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知財高等裁判所 平成23年(ネ)10087号 判決 2013年3月05日

控訴人(原告)

株式会社データ・テック

訴訟代理人弁護士

伊藤真

平井佑希

弁理士

鈴木正剛

藤掛宗則

補佐人弁理士

栗下清治

被控訴人(被告)

カヤバ工業株式会社

訴訟代理人弁護士

松本司

井上裕史

復代理人弁護士

佐合俊彦

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1控訴の趣旨

「原判決を取り消す。被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の各製品を生産,譲渡,貸渡し,輸出若しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。被控訴人は,その占有に係る上記各製品を廃棄せよ。被控訴人は,その占有に係る上記各製品を製造するための金型を廃棄せよ。被控訴人は控訴人に対し,1億円及びこれに対する平成22年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」との判決及び仮執行宣言。

第2事案の概要

1  控訴人は,発明の名称を「移動体の操作傾向解析方法,運行管理システム及びその構成装置,記録媒体」とする発明に係る特許第3229297号の特許権者である(平成11年10月12日特許出願,優先日平成10年10月12日,優先権主張国 日本国,登録日平成13年9月7日)。

控訴人は,原判決別紙被告製品目録1ないし3記載の各製品(被告機器)の生産行為等が上記特許第3229297号の請求項9(本件発明1)に係る特許権を侵害し,同目録4,5記載の各解析ツールを記録した各記録媒体(被告記録媒体)の生産行為等が請求項15(本件発明2)に係る特許権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,被告機器及び被告記録媒体(合わせて被告製品)の差止請求,廃棄請求等をするとともに,損害賠償請求をした。

これに対し,被控訴人は,被告製品が本件発明1,2の技術的範囲に属しないことや,新規性欠如又は進歩性欠如を理由とする本件特許権の無効(特許法104条の3),作用効果不奏効等を主張した。

そして,控訴人は,原審の弁論準備手続が終結した後の平成23年9月16日,被控訴人が特許庁に請求した特許無効審判(無効2011-800136号)において,請求項9,15の特許請求の範囲の記載の一部を改める訂正請求をするとともに(本件訂正),同月28日に開かれた原審の第2回口頭弁論期日において,被告製品が本件訂正後の請求項9,15の発明の技術的範囲に属し,本件訂正により無効理由が解消された旨の対抗主張をした。被控訴人は,かかる対抗主張は時機に後れた攻撃方法で却下されるべきであると主張している。

2  原判決は,①本件訂正に係る控訴人の対抗主張を民事訴訟法157条1項により却下し,②被告機器は本件訂正前の本件発明1の技術的範囲に,被告記録媒体は本件訂正前の本件発明2の技術的範囲にそれぞれ属するが,③本件訂正前の本件発明1,2は乙第6号証(特開昭62-144295号公報)に記載された引用発明1,2に乙第2,第3号証(実願平3-26831号のマイクロフィルム,特開平6-223249号公報)に記載の周知技術を組み合わせることで,本件優先日当時,当業者において容易に発明をすることができたもので進歩性を欠き,本件発明1,2に係る本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるとして,控訴人の請求を棄却した。

3  前記1の特許無効審判(無効2011-800136号)においては,原判決言渡後の平成24年2月27日,本件訂正後の請求項9,15の発明は新規性又は進歩性を欠くものではないとして,本件訂正を認め,請求を不成立とする旨の審決がされたが,その審決取消訴訟(平成24年(行ケ)第10129号)で,同年10月17日,当裁判所は,本件訂正後の請求項9,15の発明は進歩性を欠くとして,審決を取り消す判決を言い渡した。判決の理由は,特開昭62-144295号公報(本訴の乙6)に記載の発明に,実願平3-26831号(実開平4-123472号)のマイクロフィルム(本訴の乙2)に記載の発明と,特開平10-24784号公報(本訴の乙8),特開平10-177663号公報(本訴の乙1),特開平5-150314号公報(本訴の乙11の1),特開平5-258144号公報(本訴の乙11の2),特開平6-4733号公報(本訴の乙11の3),特開平6-300773号公報(本訴の乙11の4),特開平10-63905号公報(本訴の乙11の5)に記載の周知技術を適用することで,本件優先日当時,当業者において本件訂正後の請求項9の発明に容易に想到することができ,また,さらに特開平6-223249号公報(本訴の乙3)に記載の発明を適用することで,本件優先日当時,当業者において本件訂正後の請求項15の発明に容易に想到することができたから,請求項9,15の発明は進歩性を欠くというものである。

この判決は,控訴人による上訴があったので,未確定である。

4  本件の前提となる事実は,原判決「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであり,当審における争点(原審においても同じ)は,上記第2の3記載のとおりである。

第3当事者の主張

当事者の主張は,原審争点についての補充主張を次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」の第2の4「争点に関する当事者の主張」に記載のとおりである。被控訴人は,控訴人が本件訂正に基づく対抗主張をしたのに対応して,当審で,乙第8号証を主引用例とする新規性欠如,進歩性欠如を理由とする主張(特許法104条の3)を追加した。

1  乙第6号証(特開昭62-144295号公報)に記載された発明に基づく新規性欠如(無効理由4)について

【控訴人の主張】

(1) 控訴人は,本件発明1(本件訂正前の請求項9の発明)が,構成要件1E以外の構成で乙第6号証記載の引用発明1と一致する旨の主張をしていない。これに反する原判決75頁6,7行の説示は誤りである。

本件発明1の「特定挙動」は,移動体の「操作傾向の解析」を可能にする車両の挙動に関わる情報の記録の契機(トリガ)となる特徴的な挙動であり,操作者,運転者が,所定の条件を通じて把握したい車両の挙動として,任意にその内容を決定することができ,かつ,操作者,運転者の運転能力等の事情に応じて個別に変更することができるものである。

他方,乙第6号証は,スピードの出し過ぎ等の管理を運転者(ドライバー)の自覚に任せるのでは,客観的に評価することが困難となる問題を解決するためのものであって,客観的にスピードを出し過ぎているか否かを判定し,運転者に把握させることが必要であり,運転者自身がスピードの出し過ぎであると考える速度を超過したか否かを,運転者自身が判定することは必要でない。そうすると,乙第6号証の「基準値」は,複数の運転者に共通し,装置に予め設定されている性格のものであって,例えば運転者ごとに任意の値を設定したり,装置に使用するカード状記録媒体ごとに任意に設定したりする性格のものではない。運転者が「基準値」を任意に変更できるものとすると,スピードの出し過ぎ等の管理を運転者の自覚に委ねるのと変わりなくなってしまうから,乙第6号証の目的を達し得ない。仮に乙第6号証において「基準値」を変更することができるとしても,カード状記録媒体ごとに任意に設定し得る本件発明1の「挙動条件」,「収集条件」とは性格が異なるから,上記「基準値」が本件発明1の「挙動条件」,「収集条件」に相当するとはいえず,また上記「基準値」によってその発生が判定されるスピード,急発進,急制動等も,本件発明1の「特定挙動」に相当しない。

したがって,乙第6号証では,本件発明1の「特定挙動」,「挙動条件」,「収集条件」の構成は開示されていない(構成要件1B,1E)。

また,乙第6号証の装置が収集する管理水準以上のスピードを出した回数等は,同水準以上のスピードを出した時点前後の測定データではないから,乙第6号証では,本件発明1の「特定挙動に関わる情報」の構成は開示されていない(構成要件1C)。

本件発明1にいう「移動体の操作傾向」とは,複数回の測定データにわたって繰り返し現れる運転操作の傾向を意味し,「移動体の操作傾向の解析」とは,かかるデータを複数回にわたって記録することにより可能となる,車両の特徴的な運転操作の傾向の解析を意味する。乙第6号証の運転管理パターン判定手段38が行う,ポイント(急発進等の回数と対応する係数の積の合計)の集計結果が運転管理パターンのどのランクに該当するかの判定は,集計結果をランク分けしているにすぎない。したがって,乙第6号証においては,運転傾向,操作傾向を解析しているものではなく,本件発明1にいう「移動体の操作傾向の解析」の構成は開示されていない(構成要件1C)。

結局,本件発明1と乙第6号証に記載の引用発明1は,構成要件1Eのみならず,構成要件1B,1Cにおいても相違する。

(2) 控訴人は,本件発明2(本件訂正前の請求項15の発明)が,「移動体の特定挙動に関わる情報を収集するための収集条件を所定の記録媒体に設定する処理」をコンピュータ装置に実行させるためのデジタル情報が記録されている構成以外の構成で乙第6号証記載の引用発明2と一致する旨の主張をしていない。これに反する原判決75頁11ないし13行の説示は誤りである。

前記(1)のとおり,乙第6号証の「基準値」は本件発明2にいう「挙動条件」,「収集条件」に相当せず,本件発明2にいう「特定挙動」,「特定挙動に関わる情報」,「移動体の操作傾向の解析」,「移動体の操作傾向を解析する処理」,「挙動条件」,「収集条件」の構成は開示されていないから,本件発明2と乙第6号証に記載の引用発明2は,これらの構成が関わる構成要件2Aないし2Cにおいて相違する。

(3) 以上のとおり,本件発明1,2と乙第6号証記載の引用発明1,2は実質的に同一でなく,本件発明1,2は新規性を欠くものではない。

2  乙第6号証に記載された発明等に基づく進歩性欠如(無効理由4)について

【控訴人の主張】

(1) 前記1のとおり,引用発明1の「基準値」は本件発明1の「挙動条件」に相当せず,前者の構成から後者の構成に改めることは容易でない。「基準値」をICカードに設定し,運転者が個別に変更できるようにすると,スピードの出し過ぎ等の客観的な評価ができなくなり,引用発明1の目的を達成することができないから,かかる構成の変更には阻害要因がある。

乙第2号証では,道路の状況の差により有効なデータ収集ができない問題にかんがみ,1周期(サイクル)の最大加減速ランクをインクリメントすることで,共通の加減速ランクデータを用いても,道路状況にあまり左右されずに加減速の履歴情報を収集することができるようにしたもので,道路状況によって基準となる値を変更することは予定されていない。そうすると,道路状況によって「基準値」を変更する引用発明1に,共通の加減速ランクデータを用いる乙第2号証記載の乙2発明を適用することは,動機付けを欠くもので,当業者にとって容易でない。

カード状記録媒体を用いて,自動車のデータレコーダのパラメータ等の設定を行うことが本件優先日当時の当業者の周知技術であったとはいえないし(乙2,3だけでは裏付けとして不十分である。),単にカード状記録媒体を用いてパラメータ等の設定を行うだけでは,本件発明1にいう「挙動条件」,「収集条件」をカード状記録媒体に記録,管理して,把握したい車両の挙動に合わせて運転者ごとに「挙動条件」を設定,変更する構成に想到することはできない。

よって,乙第6号証に記載された引用発明1に乙2発明を適用することが困難であるか,適用ができたとしても本件発明1との相違点に係る構成に想到することが本件優先日当時の当業者にとって容易でない。結局,本件発明1は進歩性を欠くものではない。

(2) 本件発明2にいう「収集条件」は単なるパラメーター(変数)ではなく,運転者の操作傾向の解析を可能とするべく,特定挙動の発生前後の測定データを記録媒体に記録されるもので,運転者の事情に応じて任意に設定,変更する性格のものである。本件発明2にいう「所定の記録媒体」も,運転者が誰か特定できるものでなければならない。

したがって,本件発明2にいう「収集条件」は乙第6号証記載の引用発明2にいう「基準値」とは異なるし,引用発明2に本件発明2との相違点に係る構成を採用する動機付けが存しない。

よって,乙第6号証に記載された引用発明2等に基づいて本件発明2との相違点に係る構成に想到することが本件優先日当時の当業者にとって容易でない。結局,本件発明2も進歩性を欠くものではない。

3  訂正を理由とする対抗主張について

【控訴人の主張】

(1) 本件訂正は,請求項9,15の特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明に当たり,適法である。

(2) 本件訂正後の請求項9の発明(本件訂正発明1)は,訂正前の構成要件1B,1C,1Eを減縮したものであり,請求項15の発明(本件訂正発明2)は訂正前の構成要件2Aを減縮したものであるところ,乙第1ないし第3号証にも,乙第6,第8号証にも,本件訂正発明1,2にいう「特定挙動」等の構成は開示されていないから,本件訂正発明1,2は新規性を欠くものではない。また,本件訂正発明1,2は,本件優先日当時,乙第1号証(特開平10-177663号公報)を主引用例にしたとしても,また乙第2号証(実願平3-26831号(実開平4-123472号)のマイクロフィルム)を主引用例にしたとしても,さらに乙第3号証(特開平6-223249号公報)を主引用例にしたとしても,進歩性を欠くものではない。

(3) 乙第6号証を主引用例としても,新規性欠如,進歩性欠如の無効主張は認められない。

乙第6号証記載の発明で判定される管理水準以上のスピードで走行した事実等(回数等)は,本件訂正発明1にいう「特定挙動」発生前後の車両の挙動に関わる情報ではないし,所定時間分記録されるものでもない。乙第6号証で行われるランク判定も,単なる運転結果の評価にすぎず,運転者の把握したい操作,運転の傾向の把握ではない。運転者が管理水準以上のスピードで車両を走行させた事実の判定に用いられる安全スピード基準値等も,本件訂正発明1にいう「収集条件」に相当するものではなく,かかる安全スピード基準値等を運転者に固有のICカードに設定する動機もない。また,乙第6号証では,「収集条件に適合する挙動の情報」は記録されていない。

そうすると,本件訂正発明1と乙第6号証記載の発明は,少なくとも,

・相違点1

本件訂正発明1は,「前記挙動を特定挙動と判定して前記特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件に適合する挙動の情報をカード状記録媒体に記録する」ものであり,かつ,上記収集条件が「カード状記録媒体に設定されている」のに対して,乙第6号証記載の発明は,そのようなものでない点

で相違するから,本件訂正発明1と乙第6号証記載の発明とは実質的に同一ではない。

同様に,本件訂正発明2と乙第6号証記載の発明は,少なくとも,

・相違点2

本件訂正発明2は,「移動体の挙動を特定挙動と判定して前記特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件を記録媒体に設定する処理をコンピュータ装置に実行させる」ものであるのに対して,乙第6号証記載の発明は,そのようなものでない点

で相違するから,本件訂正発明2と乙第6号証記載の発明とは実質的に同一ではない。

そして,本件訂正発明1,2と乙第2,第6号証記載の発明とは技術的課題が相違する(乙第2号証記載の発明についてみれば,1サイクルの最大加減速ランクをインクリメントすることにより,道路状況の違い(一般道路か高速道路か)によらず,共通の加減速ランクデータを用いてもあまり道路状況に左右されずに加減速の履歴情報を収集することを技術的課題とし,本件訂正発明1,2の技術的課題とは異なる。)。乙第6号証の基準値をカード状記録媒体に相当するICカードに設定することは同書証に記載も示唆もされておらず,乙第6号証の目的に照らせば,かかる構成に改めるには阻害要因がある。したがって,本件訂正前の請求項9,15の発明(本件発明1,2)と同様に,乙第6号証記載の発明に乙第2号証記載の発明を適用することにより,あるいはさらに乙第11号証記載の周知技術を適用することによって,本件優先日当時,当業者において本件訂正発明1,2との相違点に係る構成に容易に想到できたものではない。

(4) 乙第8号証(特開平10-24784号公報)を主引用例としても,新規性欠如,進歩性欠如の無効主張は認められない。

(5) 以上のとおり,本件訂正発明1,2は新規性又は進歩性を欠くものではなく,本件訂正前から新規性欠如,進歩性欠如の無効理由は存しないか,又は本件訂正によって無効理由がすべて解消した。

(6) 被告機器の「トリガ判定閾値X」,「トリガ判定閾値Y」,「トリガ後記録時間」,「多重トリガ」は本件訂正発明1の「収集条件」に相当するから,被告機器は本件訂正発明1の構成要件1Bを充足する。被告機器は,車両の「操作傾向の解析が可能となるように」「トリガ判定閾値X」,「トリガ判定閾値Y」を超えた加速度(G)が表す「特定挙動の発生に応じて前記収集条件に適合する挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段」を備えているから,本件訂正発明1の構成要件1Cを充足する。また,被告機器のCFカードは本件訂正発明1にいう「少なくとも前記収集条件が設定されている」「カード状記録媒体」に当たり,本件訂正発明1の構成要件1Eを充足する。したがって,被告機器は本件訂正発明1の技術的範囲に属する。

同様に,被告記録媒体の解析ツールは,車両の「挙動を特定挙動と判定して当該特定挙動の発生前後に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件を所定の記録媒体に設定する処理」を実行するから,被告記録媒体は本件訂正発明2の構成要件2Aを充足し,同発明の技術的範囲に属する。

(7) 結局,本件訂正請求は特許法134条の2所定の要件を充足し,仮に本件訂正前の請求項9,15の発明が新規性又は進歩性を欠くものであるとしても,本件訂正発明1,2(本件訂正後の請求項9,15の発明)は新規性,進歩性を欠くものではなく(無効理由の解消),被告機器は本件訂正発明1の,被告記録媒体は本件訂正発明2の技術的範囲にそれぞれ属する。

(8) 原審は本件訂正に係る控訴人の対抗主張を時機に後れた攻撃方法として却下したが,被控訴人が引用する乙第6号証は,被控訴人が特許無効審判で新たな無効理由として主張するまでは,控訴人が検討する必要がなかったものである。乙第6号証が本件特許の異議手続で引用されていたとしても,控訴人に対し,同書証に基づく無効理由に対応して,訂正請求,訂正審判請求前に対抗主張をすることを強いるのは,失当な主張をすることを強いるもので不合理である。

原審の措置は,被控訴人には不当に有利に,控訴人には不当に不利に働くもので,控訴人は本来不要な訂正を強いられた上,さらに上訴しない限り反論できない不合理なものである。したがって,控訴人の前記対抗主張は,時機に後れたものとして却下されるべきではない。

【被控訴人の主張】

(1) 請求項15の特許請求の範囲の訂正によっても,発明の内容は同一であって,同請求項の訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものではない。したがって,本件訂正は訂正要件(特許法134条の2第1項各号)を満たさず,違法である。

(2) 乙第1号証を主引用例とすれば,本件訂正発明1,2は新規性又は進歩性を欠く。

(3) 乙第3号証を主引用例としても,本件訂正発明1,2は進歩性を欠く。

(4) 乙第6号証を主引用例とする進歩性欠如については,次のとおりである。

乙第6号証には,速度の異なる基準値を設定,変更する構成,運転者毎にデータ管理する構成がそれぞれ記載されているし,乙第2号証,乙第9号証の1ないし4には,「カード状記録媒体」に本件訂正発明1,2にいう「挙動条件」,「収集条件」を記録する構成が記載されている。乙第3号証には,「カード状記録媒体」にパラメータを設定することにより,運転者の意向に合わせて特別化,個人化できること,すなわちパラメータに関する各運転者の意向を組み込むことが記載されている。乙第11号証の1ないし5には,「特定挙動」又は事故の発生前後の車両の挙動に関わる情報を所定時間分収集する周知技術が記載されている。

そうすると,本件訂正前の請求項9,15の発明(本件発明1,2)と同様に,乙第6号証記載の発明に乙第2,第3号証等記載の発明や乙第11号証の1ないし5記載の周知技術を適用することにより,あるいはさらに乙第1,第8号証記載の周知技術も合わせて適用することにより,本件優先日当時,当業者において乙第6号証記載の発明との相違点に係る構成に容易に想到できたから,本件訂正発明1,2は進歩性を欠く。

なお,本件訂正の前後を問わず,請求項9,15の特許請求の範囲の記載では,誰が「挙動条件」,「収集条件」を設定するのか,主体が特定されていない。本件明細書の段落【0001】の記載に照らせば,本件訂正発明1,2では,管理者が挙動条件,収集条件を設定,変更することが前提とされているか,少なくとも運転者自身がこれらを設定,変更する構成に限定されているものではない。他方で,乙第6号証の「基準値」も,必ずしも複数の運転者に共通するものに限られない。本件訂正発明1,2では,1つの閾値によって判定される車両の挙動も「特定挙動」に当たるし,複数の閾値を組み合わせて判定することは当業者の周知技術,慣用技術にすぎない。一定の事象の発生前後のデータを測定,収集することは当業者の周知技術にすぎないし,本件訂正前の請求項9にいう「特定挙動に関わる情報」が「特定挙動」の発生前後の測定データを意味するのであれば,本件訂正発明2に係る訂正は訂正要件を充足しないことになる。データを繰り返し測定するかどうかは,当該装置の使用方法にすぎないが,乙第6号証の装置でも繰り返し測定することができることは明らかである。

(5) 乙第8号証を主引用例としても,本件訂正発明1,2は新規性又は進歩性を欠く。

(6) 以上のとおり,本件訂正後の請求項9,15の発明(本件訂正発明1,2)も,新規性ないし進歩性を欠き,同発明に係る特許は特許無効審判によって無効とされるべきものである。

第4当裁判所の判断

1  当裁判所は,本件優先日(平成10年10月12日)当時,乙第6号証(特開昭62-144295号公報)に記載の発明に,乙第2号証(実願平3-26831号(実開平4-123472号)のマイクロフィルム)に記載の発明と,乙第1号証(特開平10-177663号公報),乙第8号証(特開平10-24784号公報),乙第11号証の1ないし5(特開平5-150314号公報,特開平5-258144号公報,特開平6-4733号公報,特開平6-300773号公報,特開平10-63905号公報)に記載の周知技術を適用することで,当業者において,本件訂正前の請求項9の発明(本件発明1)及び本件訂正後の同請求項の発明(本件訂正発明1)に容易に想到することができ,また,さらに乙第3号証(特開平6-223249号公報)に記載の発明を適用することで,当業者において本件訂正前の請求項15の発明(本件発明2)及び本件訂正後の同請求項の発明(本件訂正発明2)に容易に想到することができたから,本件訂正の前後を通じて請求項9,15の発明は進歩性を欠き,特許無効審判により無効とされるべきもので,本件訂正によっても無効理由は解消されておらず,したがってその余の点につき判断するまでもなく,控訴人の各請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は次のとおりである。

なお,前記「第2 事案の概要」のとおり,本件訂正発明1,2については,乙第6号証を主引用例とする進歩性欠如の無効理由を主張する被控訴人による無効審判請求を不成立とした審決(本件訂正は認めた。)の取消訴訟で,当該無効理由は理由があるとして審決取消しの判決があった。

2  乙第6号証に記載された引用発明1,2は原判決「事実及び理由」第3の2(2)(73,74頁)のとおりであるから,本件訂正後の請求項9の本件訂正発明1と引用発明1とは,移動体の挙動を検出するセンサ部と,前記センサ部で検出された当該移動体の挙動において特定挙動の発生の有無を判定し,前記移動体の操作傾向の解析が可能となるように,前記特定挙動の発生に応じて挙動に関わる情報を所定の記録媒体に記録する記録手段とを有し,前記記録媒体は,前記移動体の識別情報,前記移動体の操作者の識別情報,前記移動体の挙動環境の少なくとも1つに従って分類される分類毎に作成されたカード状記録媒体であるデータレコーダである点で一致し,本件訂正発明1は,特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件に適合する挙動の情報をカード状記録媒体に記録するものであり,かつ,該収集条件が該カード状記録媒体に設定されているのに対して,引用発明1はそのようなものでない点(相違点A)で相違することが認められる。ここで,上記「特定挙動」は,本件訂正明細書(甲12)の段落【0006】,【0007】,【0030】,【0034】,【0049】,【0050】,【0069】の記載に照らせば,急発進時の車両(移動体)の挙動等の,「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」を意味するものと解される。

本件訂正明細書(甲12)の段落【0030】,【0034】,【0050】及び図2,3によれば,本件訂正発明1における「事故につながるおそれのある危険な操作」がされたか否かの判定は,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えるか否かによってなされるものである。また,本件訂正発明1の特許請求の範囲にいう「収集条件」とは,「特定挙動」発生前後の挙動に関わる移動体(車両)の情報を所定時間収集するための条件をいうところ,本件訂正明細書の段落【0011】ないし【0021】,【0030】ないし【0035】,【0043】,【0048】ないし【0070】及び図面2,3,5によれば,具体的には,例えば,加速度等の閾値ないし閾値の組合せ,あるいはさらにGPSデータ等の限定を加えたものが上記「収集条件」に当たる。

ところで,乙第2号証は車両の加速及び減速の履歴情報を有するデータを収集する車両運行データ収集装置に関する発明(考案)に係る文献であるところ,その実用新案登録請求の範囲(請求項1),段落【0005】,【0006】,【0010】,【0011】,【0013】,【0015】,【0017】,【0049】の記載に照らせば,乙第2号証の車両運行データ収集装置は,運転者の操作(運転)傾向を把握するために車両の加速及び減速を分類(ランク分け)する基準となる加速ランクデータ及び減速ランクデータを,装置に挿入,接続されたICメモリカードに記録し,かつICメモリカードから読み込んだ加速ランクデータ及び減速ランクデータをCPUのRAMに格納して,上記分類に用いる構成を有するものである。

乙第2号証記載の発明も,引用発明1と同じく,運転者の操作,運転の傾向を把握,分析するために車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,技術分野が共通する。当該発明によって解決しようとする技術的課題も,乙第2号証記載の発明が運転者の操作,運転の傾向をより適切に把握するべく,「道路状況に左右されないで,運転者の運転状況を把握するのに有効な,加減速の履歴情報を含む車両運行データを収集することのできる車両運行データ収集装置を提供すること」にあるのに対し,引用発明1は「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」(乙6の2頁)こと等にあって,運転者の操作,運転の傾向を分析する上でより有用,効果的な情報を収集,記録するための手段を提供するためのものである点で重なり合う。そうすると,運転者の操作,運転の傾向を把握,分析するために車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者にとっては,乙第2号証記載の発明を引用発明1に適用する動機付けがあると解して差し支えない。加えて,引用発明1と本件訂正発明1とは粗雑運転を検出,防止する手段として運転者による車両の操作傾向に関わる情報を効果的に収集,記録しようとする点でその技術的課題が共通するから,当業者であれば,引用発明1に乙第2号証記載の発明を適用して,本件訂正発明1に至ろうとする動機を抱くものである。なお,乙第6号証の「基準値」が,運転者の自覚に頼る方策では不十分であるため,客観的な評価を可能とするべく設けられたものであるとしても(乙6の2頁),ここでいう客観的な評価は,恣意的でなく客観的な一定の基準に従ってなされるという趣旨のものにすぎず,引用発明1が運転者以外の第三者においてのみかかる「基準値」を設定し得る構成に限定されるかは疑問であり,運転者の特性に応じて判定の基準となる値の設定を変更することを許容し得ないものではない。他方で,本件訂正発明1の特許請求の範囲においても,管理者等が一括して「収集条件」等を設定する構成が排斥されているわけではないから,本件訂正発明1と引用発明1との間で,基準となる値の設定態様に格段の差異があるとはいい難い。また,乙第2号証記載の発明が,1周期の最大加減速ランクをインクリメントすることで,共通のランクデータを用いても,道路状況にあまり左右されずに加減速の履歴情報を収集することができるものであるとしても(乙2の段落【0049】),ランクデータをICメモリカードに記録すること等と乙第2号証記載の発明の上記目的とが,乙第1,第8,第11号証から看取される当業者の技術水準に照らして密接不可分のものとまではいえないから,前記の乙第2号証記載の発明の適用が困難となるものではない。

ところで,乙第1号証は,2つの異なる周期で車両の運航状態データを収集し,通常時には低い頻度(サンプリングレート)で,事故信号を検出した異常時は高い頻度で上記運航状態データをそれぞれ記録するデータ収集装置に関する発明に係る文献であるところ,段落【0006】,【0010】,【0033】の記載に照らせば,交通事故の発生前後(より正確には「事故信号」の発生前後)の所定時間分の速度等の車両の挙動に関する情報を収集,記録する技術的事項が開示されているということができる。そして,乙第1号証の段落【0022】には,エアバッグ作動信号を手掛かりとして「事故信号」を検出するが,加速度信号やエンジンの回転数,ブレーキ信号を手掛かりに用いてもよい旨が記載されているから,加速度等に閾値を設け,この閾値を超えた時点の前後の車両の挙動に関する情報を収集,記録する技術的事項が開示されていると評価することが可能である。

乙第8号証は,運転に係る要因による異常又は異常に近い状況をコンピュータによって把握するための装置を備えた車両等の発明に関する文献であるところ,請求項4の記載に照らせば,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置において,運転に係る要因による異常又は異常に近い状況が発生した時点の前後の所定時間分の車両の挙動に関する情報を収集,記録する技術的事項が開示されていることが明らかである。そして,乙第8号証の装置は,車両内部に設置されたセンサから得られた運転に関する情報,すなわちハンドル,ブレーキ,アクセル,エンジン等の情報から運転に係る要因による異常又は異常に近い状況の発生の有無を判定するが,これは具体的には,例えば,横加速度,ハンドルの向き,アクセルやブレーキの量等の組合せから,通常の運転時では合理的でない情報の組合せが生じているか否かによって判定する(段落【0005】,【0015】,図2)。

さらに,乙第11号証の1ないし5には,交通事故が発生したとみなされる時点前後の車両の挙動のデータを収集,記録する技術的事項が記載されているが,これらの文献においては,交通事故の発生の有無は,加速度センサないし衝撃センサが検出する値が所定の閾値を超えたか否か等によって判定される。

上記乙第1,第8,第11号証の1ないし5によれば,交通事故の発生前後の所定時間にわたって車両の挙動に係る情報を収集,記録すること,車両に設けられた加速度センサが検出する加速度が所定の閾値を超えるか否かやエアバッグ作動信号の有無に代えて,車両の加速度等が所定の閾値を超えたか否かによって交通事故が発生したか否かを判定する程度の事柄は,本件優先日当時における車両の挙動に係る情報を収集,記録する装置の技術分野の当業者の周知技術にすぎないものと認められる。

本件訂正発明1にいう「特定挙動」は前記のとおり「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」であって交通事故の発生を前提とするものではない(交通事故が発生しない場合も含む)が,本件訂正発明1においても,例えばセンサ部から得られる角速度等のデータが所定の閾値を超えたか否かによって「特定挙動」の有無が判定されるから(本件訂正明細書の段落【0030】,【0034】,【0050】,図2,3等),装置の機能の面に着目すれば,本件訂正発明1において「特定挙動」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成は,上記周知技術において「交通事故」発生前後の所定時間分の情報を収集,記録する構成と実質的に異なるものではない。

加えて,上記周知技術と引用発明1とは,属する技術分野が共通し,前者を後者に適用するに当たって特段障害はないから,本件優先日当時,かかる適用を行うことにより,当業者が本件訂正発明1,2にいう「特定挙動」の発生前後の所定時間分の車両の挙動に係る情報を収集,記録する構成に想到することは容易であるということができる。

以上のとおり,乙第6号証記載の引用発明1に,「特定挙動」の発生前後の車両の挙動に係る情報を収集する条件を記録媒体に記録,設定する乙第2号証記載の発明と,「特定挙動」に相当する一定の契機(交通事故等)の発生前後所定時間分の車両の挙動に係る情報収集をする乙第1,第8,第11号証の1ないし5記載の周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,相違点Aに係る構成に容易に想到することができたというべきであり,本件訂正発明1は進歩性を欠く。

3  本件訂正後の請求項15の本件訂正発明2と乙第6号証記載の引用発明2とは,移動体の挙動を特定挙動と判定して当該挙動に関わる情報が記録された記録媒体からその記録情報を読み出す処理,読み出した情報から当該移動体の操作傾向を解析する処理をコンピュータ装置に実行させるためのディジタル情報が記録された,コンピュータ読取可能な記録媒体である点で一致し,本件訂正発明2が,特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集するための収集条件を記録媒体に設定する処理をコンピュータ装置に実行させるものであるのに対して,引用発明2は,そのようなものでない点(相違点B)で相違することが認められる。

乙第3号証は,自動車の操作に関するイベント(事象)を記録する自動車レーダシステムに関する発明に係る文献であるところ,段落【0008】,【0018】,【0043】,【0047】によれば,上記レーダシステムに用いる自動車用イベント(事象)記録装置(ERA)において,コンピュータ装置及び着脱可能なRAMカードを用い,前方間隔,警告閾値や,自動車の電子制御システムを介してセットされるその他のパラメータを設定する発明,すなわちRAMカードに記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータをERAに適用する発明が記載されているということができる。そして,上記発明は,車両の挙動に関する情報を収集,記録する装置に関するもので,引用発明2と技術分野が共通するし,コンピュータ装置に処理を実行させて,着脱可能なRAMカード等の記録媒体に記録されているパラメータを変更し,変更されたパラメータをRAMカードに再度記録し,その後変更されたパラメータを上記収集・記録装置に適用する程度の事柄であれば,事故分析に有用な情報を記録するブラックボックス的機能を有する,車両の挙動に係る情報の記録装置(乙3の段落【0001】~【0007】)とは不可分のものではない。したがって,乙第6号証や乙第2号証に接した当業者であれば,「スピードの出し過ぎや急発進・急制動の有無乃至その回数を予め設定された基準値を基に自動判定し,また走行距離を用途別(私用,公用,通勤等)に区分して把握してドライバーの運転管理データを得るシステムを提供する」こと等を技術的課題とする引用発明2に,乙第3号証記載の発明を適用する動機付けがある。

そうすると,引用発明2に乙第2,第3号証記載の各発明と,乙第1,第8,第11号証の1ないし5記載の前記2で認定した周知技術を適用することにより,本件優先日当時,当業者において,相違点Bに係る構成に容易に想到することができたというべきであり,本件訂正発明2は進歩性を欠く。

4  請求項9,15の特許請求の範囲に係る本件訂正は,概ね,訂正前の「挙動条件」を「収集条件」に改め,かつ記録手段が収集,記録する情報の時間的範囲について格別限定がなかったのを,「当該特定挙動の発生前後の挙動に関わる情報を所定時間分収集する」ことに改めるものである。

しかるに,前記2のとおり,加速度センサが検出する値が所定の閾値を超えるなどの一定の契機(トリガ)の発生(「特定挙動」の発生も同様)に基づいて,当該発生前後の車両の挙動に関わる情報を所定時間分収集する程度の事柄は,引用発明1に適用が容易な,当業者の周知技術にすぎない。

また,本件訂正前の請求項9,15の特許請求の範囲の記載や,本件明細書(甲2)の段落【0014】,【0050】ないし【0053】等の記載に照らせば,上記「挙動条件」は「事故につながるおそれのある危険な操作に伴う車両の挙動」すなわち「特定挙動」があると判定するための,車両の挙動に係る条件,例えば,所定の閾値を車両の角加速度が超えたか否かといった条件を意味するものと解される。したがって,請求項9,15の「記録装置」等を,「挙動条件」に従って動作させ,カード状記録媒体等の記録媒体に「挙動条件」を記録する構成(本件発明1,2の構成)に当業者が想到することは,「収集条件」に係る本件訂正発明1,2の構成に当業者が想到することよりも更に容易であるというべきである。

結局,前記2,3のとおり,本件訂正後の請求項9,15の発明である本件訂正発明1,2がいずれも進歩性を欠くものであるから,本件訂正前の上記請求項の発明である本件発明1,2も進歩性を欠くというべきである。

5  よって,本件訂正によっても無効理由は解消されていないから,控訴人の対抗主張は採用できず,本件発明1,2に係る特許は,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。

(裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 真辺朋子 裁判官 田邉実)

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