大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

知財高等裁判所 平成23年(行ケ)10383号 判決 2012年10月10日

原告

CKD株式会社

訴訟代理人弁理士

富澤孝

岡戸昭佳

奥田誠

野村茂樹

廣田昭博

被告

特許庁長官

指定代理人

田村嘉章

大河原裕

仁木浩

氏原康宏

田村正明

主文

特許庁が不服2010-26882号事件について平成23年10月11日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1原告の求めた判決

主文同旨

第2事案の概要

本件は,特許出願に対する拒絶審決の取消訴訟である。主たる争点は,補正要件の有無である。

1  特許庁における手続の経緯

原告は,平成16年12月10日,名称を「ダイアフラム弁」とする発明につき特許出願(特願2004-358675号,甲2)をし,平成21年7月23日,手続補正書(甲6)を提出したが,平成22年8月31日付けで拒絶査定を受けたので,同年11月29日,不服の審判(不服2010-26882号,甲3)を請求するとともに,本件補正(甲5)をした。特許庁は,平成23年10月11日付けで,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年10月25日,原告に送達された。

2  本願発明の要旨

(1)  本件補正によるもの(補正発明,甲5。下線は,補正箇所を明示するために付した。)

【請求項1】

ボディに形成された第1流路および第2流路の境に設けられた弁座に対し,アクチュエータの駆動軸に連結されたダイアフラムを当接または離間させることにより,前記第1流路と前記第2流路との間を閉鎖または開放するようにしたダイアフラム弁において,

前記ダイアフラムは,弁座に当接する弁体部と,弁体部から外側に広がった膜部と,膜部外周縁に形成された固定部とを有し,前記膜部が,前記弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,前記固定部に接続され水平方向に形成された水平部と,前記鉛直部と前記水平部とを接続するために断面円弧状に形成された接続部とを備えること,

前記駆動軸の先端には,前記鉛直部および前記接続部に接触して前記膜部を受け止めるために前記ダイアフラムに一体化されたバックアップが設けられていること,

前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと,

を特徴とするダイアフラム弁。

【請求項2】

請求項1に記載するダイアフラム弁において,

前記鉛直部は前記駆動軸に常時接触していることを特徴とするダイアフラム弁。

【請求項3】

請求項1または請求項2に記載するダイアフラム弁において,

前記ダイアフラムは,前記弁体部と前記膜部との境界が前記弁座の径よりも内側に位置するものであることを特徴とするダイアフラム弁。

(2)  本件補正前のもの(補正前発明。平成21年7月23日付け手続補正書(甲6)記載のもの)

【請求項1】

ボディに形成された第1流路および第2流路の境に設けられた弁座に対し,アクチュエータの駆動軸に連結されたダイアフラムを当接または離間させることにより,前記第1流路と前記第2流路との間を閉鎖または開放するようにしたダイアフラム弁において,

前記ダイアフラムは,弁座に当接する弁体部と,弁体部から外側に広がった膜部と,膜部外周縁に形成された固定部とを有し,前記膜部が,前記弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,前記固定部に接続され水平方向に形成された水平部と,前記鉛直部と前記水平部とを接続するために断面円弧状に形成された接続部とを備えることを特徴とするダイアフラム弁。

【請求項2】

請求項1に記載するダイアフラム弁において,

前記ダイアフラムは,弁座に当接する弁体部と,弁体部から外側に広がった膜部と,膜部外周縁に形成された固定部とを有し,

前記膜部が,前記弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,その鉛直部と前記固定部とを接続する接続部とを備え,

前記鉛直部は前記駆動軸に常時接触していることを特徴とするダイアフラム弁。

【請求項3】

請求項1または請求項2に記載するダイアフラム弁において,

前記ダイアフラムは,前記弁体部と前記膜部との境界が前記弁座の径よりも内側に位置するものであることを特徴とするダイアフラム弁。

【請求項4】

請求項1から請求項3に記載するいずれか1つのダイアフラム弁において,

前記駆動軸の先端には,前記鉛直部および前記接続部に接触して前記膜部を受け止めるために前記ダイアフラムに一体化されたバックアップが設けられていることを特徴とするダイアフラム弁。

3  審決の理由の要点

(1)  審決は,「本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。」,「補正前発明は,引用例(特開2001-173811号公報,甲1)に記載された引用発明に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。」と判断した。

(2)  本件訴訟の争点は,本件補正の適否及び補正却下の手続違反の有無であるから,以下には審決の判断のうち補正を却下した部分のみを示す。

本件補正により,本件補正後の請求項1に係る発明は,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という事項を含むものとなった。

一般に,「反転」とは,「(1)ころぶこと。ころばすこと。(2)ひっくりかえること。ひっくりかえすこと。(3)反対の方向に向きかわること。また,向けかえること。(4)〔数〕(inversion)一定点に関し,任意の点または図形の対称点を求める操作。(5)(写真用語)(reversal)ネガ像をポジ像に,あるいはその逆にすること。」(株式会社岩波書店,広辞苑第六版)という意味であるところ,上記事項の「膜部を反転させることなく」という記載は,その技術的意義が一義的に明確に理解することができるものとはいえず,しかも,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に明記されたものでもない。

ここで,請求人は,審判請求書において,上記事項の「反転」が表す構成は「膜部の一部の天地が逆転すること」であり,また,上記事項は当初図面の【図2】に示されていると主張し,さらに,平成23年5月26日付けの回答書において,参考図1及び2に示されたA点が鉛直部22aとバックアップ40との位置関係を殆ど変えない点を主張している。

しかしながら,当初図面の【図1】及び【図2】に示された,「膜部22」の特に「接続部22b」についてみると,「鉛直方向に形成された鉛直部」と接続される箇所から「水平方向に形成された水平部」と接続される箇所に至るまでの中には,弁の開放時における「接続部22b」の屈曲によりバックアップ40から離間する部分が存在しており,しかも,当該部分において,弁の閉鎖時と開放時とで,「膜部22」の延在方向の隣接部との間で上下関係が逆となる箇所が存在しないともいえない。

そうすると,当初図面の【図1】及び【図2】には,「膜部22」において,弁の閉鎖時と開放時とで,請求人が主張する「膜部を反転させる」ような部分が存在しない構成とする技術思想が記載されていることが明らかであるということはできないから,当初明細書等の記載から,上記事項が,当業者に自明であるとも,当初明細書等に記載されていたに等しい事項であるともいえず,さらに,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるともいえない。

したがって,上記補正事項を含む本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。

第3原告主張の審決取消事由

1  取消事由1(本件補正却下の判断の誤り)

本件補正は当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。

本件出願時には,ダイアフラム弁としては,引用例(甲1)の第11頁の図2,3に記載されているローリングダイアフラム弁と,引用例の第11頁の図1に記載されている通常のダイアフラム弁とが存在していた。

ローリングダイアフラム弁は,膜部がローリングするタイプのダイアフラム弁である。ここで,ローリングとは,膜部が半円状部分を有し,該半円状部分を構成する膜部の位置が,弁体部の閉鎖または開放動作に伴って,移動するものである。すなわち,ローリングダイアフラム弁は,「膜部を反転させながら,弁の閉鎖または開放を行うこと」を特徴とするダイアフラム弁である。

通常のダイアフラム弁とは,膜部が半円状部分を有することなく,ローリングを行わないダイアフラム弁である。すなわち,「膜部を反転させることなく,弁の閉鎖または開放を行うこと」を特徴とするダイアフラム弁である。

ローリングダイアフラム弁は,弁体部と弁座との離間距離(以下「ストローク距離」という。)を大きく採る必要がある大流量用のダイアフラム弁に用いられている。それに対して,通常のダイアフラム弁は,ストローク距離が小さい小流量用のダイアフラム弁に用いられている。

ローリングダイアフラム弁と通常のダイアフラム弁とは,タイプを異にする弁装置であり,本件出願当時,当業者はそれを認識していた(甲1(審決引用の引用例),7頁右欄5~8行)。

ローリングダイアフラム弁は,ストローク距離を大きくするため,膜部に半円状部分を形成し,該半円状部分を構成する膜部の位置を移動させている。この移動の過程で,特定の膜部部分は,天地が逆転する,すなわち,上下方向において180度反転することとなる。そのため,膜部の厚みを比較的小さく構成する必要がある。膜部の厚みが大きいと,スムーズにローリング(上下方向における180度反転)できないからであり,余分な駆動力を必要とするからである。膜部の厚みを小さくすると,高い圧力を加えたときに,流体の圧力(静圧)で膜部が膨張変形する恐れがある。その膨張変形を防止するために,ローリングダイアフラム弁では,膜部をバックアップするバックアップ機構を設けている(甲1,8頁右欄41~45行)。特に,ローリングダイアフラム弁では,ストロークが長い(数mm~数十mm)ので,膜部の長さを長くしている。膜部の長さが長いと,膜部に高い静圧がかかった場合に,膜部が大きく膨張変形する。そして,膜部が膨張変形した状態でローリング(弁の開閉)を行うと,膜部の膨張変形する箇所が変化するため,膜部の付け根部分が揺動的に変形する。この繰り返しの揺動的変形により,膜部の付け根部部分の樹脂が白化し劣化する恐れがある。付け根部部分の揺動的変形を,バックアップを設けて軽減しないと,膜部の付け根部分が白化し劣化する恐れがあるので,それを防止するために,膜部に対してバックアップ機構を設けている。

それに対して,通常のダイアフラム弁は,ストローク距離が短い(1mm以下)ので,ローリングダイアフラム弁と比較して膜部の長さが短い。そのため,膜部が膨張変形することがきわめて少なく,膜部の付け根部分の樹脂が白化する恐れがない。したがって,膜部の付け根部分が白化する恐れがないため,元々,バックアップ機構を必要としない。

引用例(甲1)は,主としてローリングダイアフラム弁に関する発明である。ローリングダイアフラム弁においては,膜部の厚さについて,0.5mmを超えさせることはあり得ない。なぜならば0.5mmを越えて厚くすると,ローリング(上下方向における180度反転)がスムーズに行えないからである。そのため,膜部の厚みを厚く(本願発明の実施例では,0.9mm)することにより発生する白化の問題,耐久性の問題は,ローリングダイアフラム弁では,当業者が予想することのできない想定外の課題である。

原告は,ローリングダイアフラム弁である引用例(甲1)の不適格性について,審査の過程において,審査官に対して幾度か主張を繰り返したが,審査官が聞き入れてくれなかったので,拒絶査定不服審判請求時に,請求項1に,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という発明特定事項を加えて,ローリングダイアフラム弁を除外した。化学系の発明では,「~を除く」形式のいわゆる「除くクレーム」の記載が認められているが,機械系の発明では,「ローリングダイアフラム弁を除く」という文言は,一般的でなく,またふさわしくないと考え,技術的意義において,ローリングダイアフラム弁を除外するために,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という発明特定事項を加えたのである。

本件出願の当初明細書は,ローリングダイアフラム弁を除く通常のダイアフラム弁についてのみ記載してあり,ローリングダイアフラム弁に関しては全く記載することなく,ローリングダイアフラム弁を発明の対象外としている。なぜならば,本件出願の課題の前提である,「膜部を従来のダイアフラム弁の倍近く厚くしたとき」という想定がローリングダイアフラム弁では,あり得ない想定だからである。原告は,この技術的意義に基づいて,本件補正において,「ローリングダイアフラム弁を除く」という意味で,請求項1に,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という発明特定事項を加えたのである。

したがって,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という発明特定事項は,引用例との対比において当業者が当然「ローリングダイアフラム弁を除く」と理解するはずであり,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項により従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項の規定に適合するものであり,本件補正却下の決定は違法であるから,審決は取り消されるべきである。

2  取消事由2(拒絶理由通知の懈怠)

審決は,本件補正で請求項1に記載された「反転」の文言について,「当該部分において,弁閉鎖時と開放時とで,「膜部22」の延在方向の隣接部との間で上下関係が逆となる箇所が存在しないともいえない。」(審決2頁34~36行)としている。この文章からみると,審判官は,「反転」とは,「他の部分との間で上下関係が逆となること」と考えているものと判断される。

それに対して,原告は,審判請求書(甲3)に,「ここで,反転とは,周知のように,膜部の一部が天地を逆転することを言います。」(4頁9~10行)と記載し,また,回答書(甲4)に,「よって,ポペット弁体122は,参考図3に示す閉鎖時のB点が,参考図4に示すように弁が開放された場合に180度方向転換して反転します。」(8頁8~10行)と説明した。これらから,原告が,「反転」の意味を,180度方向転換することと主張したことは明らかである。

請求項に記載されている文言が,2つの意味に解釈される可能性のあるとき,その発明が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないことになる。そうであるならば,本件補正により,請求項1に係る発明に生じた拒絶理由(特許法36条6項2号違反)について,審判官が新たな拒絶理由通知をなすべきであった。この通知を怠ったことにおいて,特許法159条2項で準用する特許法50条の規定の違背があり,審決は取り消されるべきである。

第4被告の反論

1  取消事由1(本件補正却下の判断の誤り)に対して

(1)  原告は,その「請求項1に,『前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと』という発明特定事項を加えて,ローリングダイアフラム弁を除外した」旨主張する。

してみると,ローリングダイアフラム弁である引用例(甲1)との対比において,それを除外するために,「ローリングダイアフラム弁を除く」という意味で,請求項1に,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という補正事項を加えたのであるから,本願発明は出願時から「ローリングダイアフラム弁を包含する」ものとなっていたことが明らかである。そして,「ローリングダイアフラム弁を除く」ことは,当初明細書等(甲2)に記載や示唆されておらず,その記載から,当業者に自明であるとも,記載されていたに等しい事項であるともいえないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において,新たな技術事項を導入するものである。したがって,原告の上記主張は失当である。

(2)  原告は,「『前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと』という発明特定事項を,『ローリングダイアフラム弁を除く』という意味で加えたとし,本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである」旨主張する。この主張は,「非ローリングダイアフラム弁を除くことなく,ローリングダイアフラム弁のみを除く」ことを意味するものと解される。

しかし,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」と「ローリングダイアフラム弁を除く」こととは同義とはいえないから,原告の上記主張は失当である。すなわち,ダイアフラム弁の技術分野において「反転」の用語は,非ローリングダイアフラム弁においても通常用いられており,非ローリングダイアフラム弁においても膜部を反転させ,閉鎖または開放を行うことは例えば,特開2001-153239号公報(乙1;段落【0011】,【0019】,図1,図2),特開平9-177970号公報(乙2;段落【0010】,図1,図5),実願昭61-124591号(実開昭63-30674号)のマイクロフィルム(乙3;明細書2頁11行~3頁3行,第3図)にも示されているように,当業者にとって技術常識といえるものである。そうすると,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という補正事項はローリングダイアフラム弁のみならず「非ローリングダイアフラム弁を除く」,すなわち原告が主張する通常のダイアフラム弁を除く,という意味も有することになる。したがって,原告の上記主張は失当である。

(3)  「膜部を反転する」とは,一般的なダイヤフラム弁の膜部の挙動を考慮すると,「膜部をひっくりかえすこと」,または「膜部を反対の方向に向きかえること」という2つの解釈をし得るものである。したがって,その技術的意義が一義的ではない。

また,当初明細書等(甲2)には,「膜部を反転させることなく,閉鎖または開放を行うこと」や「反転」の記載や示唆はなく,また,原告が主張するような「反転」の用語を「天地を逆転する」や「180度方向転換」と定義したこと,及びその技術的意義がローリングダイアフラム弁を特定するための技術事項であって,膜部が上下方向において180度方向転換すること,並びに膜部が半円形状を有することを意味する旨の記載や示唆はない。原告は,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という補正事項の技術的意義は,「ローリングダイアフラム弁を除外すること」である旨主張しているが,当初明細書等には,その技術的意義である「ローリングダイアフラム弁を除外する」ことも記載や示唆はされていない。

原告は,審判請求書(甲3)で,「反転とは,周知のように,膜部の一部が天地を逆転することを言います。」とし,回答書(甲4)では,「180度方向転換して反転します。」とし,「ローリングダイアフラム弁を除く」という意味である旨主張している。原告の主張を加味したとしても,一般に,書物・荷物などの「天地」とは「うえした」を意味し,そう解すると,原告の主張する「天地を逆転する」や「180度方向転換」との解釈とも合致する。さらに,上記「膜部を反転させることなく,閉鎖または開放を行うこと」とは「膜部の隣接部において上下関係を逆とすることなく,閉鎖または開放を行うこと」と解釈すれば,例えば,乙1ないし3(乙1段落【0011】,【0019】,図1,図2;乙2段落【0010】,図1,図5;乙3明細書2頁11行~3頁3行,第3図)に示されているような一般的なダイアフラム弁のダイアフラムの挙動とも整合する。そこで,審決は,原告主張を加味して「膜部を反転させることなく,閉鎖または開放を行うこと」とは「膜部の隣接部において上下関係を逆とすることなく,閉鎖または開放を行うこと」と合理的に解釈した。

当初明細書等(甲2)の請求項2に「前記膜部が,前記弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,前記固定部に接続され水平方向に形成された水平部と,前記鉛直部と前記水平部とを接続するために断面円弧状に形成された接続部とを備える」と記載されているように,「膜部22」は「鉛直部22a」と「接続部22b」と「水平部22c」とから構成されている。

そこで,「膜部22」全体に注目して吟味すると,弁の開放時と閉鎖時とでその相対的な上下の位置関係が,隣接する箇所において逆となる部分が存在している。このことを審決は「『膜部22』の特に『接続部22b』についてみると,『鉛直方向に形成された鉛直部』と接続される箇所から『水平方向に形成された水平部』と接続される箇所に至るまでの中には,弁の開放時における『接続部22b』の屈曲によりバックアップ40から離間する部分が存在しており,しかも,当該部分において,弁の閉鎖時と開放時とで,『膜部22』の延在方向の隣接部との間で上下関係が逆となる箇所が存在しないともいえない。」としている。してみると,当初明細書等には,「膜部の隣接部において上下関係を逆とすることなく,閉鎖または開放を行うこと」,すなわち「膜部を反転させることなく,閉鎖または開放を行うこと」は記載や示唆はされていないことになるから,いわゆる新規事項の追加となる。

したがって,補正却下の決定の理由に誤りはない。

2  取消事由2(拒絶理由通知の懈怠)に対して

拒絶査定不服審判請求に際して行われた補正については,いわゆる独立特許要件を欠く場合,これを却下すべきこととされ,その場合,拒絶理由を通知することは必要とされていない。してみると,原告の上記主張は,その前提に誤りがあるから,理由がない。

第5当裁判所の判断

1  本件補正における「反転」の技術的意義について,当初明細書の記載及び出願経過に照らして検討する。

(1)  本件補正における「反転」は,「前記閉鎖または開放を行う」に際しての「前記膜部」の動きに関わるものであるから,ダイアフラム弁の膜部22(22a,22b,22c)の挙動に関わるものと理解するのが自然である。

当初明細書等(甲2)には,かかる「膜部」の「反転」という挙動に関して明示的な記載はないが,以下の記載がある。

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

しかしながら,上記したダイアフラム弁では,高圧流体(500kPa以上)の供給制御を行う場合に,弁体部と膜部との境界(付根部)に応力集中が発生してしまい,劣化が急速に進むという問題があった。なぜなら,流体圧力によってダイアフラムの膜部(環状薄膜部)が変形してしまうため,弁体部と膜部との境界(付根部)をほぼ垂直状態に保持することができなくなり,弁体部と膜部との境界(付根部)に応力集中が発生するからである。このように,上記したダイアフラム弁では,高圧流体の供給制御を行うために必要な耐久性能が得られず,高圧流体の供給制御を行うことができなかった。

【0010】

これに対して,例えば,ダイアフラム弁が使用される半導体製造工場の一部では建物が高層化されており,1階部分に貯蔵された薬液を高層階部分に供給する必要がある。そして,このような薬液供給弁として使用されるダイアフラム弁では,ダイアフラムに高い圧力(例えば,700kPa程度)が作用する。ところが,上記したように現状のダイアフラム弁では,ダイアフラムに必要な耐久性能がなく,上記の薬液供給弁として使用することができなかった。

【0011】

そこで,本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり,高圧流体を供給制御する場合にも,ダイアフラムの弁体部と膜部との境界付近への応力集中を防止してダイアフラムの耐久性を向上させることができるダイアフラム弁を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】

【0012】

上記問題点を解決するためになされた本発明に係るダイアフラム弁は,ボディに形成された第1流路および第2流路の境に設けられた弁座に対し,アクチュエータの駆動軸に連結されたダイアフラムを当接または離間させることにより,前記第1流路と前記第2流路との間を閉鎖または開放するようにしたダイアフラム弁において,前記ダイアフラムは,弁座に当接する弁体部と,弁体部から外側に広がった膜部と,膜部外周縁に形成された固定部とを有し,前記膜部が,前記弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,その鉛直部と前記固定部とを接続する接続部とを備え,前記鉛直部は前記駆動軸に常時接触していることを特徴とするものである。

【0013】

このダイアフラム弁に備わるダイアフラムには,弁座に当接する弁体部と,弁体部から外側に広がった膜部と,膜部外周縁に形成された固定部とを有し,膜部には弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,その鉛直部と前記固定部とを接続する接続部とが備わっている。このため,弁開閉動作時には,鉛直部はほとんど変形することなく接続部のみが弾性変形してダイアフラムの膜部が屈曲し,ダイアフラムの弁体部が弁座に当接または離間する。従って,このダイアフラム弁では,鉛直部,特に鉛直部と弁体部との境界に応力が集中することを確実に防止することができる。

【0014】

そして,このダイアフラム弁では,鉛直部がアクチュエータの駆動軸に常時接触している。従って,このダイアフラム弁では,高圧流体が供給されても,鉛直部は駆動軸に支持されているため変形することがないので,鉛直部と弁体部の境界に応力が集中することがない。これにより,このダイアフラム弁によれば,高圧流体を供給制御する場合にも,鉛直部と弁体部との境界付近への応力集中を防止してダイアフラムの耐久性を向上させることができる。

【0015】

上記問題点を解決するためになされた本発明に係る別形態のダイアフラム弁は,ボディに形成された第1流路および第2流路の境に設けられた弁座に対し,アクチュエータの駆動軸に連結されたダイアフラムを当接または離間させることにより,前記第1流路と前記第2流路との間を閉鎖または開放するようにしたダイアフラム弁において,前記ダイアフラムは,弁座に当接する弁体部と,弁体部から外側に広がった膜部と,膜部外周縁に形成された固定部とを有し,前記膜部が,前記弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,前記固定部に接続され水平方向に形成された水平部と,前記鉛直部と前記水平部とを接続するために断面円弧状に形成された接続部とを備えることを特徴とするものである。

【0016】

このダイアフラム弁では,ダイアフラムが弁座に当接する弁体部と,弁体部から外側に広がった膜部と,膜部外周縁に形成された固定部とを有し,膜部には弁体部に接続され鉛直方向に形成された鉛直部と,固定部に接続され水平方向に形成された水平部と,鉛直部と水平部とを接続するために断面円弧状に形成された接続部とが備わっている。このため,弁開閉動作時には,鉛直部はほとんど変形することなく接続部のみが弾性変形してダイアフラム弁体の膜部が屈曲し,ダイアフラムの弁体部が弁座に当接または離間する。従って,このダイアフラム弁では,鉛直部,特に鉛直部と弁体部との境界に応力が集中することを確実に防止することができる。

【0017】

そして,このダイアフラム弁では,膜部外周に水平部を備えていることから,鉛直部はダイアフラム内周方向に力を受けている。このため,鉛直部はダイアフラム外周方向に広がることなく駆動軸に常時接触している。従って,このダイアフラム弁では,高圧流体が供給されても,鉛直部は駆動軸に支持されているため変形することがないので,鉛直部と弁体部の境界に応力が集中することがない。これにより,このダイアフラム弁によれば,高圧流体を供給制御する場合にも,鉛直部と弁体部との境界付近への応力集中を防止してダイアフラムの耐久性を向上させることができる。

・・・・・・

【0019】

高圧流体の供給制御を行うためには,ダイアフラムの膜厚を厚く(従来のものに対して倍程度の厚さに)する必要があるが,従来の形状のままで膜厚を単に厚くするとダイアフラムが正常に動作しない。そこで,ダイアフラムの形状をこのようにすることにより,ダイアフラムの膜部の長さを長くすることができるため,膜厚を厚くした場合でも膜部を無理なく変形させることができる。その結果,膜厚を厚くした場合でもダイアフラムを正常に動作させることができる。

上記記載には,一貫して高圧流体の供給制御を行う場合に,弁体部と膜部との境界に応力集中が発生し劣化が急速に進むという問題への対処方法が述べられており,そのような問題が薄膜の反転動作を伴うローリングダイアフラム弁においても発生すると理解しうる記載はない。

そして,当初明細書には,本願発明の実施例として図1及び図2が,背景技術として図3が記載されており,いずれもローリングダイアフラム弁ではない通常のダイアフラム弁である。

(2)  本件審判請求書(甲3)には,以下の記載がある。

請求項1のうち「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」については,当初図面の図1に示す閉弁時の状態及び当初図面の図2に示す開弁時の状態において,膜部を反転させることなく閉鎖または開放を行う様子が記載されていることから,当初明細書等の範囲内であることは明白です。

ここで,反転とは,周知のように,膜部の一部が天地を逆転することを言います。

(4頁5~10行)

・・・・・・

ところで,一般的にダイアフラム弁には,薄膜の反転動作(ロール・非ロール動作)により開閉を行うロールダイアフラム式ポペット弁と,膜部を反転させることなく開閉を行う通常のダイアフラム式ポペット弁とがあります。そして,ロールダイアフラム式ポペット弁には,薄膜のロール・非ロール動作を可能とすべく,「膜厚を薄くする」という課題が存在します。一方,通常のダイアフラム式ポペット弁では,膜部の反転動作を行わないため,膜厚を薄くする必要がありません。むしろ,当初明細書等の段落(0019)に「高圧流体の供給制御を行うためには,ダイアフラムの膜厚を厚く(従来のものに対して倍程度の厚さに)する必要がある」と記載するように,本発明では「膜厚を厚くする」ことが行われています。

そこで,請求項1に係る発明では,第2の構成を有することにより,本発明のダイアフラム弁が,薄膜の反転動作(ロール・非ロール動作)により開閉を行うロールダイアフラム式ポペット弁とは異なる点を明確にしました。これにより,本発明のダイアフラム弁は,膜部の膜厚を厚くしたものであるのに対して,ロールダイアフラム式ポペット弁は,逆に膜厚を薄くしたものである点を明確にしました。(4頁28行~5頁15行)

・・・・・・

請求項1に係る発明と引用発明2とを対比すると,膜部(スリーブ)を受け止めるためのバックアップが設けられている点で共通しています。しかしながら,本発明は,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という構成を有する点で,引用発明2と相違しています。

引用発明2のロールダイアフラム式ポペット弁は,スリーブ124(本発明の膜部)のロール及び非ロール動作を行わなければ,閉鎖または開放を行えません。そのため,引用発明2では,膜厚を薄くして反転可能にする必要があります。しかしながら,膜厚を薄くした場合には,耐久性が低下するという問題が生じてしまいます。

これに対して,本発明では,膜部の反転動作を行わないため,膜厚を薄くする必要がありません。むしろ,本発明では,耐久性やシール性を向上させるべく,膜部をなるべく厚くする必要があります。このため,本発明においてロールダイアフラム式を採用することは,発明の目的に反してしまいます。このように,請求項1に係る発明は,引用発明2とは相反する課題「膜厚を厚くする」を有しており,それにより「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という特徴的な構成を採用し,引用文献2では得られないダイアフラム弁体の耐久性を向上させるという特有かつ顕著な効果を奏するのです。(7頁1~17行)

以上の記載からすると,審判請求書において原告は,①「反転」とは,周知のように,膜部の一部が天地を逆転すること,との意味であること,②ロールダイアフラム式ポペット弁は,薄膜の反転動作(ロール・非ロール動作)により開閉を行うのに対して,通常のダイアフラム式ポペット弁は,そのような反転をさせることなく開閉を行うものであること,③本願発明は,薄膜の反転動作(ロール・非ロール動作)により開閉を行うロールダイアフラム式ポペット弁とは異なるものであることを述べていることが理解できる。

2  ところで,一般に,「反転」とは,「(1)ころぶこと。ころばすこと。(2)ひっくりかえること。ひっくりかえすこと。(3)反対の方向に向きかわること。また,向けかえること。(4)〔数〕(inversion)一定点に関し,任意の点または図形の対称点を求める操作。(5)(写真用語)(reversal)ネガ像をポジ像に,あるいはその逆にすること。」という意味である(株式会社岩波書店,広辞苑第六版)。

また,本願発明の分野の技術常識についてみるに,審決が挙げた引用例(特開2001-173811号公報,甲1)には,【0011】~【0030】に図1の実施例に基づく説明が記載された後,以下の記載がある。

【0031】図2は,本発明の原理により構成された弁装置のもう一つの実施形態120を図示しており,図1に示すダイヤフラム式ポペット弁体とは異なるロールダイヤフラム式ポペット弁体122を具備している。望ましい高効率動作の表面及び完全に不必要なものを一掃した表面の両方を提供するために,前述及び図1に示したように,ロールダイヤフラム式ポペット弁体122は同様な弁座接触表面38を有することが理解され,弁座36は同様なポペット弁体接触表面40を有することが理解される。このロールダイヤフラム式ポペット弁体122は,ポペット弁体の頭部126と一体で頭部からポペット弁体フランジ128へ軸線方向に延在するスリーブ124を具備している。このスリーブ124は,ピストンシール押さえの中央穴62に対するロール及び非ロール動作によって,ポペット弁体の頭部126が流体室46内で軸線方向に移動することを可能とするポペット弁体の筒状側壁表面を形成する。

・・・・・・

【0033】ダイヤフラム式ポペット弁体の二つの種類の重要な特徴は,それらが一体の孔無し構造として形成されることである。このような一体のポペット弁体構造は,弁を通る多数の漏れ流路を最小限とし,それにより,ピストン室50への流体室46からの流体漏れの可能性を最小限とするために,非常に望ましい。一般的なダイヤフラム式弁は,ダイヤフラムの穴又は開口を通して設置された弁軸を有している。このような多数部材構造は,弁軸とダイヤフラムとの間の内在的な漏れ流路を提供し,これを通して,扱う流体が弁から漏れる可能性がある。本発明のロールダイヤフラム式ポペット弁体の一体構造は,この漏れ流路を無くし,それにより,弁を通しての又は弁からの望ましくない流体漏れの可能性を低減する。

・・・・・・

【0035】図3は,ポペット弁体122が弁座に非着座の開放位置における図2のロールダイヤフラム式ポペット弁体122を具備する弁装置120を図示している。弁座から離間する弁装置内のポペット弁体の上方向動作は,シール押さえの中央穴62の半径方向隣接表面上におけるピストンの隣接する第一直径側壁表面130からのポペット弁体のスリーブ120の非ロールによって提供される。

・・・・・・

【0040】図2に示すように,ロールダイヤフラム式ポペット弁体122が閉鎖又は着座位置である時に,ポペット弁体のスリーブ124は流体室46へ軸線方向に延在し,ピストンの頭部82の壁表面はスリーブ124の内側表面を支持する。ポペット弁体122が閉鎖位置にある時にスリーブ124の内側表面を支持するような頭部82の形状は,比較的薄いスリーブが扱う流体の高い圧力及び/又は温度のために変形することを防止するために,重要な形状的特徴である。

上記記載によれば,引用例の図2及び図3には,図1に示すダイヤフラム式ポペット弁体とは異なるロールダイヤフラム式ポペット弁体122が示されていること,ロールダイヤフラム式ポペット弁体122は,ポペット弁体の頭部126と一体で頭部からポペット弁体フランジ128へ軸線方向に延在するスリーブ124を具備すること,スリーブ124は「ロール及び非ロール動作」をすること,ピストンの頭部82の壁表面はスリーブ124の内側表面を支持することが理解できる。ダイヤフラム式ポペット弁体とは異なるロールダイヤフラム式ポペット弁体の存在は引用発明の前提とされており,ロールダイヤフラム式ポペット弁体自体は詳細に説明されていないことからすると,ダイヤフラム弁の技術領域において,通常のダイヤフラム弁と,それとは異なり「ロール及び非ロール動作」を伴うローリングダイヤフラム弁とが存在することは,引用例が公開された平成13年6月29日時点において,特段の説明を要しない技術常識であったことが理解できる。

3  上記の「反転」の一般的意味及び技術常識に照らし,また,審判請求書における原告の主張を合わせると,本件補正によって追加された「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」の構成は,「膜部の一部が天地を逆転することがなく,具体的には,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うことなく」との意味であることが明らかである。

4  以上によれば,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」とは,ロールダイアフラム式ポペット弁のような開閉時に薄膜のロール・非ロール動作を伴うものではないものである,という程度の意味で膜部の一部で天地が逆転しないものであることと理解すべきであり,係る事項を加えることは,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものといえる。

したがって,本件補正が「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと,」という事項を加えることをもって,本件補正が平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項の規定に適合しないとの審決の判断は誤りである。この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

5  被告は,ダイアフラム弁の技術分野において「反転」の用語は,非ローリングダイアフラム弁においても通常用いられており(乙1~3),それは当業者にとって技術常識といえるものであるから,「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」という補正事項は,原告が限定したとする通常型をも除く意味を有することとなるから,「ローリングダイアフラム弁を除く」ことと同義とはいえない,と主張する。

しかしながら,乙1~3に記載された「反転」の意味は,乙1においては,図3に示されるように,膜体6の周囲の支持部と凸球面状の弁体3の下端との位置関係が逆になることをいい,乙2においては,ダイアフラムの外周部の湾曲方向が上向きの凸形状と下向きの凸形状に変化することをいい,乙3においても乙2と同様のことをいうと理解でき,本件補正における「前記膜部を反転させることなく,前記閉鎖または開放を行うこと」とは次元が異なるから,乙1~3の記載をもって,本件補正を不適法とすることはできない。

第6結論

以上によれば,原告主張の取消事由1には理由がある。よって,審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 池下朗 裁判官 古谷健二郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例