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知財高等裁判所 平成21年(行ケ)10010号 判決 2009年6月30日

原告

株式会社寺岡精工

訴訟代理人弁理士

志賀正武

高橋詔男

大房直樹

平野昌邦

被告

特許庁長官

指定代理人

村山禎恒

鈴木由紀夫

山本章裕

酒井福造

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

特許庁が不服2006-24883号事件について平成20年12月3日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

1  本件は,発明の名称を「値付システム」とする後記特許の出願人である原告が,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をし,平成18年12月4日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする補正をしたものの,特許庁から上記補正を却下するとした上,請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。

2  争点は,上記補正前及び補正後の請求項1が下記刊行物(引用例1)との関係で進歩性を有するか(特許法29条2項),である。

・ 引用例1:特開平7-148987号公報(発明の名称「ラベルプリンタ」,出願人株式会社テック,公開日平成7年6月13日。以下この文献に記載された発明を「引用発明」という。甲1)

第3当事者の主張

1  請求原因

(1)  特許庁における手続の経緯

原告は,平成7年12月28日,名称を「値付システム」とする発明につき特許出願(特願平7-344195号。請求項の数7。以下「本願」という。甲16。公開公報〔特開平9-183426号〕は甲6)をし,平成18年2月1日付けで手続補正(請求項の数7。以下「第1次補正」という。甲7)をしたが,平成18年9月28日付けで拒絶査定(甲11)を受けたので,不服の審判請求をした。

特許庁は,同請求を不服2006-24883号事件として審理し,その中で原告は平成18年12月4日付けで手続補正(第2次補正,以下「本件補正」という。請求項の数7。甲8)をしたが,特許庁は,平成20年12月3日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成20年12月16日原告に送達された。

(2)  発明の内容

ア 第1次補正時のもの

第1次補正時(平成18年2月1日)の請求項は前記のとおり1~7から成るが,そのうち請求項1に係る発明の内容(以下「本願発明」という。下線は補正箇所)は,下記のとおりである。

【請求項1】 商品を指定する指定手段と,商品毎に印字情報を記憶する記憶手段と,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の印字情報に基づいて,ラベルを発行するラベル発行手段とからなる値付システムにおいて,

画像表示手段を具備し,

前記記憶手段は,商品毎に,正しい位置と向きでラベルが貼り付けられた商品の画像情報も記憶し,

前記画像表示手段は,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の画像情報に基づいて,該商品の画像を表示し,ラベル貼付作業者にラベル貼付位置と向きを画像により指示する

ことを特徴とする値付システム。

イ 本件補正時

本件補正時(平成18年12月4日)の請求項も前記のとおり1~7から成るが,そのうち請求項1に係る発明の内容(以下「本願補正発明」という。)は,下記のとおりである(下線は本件補正における補正箇所)。

【請求項1】 商品を指定する指定手段と,商品毎に印字情報を記憶する記憶手段と,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の印字情報に基づいて,ラベルを発行するラベル発行手段とからなる値付システムにおいて,

画像表示手段を具備し,

前記記憶手段は,商品毎に,正しい位置と向きでラベルが貼り付けられた商品の画像情報も記憶し,

前記画像表示手段は,ラベル発行の際に,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の画像情報に基づいて,該商品の画像を表示し,ラベル貼付作業者にラベル貼付位置と向きを画像により指示する

ことを特徴とする値付システム。

(3)  審決の内容

ア 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。

その理由の要点は,①本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから特許法29条2項により特許出願の際に独立して特許を受けることができない,②本願発明も,同様に特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。

イ なお,審決は,上記判断をするに当たり,引用発明の内容,本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点を,次のとおり認定した。

[引用発明の内容]

「商品を指定するキーボードと,商品毎に商品情報を記憶する商品情報記憶手段と,前記キーボードによって商品が指定されると,前記商品情報記憶手段に記憶されている該商品の商品情報に基づいて,値付ラベルを発行するラベル発行装置とからなるラベルプリンタにおいて,表示器を具備し,前記商品情報記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶し,前記表示器は,ラベル発行の際に,前記キーボードによって商品が指定されると,前記商品情報記憶手段に記憶されている該商品の情報に基づいて,該商品の商品値付作業情報を表示し,作業員に指示することを特徴とするラベルプリンタ。」

[一致点]

いずれも,「商品を指定する指定手段と,商品毎に印字情報を記憶する記憶手段と,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の印字情報に基づいて,ラベルを発行するラベル発行手段とからなる値付システムにおいて,表示手段を具備し,前記記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶し,前記表示手段は,ラベル発行の際に,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の情報に基づいて,該商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示することを特徴とする値付システム。」である点。

[相違点]

本願補正発明は,正しい位置と向きでラベル(値付ラベル)が貼り付けられた商品の画像情報に基づいて,ラベル貼付作業者(作業員)にラベル貼付位置と向きを画像により指示するのに対し,引用発明のものは,ラベル貼付作業者(作業員)に指示するための商品の情報が画像情報でない点。

(4)  審決の取消事由

しかしながら,以下に述べるとおり,審決が本願補正発明について進歩性を欠き独立特許要件がないとして本件補正を却下したのは誤りであり(取消事由1~5),本願発明について進歩性がないと判断したのも誤りである(取消事由6)。

ア 取消事由1(引用発明認定の誤り)

(ア) 審決は,引用発明の内容を上記(3)イのとおり認定したところ,引用発明には,そのうち「前記商品情報記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」することは記載されていないから,上記引用発明の認定は誤りである。

すなわち,引用発明の記載された引用例1(甲1)には,次の記載がある。

・ 「前記RAM3には,商品情報記憶手段としてPLU(price look up)メモリ3aが形成され,このPLUメモリ3aには,図2に示すように,品番,品名,値段,…,商品値付作業情報等のPLUデータ(商品情報)が記憶された各種データエリアが形成されている。」(段落【0012】)

・ 「付属作業情報記憶手段としての前記商品値付作業情報のデータエリア31には,さらに添え物,シール等の商品値付作業情報(付属作業情報)が記憶されたデータエリアが形成されている。」(段落【0013】)

・ 「例えば,品番0001がキーボード4から入力されると,PLUメモリ3aから,品名「さんま」,値段「350」,…,商品値付作業情報の添え物「菊」及びシール「POP1」,…等の各種PLUデータが呼出される。」(段落【0024】)

・ 「このように本実施例によれば,PLUメモリ3aのデータエリアに添え物及びシールの商品値付作業情報(付属作業情報)を記憶したデータエリア31を設け…」(段落【0028】)

また,引用例1の図2には,PLUメモリの構成を示す図が記載されている。

これらの記載によれば,商品情報記憶手段(PLUメモリ)に記憶されているのは,(品番,品名,値段等のほかには)商品値付作業情報であるが,この商品値付作業情報とは,上記摘記のとおり,例えば添え物,シール等の付属作業情報のことである。そして,付属作業情報における付属作業とは,「商品に値付ラベルを貼付ける値付作業に伴って,商品に添え物,例えば葉蘭や菊の花等を添え,『お買得』や『特売品』等の商品宣伝用のPOPシールを貼付ける等の付属作業」(甲1,段落【0005】)と説明されている。よって,商品情報記憶手段に記憶されている商品値付作業情報は,「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とは異なる。

したがって,引用例1には「前記商品情報記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」することは記載されておらず,審決の引用発明の認定は誤りである。

(イ) また,上記「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とは,実際にラベルが貼り付けられた状態を表す情報のことをいうものであるから,これが商品情報記憶手段に記憶されていることは甲1には記載されておらず,審決の引用発明内容の認定には誤りがある。

イ 取消事由2(一致点認定の誤り・相違点の看過)

審決は,本願補正発明と引用発明の一致点を上記(3)イのとおり認定したが,誤りである。

(ア) 上記アのとおり,引用発明は,「ラベルが貼り付けられた商品の情報」を記憶することについては記載されていない。

本願補正発明が「前記記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」する構成を有するのは審決が認定したとおりであるが,引用発明は「前記記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」する構成を有しないものである。

したがって,記憶手段が「ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」するとの点を一致点と認定するのは誤りである。

(イ) また,本願補正発明は,「商品の画像を表示し,ラベル貼付作業者にラベル貼付位置と向きを画像により指示する」ものである。この記載における「商品の画像を表示」することは,「商品を表示」することにほかならないから,本願補正発明では,「商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示」している。

一方,引用発明は,審決が認定したとおり,「商品の商品値付作業情報を表示し,作業員に指示する」ものである。しかし,表示される「商品値付作業情報」は,上記アで述べたように,添え物,シール等の付属作業情報であって,商品自体ではない。よって,引用発明では,「商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示」していない。

したがって審決が,引用発明について「商品を表示」と認定し,「商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示する」との点を本願補正発明と引用発明の一致点と認定したのは誤りである。

以上のとおり,審決は,本願補正発明と引用発明の一致点の認定を誤り,ひいては本願補正発明と引用発明の相違点を看過したものである。

ウ 取消事由3(相違点についての判断の誤り-その1)

審決は,本願補正発明と引用発明との相違点に関する判断において,「一般に,POSシステムなどの値付システムの分野において,画像情報を用いて商品の表示を行うことは,引用例2及び引用例3に記載されているとおり,従来周知の技術的事項である」(9頁28行~30行)として,相違点の構成につき容易想到であると判断した。

しかしながら,引用例1は,値付作業を行うラベルプリンタに関するものであって,「値付システム」に相当する。値付システムは,引用例1の記載から明らかなように,商品情報に基づいて値付ラベルを印字発行する機能(ラベル発行装置8)を必須の構成とするものである。

これに対し引用例2(特開平7-334758号公報,発明の名称「POSレジスター」,出願人日本電気情報サービス株式会社,公開日平成7年12月22日。甲2),引用例3(特開平5-73773号公報,発明の名称「商品管理装置」,出願人株式会社日立製作所,公開日平成5年3月26日。甲3)に記載のものは,商品登録を行うPOSレジスターあるいはPOS端末装置に関するものであって,「POSシステム」に相当する。POSシステムは,引用例2,引用例3の記載から明らかなように,バーコードを読み取り,商品情報を用いて商品登録を行う機能を必須の構成とするものである。

したがって,値付システムとPOSシステムは,商品情報の利用の仕方が異なっており,値付ラベルを発行するか商品登録を行うかの利用局面が異なるものである。そのため,値付システムは,値付ラベルの印字発行機能を備える一方,商品登録機能は備えず,POSシステムは,商品登録機能を備える一方,値付ラベルの印字発行機能は備えない。このように,値付システムとPOSシステムは,主要な構成要素に顕著な差異を有するものであるから,その技術分野が異なるというべきであり,これらを組み合わせる動機付けがない。

それにもかかわらず,審決は「POSシステムなどの値付システムの分野において」と両者を区別せずに同一視し,引用発明(引用例1)に引用例2,引用例3記載の周知技術を適用することが当業者であれば容易であると判断した。しかし,値付システムとPOSシステムの技術分野は異なり,組合せの動機付けがないのであるから,周知技術を適用して容易想到であるとした審決の判断は誤りである。

エ 取消事由4(相違点についての判断の誤り-その2)

審決は,本願補正発明と引用発明との相違点についての判断において,「…一般に,正しい荷姿の画像情報を表示することにより,作業者に正しい位置と向きなど,所望の荷姿を指示することも,従来周知の技術的事項である(例えば,特開平5-61878号公報,特開平7-24673号公報等参照)。」(9頁32行~35行)として,容易想到であるとした。

確かに,特開平5-61878号公報(甲4,発明の名称「生産管理情報処理方式」,出願人日本精工株式会社,公開日平成5年3月12日,以下「周知例1」という。)及び特開平7-24673号公報(甲5,発明の名称「作業指示支援システム」,出願人東芝エンジニアリング株式会社,公開日平成7年1月27日,以下「周知例2」という。)には,イメージデータを含んだ工程指示書(周知例1の段落【0011】・【0019】,【図5】)や作業指示図(周知例2の段落【0035】,【図5】)を画像表示することが記載されている。しかしながら,周知例1及び周知例2は,機械製品等の製造組立て工程に関連するものであって,本願補正発明や引用発明のような値付システムとは技術分野がかけ離れている。値付システムの当業者が,周知例1や周知例2のような機械製品等の製造組立て分野における周知技術までも熟知しており,それらの技術を応用するのは容易である,とする根拠はない。

審決は,引用発明に周知例1や周知例2の技術を適用することが当業者であれば容易であると判断しているが,上記のように,値付システムと機械製品等の製造組立てとの技術分野は異なり,組合せの動機付けがないから,この周知技術を適用して相違点の構成につき容易想到であるとした審決の判断は誤りである。

オ 取消事由5(相違点についての判断の誤り-その3)

審決は,「…引用発明に,上記のような従来周知の技術手段を適用して,相違点に係る本願補正発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。」と判断した(9頁末行~10頁2行)。

しかし,引用発明1に引用例2,3及び周知技術を組み合わせたとしても,以下のとおり,本願補正発明の構成は得られない。

すなわち,引用発明は,審決が認定したとおり,「商品の商品値付作業情報を表示」するものである。しかしながら,上記アのとおり,この商品値付作業情報には値付ラベルは含まれないから,引用発明において値付ラベルは表示されない。なお,引用発明が記載されている引用例1(甲1)には,商品値付作業情報に加えて商品(品名)も表示されることが記載されている(段落【0026】,【図4】)が,商品(品名)が値付ラベルと異なるのは明らかである。このように,引用発明は,値付ラベルを表示するものではない。

一方,引用例2(甲2)及び引用例3(甲3)は,審決が認定したとおり「画像情報を用いて商品の表示を行う」(9頁28行~29行)ものであるに過ぎない(引用例2の段落【0007】,【0009】,引用例3の段落【0016】,【0029】,【図5】,【図6】)。

したがって,仮に引用発明に引用例2及び引用例3の上記技術的事項を適用したとしても,画像による表示がなされることになるのは,商品(品名)か,それに加えて商品値付作業情報までに止まり,もともと引用発明において表示されていない値付ラベルや,まして,値付ラベルが貼り付けられた商品が,画像によって表示されることにはならない。

具体例を用いて説明すれば,引用発明において,表示画面には品名「さんま」,添え物「菊」,及びPOPシール「特売品」が文字により表示されているが,この表示画面に「画像情報を用いて商品の表示を行う」技術(引用例2及び引用例3)を適用したとしても,品名「さんま」の文字表示に代えて,商品である「さんま」の画像が表示されることになるにすぎない。また,表示画面に表示されている「菊」や「特売品」の文字は商品を示す文字ではないが,「画像情報を用いて商品の表示を行う」技術を適用した時,せいぜい,これらの文字に代えて,菊の画像や特売品シールの画像を表示することを想到できるだけである。

このように,引用発明と引用例2及び引用例3との組合せからは,商品(さんま)や商品値付作業情報(菊,特売品)を画像で表示する構成が得られるのみであって,商品(さんま)に値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成を導くことはできない。

また,周知例1及び周知例2が,審決のいうように「正しい荷姿の画像情報を表示することにより,作業者に正しい位置と向きなど,所望の荷姿を指示する」ものであったとしても,これらは機械製品等の製造組立てという引用発明から極端に掛け離れた技術を示すに過ぎず,値付ラベルを表示することを示唆するものではない。よって,同様に,引用発明と引用例2及び引用例3との組合せにさらに周知例1及び周知例2を組み合わせたとしても,商品に値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成を導くことはできない。

したがって,商品に値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成が導かれないのであるから,商品に正しい位置と向きで値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成も導かれないのは明らかである。

引用発明は,商品に値付ラベルを貼付ける値付作業に伴う付属作業の案内指示を目的としたものである(引用例1〔甲1〕の段落【0005】,【0006】)ため,商品の「さんま」に貼り付けるべき値付ラベル自体を,文字であるにしろ画像であるにしろ,表示画面に表示する必要性は全くない。そのため,商品の「さんま」に値付ラベルが(特に,正しい位置と向きで)貼り付けられた画像を表示すること,すなわち,本願補正発明のように正しい位置と向きでラベルが貼り付けられた商品の画像を表示することは,引用発明に引用例2,引用例3,周知例1,周知例2を適用することによっては想到し得ないというべきである。

このように引用発明が値付ラベルの表示を意図したものでない以上,本願補正発明のように正しい位置と向きでラベルが貼り付けられた商品の画像を表示する構成を,当業者が容易に想到できたというためには,少なくとも,値付ラベルの表示について明示的に言及した引例が提示されなければならない。にもかかわらず,審決は,何ら値付ラベルの表示について言及していない引用例2,引用例3,周知例1,周知例2のみを引用して進歩性の判断を行っている。したがって,審決は,適切な手順を踏むことなくなされたものであって,その過程には重大な違法性がある。

また,本願補正発明は,「『正しい位置と向きで』ラベルが貼り付けられた商品の画像を表示する」ことを特徴とするものである。すなわち,本願補正発明は,ラベルを「正しい位置と向きで」貼り付けるための指示を行う点に,一つの技術的特徴が存在している。これに対し,引用発明,引用例2,引用例3,周知例1,周知例2には,そもそも,ラベルが「正しい位置と向きで」貼り付けられるように指示を行うことは,その指示が画像によるものであるか否かを問わず,一切記載されていない。

にもかかわらず審決は,値付システムとは技術分野の全く異なる周知例1や周知例2を示しただけで,直ちに本願補正発明の上記技術的特徴にかかる構成は当業者が容易に想到し得たと判断したが,ラベルが「正しい位置と向きで」貼り付けられるように指示を行うことが記載されていない各引用例や各周知例からは,いかようにしても,ラベルを「正しい位置と向きで」貼り付けるための指示を行う本願補正発明の構成を導くことはできない。

したがって,審決は,この点の判断を誤ったものであり,違法である。

カ 取消事由6(本願発明の認定,及び対比・判断についての誤り)

仮に本件補正が不適法なものとして補正却下されたとしても,本願発明は,以下の理由により,引用発明及び周知の技術手段(引用例2,引用例3,周知例1,周知例2)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,進歩性を有する。

すなわち,本願発明は,本願補正発明から,「ラベル発行の際に」という構成のみを省いたものである。そうすると,本願補正発明のようにラベルが貼り付けられた商品の画像を表示する構成は本願発明にも含まれており,当該構成は,上記オにおいて述べたように,引用発明及び周知の技術手段(引用例2,引用例3,周知例1,周知例2)から当業者が容易に想到することができないものであるから,本願発明は,本願補正発明と同様,引用発明及び周知の技術手段(引用例2,引用例3,周知例1,周知例2)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2  請求原因に対する認否

請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,同(4)は争う。

3  被告の反論

審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。

(1)  取消事由1に対し

ア 引用例1(甲1)には,審決も摘記するように下記の記載がある。

「【0017】 また,キーボード4からのキー入力が品番呼出しのための入力ならば,PLUメモリ3aからそのキー入力された品番に対応する品名,値段,…,商品値付作業情報,…等のPLUデータを呼出し(付属作業情報呼出手段),この呼出したPLUデータに基づいて,商品値付作業情報のデータエリア31から呼出した添え物及びシール等の商品値付作業情報を表示器6に表示出力する(付属作業情報出力手段)。」

「【0019】 このPLU処理が終了すると,図示しないラベル発行キーの入力などにより,前記CPU1は,PLUメモリ3aから呼出したPLUデータに基づいて,前記ラベル発行装置8に値付ラベルの発行を指示する。このラベル発行装置8は,CPU1から転送されたデータに基づいて値付ラベルを印字して発行するようになっている。」

「【0022】 また,キーボード4からのキー入力が,品番呼出しのための入力ならば,PLUメモリ3aから品名,値段,…,商品値付作業情報,…等が各種PLUデータが呼出される。さらに,呼出したPLUデータに基づいて,呼出した商品値付作業情報の添え物及びシール等のデータが,表示器6に表示出力される。

【0023】 一方,ラベル発行キーが押下されると,呼出されたPLUデータに基づいて,ラベル発行装置8から値付ラベルが印字発行される。」

「【0026】 すなわち,表示画面の左上には,登録モードであることを示す「登録」という文字が表示され,さらに,中央上段の枠の中には,「品名」として「さんま」という文字が表示されている。中央下段の枠の中には,「値段」として「350円」という文字が表示されている。この中央下段の枠の下部には,「添え物:菊」,「POPシール:特売品」という文字が表示されている。なお,POP1は,他のファイルにより「特売品」というデータと対応するようになっている。

【0027】 従って,値付作業者は,ラベル発行装置8から発行された値付ラベルを,商品「さんま」に貼付ける値付作業を行う時には,表示器6の表示により,添え物として菊を添え,また,「特売品」という文字が印刷されているPOPシール(POP1)を値付ラベルと共に貼付けることを知る。」

イ 以上の記載から,表示器6に表示されるのはPLUデータに基づく「品名,値段,…,商品値付作業情報,…等」であり,PLUデータに基づいてラベルを印字発行する点,及び図4に表示画面の例として品名,値段,添え物,POPシールが表示されている点を参酌すれば,表示器に表示されるデータは単なる品名ではなく,ラベルを貼付すべき商品の文字情報であり,画像情報ではないものの商品の情報が表示されていることに他ならない。

また,表示器に表示される「添え物:菊」「POPシール:特売品」といった「付属作業情報」は,上記【0027】の記載から明らかなように,PLUデータに基づいて印字発行された値付ラベルを貼付する際に行われる作業を指示するための表示であり,この付属作業情報が表示されているということは,値付ラベルを貼付すべき商品が,付属作業(例えば菊の添付,POPシールの貼付)を必要とする商品であるという商品に関する情報を表示したものである。

よって,引用発明の表示器に表示される情報は,ラベルが貼り付けられることを前提とした商品に関する情報であることを踏まえ,「ラベルが貼り付けられた商品の情報」と審決で述べたものであり,さらにこれらの情報が商品情報記憶手段に記憶されているから,引用発明が「前記商品情報記憶手段は,商品ごとに,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」すると認定した審決に誤りはない。

ウ 原告は,「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とはラベルが貼り付けられた状態での商品の画像に関する情報を意味する旨主張するが,審決が認定した「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とはそのような細かい特定した表記ではなく,上位の概念でとらえた表現であるから,原告の主張は失当である。

仮に原告主張のように「ラベルが貼り付けられた商品の情報」と解釈したとしても,審決は「3-3.相違点の判断」において,画像情報を用いた表示とすることと,その際に所望の荷姿とすることについては,相違点と認識してその容易想到性について判断しているから,実質的に引用発明の認定を誤っているものではなく,審決の結論に影響するものでもない。

(2)  取消事由2に対し

ア 「ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」するとした点

上記(1)で検討したとおり,引用発明においても,「ラベルが貼り付けられた商品の情報」を記憶しているので,この点を一致点とした審決の認定に誤りはない。

なお,原告は,「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とはラベルが貼り付けられた状態での商品の画像に関する情報を意味するという前提で,対比の誤りを主張しているようでもあるが,仮にそのように解したとしても,審決は「3-3.相違点の判断」において,画像情報を用いた表示とすることと,その際に所望の荷姿とすることについては,実質的に相違点と認識して,その容易想到性について判断しているのであるから,審決は対比を誤っているものではない。

イ 「商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示する」とした点

引用発明は,「商品の商品値付作業情報を表示し,作業員に指示する」ものであり,表示される「商品値付作業情報」は,添え物,シール等の付属作業情報であるばかりでなく,商品自体が付属作業を必要とするものであるという情報を文字表示するものであるから,審決は「商品を表示し」と表現したものである。

また,引用例1(甲1)の段落【0026】【0027】及び【図4】を参酌すれば,引用発明も「さんま」という商品名を表示しており,この点からも引用発明は「商品を表示」しているものである。

本願補正発明は,「商品の画像を表示し,ラベル貼付作業者にラベル貼付位置と向きを画像により指示する」ものであるのに対して,引用発明は商品の画像による表示は行っていないので,原告はその点を指摘しているのかもしれない。しかしながら,審決は一致点として「ラベル貼付位置と向きを画像により指示する」ものとまでは認定していない。すなわち,審決は画像による指示や,文字による指示を含めて「ラベル貼付作業者に指示する」と上位概念で認定しているにすぎず,その指示の手段としての表示についても,画像による表示や,文字による表示を含むものであるから「商品を表示し」と表記したのである。

また,審決は,相違点として「本願補正発明は,正しい位置と向きでラベル(値付ラベル)が貼り付けられた商品の画像情報に基づいて,ラベル貼付作業者(作業員)にラベル貼付位置と向きを画像により指示するのに対し,引用発明のものは,ラベル貼付作業者(作業員)に指示するための商品の情報が画像情報でない点。」を挙げている。

したがって,「商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示」することを一致点とした審決に誤りはなく,原告の主張は失当である。

(3)  取消事由3に対し

審決は,「一般に,POSシステムなどの値付システムの分野において,画像情報を用いて商品の表示を行うことは,引用例2及び引用例3に記載されているとおり,従来周知の技術的事項である(上記3-1(2)(g),同(3)(l)等参照)。」(9頁28行~31行)としており,「一般に」という前置きをおいた上で,周知技術の例として,画像情報を用いて商品の表示を行っている周知例を提示している。

そして,周知例として提示した引用例2(甲2)及び引用例3(甲3)はいずれも,記憶しておいた画像情報を表示することにより,情報確認の確実性を高める効果(引用例2,段落【0010】)や,表示内容を短時間で確認できたり(引用例3,段落【0052】)するものであり,画像情報を用いることにより,商品の確認が容易になる点で,本願補正発明と同様に画像情報の特性を利用したものである。

つまり,POSシステムと値付システムは同一の技術分野ではないものの,いずれも大量の商品データを一元管理するためにコンピュータシステムを用いたデータ管理を行う技術であり,画像情報の特性を利用することにより商品の確認が容易になることを考慮すれば,両システムは近接した技術分野であって,上記周知技術の適用に困難性はない。

また,この近接した分野の周知技術を引用発明に適用することを阻害する要因も見当たらず,作用効果も値付システム特有のものでもない。

審決の相違点の判断に誤りはない。

(4)  取消事由4に対し

審決は,「一般に,正しい荷姿の画像情報を表示することにより,作業者に正しい位置と向きなど,所望の荷姿を指示することも,従来周知の技術的事項である」(9頁下5行~下3行)としており,周知例1(甲4)及び周知例2(甲5)は,画像表示により正しい荷姿を表示することにより作業指示を行う周知例として,画像情報による作業指示を行う技術分野における一般的な技術水準を示すものである。

例えば周知例1(甲4)において,正しい位置と向きに十字テープを貼付した荷姿を画像情報として表示した統合作業指示書が記載されており(【図5】・【図6】),その作用効果は,誤作業を確実に防止する(段落【0021】)もので,確実にラベル貼付作業が行えるという本願補正発明の作用効果と同様である。

また,本願補正発明の「値付システム」は,値付けの対象となる製品に係る限定はなく,機械製品等を排除するものでもない。そして,その作用効果も「値付システム」特有のものではなく,作業者に所望の荷姿を指示できるという画像情報による作業指示が有する一般的な作用効果の域を出るものでもない。

さらに,画像情報を表示する際に,あえて正しくない荷姿の画像表示を表示することは合理的でない。

よって,画像情報による作業指示の特性を有する周知例として一般的な技術水準を示す文献を示し,引用発明の商品の情報を商品の画像情報に代えることにより本願補正発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであるとした審決の判断に誤りはない。

(5)  取消事由5に対し

ア 引用例1(甲1)には,「従って,値付作業者は,ラベル発行装置8から発行された値付ラベルを,商品「さんま」に貼付ける値付作業を行う時には,表示器6の表示により,添え物として菊を添え,また,「特売品」という文字が印刷されているPOPシール(POP1)を値付ラベルと共に貼付けることを知る。」(【0027】)と記載されており,その結果,「商品知識のない作業員にも,値付作業及びその値付け作業に伴って行われる添え物を添える作業及び値付けラベル以外のシールを貼る作業を行うことができる。」【(0029】)と記載されている。

つまり,引用発明において表示器に表示された商品の文字情報は,本願補正発明と同様に商品知識のない作業員にも,作業後の商品の状態が把握できる程度に表示されたものである。

そして,POPシールを貼付するという作業を指示するに際して,「正しい位置や向きに」POPシールを貼付することを念頭に置いていることは明らかである。

さらに,周知例1(甲4)において,正しい位置と向きに十字テープを貼付した荷姿を画像情報として表示した統合作業指示書が記載されている(【図5】・【図6】)ように,画像情報を表示する際に,あえて正しくない荷姿の画像表示を表示することは合理的でない。

確かに,商品の画像情報の方が文字情報より情報量が多いことは明らかであり,画像情報を表示すれば,作業後の荷姿を容易に把握できることは自明である。一方文字情報より画像情報の方が,システムに負荷がかかることもまた自明であり,表示する情報を文字情報とするか,画像情報にするかは,当業者が作業者の質・コスト等を考えて適宜選択する設計的事項にすぎない。

してみると,本願補正発明は,引用発明において,表示器に表示された文字情報を画像情報に代えたものにすぎず,一般的に記憶しておいた商品の画像情報を商品管理に用いること,作業を指示するために正しい荷姿の画像情報を表示することがともに周知技術(引用例2,引用例3,周知例1,周知例2)であることをかんがみれば,引用発明の商品の情報を商品の画像情報に代えることにより本願補正発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

そして,その作用効果も値付システム特有のものではなく,作業指示の際に商品の文字情報に代えて商品の画像情報を用いれば,当然に奏する効果にすぎない。

以上が,審決の相違点の判断についての趣旨であり,その判断に誤りはない。

イ 原告は「引用発明と引用例2及び引用例3との組合せからは,商品(さんま)や商品値付作業情報(菊,特売品)を画像で表示する構成が得られるのみであって,商品(さんま)に値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成を導くことはできない」と主張するが,審決は,引用発明と引用例1及び引用例3との組合せではなく,引用発明に周知の技術手段を適用して,本願補正発明が容易であると進歩性の判断をしたものである。仮に引用発明と引用例2及び引用例3との組合せを検討すると,正しい荷姿の画像表示により作業情報を指示する一般的な周知例1及び2(甲4,甲5)を踏まえれば,引用発明の文字情報に代えて,引用例2(甲2)及び引用例3(甲3)の商品の画像情報を表示して本願補正発明のような構成にすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

また原告は,各引用例及び各周知例にラベルが「正しい位置と向きで」貼り付けられるように指示を行うことが記載されていないとし,ラベルを正しい位置と向きで貼り付けることが技術的特徴である旨主張する。しかし,「ラベルが正しい位置と向きで貼り付けられるように指示」することが明記されてはいないものの,周知例1(甲4,【図5】・【図6】)において,正しい位置と向きに十字テープを貼付した荷姿を画像情報として表示した統合作業指示書が記載されているように,画像情報を表示する際に,正しい状態の荷姿の画像情報を表示することは当然の事項である。そして貼付作業を指示するに際しても,その貼付作業が正しい位置と向きで行われることを念頭に置いていることは明らかであり,本願補正発明も画像情報から読み取れる程度の「正しい位置と向きで」ラベルの貼り付けを指示しているにすぎない。

よって,本願補正発明の「正しい位置と向きで」ラベルの貼り付けを指示しているという技術的特徴は,一般的な画像情報が有する特性の域を出ず,表示する情報を,文字情報から画像情報に換えれば当然に奏する程度の効果にすぎない。

したがって,相違点の判断について,審決に誤りはない。

(6)  取消事由6に対し

上記の通り本件補正についての補正却下の決定に誤りはなく,審決が,平成18年2月1日付けの手続補正書(甲7)により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項に基づいて,その請求項1に記載された発明を「本願発明」と認定し,この「本願発明」を引用発明及び周知の技術手段(引用例2,引用例3,周知例1,周知例2〔甲2~5〕)に基づいて,対比・判断していることに,誤りはない。

また本願発明は,本願補正発明から,「ラベル発行の際に」という構成のみを省いたものである。そうすると,本願補正発明のようにラベルが貼り付けられた商品の画像を表示する構成は本願発明にも含まれており,当該構成は,引用発明及び周知の技術手段(引用例2,引用例3,周知例1,周知例2)から当業者が容易に想到することができたものであるから,本願発明は,本願補正発明と同様,引用発明及び周知の技術手段(引用例2,引用例3,周知例1,周知例2)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,審決に誤りはない。

第4当裁判所の判断

1  請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。

そこで,以下原告の主張する取消事由について判断する。

2  取消事由1(引用発明認定の誤り)について

(1)  原告は,引用発明には,「…商品情報記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」することについては記載されていないから,審決の引用発明の内容の認定は誤りである旨主張する。

ア 引用発明の記載された引用例1(甲1)には,以下の記載がある。

(ア) 特許請求の範囲

・ 「【請求項1】 各商品毎に品名,単価等の商品情報を記憶した商品情報記憶手段を備え,商品の指定入力により前記商品情報記憶手段から前記商品に対応する商品情報を呼出し,この呼出した商品情報に基づいて値付ラベルを印字発行するラベルプリンタにおいて,発行した前記値付ラベルを商品に貼付ける値付作業に付随して行われる付属作業の情報が各商品毎に記憶された付属作業情報記憶手段と,商品の指定入力により前記付属作業情報記憶手段から前記商品に対応する付属作業情報を呼出す付属作業情報呼出手段と,この付属作業情報呼出手段により呼出された付属作業情報を出力する付属作業情報出力手段とを設けたことを特徴とするラベルプリンタ。」

(イ) 発明の詳細な説明

・ 「【産業上の利用分野】 この発明は,例えばPLU(price look up)ファイルを備え,このPLUファイルから呼出された商品情報に基づいて値付ラベルを印字発行するラベルプリンタに関する。」(段落【0001】)

・ 「従来のラベルプリンタでは,品番をキーボードのテンキー等を用いて入力すると,その品番に対応してPLUファイルに記憶された品名,単価,有効期間等の商品情報を呼出し,この呼出した商品情報に基づいて,品名,単価,内容量,値段等の値付情報が印字された値付ラベルを発行する。」(段落【0003】)

・ 「【発明が解決しようとする課題】 しかし,商品によっては商品を陳列場所に陳列するためには,商品に値付ラベルを貼付ける値付作業に伴って,商品に添え物,例えば葉蘭や菊の花等を添え,「お買得」や「特売品」等の商品宣伝用のPOPシールを貼付ける等の付属作業を行う必要がある。しかし,この付属作業は商品毎に作業内容が異なり,商品知識のある作業員しかできないという問題があった。」(段落【0005】)

・ 「そこでこの発明は,値付ラベルを貼付ける値付作業に伴って行なわれる付属作業の案内指示を行うことができ,商品知識のない作業員にも値付作業及び付属作業を行うことができるようにしたラベルプリンタを提供することを目的とする。」(段落【0006】)

・ 「【課題を解決するための手段】 この発明は,各商品毎に品名,単価等の商品情報を記憶した商品情報記憶手段を備え,商品の指定入力により商品情報記憶手段から商品に対応する商品情報を呼出し,この呼出した商品情報に基づいて値付ラベルを印字発行するラベルプリンタにおいて,発行した値付ラベルを商品に貼付ける値付作業に付随して行われる付属作業の情報が各商品毎に記憶された付属作業情報記憶手段と,商品の指定入力により付属作業情報記憶手段から商品に対応する付属作業情報を呼出す付属作業情報呼出手段と,この付属作業情報呼出手段により呼出された付属作業情報を出力する付属作業情報出力手段とを設けたものである。」(段落【0007】)

・ 「【作用】 このような構成の本発明において,商品の指定入力があると,商品情報記憶手段に記憶された商品情報に基づき値付ラベルが発行される。そして,付属作業情報呼出手段により,その商品に対応する付属作業情報が,付属作業情報記憶手段から呼出される。この呼出された付属作業情報は,付属作業情報出力手段により出力される。」(段落【0008】)

・ 「前記RAM3には,商品情報記憶手段としてPLU(price look up)メモリ3aが形成され,このPLUメモリ3aには,図2に示すように,品番,品名,値段,…,商品値付作業情報等のPLUデータ(商品情報)が記憶された各種データエリアが形成されている。」(段落【0012】)

・ 「付属作業情報記憶手段としての前記商品値付作業情報のデータエリア31には,さらに添え物,シール等の商品値付作業情報(付属作業情報)が記憶されたデータエリアが形成されている。」(段落【0013】)

・ 「また,キーボード4からのキー入力が品番呼出しのための入力ならば,PLUメモリ3aからそのキー入力された品番に対応する品名,値段,…,商品値付作業情報,…等のPLUデータを呼出し(付属作業情報呼出手段),この呼出したPLUデータに基づいて,商品値付作業情報のデータエリア31から呼出した添え物及びシール等の商品値付作業情報を表示器6に表示出力する(付属作業情報出力手段)。」(段落【0017】)

・ 「この商品値付作業情報の表示器6への表示出力を終了すると,このPLU処理を終了するようになっている。」(段落【0018】)

・ 「このPLU処理が終了すると,図示しないラベル発行キーの入力などにより,前記CPU1は,PLUメモリ3aから呼出したPLUデータに基づいて,前記ラベル発行装置8に値付ラベルの発行を指示する。このラベル発行装置8は,CPU1から転送されたデータに基づいて値付ラベルを印字して発行するようになっている。」(段落【0019】)

・ 「また,キーボード4からのキー入力が,品番呼出しのための入力ならば,PLUメモリ3aから品名,値段,…,商品値付作業情報,…等が各種PLUデータが呼出される。さらに,呼出したPLUデータに基づいて,呼出した商品値付作業情報の添え物及びシール等のデータが,表示器6に表示出力される。」(段落【0022】)

・ 「一方,ラベル発行キーが押下されると,呼出されたPLUデータに基づいて,ラベル発行装置8から値付ラベルが印字発行される。」(段落【0023】)

・ 「すなわち,表示画面の左上には,登録モードであることを示す「登録」という文字が表示され,さらに,中央上段の枠の中には,「品名」として「さんま」という文字が表示されている。中央下段の枠の中には,「値段」として「350円」という文字が表示されている。この中央下段の枠の下部には,「添え物:菊」,「POPシール:特売品」という文字が表示されている。なお,POP1は,他のファイルにより「特売品」というデータと対応するようになっている。」(段落【0026】)

・ 「従って,値付作業者は,ラベル発行装置8から発行された値付ラベルを,商品「さんま」に貼付ける値付作業を行う時には,表示器6の表示により,添え物として菊を添え,また,「特売品」という文字が印刷されているPOPシール(POP1)を値付ラベルと共に貼付けることを知る。」(段落【0027】)

・ 「このように本実施例によれば,PLUメモリ3aのデータエリアに添え物及びシールの商品値付作業情報(付属作業情報)を記憶したデータエリア31を設け,キーボード4からの品番入力により,PLUメモリ31aからPLUデータを呼出すときに,商品値付作業情報のデータを含むPLUデータを呼出し,この呼出した商品値付作業情報の添え物及びシールのデータを表示器6に表示出力することにより,値付ラベルを貼付ける値付作業に伴って行われる添え物を添える作業及び値付ラベル以外のシールを貼付ける作業を案内指示することができる。」(段落【0028】)

・ 「従って,商品知識のない作業員にも,値付作業及びその値付け作業に伴って行われる添え物を添える作業及び値付けラベル以外のシールを貼付ける作業を行うことができる。」(段落【0029】)

・ 「【発明の効果】 以上詳述したようにこの発明によれば,値付ラベルを貼付ける値付作業に伴って行なわれる付属作業の案内指示を行うことができ,商品知識のない作業員にも値付作業及び付属作業を行うことができるようにしたラベルプリンタを提供できる。」(段落【0035】)

(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)

・ 【図1】 (この発明の一実施例のラベルプリンタの概略の回路構成を示すブロック図。)

file_2.jpgee PLU 4e9 Rau | | ‘ba an RORe 10 q—jaste-s] | Ba bo o~_ane] | = 8・ 【図2】 (同実施例のPLUメモリの構成を示す図。)

file_3.jpg31 BGiGH eR aw | Ym [POP | gu |POP2・ 【図4】 (同実施例の表示器の表示画面の一例を示す図。)

file_4.jpglo o BAR iE 350 y ADE POPY—»: axe,(エ) 上記(ア)~(ウ)によれば,引用発明には,商品毎に品名,単価等の商品情報が記憶されているところ,この商品情報を呼び出し,これに基づき値付ラベルを印字発行するラベルプリンタにおいて(請求項1),商品情報記憶手段であるPLUメモリ3aには「品番」・「品名」・「値段」・「商品値付作業情報」等のPLUデータ(商品情報)が記憶されている(段落【0012】)。このうち商品値付作業情報は「添え物」・「シール」等の付属作業情報から成っている(段落【0013】)。

引用発明において,「品番」・「品名」・「値段」・「添え物」・「シール」の情報は,例えば「0001」・「さんま」・「350」・「菊」・「POP1」,「0002」・「あじ」・「250」・「タレ」・「POP2」等の内容で構成され,これが商品情報記憶手段に記憶されているところ(【図2】),品番がキー入力されると上記PLUデータが呼び出され,表示器6に商品情報が表示出力されることになるが(段落【0017】),その場合,「登録」と左上に表示され,さらに「品名 さんま」,「値段 350円」,「添え物:菊」,「POPシール:特売品」等の表示がされる(【図4】)。そして,値付ラベルの発行が指示される(段落【0019】)。

こうして,PLUデータを呼び出す際に,商品値付作業情報(上記のとおり添え物,シール等の情報)のデータを含むPLUデータが呼び出されてこれが表示器6に表示され,値付作業に伴って行われる添え物を添える作業(上記「さんま」の例であれば「菊」を添えること),値付ラベル以外のシールを貼付ける作業(同じく「特売品」のシールを貼ること)を案内指示することができる(段落【0028】)。

これにより,商品知識のない作業員にも値付作業,及びこれに伴う付属作業を行うことができるようにするものである(段落【0006】・【0029】・【0035】)。

そうすると,引用発明においては,値付ラベルが貼り付けられる商品の情報(品番・品名・値段・商品値付作業情報)がPLUメモリに記憶され,これらを呼び出すことにより,その文字情報(「0001」・「さんま」・「350」)が表示画面に表示されるものである。

イ 上記によれば,審決が引用発明につき,「商品情報記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」するとした点,及びその他引用発明の内容の認定に誤りはない。

なお,審決は,上記のとおり,引用発明につき「商品情報記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶」すると認定したが,審決は上記第3,1(3)イのとおり,本願補正発明は正しい位置と向きでラベルが貼り付けられた商品の画像情報に基づき作業員に対する指示がされるのに対し,引用発明では指示するための商品の情報が画像情報でない点を相違点と認定し,判断している。

そうすると,審決が認定した引用発明の内容にいう「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とは,ラベルが貼り付けられる商品の情報と解することができるから,審決の認定に誤りはないというべきである。

(2)ア  原告は,引用発明において記憶されている商品値付作業情報は,添え物,シール等の付属作業情報のことであり(段落【0028】),ラベルが貼り付けられた商品の情報とは異なると主張する。

しかし,上記(1)ア(エ)のとおり,引用発明においては,添え物,シール等の付属作業情報のみならず,品番,品名,値段等,値付ラベルを貼る商品自体の情報がPLUメモリに記憶されているものと認められるから,原告の上記主張は採用することができない。

イ  次に原告は,「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とは,実際にラベルが貼り付けられた状態を表す情報のことをいい,これが商品情報記憶手段に記憶されていることは引用例1(甲1)には記載されていないと主張する。

しかし,審決が認定した「ラベルが貼り付けられた商品の情報」とはラベルが貼り付けられる商品の情報であると解されること,商品情報記憶手段に記憶され表示画面に表示される商品の情報は,引用発明では実際のラベルが貼り付けられた状態の画像情報でない点については,審決は本願補正発明との相違点と認定し判断していることについて,上記(1)イのとおりである(なお,その判断に誤りがないことも後記のとおりである)から,原告の上記主張は採用することができない。

3  取消事由2(一致点認定の誤り・相違点の看過)について

(1)  原告は,①取消事由1で主張するとおり,引用発明はラベルが貼り付けられた商品の情報を記憶するとの構成を有しない,②引用発明は,商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示するとの構成を有しないから,審決がこの点を一致点と認定したのは誤りであり,これらはいずれも相違点とすべきであると主張する。

ア しかし,上記2のとおり,引用発明においてもラベルが貼り付けられる商品の情報を記憶するとの構成を有すると認められるものである。

イ 加えて,上記2(1)ア(エ)によれば,引用発明においても,商品の添え物や商品宣伝等の付属作業は商品毎に作業内容が異なるところ,作業の案内指示を行うことで商品知識のない作業員にも値付作業,付属作業を行うことができるようにするとの課題のもと(段落【0005】・【0006】),値付作業者は,表示器に表示された「さんま」等の商品の表示により,その商品に添えるべき物として「菊」を添え,また「特売品」の文字が印刷されたPOPシールを値付ラベルと共に貼付けることになる(段落【0027】)。

そうすると,引用発明も,表示器に商品を表示し,ラベル貼付作業者に作業内容を指示するとの構成を有するものと認められる。

上記によれば,審決の引用発明の認定の誤りをもとに,一致点認定の誤り・相違点の看過をいう原告の上記主張は採用することはできない。

(2)  なお念のため,本願補正発明と引用発明との一致点の認定につき,検討する。

ア 本願補正発明の記載された明細書(甲7〔段落【0005】・【0012】・【0055】・【0057】〕,甲8〔特許請求の範囲,段落【0006】〕,甲16〔特許願〕)には,以下の記載がある。

(ア) 特許請求の範囲

・ 「【請求項1】 商品を指定する指定手段と,商品毎に印字情報を記憶する記憶手段と,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の印字情報に基づいて,ラベルを発行するラベル発行手段とからなる値付システムにおいて,

画像表示手段を具備し,

前記記憶手段は,商品毎に,正しい位置と向きでラベルが貼り付けられた商品の画像情報も記憶し,

前記画像表示手段は,ラベル発行の際に,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の画像情報に基づいて,該商品の画像を表示し,ラベル貼付作業者にラベル貼付位置と向きを画像により指示する

ことを特徴とする値付システム。」(甲8)

(イ) 発明の詳細な説明

・ 「【発明の属する技術分野】 この発明は,指定された商品の印字情報に基づいて,該商品のラベルを発行する値付システムに関する。」(甲16,段落【0001】)

・ 「【発明が解決しようとする課題】 ところで,コンビニエンスストア向けに弁当,惣菜等の商品を供給しているベンダーでは,深夜や早朝でも絶え間なく商品の供給を行えるように3交代制による24時間勤務を実施しているところが多い。そのため,作業(弁当の盛り付けや蓋の装着,容器への挿入,包装等)の大部分をパートやアルバイトに頼っており,しかも,該作業者の多くは外国人となっている。」(甲16,段落【0003】)

・ 「このため,上述した従来の値付システムのように,これからラベルの貼り付けを行おうとしている商品と,読み出した印字データの商品とが一致しているか否かの確認を,コンソールの表示部に表示された商品の品名,単価等の文字によって行うことは,商品名を知らない人や日本語を読めない人にとっては不可能であり,商品と一致しないラベルを貼り付けてしまう,という問題があった。」(甲16,段落【0004】)

・ 「この発明は,このような背景の下になされたもので,作業に不慣れな人や日本語の分からない外国人でも容易かつ確実に正しい位置と向きでラベルを貼り付ける作業を行うことができる値付システムを提供することを目的とする。」(甲7,段落【0005】)

・ 「【発明の実施の形態】 以下,図面を参照して,この発明の実施形態について説明する。図1は,この発明の一実施形態による値付システムの構成例を示すシステム概要図である。この図に示すシステムは,弁当や惣菜等を盛り付けて商品とするための加工と値付を行うベンダー向けシステムである。」(甲16,段落【0013】)

・ 「コンピュータ1は,OSとしてMS-WINDOWS(登録商標)が稼働する市販のパーソナルコンピュータ(以下,パソコンと略称する)である。本実施形態では,後述する画像データおよび音声データの入力,ファイル作成,データの読み出し等に,上記MS-WINDOWS上で利用可能なカラーイメージスキャナ用の市販のドライバーソフトおよびMS-WINDOWSが備える画像表示機能とサウンドレコーダ機能とを利用する。」(甲16,段落【0014】)

・ 「コンピュータ1には,画像データを入力するためのカラーイメージスキャナ1a(又は,デジタルカメラ)と,音声データを入力するためのマイク1bとが接続されている。また,コンピュータ1は,その図示しない大容量記憶装置(一例として,ハードディスクとする)内に,商品ファイル(図3参照),音声-ラベラーテーブル(図4参照),画像ファイル(図5参照)および音声ファイル(図6参照)を有している。これらのファイルおよびテーブルの詳細説明は,各図面を参照しながら後述する。」(甲16,段落【0015】)

・ 「上記ラベル貼付作業現場の中央には,一人または複数の作業者が作業(弁当や惣菜等の盛り付けと蓋の装着,容器への挿入,包装)を行う作業コンベア4がある。」(甲16,段落【0018】)

・ 「パネコン1(本明細書では,パネルコンピュータを「パネコン」と略称する)・3-1は,上記ラベル貼付作業現場において,その表示が全ての作業者にとって見易い位置に設置されている。パネコン1・3-1は,カラー画像表示機能(カラーディスプレイ)および音声出力機能(スピーカ)を有する市販のパソコンであり,イーサネットを介して画像データおよび音声データを受信し,該データが示す画像の表示および音声の出力を行う。」(甲16,段落【0020】)

・ 「次に,図3~図6を参照して,コンピュータ1が有する各種ファイルおよびテーブルについて説明する。図3は,本実施形態による商品ファイルの構成例を示す説明図である。この図に示すように,商品ファイルは,商品毎に,ラベルの印字に必要な印字データ(商品コード,商品名,単価等)と,画像データ番号と,2種類の音声データ番号(第1音声データ番号および第2音声データ番号)と,コメントを記憶している。この図において,コメントは,該商品の加工作業またはラベル貼付作業における注意事項である。」(甲16,段落【0021】)

・ 「【発明の効果】 以上説明したように,この発明によれば,これからラベルの貼り付けを行おうとしている商品と,読み出した印字情報の商品とが一致しているか否かの確認を,作業に不慣れな人や日本語の分からない外国人でも,容易かつ確実に行うことができる。さらに,ラベル貼付作業者に対してラベル貼付位置と向きを画像によって指示できるので,作業を早く確実に行うことができる。

また,データ量の大きい画像情報や音声情報は,複数のラベラーの分を共用してコンピュータに記憶するので,該画像情報や音声情報を記憶する記憶媒体のコストを低く抑えることができる。」(甲7,段落【0055】)

(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である。いずれも甲16)

・ 【図2】 (同実施形態において,ラベル貼付作業現場におけるラベラーとパネコンとの配置例を示す配置図である。)

file_5.jpgBSR 2+・ 【図3】 (同実施形態による商品ファイルの構成例を示す説明図である。)

file_6.jpgaay! eee me | sie | eee moot) Bee |e) |e) eels ae 123 3 fe geo Ls gon leas gic eal・ 【図12】 (同実施形態において,パネコンに表示される画像の一例を示す説明図である。)

file_7.jpgBA Wekea-F Xxx KR B meet Shee ErEas Bren) 1) SROR RRM i TEIS1EG aan Et EEL AnA ASCH. HY ak ES BEHLELS 5. 300M 2) SERV SE FCMD ELD 5. 3) Sidi Bic WOU ET.・ 【図13】 (同実施形態において,パネコンに表示される画像の一例を示す説明図である。)

file_8.jpgEtea 95712706 | Wyse F001 [xxxxe—F Bae [coparey <7] Sees) 800 EE gamsere(エ) 上記(ア)~(ウ)によれば,本願補正発明は,商品を指定する指定手段と,商品毎に印字情報を記憶する記憶手段,印字情報を基にラベルを発行するラベル発行手段からなる値付システムにおいて(請求項1),指定手段により商品が指定されると,商品ファイルに商品毎に記憶された画像データ番号により(段落【0021】),あらかじめ記憶された作業員に対する指示事項(コメント),及び正しい位置と向きでラベルが貼り付けられた商品の画像情報である作業完成後の商品の状態が画像表示されて作業員に指示がされるものを含むものである(【図2】・【図3】)。

こうした完成後の商品の画像表示により作業員に作業内容を指示することで,日本語を読めない作業員等も正確な作業を行えるようにするものである(段落【0005】・【0055】)。

イ 上記によれば,審決が引用発明と本願補正発明との一致点につき,いずれも,「商品を指定する指定手段と,商品毎に印字情報を記憶する記憶手段と,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の印字情報に基づいて,ラベルを発行するラベル発行手段とからなる値付システムにおいて,表示手段を具備し,前記記憶手段は,商品毎に,ラベルが貼り付けられた商品の情報も記憶し,前記表示手段は,ラベル発行の際に,前記指定手段によって商品が指定されると,前記記憶手段に記憶されている該商品の情報に基づいて,該商品を表示し,ラベル貼付作業者に指示することを特徴とする値付システム。」であると認定したことに誤りはない。

4  取消事由3(相違点についての判断の誤り-その1)について

(1)  原告は,審決が「一般に,POSシステムなどの値付システムの分野において,画像情報を用いて商品の表示を行うことは,引用例2及び引用例3に記載されているとおり,従来周知の技術的事項である」(9頁28行~30行)としたのに対し,引用例2,引用例3のPOSシステムは,バーコードを読み取り,商品情報を用いて商品登録を行う機能を必須の構成とするものであり,本願補正発明の値付システムとは,商品情報の利用の仕方が異なり,技術分野が異なるから,組み合わせる動機付けがないと主張する。

ア 引用例2(特開平7-334758号公報,発明の名称「POSレジスター」,出願人日本電気情報サービス株式会社,公開日平成7年12月22日。甲2)には,以下の記載がある。

(ア) 特許請求の範囲

・ 「【請求項1】 商品のバーコードを読み取るスキャナ部と,コマンドの入力するキー部と,商品の音声データを記憶する音声記憶手段と,商品の画像データを記憶する画像記憶手段と,商品の音声を発生させる音声発生手段と,商品の画像と取引情報を表示させる画像表示手段と,これら各要素を制御する制御部とを具備することを特徴とするPOSレジスター。」

(イ) 発明の詳細な説明

・ 「【産業上の利用分野】 本発明は,POSレジスターに関し,特に,バーコードをスキャンによって読み取ることにより登録商品を判別する方式のPOSレジスターに関する。」(段落【0001】)

・ 「【従来の技術】 従来,この種のPOSレジスターは,商品のバーコードを読み取り,商品の名称,価格の検索を行ない,商品名,価格を音声として発生させるとともに商品名,価格を文字として画面に表示するのに用いられている。」(段落【0002】)

・ 「【発明が解決しようとする課題】 上述した従来のPOSレジスターは不注意により商品とその商品に付けられたラベルが異なり,実際の商品と異なった商品名,価格が表示された場合や,商品のバーコードが読み取りにくい場合に何度もスキャンを行なっているうちに二度読みしたりしてしまい,文字列表示部を注意深く確認する必要がある。」(段落【0004】)

・ 「【課題を解決するための手段】 本発明のPOSレジスターは,商品のバーコードを読み取るスキャナ部と,コマンドの入力するキー部と,商品の音声データを記憶する音声記憶手段と,商品の画像データを記憶する画像記憶手段と,商品の音声を発生させる音声発生手段と,商品の画像と取引情報を表示させる画像表示手段と,これら各要素を制御する制御部とを具備することを特徴とする。」(段落【0005】)

・ 「図1は本発明の一実施例のブロック図である。入力装置1はスキャナ部11とキー部12とからなり,スキャナ部11は商品に印刷または貼付されたバーコードを読み取るのに用いられる。キー部12は,商品のバーコードを直接入力したり,合計を計算させるためのコマンドを入力するのに用いられる。制御部2は,入出力装置の制御,登録された商品の音声・画像・文字データの検索および,音声・画像データの変換処理などを行なう。音声記憶手段3は,商品のバーコードをキーとして,コードに対応した商品音声データを検索するために用いられる。画像記憶手段4は商品のバーコードをキーとし,コードに対応した商品画像データを検索するのに用いられる。文字情報記憶手段5は,商品のバーコードをキーとし,コードに対応した商品文字データを検索するのに用いられる。音声発生手段6は,音声データが入力されることにより音声を発生する。画像表示手段7は,画像データおよび文字データが入力されることにより,商品画像,商品文字データを表示する。」(段落【0007】)

・ 「【発明の効果】 以上説明したように,本発明は,POSレジスターより商品の画像を表示させるとともに,商品の名称,価格などを音声によりオペレータおよび客に通知することにより,商品の値段や個数の入力間違えを防止し,情報確認の確実性を高める効果を奏する。」(段落【0010】)

(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)

・ 【図1】 (本発明の一実施例の構成図である。)

file_9.jpgSPRPER SRs-2 SE Bid Bes-2 Ete Bearee REZ-Bイ 引用例3(特開平5-73773号公報,発明の名称「商品管理装置」,出願人株式会社日立製作所,公開日平成5年3月26日。甲3)には,以下の記載がある。

(ア) 特許請求の範囲

・ 「【請求項1】 商品コードを入力する入力装置と,前記商品コードに対応する商品の価格を含む商品関連文字情報を格納する第1の記憶装置と,前記商品コードの入力に従って前記第1の記憶装置に格納されている前記商品関連文字情報を出力する出力装置からなる商品管理装置において,前記商品の画像情報を格納する第2の記憶装置を設け,前記出力装置は,前記商品関連文字情報を出力する際に,前記第2の記憶装置に格納されている前記画像情報を出力することを特徴とする商品管理装置。」

(イ) 発明の詳細な説明

・ 「【産業上の利用分野】 本発明は,商品の種別を識別するための商品コードに応じて,その商品の販売管理,在庫管理,発注管理等のための商品管理装置に関する。」(段落【0001】)

・ 「【従来の技術】 従来より商品管理装置の一環としてPOS(Point Of Sales)端末装置や商品の発注システムであるEOS(Electronic Ordering System)に用いられる端末装置がある。」(段落【0002】)

・ 「従来技術によるPOS端末装置における問題点と類似した問題点が,EOS用の端末装置においても発生している。この端末装置においても表示される商品名はPLUファイルに格納された商品名であり,必ずしも商品そのものに印刷されている商品名と一致しているとは限らない。特に陳列棚に貼付されたバーコードをスキャンする運用では,そのスキャンによる商品名と実際の商品との対応付けに誤りが発生しやすいという問題がある。この対応付け誤りは,商品の誤り発注という結果を生む。」(段落【0008】)

・ 「本発明の目的は,表示内容の読み取り及び確認の困難さを軽減した商品管理装置を提供することにある。」(段落【0009】)

・ 「本発明のさらに他の目的は,表示内容の確認のための負担を軽減するようにした商品管理装置を提供することにある。」(段落【0011】)

・ 「【作用】 上記本発明の望ましい実施態様によれば,従来の商品名の文字表示に代えて商品を画像表示するので,表示内容の確認の困難さを軽減することができる。またその変形例によれば,商品価格と同一画面への表示や重ね合わせ表示することにより,表示内容を短時間で確認できる。さらに他の変形例によれば,現商品の画像を表示できるので,表示内容の確認のための負担を軽減できるという効果も得られる。さらに他の変形例によれば,画像データが接続する他の商品に関する管理装置の記憶装置に格納されるので,該商品管理装置の必要な記憶装置の容量を少なくすることができ,さらに該商品管理装置を小型にすることができる。」(段落【0016】)

・ 「表示部13の表示画面例を図5及び図6に示す。図5では,左が画像表示エリアであり,商品の画像を表示し,右が文字表示エリアで価格を表示している。なお,画像表示エリアと文字表示エリアの位置及び大きさの関係は任意でよい。図6(判決注:「図9」は誤記)の例では,表示エリアを分けず,商品の画像の上に価格を上書きしている。」(段落【0029】)

・ 「以上の実施例により,従来のPOS端末装置における商品名の文字表示に代わって,商品の画像を表示するので,従来に比べて表示内容の確認の困難さを軽減することができる。また,商品の画像表示,特に価格との重ね合わせ表示により,表示内容を短時間で確認でき,その確認のための負担を軽減できる。これは,従来の文字表示では人は一文字ずつ読まなければならないのに対して,画像表示により人のパターン認識力を使えるからである。さらに,商品そのものの画像が表示されるので,人が認識している商品との整合性が有り,商品の確認を容易にしている。また,人は視線を表示部に固定しておけばよく,視線の移動範囲が狭いので,視線の移動に伴う負担が軽減される。」(段落【0032】)

・ 「第1の実施例は商品の画像を読み取り,表示するものであったが,その変形例として商品の画像を事前にPLUファイル19Aに登録しておき,それを検索し,表示するPOS端末装置を以下に説明する。」(段落【0033】)

・ 「PLUファイル19Aの構成を図9に示す。PLUファイル19Aの図4に示したPLUファイル19と異なる点は,各商品コードに対応して画像データの欄を追加した点にある。ここに格納される画像データは,各商品ごとに予め用意される。」(段落【0035】)

・ 「POS端末装置及びEOS用端末装置に関する実施例を説明したが,本発明の特徴は,検品用端末装置においても適用できる。検品用端末装置は,複数個/種類の箱詰めされた商品を確認する検品業務に用いられる。複数個/種類の商品を積めた箱は輸送に都合がよく,多用されている。このような商品の輸送用の箱には,収納されている商品が単一種類の場合には箱に直接バーコードが貼付され,収納されている商品が複数種類の場合は収納されている各商品の種類に応じたバーコードが印刷された伝票が貼付されている。バーコード(商品コード)に対応して,発送元や商品名,個数等が印刷表示されている。」(段落【0048】)

・ 「以上のデータと検品用端末装置にファイルとして予め用意された商品の画像データとから箱詰めされた商品の画像を検品用端末装置に表示し,検品業務を容易にできることは,前述した実施例の説明から容易に推考できるであろう。」(段落【0049】)

・ 「【発明の効果】 本発明によれば,従来の商品名の文字表示に代えて商品を画像表示するので,表示内容の確認の困難さを軽減することができる。また商品価格と同一画面への表示や重ね合わせ表示することにより,表示内容を短時間で確認できる。さらに表示内容の確認のための負担を軽減できるという派生的な効果も得られる。」(段落【0052】)

(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)

・ 【図5】 (第1の実施例における表示画面例である。)

file_10.jpg198ウ 一方,文献には以下の記載がある。

・ 甲17(「JIS工業用語大辞典【第5版】」2001年〔平成13年〕3月30日第5版第1刷発行,財団法人日本規格協会発行)

「POS … point of sales

販売時点の情報を管理する装置,又はそのシステム,マスタ端末機(又はストアプロセッサ)と複数のサテライト端末機とが並列に接続されてシステムを構成する場合が多い.主として走査を装備して単品情報管理を行う.」

エ 上記ア,イによれば,引用例2(甲2),引用例3(甲3)には,入力間違えを防止し,情報確認の確実性を高めるため画像情報を用いて商品の表示をすること(引用例2,段落【0004】・【0010】),商品の販売・在庫・発注管理を行う商品管理装置及び商品確認のための検品用の端末において,商品の確認を容易にするため商品の画像情報を表示すること(引用例3,段落【0048】・【0049】【図5】),が記載されている。

そうすると,多量の商品の情報を管理するシステムにおいて,画像情報を用いて商品の表示を行うことは周知の技術であると認められる。POSシステムは,上記ウのとおり商品の販売時点での情報管理に関するシステムであることからすると,これが値付システムの分野といえるかどうかはともかく,上記商品管理システムにおいて画像情報を用いて商品の表示を行うこと自体は上記のとおり周知技術ということができる。審決が相違点に関する判断に当たり上記周知技術を適用した上で容易想到と判断したことに誤りはない。

(2)  原告は,引用例2,引用例3はいずれもPOSシステムであって商品情報利用の方法が異なり,組合せの動機付けを欠くと主張する。

しかし,上記(1)イのとおり,引用例3(甲3)はPOS端末装置,EOS用端末装置,検品用端末装置を含む一般的な商品管理装置に関するものである(段落【0048】)から,POSシステムに限定されたものではなく,多量の商品の情報を管理するシステムに関するものである。そして,上記(1)ウのとおり,POSシステムは販売時点での情報を管理する装置であり,本願補正発明,引用発明と技術分野が近接するものといえるから,原告の上記主張は採用することができない。

5  取消事由4(相違点についての判断の誤り-その2)について

(1)  原告は,審決は「…一般に,正しい荷姿の画像情報を表示することにより,作業者に正しい位置と向きなど,所望の荷姿を指示することも,従来周知の技術的事項である(例えば,特開平5-61878号公報,特開平7-24673号公報等参照)。」(9頁32行~35行)としたが,甲4(周知例1),甲5(周知例2)は機械製品等の製造組立て工程に関連するものであって,技術分野がかけ離れていて組合せの動機付けを欠くと主張する。

ア 審決が周知技術を示すものとして挙げた甲4(周知例1),甲5(周知例2)には以下の記載がある。

(ア) 甲4(特開平5-61878号公報,発明の名称「生産管理情報処理方式」,出願人日本精工株式会社,公開日平成5年3月12日,周知例1)

a 発明の詳細な説明

・ 「そこで,本発明は,上記従来例の課題に着目してなされたものであり,製造図データ,各種指示情報及び生産ラインでの手書き加工手順書等の全ての情報を統合させて生産工程に同期して生産ラインに配置した表示手段に表示することにより,適確な情報伝達を行って,高度の品質管理を行うことができる生産管理情報処理方式を提供することを目的としている。」(段落【0004】)

・ 「【作用】 本発明においては,製造図情報形成手段で,所望の製品の製造図面情報を形成し,この製造図面情報に基づいて品質管理情報指示手段で,工場の工程能力,工程設定等に応じて各製造工程物の管理項目,工程規格,検査作業指示等の品質管理情報を形成する。一方,生産管理情報形成手段で顧客からの受注した製品の受注数,材料納期等の生産管理情報が形成される。そして,製造図面情報,品質管理情報及び生産管理情報が生産統制情報形成手段に送出され,この生産統制情報形成手段で,入力された製造図面情報,品質管理情報及び生産管理情報に所謂現場ノウハウと称される加工手順書等のイメージデータを含む工程管理指示情報を付加して生産統合情報を形成し,この生産統合情報を生産ラインに配置された情報出力手段に送出することにより,生産ラインで製品の製造過程に応じた最適の指示情報を表示又は印字する。」(段落【0006】)

・ 「EWS3は,主情報処理装置1及び生産システム用コンピュータ5から送信される各種データを受信し,主情報処理装置1から受信したデータを分析して,製造図ファイル31及び指示書ファイル32に格納するデータ送受信処理部33と,例えばQCサークル等で得られる現場のノウハウによる梱包様式等の各工程の手書き指導書を読込むイメージスキャナ34と,このイメージスキャナ34で読込んだイメージデータと指示書ファイル32に格納されている指示書データとを表示装置38に表示しながら編集して例えば図5に示す包装工程の工程指示書73を形成するイメージ編集部35と,このイメージ編集部35で編集を完了した工程指示書73を格納するイメージファイル36と,データ送受信部33で受信した生産システム用コンピュータ5からの製造指示書72と前工程完了報告とに基づいて各ファイル31,32及び36に格納されている各データを統合して図6に示す統合作業指示書75を形成し,これを各生産工程に配置された該当する対話型インテリジェント端末61,62に送信する生産統合情報送出手段としてのデータ送受信処理部37とを備えている。なお,39はデータ送受信処理部37に接続されて統合作業指示書75を必要に応じて印字するプリンタである。」(段落【0011】)

・ 「次に,上記実施例の動作を例えば軸受の包装工程を例にとって説明する。先ず,主情報処理装置1の計算機援用設計システム部11で,ラジアル荷重,アキシアル荷重,回転速度等の使用条件,軸径,ハウジング径等の寸法条件等の軸受選定条件を入力すると共に,使用条件,使用環境等をもとに軸受形式・配列を決定し,前記使用条件をもとに決定した軸受形式・配列に応じた所定の応用計算を行うと共に軸受精度等の特殊使用条件を考慮して軸受名番を決定し,決定した軸受名番の図面データをデータベースから検索して読出し,この図面データと各緒元データとを製造図面情報として製造図管理ファイル14に格納する。」(段落【0014】)

・ 「品質管理指示書71を受信したEWS3は,これを指示書ファイル32に格納すると共に,表示装置38に表示させる。この表示に基づいてオペレータが図5に示す工場でのQCサークル等で得られる現場のノウハウによる梱包様式等の各工程の文字74aと絵74bとが混在する手書き指導書をイメージスキャナ34で読込むと共に,読込んだイメージデータを工程指示書73(判決注:「75」は誤記)の所定領域に組込んで完成させ,完成された工程指示書73をイメージ格納ファイル36に格納し,次いでデータ送受信処理部37で,名番に基づいて指示書ファイル32及びイメージ格納ファイル36を夫々検索して,図6に示すように現場での製造指示を行う統合作業指示書75を作成し,これを該当する現場のインテリジェント端末61,62に送信してそれらの内蔵メモリ及びハードディスクに格納させる。」(段落【0019】)

・ 「このように,主情報処理装置1で形成された製造図情報,品質管理情報及び生産管理情報が工場に配置されたEWS3に伝送され,これらの情報に,現場ノウハウ等の手書き指示書のイメージデータを付加して統合作業指示書を作成するので,作業指示書の転記ミス,伝達ミス等が発生することがなく,さらに,現場で製品に添付された完成カードのデータ及び各作業伝票の照合や必要作業伝票の枚数等の確認作業をガイダンス情報に従って行うことにより,統合作業指示書75(判決注:「74」は誤記)が表示されるので,製品とこれに対する指示情報との不一致による誤作業を確実に防止することができ,品質保証を効果的に行うことができると共に,現場作業者の一連の作業は製造履歴として主情報処理装置1の製造履歴ファイル19に格納されるので,製品の進捗状況を明確に把握することができ,しかも不幸にして万一トラブルが発生したときでも製造履歴ファイル19を検索することにより,迅速な対応をとることができる。」(段落【0021】)

b 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)

・ 【図5】 (工程指示書の一例を示す図である。〔判決注:図中「75」とあるのは「73」の誤記〕)

file_11.jpgTha Tae mene | ee |e nix 7B [14 5k@ aman | ae saorl 1 wet [od mt] Blt mt | | 8 El 2 f,] aed ee ALRITE IT Pare Ub・ 【図6】 (統合作業指示書の一例を示す説明図である。)

file_12.jpgPare so SEE ET somsiees ea ‘ arc ZT aTa as] zie al(イ) 甲5(特開平7-24673号公報,発明の名称「作業指示支援システム」,出願人東芝エンジニアリング株式会社,公開日平成7年1月27日,周知例2)

a 発明の詳細な説明

・ 「本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり,その目的は,作業現場に設置されるモニタ装置側では小工程単位で最小限必要な作業指示図のみを保持するとともに,作業指示図を編集する編集装置側にモニタ装置のスケジュール管理をすることのできる信頼性の高いシステムを簡単かつ安価に構成できる作業指示支援システムを提供することにある。」(段落【0007】)

・ 「【作用】 上記構成によれば,予め作業対象となる物品の実撮像データを蓄積しておき,この撮像データに基づいて作業指示図を編集して蓄積する。そして,作業スケジュールに基づき所定の周期が到来すると,モニタ装置に対応する作業指示図をダウンロードする。モニタ装置側では,作業現場に物品が供給されると,この物品を認識して該当する作業指示図を読み出して画面表示する。作業者は,この実際に使用される物品が表示された作業指示図を見て,あるいは参照して作業を実行する。」(段落【0009】)

・ 「このようにして作成された作業指示図の一例を図5に示す。この作業指示図は,旋盤組立て指示図を示しており,該当する部品は前記デジタルスチルカメラ6で撮像されたものであり,切り貼りや拡大等の処理をした後,注意事項等のコメントを付して編集したものである。」(段落【0035】)

・ 「こうして作成,編集された作業指示図は画像ファイル部16に蓄積される。このとき,作業現場で読み取られるバーコードと対応させるためにバーコードファイル部18を参照した識別コードを付して登録する。(ステップST3)

<作業指示図伝送処理>上述のようにして編集・蓄積された作業指示図は,スケジュールファイル部17のスケジュール日程に基づいて対応するモニタ用パソコン2に伝送される。」(段落【0036】)

・ 「一方,作業工程現場においては,部品が収納されたバケット10がコンベア8により搬送されてくる。このバケット10には,その中に収納された部品類を識別するためのバーコードが付されており,図8のフローチャートに示すように,このバーコードはコンベア8上に設けられたバーコードリーダ9で読み取られ,バーコードデータ入力部35から取り込まれる(ステップST21)。そして,このバーコードデータを手掛かりに画像ファイル部33から該当する作業指示図が抽出される(ステップST22)。抽出された作業指示図は,図5に示すように表示される(ステップST23)。なお,図5では,4つの作業指示図で1画面が構成されているが,もちろん1画面ずつ表示することもできる。組立作業者はこの作業指示図を見ながら,あるいは参照しつつ所定の組立作業を実行する。」(段落【0040】)

・ 「【発明の効果】 以上説明したように本発明によれば,作業現場に設置されるモニタ装置側では小工程単位で最小限必要な作業指示図のみを保持するとともに,作業指示図を編集する編集装置側にモニタ装置のスケジュール管理をすることのできる信頼性の高いシステムを簡単かつ安価に構成できる。」(段落【0045】)

b 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)

・ 【図5】 (作成された作業指示図の一例を示す構成図である。)

file_13.jpg81 Gace} Re 08S OR, penton ekイ 上記アによれば,甲4(周知例1)には誤作業を防止するため,行われるべき正しい作業を文字情報で表示するとともに(例えば「A1向けは十字テープにすること」等),この作業工程終了後の所望の荷姿(実際に行われるべき十字テープの貼付後の状態)の画像を表示することにより作業員に指示することが(段落【0011】・【0019】・【0021】・【図5】・【図6】),甲5(周知例2)には,組立作業者は作業工程に関する文字・画像情報と組立て完成図を含む作業指示図を見ながら作業を行うことで,信頼性の高いシステムを構築することが(段落【0007】・【0009】・【0040】・【図5】),それぞれ記載されていることが認められる。

上記によれば,作業者に指示される正しい荷姿などの作業完成後の画像情報を表示することにより,作業者に正しい位置と向きなど,作業完成後の状態を表示し,作業を指示することは周知の技術であると認められる。そして,この周知技術を適用して,相違点に係る構成につき容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。

(2)  原告は,上記甲4,5(周知例1,2)は機械製品等の製造組立て工程に関連するもので,技術分野が極端にかけ離れており,組合せの動機付けを欠くと主張する。

しかし,甲4(周知例1)は「生産管理情報処理方式」に関し生産ラインにおける作業員に対する指示を表示手段により表示するもの(段落【0004】・【0006】),甲5(周知例2)は「作業指示支援システム」に関しコンベアで運ばれる部品の組立て作業を行う作業員に対する指示を画像で行うもの(段落【0040】)である。このように甲4・5は,いずれも作業内容の正確性を期すため,作業者に対して望まれる作業内容を作業完成後の画像情報を通して指示することに関するものであって,本願補正発明と引用発明との相違点の構成を補うことについての動機付けを欠くものとはいえない。原告の上記主張は採用することができない。

6  取消事由5(相違点についての判断の誤り-その3)について

原告は,引用発明に引用例2,引用例3を組み合わせても,商品や値付作業情報を画像で表示する構成が得られるのみであり,商品に値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成は得られない,これが導かれなければ商品に正しい位置と向きで値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成は導かれない,さらに周知例1,周知例2を組み合わせても,商品に値付ラベルが貼り付けられた画像を表示する構成を導くことはできないから,相違点に関する審決の判断は誤りであると主張する。

しかし,上記4・5で説示したとおり,引用例2,引用例3はいずれも情報確認の確実性を高めるため画像情報を用いて商品を表示するものであり,作業完成後の画像情報を表示することに関しても周知技術であると認められるところ,本願補正発明における商品の値付ラベルが貼り付けられた画像は,この作業完成後の画像情報に当たるものである。そうすると,引用例2,引用例3,及び甲4・5(周知例1,周知例2)に各記載の周知技術によれば,本願補正発明と引用発明との相違点の構成とすることができ,原告の上記主張は採用することができない。

7  取消事由6(本願発明の認定,及び対比・判断についての誤り)

原告は,仮に本件補正が却下されたとしても,本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから進歩性を有すると主張する。

しかし,本願補正発明は,ラベル貼付作業者に対する指示につき「ラベル発行の際に,」とする構成を本願発明に付加したものであるところ,本願発明を限定的に減縮することを目的とした本願補正発明が特許を受けることができないとされたのと同様の理由により,本願発明も引用発明及び周知技術(甲2~5)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものといえるから,本願発明につき特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした審決の認定判断に誤りはない。

原告の上記主張は採用することができない。

8  結語

以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。

よって原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中野哲弘 裁判官 今井弘晃 裁判官 真辺朋子)

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