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知財高等裁判所 平成22年(行ケ)10026号 判決 2010年7月14日

原告

ジャス・インターナショナル株式会社

被告

ポロ・ビーシーエス株式会社

訴訟代理人弁護士

山本忠雄

矢口敬子

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

特許庁が取消2009-300498号事件について平成21年12月25日にした審決を取り消す。

第2事案の概要

1  本件は,被告の有する別紙商標目録記載の商標登録(以下「本件商標登録」という。)中,その指定商品第25類「被服」について,原告が商標法50条1項に基づき不使用を理由とする取消審判を請求したところ,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。

2  争点は,上記取消審判請求の登録日たる平成21年5月20日より3年前以内に被告又は通常使用権者が上記指定商品について上記商標(下記内容のとおり)を使用したか(商標法50条2項),である。

file_2.jpgPOLO第3当事者の主張

1  請求の原因

(1)  特許庁における手続の経緯

原告は,平成21年4月24日,被告が商標権者である別紙商標目録記載の商標(以下「本件商標」という。)について,その指定商品中第25類「被服」につき,商標法(以下「法」という。)50条1項に基づき不使用を理由とする商標登録取消審判を請求し,平成21年5月20日その旨の予告登録がなされた。

特許庁は,同請求を取消2009-300498号事件として審理した上,平成21年12月25日,「本件審判の請求は,成り立たない」旨の審決をし,その謄本は平成22年1月7日原告に送達された。

(2)  審決の内容

審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,証拠によれば,本件審判請求の予告登録日である平成21年5月20日の前3年以内に,本件商標の通常使用権者ら及び商標権者たる被告が,上記指定商品「被服」につき本件商標を使用したと認められる,としたものである。

(3)  審決の取消事由

しかしながら,審決には,次のとおり誤りがあるから,審決は違法として取り消されるべきである。

ア 証拠評価の誤り

被告の提出した証拠によれば,本件商標の通常使用権者とされる株式会社ホソケンが販売したネクタイやマフラーには,「POLO」の文字のみからなる商標(別紙使用商標目録記載1の商標)が使用されている。しかし,「POLO」といえば,米国「ラルフ・ローレン社」の商品として世界的に有名であり,日本でもそれが知れ渡っており,この10年間,その他のメーカーや小売店がラルフ・ローレン社以外の「POLO」という文字のみの商標を使った商品を販売したのを見たことがない。そのような商品の販売は不正競争防止法にも抵触するもので,販売する小売店があるとも思われない。また,上記ネクタイ等に付されたネームタグも,このように単純なものを見たことがない。加えて,上記ネクタイ等に付された紙タグも本件事件のための見本用のものであり,仕入伝票も特別に提供してもらった可能性がある。

以上のとおり,上記ネクタイ等は,被告が本件事件を予想して商標使用の証拠を用意しておくために,小規模で自分たちの言いなりになるメーカーで少量の商品を製造したものであり,一般に販売されたものとは思われない。

イ 商標の使用及び使用商標の同一性に関する判断の誤り

本件商標の通常使用権者とされる山喜株式会社が販売したシャツ及びチョッキに使用した商標(別紙使用商標目録記載2の商標),同じく通常使用権者とされる株式会社カイタックファミリーが販売したパジャマに使用した商標(別紙使用商標目録記載3の商標),同じく通常使用権者とされる合併前の公冠グンゼ株式会社(なお,同社は,平成22年4月1日,グンゼ株式会社に吸収合併された。)が紳士用肌着やカタログに付して使用した商標(別紙使用商標目録記載4の商標が紳士用肌着に付した商標で,同目録記載5の商標がカタログに付した商標である。),被告が広告により使用した商標(別紙使用商標目録記載6,7の商標)は,いずれも本件商標の下部に「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字を付加したものである(以下,「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字が付加された商標を総称して「付加商標」という。)。したがって,このような使用は本件商標の正確な使用とはいえない。また,「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字が付加された付加商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するかどうかの判断に当たっては,前記文字を付加した目的の正当性についても考慮すべきである。そして,被告や上記通常使用権者らは,「POLO」の商標をそのまま使用するとラルフ・ローレン社の商品との関係で不正競争防止法に抵触することから,これを避けるため,前記の文字を付加したのである。このような不当な目的で「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字を付加して使用したとしても,「本件商標」の許容される使用とはいえず,「社会通念上同一と認められる」商標の使用とはいえない。

ウ 本件商標登録の不当性

(ア) ラルフ・ローレン社は,1970年代(昭和45年から昭和54年)には既に日本で著名であった。本件商標は,その後に出願されたもので,ラルフ・ローレン社の著名性を利用して不当な利益を得る目的で出願登録がされたものである。

(イ) 我が国において,平成9年ころ,ラルフ・ローレン社以外の「POLO」ブランドブームがあった。その中でも,「Polo Club」(上野衣料)は,年間250億円と最大の売上を誇り,その当時ラルフ・ローレン社を凌ぐ商品を各小売で展開していた。それを特許庁はラルフ・ローレン社の著名性を理由として全て商標登録を拒絶し,上野衣料は全ての「POLO」事業から撤退した。

しかし,政策が国民に等しく平等でなければならないのに,本件商標のみを容認し,結果的に被告に対して利益供与を続けさせる事は理解できない。そこには手続上の正当性があるとしても,国民や消費者への尊重は全くなく,今でも「ラルフ・ローレン社」の商品と誤認させるような商品の販売を被告等により続けさせていることは容認できない。

(ウ) 「POLO」関係の商標について,唯一ラルフ・ローレン社の異議が退けられて登録になった例は,「ケンブリッジ・ユニバーシティ・ポロクラブ」である。登録になった理由は,「ラルフ・ローレンとの関連性を強く打ち消す要素となっていること,商標の図形やロゴの構成については『両者は明確に区別され』ており,『混同をする恐れはない』」というものであった。しかし,本件商標は「混同をする恐れはない」どころか逆に「ラルフ・ローレン社と混同させる」ことを目的としており,そのような本件商標の存続を容認していることは同意できない。

2  請求原因に対する認否

請求原因(1),(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。

3  被告の反論

審決の認定判断は,証拠を適正に検討した上でなされたものであり,原告主張の取消事由は理由がない。

すなわち,次のとおり,本件審判の請求の登録日である平成21年5月20日より前3年以内に,日本国内において,本件商標の通常使用権者が,本件審判請求にかかる指定商品第25類「被服」に含まれるネクタイ等に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用し,また,被告も,同じく「被服」に含まれる紳士用被服,婦人用被服,子供服等について,本件商標と社会通念上同一と見られる商標を付して広告した。

(1)  ネクタイ及びマフラーについて専用使用権者から許諾を受けた通常使用権者である株式会社ホソケンは,堀越ネクタイ株式会社に対し,平成18年9月3日にネクタイ576枚を,平成18年11月1日にマフラー240枚を,平成19年3月24日にネクタイ365枚を,平成20年2月25日にネクタイ400枚を,それぞれ納品した。

チョッキ及びシャツにつき被告から許諾を受けた通常使用権者である山喜株式会社は,平成21年1月21日に「KKベイシア」に対しシャツ4枚を,平成21年1月23日に「イオンマルシェ」に対しチョッキ1枚を,平成21年1月24日に「福田百貨店」に対しシャツ20枚をそれぞれ納品した。なお,山喜株式会社は,平成19年2月7日にシャツを,平成20年9月10日にもシャツを,それぞれ納品した。

パジャマにつき被告から許諾を受けた通常使用権者である株式会社カイタックファミリーは,「ニチリュウ オークワ」に対し平成20年12月12日にパジャマ10枚を,平成20年12月22日にパジャマ92枚を,「オークワ」に対し平成21年1月27日にパジャマ40枚を,それぞれ納品した。

そして,上記のネクタイ等には,本件商標と社会通念上同一の商標(別紙使用商標目録記載1ないし3の商標)が表示されたタグが付されている。

(2)  本件商標の通常使用権者である公冠グンゼ株式会社は,平成20年の秋から冬に,肌着のシャツ及びタイツに本件商標と社会通念上同一の商標(別紙使用商標目録記載4の商標)を付し,また,これら肌着のシャツ等に関する商品カタログに本件商標と社会通念上同一の商標(別紙使用商標目録記載5の商標)を付して掲載した。

(3)  被告は,紳士用被服,婦人用被服,子供服等について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標(別紙使用商標目録記載6,7の商標)を付した広告を,平成18年8月16日付け日経産業新聞に,平成20年10月20日付け及び平成20年11月10日付けの雑誌「AERA」に,平成20年11月1日発行の雑誌「コモ11月号」に,それぞれ掲載した。

第4当裁判所の判断

1  請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。

2  商標権者又は通常使用権者による本件商標の使用の有無について

(1)  法50条1項に基づき商標登録の不使用取消審判請求がなされた場合,その請求を受けた商標権者は,請求に係る指定商品につき,商標権者たる自ら又は通常使用権者が,当該商標を取消し審判の予告登録がなされた日からその3年前までの間に使用した事実を証拠により証明したときは,取消し審判を免れると解される(法50条2項参照)。

そこで,以上の見地に立って,商標権者たる被告又は通常使用権者が、上記予告登録がなされた平成21年5月20日からその3年前たる平成18年5月20日までの間に,取消審判請求を受けた指定商品25類「被服」につき,本件商標を使用した事実があるかどうかについて検討する。

(2)  証拠(甲17~25,27,乙5~12。なお,証拠については,特に明示しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。

ア 本件商標は,公冠販売株式会社により昭和56年4月6日に商標登録出願され,平成9年5月2日に商標登録第2721189号として設定登録され,その後,平成19年4月24日に存続期間の更新登録がされた。

設定登録時の指定商品は第17類(平成3年政令第299号による改正前の分類)の「被服(運動用特殊被服を除く),布製身回品(他の類に属するものを除く),寝具類(寝台を除く)」であったが,平成20年8月6日の書換登録により,第5類「失禁用おしめ」,第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」,第10類「医療用手袋」,第16類「紙製幼児用おしめ」,第17類「絶縁手袋」,第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」,第21類「家事用手袋」,第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」,第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,湯たんぽカバー,座布団カバー,クッションカバー,こたつ布団,こたつ布団カバー,こたつ用敷き布団,こたつ中掛け,こたつ布団用上掛け」,第25類「被服」に書き換えられた。一方,本件商標の商標権者は,前記公冠販売株式会社から被告に移転されて平成10年4月27日付けで移転登録がなされた(甲27)。

イ 被告は,山喜株式会社に対し,平成13年ころシャツについて,平成19年ころニットについて,それぞれ通常使用権を許諾し,現在まで許諾を継続している(乙12)ところ,同社は,次のとおりシャツ及び「ニット」に含まれるチョッキを各納入先に納品した。これらのシャツ等は,襟の部分に,別紙使用商標目録記載2のとおり,大きな「POLO」の文字とその下にごく小さな「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字とが2段で表示されたネームタグが縫い付けられていた(甲17~19,乙5,6)。

・ 平成19年2月7日,「セイユウ」に対し,シャツ10枚(品番NXE280)(乙6)

・ 平成20年9月10日,「SSOK」に対し,シャツ2枚(品番NXE804)(乙5)

・ 平成21年1月21日,「K.K.ベイシア」に対し,シャツ4枚(品番NXE151,サイズM)(甲17)

・ 平成21年1月23日,「イオンマルシェ」に対し,チョッキ1枚(品番NXC325,サイズL)(甲18)

・ 平成21年1月24日,「福田屋百貨店」に対し,シャツ20枚(品番NXE156)(甲19)

ウ 被告は,平成11年ころ,株式会社カイタックファミリーに対し,パジャマについて通常使用権を許諾し,現在まで許諾を継続している(乙12)ところ,同社は,次のとおりパジャマを各納入先に納品した。これらのパジャマは,襟の部分に,別紙使用商標目録記載3のとおり,大きな「POLO」の文字とその下にごく小さな「BRITISH COUNTRYSPIRIT」の文字とが2段で表示されたネームタグが縫い付けられており,また,同様の表示がされた紙タグも付されていた(甲20~22)。

・ 平成20年12月12日,「ニチリュウ オークワ」に対し,パジャマ10枚(品番29861PH)(甲20)

・ 平成20年12月22日,「ニチリュウ オークワ」に対し,パジャマ92枚(品番11861PB)(甲21)

・ 平成21年1月27日,「オークワ」に対し,パジャマ40枚(品番13912PH,サイズM)(甲22)

エ 被告は,平成11年ころ,公冠グンゼ株式会社に対し,紳士用肌着について通常使用権を許諾し,その後も許諾を継続している(ただし,グンゼ株式会社が,平成22年4月1日,公冠グンゼ株式会社を吸収合併した。乙12)ところ,同社は,平成20年の秋から冬ころ,襟の部分や腰の部分に,別紙使用商標目録記載4のとおり,大きな「POLO」の文字とその下にごく小さな「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字とが2段で表示されたネームタグを縫い付けた紳士用肌着のシャツ及びタイツを製造した。また,同時期の同社の商品カタログに,上記紳士用肌着のシャツ等とともに,別紙使用商標目録記載5のとおり,四角形内に白抜きで大きな「POLO」の文字とその下にごく小さな「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字とが2段で表示された商標が掲載されている(乙7~9)。

オ 被告は,平成18年8月16日,日経産業新聞に4段分以上の大きさの広告を出した。この広告には,右側に,「Mens Wear」,「Ladies Wear」,「Kids Wear」等の表示がされている。そして,それらの下に,別紙使用商標目録記載6のとおり,四角形内に白抜きで大きな「POLO」の文字とその下にごく小さな「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字とが2段で表示されている(甲23)。

カ 被告は,平成20年10月20日付け及び平成20年11月10日付けの雑誌「AERA」に,いずれも1頁大の広告を出した。これらの広告の下部には,別紙使用商標目録記載7のとおり,四角形内に白抜きで大きな「POLO」の文字とその下にごく小さな「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字とが2段で表示されている。また,その下には,「Mens Wear」,「Ladies Wear」,「Kids Wear」等の表示がされている(甲24,25)。

キ 被告は,平成20年11月1日付けで発行された雑誌「Como」にも1頁大の広告を出した。この広告の下部には,別紙使用商標目録記載7のとおり,四角形内に白抜きで大きな「POLO」の文字とその下にごく小さな「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字とが2段で表示されている。また,その下には,「Mens Wear」,「Ladies Wear」,「Kids Wear」等の表示がされている(乙10)。

(3)  上記(2)の認定事実によれば,本件商標の通常使用権者である山喜株式会社,株式会社カイタックファミリー及び公冠グンゼ株式会社,商標権者である被告は,上記予告登録前3年内である平成18年8月から平成21年1月にかけて,本件審判請求に係る指定商品である「被服」に該当するシャツ,チョッキ,パジャマ,紳士用肌着に,「BRITISH COUNTRYSPIRIT」の文字が付加された付加商標を付して販売し,又は付加商標を付した広告をしたことが,それぞれ認められる。

(4)  原告の主張に対する判断

ア 原告は,まず「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字が付加された付加商標の使用は,本件商標と「社会通念上同一と認められる」商標の使用とはいえないと主張する。

しかし,商取引の実際においては,登録商標が,その構成部分に適宜の変更を加えて使用されることは通常行われることであるから,そのような変更が当該登録商標の有する独自の識別性に影響を与えていない限り,なお同一の範囲に属する標章と認識するのが,需要者あるいは取引者の通念というべきであると解されるところ,付加商標については,別紙使用商標目録記載2ないし7のとおり,「POLO」の文字と「BRITISHCOUNTRY SPIRIT」の文字とが上下2段に分かれて配置されているが,上段の「POLO」の文字が大きく,下段の「BRITISHCOUNTRY SPIRIT」の文字はごく小さいことからすれば,大きな文字が使用された「POLO」の部分の識別力が大きいものといえる。そして,「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字が付加された付加商標の「POLO」の部分と本件商標はともに「POLO」の文字からなるもので,同一であるから,付加商標の「POLO」の部分にごく小さな「BRITISH COUNTRY SPIRIT」の文字が付加されたとしても,本件商標の構成において基本をなす部分が変更されたとはいえず,本件商標と付加商標とは社会通念上同一の商標であると認めるのが相当であり,原告の上記主張は採用することができない。

イ 次に,原告は,付加商標について「BRITISH COUNTRYSPIRIT」の文字が付加されている目的が不正競争防止法の抵触回避にあることから,正当な使用とはいえず,社会通念上同一ともいえない旨主張する。

しかし,付加商標が本件商標と社会通念上同一と認められることは前判示のとおりであり,また,登録商標と付加商標とが社会通念上同一と認められるかどうかは,その対比によって判断すべきもので,変更を加えた目的がその判断に影響を及ぼすとはいえないから,原告の上記主張は採用することができない。

ウ また原告は,本件商標登録は,ラルフ・ローレン社の著名性を利用して不当な利益を得る目的でなされたものである旨主張する。

しかし,法50条の定める商標登録取消しの可否は,専ら取消審判予告登録日前3年以内における商標としての使用の有無によって決せられるものであって,当該商標登録の経緯等によりこれが左右されるものではないから,原告の上記主張は採用することができない。

エ なお,原告は,株式会社ホソケンの別紙使用商標目録記載1の商標の使用に関する主張をしているが,前記のとおり,被告及び他の通常使用権者らによる本件商標の使用の事実を認定することができるから,この点に関する原告の上記主張について判断する必要はない。

3  結論

以上によれば,本件審判請求の予告登録の日である平成21年5月20日からその前3年以内である平成18年5月20日までの間に,本件商標の商標権者である被告及びその通常使用権者である各社(山喜株式会社,株式会社カイタックファミリー,公冠グンゼ株式会社)が,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判に係る指定商品「被服」に含まれる商品に関して使用したことになるから,本件審判の請求は成り立たないとした審決の判断に誤りはない。

よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中野哲弘 裁判官 清水節 裁判官 古谷健二郎)

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