称呼の同一性又は類似性に照らすならば,両商標の外観上の相違は,両商標が類似するとの判断に影響を及ぼすものと解すべきではない。

以上によれば,本願商標と引用商標とは,称呼及び観念を共通にし,外観の相違は大きな相違をもたらすものではなく,取引の実情に照らしても,全体として類似する商標と認められる。

3  結論

以上のとおり,原告の主張はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。

よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 大須賀滋 裁判官 齊木教朗)

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