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知財高等裁判所 平成22年(行ケ)10407号 判決 2011年12月26日

原告

訴訟代理人弁理士

加藤朝道

内田潔人

青木充

被告

特許庁長官

指定代理人

神山茂樹

大河原裕

樋口信宏

芦葉松美

主文

1  特許庁が不服2008-15132号事件について平成22年8月17日にした審決を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

主文同旨

第2争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は,発明の名称を「ウインドパークの運転方法」とする発明について,平成14年9月21日に国際出願(パリ条約による優先権主張 平成13年9月28日ドイツ国。以下「本願」という。)し,平成20年3月14日付けで拒絶査定を受け,同年6月16日,拒絶査定不服審判(不服2008-15132号事件。以下「本件審判」という。)を請求すると共に,特許請求の範囲を補正した(以下「本件補正」という。)(甲5)。特許庁は,平成22年8月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をなし,その謄本は,同月31日,原告に送達された。

2  特許請求の範囲

本願に係る本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は,以下のとおりである(甲5)。

「【請求項1】 複数の風力発電装置を備えたウインドパークであって,前記ウインドパークに結合されている電力網に,発生した電力を供給するウィンドパークの運転方法は,

前記ウインドパークにより供給される電力を外部から調節可能として,ウインドパークの予め決定された公称出力電力の0から100%の範囲内での,前記ウインドパークの制御入力部での前記ウインドパークの外部設定の電力出力により,前記ウインドパーク全体がその電力出力部で前記電力網に供給する電力の0から100%の前記範囲内に設定値を設定するステップと,

前記電力網の周波数が基準値より高いかまたは低いとき,および,前記電力網の電圧が基準値より高いかまたは低いときの少なくとも一方であるとき(判決注:手続補正書(甲5)における「少なく一方であるとき」との記載は,「少なくとも一方であるとき」の誤記と認める。),前記ウインドパークの供給電力を低減し,

前記電力網に供給される電流と前記電力網の電圧の間の位相位置の位相角φを,前記電力網の電圧に依存して変更するステップとからなる運転方法。」

3  審決の理由

(1)  審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は,以下のとおりである。

本件補正は,誤記の訂正ないし明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから,補正の要件に適合する。相違点1に係る構成は,単なる設計的事項にすぎず,相違点2に係る構成は,国際公開WO01/25630(甲1の1。以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。),周知技術及び慣用手段に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,本願発明は,特許法29条2項により特許を受けることができない。

(2)  審決が上記判断に至る過程において認定した引用発明の内容,並びに本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

ア 引用発明の内容

「複数の風力発電設備を備えた風力発電施設であって,前記風力発電施設に接続されている送電網に,発生した電力を供給する風力発電施設の運転方法は,

前記風力発電施設により供給される電力をそれぞれの風力発電設備のデータ入力に接続されたデータ処理装置で制御可能として,全ての風力発電設備の出力電力を前記データ処理装置で定格出力電力の0から100%の範囲内に調節できると共に,送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を0から100%の前記範囲内の所望値に設定するステップからなる運転方法。」

イ 一致点

「複数の風力発電装置を備えたウインドパークであって,前記ウインドパークに結合されている電力網に,発生した電力を供給するウィンドパークの運転方法は,

前記ウインドパークにより供給される電力を電力調整部から調節可能として,ウインドパークの予め決定された公称出力電力の0から100%の範囲内での,前記ウインドパークの制御入力部での前記ウインドパークの電力調整部設定の電力出力により,前記ウインドパーク全体がその電力出力部で前記電力網に供給する電力の0から100%の前記範囲内に設定値を設定するステップからなる運転方法。」である点

ウ 相違点

(ア) 相違点1

ウインドパークにより供給される電力を調節可能とする「電力調整部」,及び,ウインドパークの電力出力の「電力調整部」設定に関し,本願発明は,「外部」,即ち,「制御入力部」を用いると共に「管理者」が関与しているものであるのに対し,引用発明は,「それぞれの風力発電設備のデータ入力に接続されたデータ処理装置」としているにすぎない点。

(イ) 相違点2

本願発明は,「電力網の周波数が基準値より高いかまたは低いとき,および,前記電力網の電圧が基準値より高いかまたは低いときの少なくとも一方であるとき,ウインドパークの供給電力を低減し,前記電力網に供給される電流と前記電力網の電圧の間の位相位置の位相角φを,前記電力網の電圧に依存して変更するステップ」をも有しているのに対し,引用発明は,かかるステップを有していない点。

第3当事者の主張

1  取消事由に関する原告の主張

審決には,引用発明及び本願発明の認定の誤り(取消事由1),容易想到性の判断の誤り(取消事由2),審理手続上の瑕疵(取消事由3)があり,これらは結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。

(1)  引用発明及び本願発明の認定の誤り(取消事由1)

ア 引用発明の認定の誤り

審決には,以下のとおり,引用発明の認定に誤りがある。

引用発明の目的は,ウインドパークの定格出力を「オーバーサイジング」することにより,ウインドパークが,ウインドパークにおける風の状況にかかわらず,送電網のハードウェア(変電所の変圧器等)の最大容量によって定まる許容最大供給電力を供給し続けることである。すなわち,従来は,ウインドパークの定格出力は変電所の最大容量と同じに制限されていたが,必ずしも定格風速の風が吹くとは限らず,したがって,個々の風力発電装置は必ずしも常に定格出力では運転されず,ウインドパーク自体も必ずしも常にその定格出力では運転されなかった。引用発明は,ウインドパークを構成する風力発電装置の基数を増やして,ウインドパークの定格出力をこれを制限する変電所等の最大容量より大きくすること(「オーバーサイジング」)により,ウインドパークを構成する個々の風力発電装置に対し定格風速の風が吹かない場合であっても,ウインドパークが,常に,送電網のハードウェア(変電所の変圧器等)の許容最大供給電力を供給し続けられるようにした発明である。各風力発電装置はデータ入力に接続されたデータ処理装置で制御可能であり,ウインドパーク全体の実際の出力が送電網のハードウェア(変電所の変圧器等)の許容最大出力に維持されるよう,1又は複数の風力発電装置の実際の出力を,上記データ処理装置でその定格出力の0から100%の範囲内で調節する。

この関係を記号で表記すると,以下のようになる。

(ウインドパークの定格出力)>(ウインドパークの実際の出力)=(送電網のハードウェア(変電所の変圧器等)の最大容量によって定まる許容最大出力)

引用発明において,調整の対象とされているのは,個々の風力発電装置の実際の出力であって,ウインドパーク自体の出力を電力消費者が接続されている電力網の電圧の変動に応じて調整することではない。したがって,審決が,引用発明を,ウインドパーク自体の出力が送電網の電圧に応じてその定格出力の0から100%の範囲内で変更可能であると認定したのは,誤りである。

仮に,審決が認定したとおり,引用発明がウインドパーク全体の定格出力の0から100%の範囲内の所定値に設定可能なものであるとすると,少なくともウインドパークの実際の出力をウインドパークの定格出力の100%に設定した場合,給電送電網のコンポーネント(変電所の変圧器等)が過負荷の状態になり,これにより,給電送電網のコンポーネントに障害が発生することは勿論,場合によっては使用不能になることは明らかである。

以上のとおりであって,引用例1には,審決が認定したように「送電網の電圧に応じて風力発電施設(本願の「ウインドパーク」に相当)全体の出力電力を(その定格出力の)0から100%の範囲内の所望値に設定する」との技術は,開示されていない。

イ 本願発明の認定の誤り

審決は,本願発明においては,「管理者」も「制御入力部」も「ウインドパーク」の「外部」を構成するものであると認定した。しかし,特許請求の範囲に記載されているとおり,「制御入力部」は「ウインドパーク」を構成するものであって,「ウインドパーク」の「外部」を構成するものではない。

したがって,上記認定を前提とした相違点1に関する審決の認定も誤りである。

(2)  容易想到性の判断の誤り(取消事由2)

ア 相違点1について

引用例1には,ウインドパークによる電力網のサポートについて,記載も示唆もなく,さらに,ウインドパークが接続されている電力網の管理者ないしオペレーターによって,ウインドパークの外部からウインドパークの実際の出力を制御ないし調節することにより,電力網のサポートの柔軟性を高めることについて,記載も示唆もない。

「ウインドパークの供給電力を外部から調節可能とすること」,「ウインドパークの外部設定の電力出力により,0から100%の範囲内に設定値を設定すること」は,本願優先日当時の当業者には,想定を超える技術である。ウインドパークの設置者は,公衆電力網の設置者(その管理者)とは異なる独立の事業主体であり,ウインドパークの出力をそもそも公衆電力網という外部から制御ないし調節することはあり得なかった。

したがって,相違点1に係る構成は,本願優先日当時,当業者が引用発明から容易に想到し得るものではない。

イ 相違点2について

(ア) 引用発明において,ウインドパークの実際の出力をウインドパークの定格出力の0から100%の所望値に設定するという本願発明の構成を採用することは,ウインドパークの実際の出力をウインドパークが接続する給電送電網のコンポーネント(変電所の変圧器等)の最大容量によって定まる許容最大出力(一定値)に維持することにより,該給電送電網のコンポーネントを最適化された態様で利用ないし負荷するという引用発明の目的に反するものであり,そのような構成を採用すると,引用発明の目的を実現することができなくなると同時に,引用発明の上記不可欠の構成を喪失することになる。

さらに,引用発明では,ウインドパークは「オーバーサイジング」されていることから,少なくともウインドパークの実際の出力をウインドパークの定格出力の100%に設定すると,給電送電網のコンポーネント(変電所の変圧器等)が過負荷の状態になり,その結果,給電送電網のコンポーネントに障害が発生し,場合によっては使用不能になる。

よって,引用発明において本願発明の上記構成を採用することには,阻害要因がある。

(イ) 国際公開WO99/33165(甲2の1。以下「引用例2」という。)に記載された発明の解決課題は,電力網の電圧の過度の変動の防止であり,また,特開平8-317568号公報(甲3。以下「引用例3」という。)に記載された発明の解決課題は,電力網に接続された複数種類の発電機間における供給無効電力の適切な分担であり,引用例2及び3に記載された発明と引用発明及び本願発明とは,解決課題において相違する。

そして,引用例2及び3に記載された発明は,いずれも電力網に供給する電力を変更するものであるのに対して,引用発明は,ウインドパークの出力を常時ネットワークコンポーネントの最大容量によって定まる許容最大出力(一定値)に維持するものであるから,引用例2及び3に記載された発明と引用発明とは,課題解決手段においても,相違する。

したがって,引用発明に引用例2に示されていると主張されている周知技術,引用例3に示されていると主張されている慣用手段を適用して,本願発明に改変することが容易であるとはいえない。

(3)  審理手続上の瑕疵(取消事由3)

拒絶査定は,引用例1における記載箇所を具体的に特定することなく認定した引用発明に基づいて本願発明を拒絶したものであり,証拠による事実認定を欠いた違法な拒絶である。

特許法150条5項では,審判手続において職権証拠調べを行った場合には,審判請求人に対して攻撃防御の機会を与えなければならない旨が規定されている。本件審判手続では,引用例1の3ページ3行目ないし4行目(対応する特表2003-511615号公報の段落【0008】)に記載された事項は,審判における職権証拠調べによって初めて発見された事項であるにもかかわらず,審判請求人に対して攻撃防御の機会が与えられなかった点において,審決には,手続上の瑕疵がある。

2  被告の反論

(1)  引用発明及び本願発明の認定の誤り(取消事由1)に対して

ア 引用発明の認定の誤りに対して

引用例1の記載内容に加え,「発電機」の出力を制御することは「風力発電設備」の出力を制御することに相当することからすると,引用例1には,「送電網の電圧に応じて個々の風力発電設備の出力電力を,その定格出力電力に対して0から100%の範囲内の所望値に設定することにより,風力発電施設全体を制御できる」点が開示されているといえる。そして,風力発電施設全体の定格出力電力は個々の風力発電設備の定格出力電力の総和であるから,引用例1には,風力発電施設全体の制御として,「許容最大供給電力を供給し続ける」ことに加えて,「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を(その定格出力電力の)0から100%の範囲内の所望値に設定する」ことも実質的に開示されているといえる。

よって,審決が,引用例1に基づいて,引用発明を「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を0から100%の範囲内の所望値に設定する」と認定したことに誤りはない。

イ 本願発明の認定の誤りに対して

本願発明に係る特許請求の範囲における「ウインドパークの制御入力部」は,制御入力部がウインドパークの内部の構成であると規定したものではなく,ウインドパークのための制御入力部であるとの機能を規定したものと解することができる。したがって,制御入力部は,ウインドパークの内部の構成となる場合と,外部の構成となる場合がある。

(2)  容易想到性の判断の誤り(取消事由2)に対して

ア 相違点1について

「ウインドパークの設置者は,公衆電力網の設置者(その管理者)とは異なった独立の事業主体」であるということは,本願発明に係る特許請求の範囲には記載されておらず,これに基づく原告の主張は失当である。

本件明細書の記載などから,一般的に,一つの風力発電装置を有するものもウインドパークに含まれると解すべきであり,引用例2には,一つの風力発電装置(風力装置)を有するウインドパークの出力を公衆電力網という外部から制御ないし調整することが開示されているから,「ウインドパークの供給電力を外部から調整可能とすること」が,本願優先日当時,当業者が全く想定することができなかったとはいえない。

イ 相違点2について

前記のとおり,引用発明を,風力発電施設全体の出力電力を(その定格出力電力の)0から100%の所望値に設定するものとした審決の認定に誤りはない。したがって,原告の主張は,その前提となる引用発明の認定において誤りがあり,理由がない。

引用発明は,発生した電力を送電網に供給する風力発電施設の運転方法に関する発明であり,引用例2は,電力網に電力を供給する風力装置の分野における周知技術を示すものであり,引用例3は,電力網に電力を供給する際の慣用手段を示すものである。そうすると,引用発明,上記周知技術及び上記慣用手段は,電力網に電力を供給する技術であるという点で共通しており,さらに,一般的に電力網の電圧の変動防止は当然に要求される課題であるから,この課題を解決するために,引用発明に上記周知技術及び上記慣用手段を適用する動機付けが存在する。

(3)  審理手続上の瑕疵(取消事由3)に対して

拒絶理由通知や拒絶査定において,引用発明や周知技術等を認定するに当たり,個々の引用例における記載箇所を具体的に特定するか否かは,個々の事案に応じて審査官が裁量の範囲内で決定し得る事項というべきである。

原告は,審査官からの拒絶理由通知に対する平成19年7月17日付意見書(乙1)において,審査官が拒絶理由で引用した引用例1ないし3に関して,各引用例記載の発明の内容,本願発明と各引用例記載の発明との相違点及びこれら引用例記載の発明の組合せによる本願発明の容易想到性に関して具体的に主張している。原告は審査官が通知した拒絶理由の趣旨を十分理解して意見を述べているのであり,防御権を奪ったことにはならない。

また,引用例1は,審査官からの拒絶理由通知において引用されていたものであって,審決で新たに引用された刊行物ではない。したがって,特許法150条5項に違反する手続上の瑕疵はない。

第4当裁判所の判断

当裁判所は,審決には,引用発明の認定の誤り(取消事由1)及び相違点2についての容易想到性の判断の誤り(取消事由2)があると判断する。その理由は,以下のとおりである。

1  引用発明の認定の誤り(取消事由1)について

審決は,引用発明が,「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を定格出力電力の0から100%の範囲内の所望値に設定するステップからなる」風力発電施設の運転方法であると認定したが,同認定には,以下のとおりの誤りがある。

(1)  事実認定

本願優先日前に頒布された刊行物である引用例1(甲1の1)には,以下の記載があり(翻訳文を記載する。),引用例1中の図2は別紙3のとおりである(説明部分は,翻訳である。)。なお,引用例1は,国際特許出願が平成13年4月12日に国際公開され,特表2003-511615号公報(甲1の2)は,平成15年3月25日に,引用例1に係る国際特許出願の翻訳文として公表されたものであるから,引用例1の翻訳は上記公報の記載によるのが相当である。

「風力発電設備はいつ時でも定格レベルでコンスタントに運転するとは限らず,従って,風力発電施設全体としては最大電力出力(定格出力電力量)を連続して出していないことから,風力発電施設の定格出力電力量が供給し得る最大全出力電力に対応してないと当該風力発電施設は最大効率で利用できないことになる。」(2頁第2段落)

「従って,本発明は,可及的最大送電網出力電力よりも高い全出力電力を出せる風力発電施設を提供するものである。・・・全最大出力電力量を超過すると,常に全最大出力電力量となるように個々の風力発電設備を調整する。このことは,公称ないし定格風速(風力発電設備がその定格出力電力量になるときの風速)以上の風速の場合に,少なくとも一基,または全ての風力発電設備が(僅かだけ)絞り込まれた出力電力量(例えば,1MWの代わりに940kWの出力電力量とか)を出すように運転される。」(2頁第3段落)

「本発明の利点は明らかである。以上のことから,送電網の送電網構成部品(例えば変圧器や送電線など)が最適化された態様(熱的限度まで利用することもその可能性の一つである)で利用されるか,付加(判決注:「負荷」の誤記と解される。)されるのである。・・・」(2頁第4段落)

「風力発電設備の制御ないし調整のためには,出力電力量を0~100%(定格出力電力に対して)の範囲内で調節するデータ入力が備わっておれば,その方が望ましい。・・・この基準値としては,0から定格出力電力の間,例えば0から1MWの範囲の値であればどのような値であってもよい。」(2頁第5段落)

「出力電気を制限するために,そのデータ入力を直接利用することができる。しかしながら,調整器により,送電網の電圧(風力発電施設の送電網か,供給送電網における電圧)に応じて発電機の出力を制御することも可能である。」(3頁第1段落,第2段落)

「もう一つの重要な機能については,風力発電施設の調整に関して詳述する。例えば風力施設には10基の風力発電設備があるとして,各節日(判決注:「各設備」の誤記と解される。)の定格出力発電量が600kWであるとする。また,送電網構成部品の容量(ライン容量)または変電所における限定された容量からして,送電しうる最大出力電力量が5200kWに制限されているものと仮定する。」(3頁第3段落)

「そこで,基準値(データ入力)により,全ての風力発電設備を520kWの最大出力電力に制限するオプションが考えられる。そのオプションで,送電しうる出力電力を制限する要件が満たされることになる。」(3頁第4段落)

「・・・全ての風力発電設備が同時に絞り込んだ値(例えば全てを520kW)に調整すれば,良好な立地条件にある一部の風力発電設備がその出力発電量を達成するのは明らかであるが,立地条件の良好なところに立っている風力発電設備の陰になって建っている・・・一部の他の風力発電設備には風当たりが少なく,そのために,例えば460kWの出力電力しか出せないことがあり,520kWの最大絞り込み出力電力には達しない。従って,この場合に風力発電施設で出力できる全出力電力は,5200kWの許容制限出力電力以下になってしまう。」(3頁第6段落)

「この場合,本発明による風力発電施設の出力電力調整法では,可及的最大電力が出せるように個々の発電設備を制御している。このことは,例えば最前列(即ち,最良の立地条件)にある設備が高出力電力,例えば定格出力電力(即ち,絞り込まれていない運転状態)に調節されることを意味する。・・・風力発電施設調整装置は個々の発電設備を,最大許容送電量を超過しないと同時に,得られる仕事量(kWh)が最大値になるように調整されるのである。」(3頁第7段落,4頁第1段落)

「風力発電施設もしくは個々の発電設備を制御ないし調整するには,その発電設備のデータ入力と接続してデータ/制御処理装置を接続することも可能であり,その場合,(各発電設備に)実際に作用している風速からその発電設備ないし風力発電施設全体に最も有利な出力電力絞り込み値に設定することができる。」(4頁第3段落)

(2)  判断

上記によれば,引用例1には,以下の技術が記載されていると解される。

風力発電設備(本願発明の「風力発電装置」に該当する。)は,風力によって発電する設備であることから,気象条件や立地条件によって発電量が異なり,全ての風力発電設備から常に最大電力出力が得られるとは限らない。したがって,従来の複数の風力発電設備を備えた風力発電施設(本願発明の「ウインドパーク」に該当する。)では,施設全体の最大電力出力を連続して出すことができなかった。そこで,風力発電施設が,送電網の最大許容送電量(可及的最大送電網出力電力)よりも高い全出力電力が出せるようにした上で,全出力電力が送電網の最大許容送電量を超過する場合には,風力発電施設調整が働き,常に送電網の最大許容送電量となるように個々の風力発電設備を調整するとの構成を採用することにより,上記課題の解決を図った。具体的には,風力発電施設の全出力電力が送電網の最大許容送電量となるように,少なくとも1基,又は全ての風力発電設備の出力電力が,定格出力電力の0から100%の範囲内で調整され,全ての風力発電設備を同様に調整することも,風力発電設備によって調整の程度が異なることも可能である。そして,送電網の電圧に応じて,風力発電設備の発電機の出力を制御することも可能である。また,個々の風力発電設備を調整するには,発電設備のデータ入力と接続してデータ処理装置を接続することも可能である。これにより,送電網の送電網構成部品が最適化された態様で利用されることができる。

以上によると,引用例1には,「複数の風力発電設備を備えた風力発電施設であって,上記風力発電施設に接続されている送電網に,発生した電力を供給する風力発電施設の運転方法は,上記風力発電施設により供給される電力をそれぞれの風力発電設備のデータ入力に接続されたデータ処理装置で制御可能として,全ての風力発電設備の出力電力を上記データ処理装置で定格出力電力の0から100%の範囲内で調節することができると共に,風力発電施設が送電網の最大許容送電量よりも高い全出力電力を出せるようにしたうえで,送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力が送電網の最大許容送電量となるように調整するステップからなる運転方法。」との技術が開示されているといえるが(下線部分は,審決における引用発明の内容の認定と異なる部分である。),「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を(その定格出力電力の)0から100%の範囲内の所望値に設定する」との技術は,開示されていない。

(3)  被告の反論に対して

被告は,風力発電施設全体の定格出力電力は,個々の風力発電設備の定格出力電力の総和であるから,引用例1には,風力発電施設全体の制御として,「許容最大供給電力を供給し続ける」ことに加えて,「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を(その定格出力電力の)0から100%の範囲内の所望値に設定する」ことも実質的に開示されているといえると主張する。

しかし,被告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,引用例1で開示された発明において,個々の風力発電設備をその定格出力電力の0から100%の範囲内で調整する目的は,送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を送電網の最大許容送電量とするためであって,風力発電施設全体の出力電力を送電網の最大許容送電量よりも小さくするためではない。また,引用例1で開示された発明では,個々の風力発電設備の定格出力電力を合計した風力発電施設の最大出力電力は,送電網の最大許容送電量よりも大きいことから,風力発電施設全体の出力電力を定格出力電力の100%と設定すると,送電網の最大許容送電量を超過することになり,このように送電網の最大許容送電量を超えた出力電力となるように設定することも想定されていない。したがって,引用例1に,「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を(その定格出力電力の)0から100%の範囲内の所望値に設定する」ことが実質的に開示されているとはいえない。

(4)  小括

以上のとおり,審決が,引用発明を「送電網の電圧に応じて風力発電施設全体の出力電力を0から100%の範囲内の所望値に設定する」風力発電施設の運転方法であると認定した点には誤りがあり,これを前提とした相違点の認定にも誤りがある。

2  相違点2についての容易想到性の判断の誤り(取消事由2)について

審決は,本願発明の相違点2に係る構成は,容易想到であると判断したが,同判断には,以下のとおり誤りがある。

(1)  事実認定

ア 本願発明

(ア) 本願発明に係る特許請求の範囲は,第2の2に記載のとおりである。

また,本件明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある。なお,本願に係る国際特許出願における出願書面中の図11(Fig.11)及び図23(Fig.23)は別紙1及び2のとおりである。

「【0020】 低電力の(孤立の)電力網の場合,比較的大きな消費者が電力網から切り離されたなら,電力網の周波数が急速(突然に)に上昇する。」

「【0021】 電力網に接続されているので,多くの電気的なデバイス,例えばコンピュータ,電気モータなどは,しかしながら,電力網の周波数の変化およびそれの急速な変化に対して設計されていないので,電気的デバイスに損傷を生じ,破壊に至ることもある。

【0022】 この発明の目的は,風力発電装置(ウインドパーク)が電力網に接続された時に,上述した問題を排除することにある。」

「【0025】 図11は,電力網の周波数fに依存して,出力電力Pを減じるために(ウインドパーク)風力発電装置での要求を示す。・・・

【0026】 例えば電力網周波数に0.6%の上昇があった時(つまり100.6%),(ウインドパークの)風力発電装置の電気的なパワーは,まだ低減されない。

もしその後,電力網周波数が更に上昇すると,風力発電装置の電気的なパワーが低減される。」

「【0029】 風力発電装置により供給される電力をそのようにして調節することにより,電力網周波数の変動を回避でき,あるいはかなりに低減できる。」

「【0034】 ・・・風力発電装置の運転中,発電機で生じた電気的な有効電力は,現在に起こっている風速に依存して変化する。その結果,電力網の電圧(大きさおよび/又は位相)も,現在起こっている風速に依存して,例えば給電ポイントで変化する。・・・

【0035】 電力網,例えば公衆の電力メインに供給される電気的パワーを供給することを含む状況では,電力網電圧に変化が起きる。しかしながら,接続された消費者の信頼できる動作の観点では,そのような変化は,きわめて接近した限界内でのみ許可される。

【0036】 給電網での回路電圧に関し,特に中間電圧レベルにて,基準値から顧客的大きな変移は,所定の限界値を超過するか下回った時に,ステップ変圧器のようなスイッチデバイスを動作させる限り,その変移を補償できる。そのようにして,電力網電圧が実質的に所定の許容範囲内に維持される。

【0037】 この発明の目的は,風力発電装置やウインドパークのみでなく,風力発電装置の運転方法に関し,有効電力の供給に変動があっても,風力発電装置を設置することなく,電力網の所定のポイントにて,望まれない電圧変動を減じるか,少なくとも大きく増大させないことにある。」

「【0041】 この発明は,供給される電力の位相角を消費者または電力網の電圧に依存して変化させることにより,消費者での印加電圧,特に電力網での電圧での望まれない変動を回避する。このことが,風力発電装置により供給された有効電力の変化により起こる,望ましくない電圧変動,および/または消費者により電圧網から取り出される電力を補償する。」

「【0054】 図23は,電力網の電圧と位相角との間の関係を示す。もし,電圧が,電圧値UminとUmaxの間にある,基準値Uref からそれると,電圧検出ポイント(図21の22)での電圧を安定させるために,誘導性または容量性の無効電力が電力網に供給されたかによる,変位の軌跡に基づくように,図中の特性カーブに従って,位相角φが変更される。」

(イ) 以上によると,本願発明は,風力発電施設において,比較的大きな消費者が電力網から切り離された場合などに生じる電力網の周波数の(急速な)変化や,風速の変化によって生じる電力網の電圧の変化は,消費者や電気的デバイスにとって望ましくないことから,電力網の周波数が基準値より高いか又は低いとき,及び電力網の電圧が基準値より高いか又は低いときに,ウインドパークの供給電力を低減し,電力網に供給される電流と前記電力網の電圧の間の位相位置の位相角φを,電力網の電圧に依存して変更するという,相違点2に係る構成を採用することにより,電力網の周波数や電圧の変化を回避するという作用効果を有する発明であると解される。

イ 本願優先日前に頒布された刊行物に記載された発明等

(ア) 国際公開WO99/33165(引用例2)

本願優先日前に頒布された刊行物である引用例2(甲2の1)には,以下の記載がある(翻訳文を記載する。)。なお,引用例2は国際特許出願が平成11年7月1日に国際公開され,特表2001-527378号公報(甲2の2)は,平成13年12月25日に,引用例2に係る国際特許出願の翻訳文として公表された。したがって,引用例2の翻訳として上記公報の記載を引用することとする。

「本発明は,電力を電気使用者,特に配電網に出力するようにロータによって駆動される発電機を備える風力装置を運転する方法に関する。」(1頁第1段落)

「・・・風力装置の運転では,発電機によって供給される電力は,現在の風速,従って,風力に従って変動する。この結果,発電機電圧は風力に応じて変動し得る。・・・」(1頁第3段落)

「冒頭に記載した種類の方法において,本発明の目的は,風力発電機によって配電網に出力される電力が,配電網の印加配電網電圧に応じて調整されることにより達成される。」(2頁第5段落)

「上記したように,エネルギー発生において,発生し得るエネルギーの変動が有り得て,風力に依存する風力装置の場合は避けられない。・・・むしろ,本発明は,電力消費の変動は使用者の側でも生じて,結果として配電網電圧が変動するという問題に取り組む。・・・」(3頁第2段落)

「本発明は,発電機の出力電力を使用者又は配電網の電圧に応じて調整することにより,使用者に印加される電圧,特に,配電網の電圧の望ましくない変動を防止する。これにより,風力の変化で生じ得る望ましくない電圧変動も防止される。」(3頁第3段落)

「図3の線図は,縦座標にプロットされて,風力装置によって出力される電力と,横座標にプロットされた配電網電圧の間の関係を示す。もし配電網電圧が,電圧値UminとUmaxの間に位置するその基準値からほんの僅かしか偏倚していなければ,曲線の上方直線部(横座標に平行な直線)に対応する一定電力が発電機によって配電網に出力される。もし配電網電圧が,更に上昇して,点P1によって定義される値を超えるならば,供給電力は低減される。・・・」(5頁第4段落,6頁第1段落)

以上によると,引用例2には,配電網の電圧が基準値よりも変動した場合に,供給電力を低減することにより,望ましくない電圧変動を防止するという,風力装置の運転方法が開示されていると認められる。

(イ) 特開平8-317568号公報(引用例3)

引用例3は発明の名称を「巻線形誘導機の電圧制御装置」とする特許の公開公報であり,同公報には,以下の記載がある(甲3)。

「【0003】 そこで,最近は揚水発電所に可変速揚水発電システムを適用するようになっている。これは,発電電動機として巻線形誘導機を使用し,巻線形誘導機の二次側を低周波で交流励磁して,巻線形誘導機の回転子が同期速度でなくても一次側の系統電圧と同期運転できるようにしている。」

「【0008】 さらに,この端子電圧制御ループの外側にプラント電圧即ち系統電圧を一定にするための系統電圧制御ループL3が設けられている。系統電圧制御ループL3は系統電圧をプラント電圧検出器6で検出し,系統電圧が所定の指令値,例えば定格電圧を維持するようにプラント電圧制御器9で制御する。プラント電圧制御器9からの系統電圧調整信号は電圧制御器7に入力される。」

「【0015】 本発明の目的は,系統電圧が変動した場合,可変速機のプラント電圧制御が他の発電所の定速機や同じ発電所内の隣接機のプラント電圧制御と協調を取り,無効電力の供給を適切に負担することができる巻線形誘導電動機の電圧制御装置を得ることである。」

「【0017】【作用】 系統電圧が変動したとき,プラント電圧制御器は主変圧器の系統側の系統電圧が所定の指令値になるように系統電圧調整信号を出力する。位相補償器はプラント電圧制御器からの系統電圧調整信号に位相補償を行い,電力系統に接続された他の発電機の系統電圧調整信号と同等な特性となるような系統電圧調整信号を電圧制御器に出力する。電圧制御器は系統電圧調整信号を加味して巻線形誘導機の端子電圧が予め定めた設定値となるように電流制御器に端子電圧調整信号を出力し,電流制御器は端子電圧調整信号に基づいて巻線形誘導機の二次巻線に供給する二次電流を制御する。従って,系統電圧が変動したとき可変速機である巻線形誘導機が系統電圧調整のための無効電力を全て負担するようなことはなくなり,他の定速機との適切な分担が可能となる。」

以上によると,引用例3には,揚水発電所の発電電動機として使用された巻線形誘導機の系統電圧が所定の指令値を維持するように,系統電圧が変動したときに出力する系統電圧調整信号に基づいて,電力網に供給される電流と電圧との間の位相差を変更し,無効電力の供給を適切に負担する,巻線形誘導機の電圧制御装置が開示されていると認められる。

(2)  判断

審決が認定した本願発明と引用発明の相違点2は,第2の3(2)ウ(イ)記載のとおりである。本願発明は,相違点2に係る構成を採用することにより,ウインドパークの電力網の周波数や電圧の変化を回避するとの効果を実現する発明である。

前記のとおり,引用発明は,風力発電施設の全出力電力を送電網の最大許容送電量とするために,風力発電施設が送電網の最大許容送電量よりも高い全出力電力が出せるようにした上で,個々の風力発電設備の出力電力を定格出力電力の0から100%の範囲内で調整するという構成を備えた風力発電施設の運転方法である。引用発明の解決課題は,従来,全ての風力発電設備から常に定格出力電力が得られるとは限らず,風力発電施設全体の最大電力出力を連続して出すことができなかった風力発電施設において,常に送電網の最大許容送電量を出力できるようにして,送電網の送電網構成部品が最適化された態様で利用できるようにすることである。

したがって,引用発明と本願発明とは,解決課題において,相違する。

また,課題解決手段をみると,引用発明では,常に送電網の最大許容送電量を出力できるようにしたものであるのに対し,本願発明では,電力網の周波数や電圧が基準値より高いか又は低いときに,ウインドパークの供給電力を低減する,すなわち,ウインドパークの供給電力を,送電網の最大許容送電量との関係によらず,電力網の周波数や電圧により制御するものである点において,両者は,課題解決手段において相違する。

そうすると,本願発明の課題解決手段は,引用発明の課題解決手段を採用することに対する妨げになるから,引用発明に相違点2に係る構成を組み合わせることには,阻害要因があるといえる。

また,引用例2に開示された技術は,望ましくない電圧変動を防止するために,配電網の電圧が基準値よりも変動した場合に,供給電力を低減するものであり,引用例3に開示された技術は,発電機の系統電圧の変動を防止するために,電力網に供給される電流と電圧の間の位相差を,上記電力網の電圧に依存して変更するものである。したがって,いずれも引用発明とは解決課題が異なり,引用発明に接した当業者が,引用例2及び3に開示された技術を組み合わせる動機付けが存在するとはいえない。

以上によると,引用発明に接した当業者が,本願発明における相違点2に係る構成に容易に想到し得たとは認められない。

(3)  被告の主張に対して

これに対して,被告は,引用発明,引用例2に記載された周知技術及び引用例3に記載された慣用手段は,電力網に電力を供給する技術であるという点で共通しており,さらに,一般的に電力網の電圧の変動防止は当然に要求される課題であるから,この課題を解決するために,引用発明に上記周知技術及び上記慣用手段を適用する動機付けがあると主張する。

しかし,引用発明と引用例2及び3に記載された技術とは,電力網に電力を供給する技術であるという点で共通するとしても,そのような共通点があることのみを理由として,解決課題の異なる引用発明と引用例2及び3に記載された技術とを組み合わせて,本願発明における相違点2に係る構成に至ることが容易であるとはいえない。また,電力網の電圧の変動防止が,電力網に電力を供給する上での当然に要求される課題であったとしても,引用発明は,常に送電網の最大許容送電量を出力できるようにするとの解決課題を設定して,その解決手段を図ったものであるのに対し,引用例2及び3に記載された技術は,電力網の電圧の変動防止を解決課題として設定し,その解決手段を図ったものであるから,引用発明と引用例2及び3に記載された技術とは,解決課題において異なり,両者を組み合わせる動機付けは存在しない。

この点の被告の主張は,採用できない。

(4)  小括

以上によると,本願発明における相違点2に係る構成が容易想到であると判断した審決には誤りがある。

3  結論

以上のとおり,原告主張に係る取消事由1及び2には理由があり,審決は,その結論に影響を及ぼす誤りがあることになるから,その余の点を判断するまでもなく,違法である。

よって,原告の請求は理由があるから,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 八木貴美子 裁判官 知野明)

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